
プラネットの歯科レセコン 「iQalte」や「DentalX」の 評判や価格、使い方を解説
保険診療のレセプト業務やカルテ作成に日々追われ、システム入力に手間取ったり、古いWindowsレセコンの高額な保守費用に悩まされてはいないだろうか。たとえば診療後に受付で残業しながら請求チェックをするような状況は、多くの開業歯科医に共通する課題である。また、スタッフ任せの紙カルテ管理では情報共有が遅れ、ヒューマンエラーも心配になる。こうした悩みを解決すべく登場したのが、iPad中心の運用を可能にするプラネット社の歯科用レセコン「iQalte(アイカルテ)」と、その関連システム「Dental X(デンタルテン)」である。本稿では、臨床経験と経営視点の双方からこれら製品の実力を分析し、先生方が自院に最適なシステムを選択するためのヒントを提供する。
製品の概要
プラネット社は歯科医院向けに独自のITソリューションを提供している企業である。中核となるDental Xは、もともとMac専用の患者情報一元管理システムとして開発され、診療記録や画像管理、説明資料作成まで含む包括的な電子カルテ環境を構築できるソフトウェアである。近年、このDental Xに標準搭載される形で登場したのが歯科用レセコン「iQalte」である。iQalteはiPad上で動作するレセプト&カルテシステムであり、診療録の入力から会計処理、レセプト作成・オンライン請求まで一貫して行えるのが特徴である。なおiQalte単体で運用することはできず、患者データベースや予約機能を担うDental Hubというシステムとセットで導入される。Dental HubもiPad対応のアプリであり、予約管理や来院履歴管理を通じて医院内の情報共有ハブとなる。つまりプラネット社の製品ラインは、Dental X(患者情報・資料管理の基盤)を中心に、iQalte(レセコン機能)とDental Hub(予約・患者管理)を組み合わせた統合システムになっている。適応範囲としては、一般歯科はもちろん、矯正歯科や訪問歯科など歯科全般で使用可能である。特にiQalteは保険適用の矯正にも追加費用なしで対応しており、幅広い診療科目で利用できる。また医療機器としてのクラス分類はなく、医療情報システムとして提供されるソフトウェアである。
主要スペック
iQalteの主な特徴と技術仕様
iQalteは2013年に初リリースされ、2023年時点で全国1,200以上の歯科医院に導入されている実績のあるシステムである。ハードウェア要件はiPadのみで、現行バージョンのiQalteアプリは最新のiPadOSに対応している。画面UIは紙の1号用紙・2号用紙そのままのレイアウトになっており、どこに何を入力するかひと目で分かる直感的なデザインである。このため、他社レセコンから移行した直後や紙カルテからのデジタル化でも戸惑いが少ない。入力された文字は手書きではなく印字風に清書されるため、従来の紙カルテより読みやすく正確な記録が残せるというメリットがある。
操作面ではApple Pencil対応が大きな特徴である。iPad上でペンシルを使えば、まるで紙カルテに書き込むような感覚で所見や図示ができる。例えば処置内容を箇条書きしたり、口腔内図にマーキングするといった作業も、ペン入力であれば経験豊富な歯科医師には馴染みやすい。ペンシル機能によりアナログとデジタルの良さを融合し、スムーズかつ高速なカルテ入力が可能となっている。
iQalteは保険請求に必要な機能を網羅している。通常の診療報酬入力に加え、例えば保険適用の矯正処置や在宅歯科診療にも標準で対応可能である。複雑な矯正の算定も専用の画面フローに沿って入力でき、入力漏れを防ぐ工夫がされている。またオンライン請求にも対応しており、レセプト電算データを生成してインターネット経由で送信する機能を備える。初めてオンライン請求に踏み切ったユーザーからは「思ったよりも手間がかからず非常に楽になった」との声もある。紙の請求書類を印刷・郵送したり、Windows端末で煩雑な送信作業をする必要がなく、iQalte上の簡単な操作で請求処理を完結できる。さらに、診療報酬改定やオンライン資格確認などの制度変更にもソフトウェア更新で迅速に対応している。アップデートは定期的に提供され、常に最新のルールに沿った請求が可能である。
Dental Xの主な特徴と機能
Dental X(最新バージョンは「Dental X R」と称される)は、患者情報管理と資料作成に優れた電子カルテシステムである。Mac上で動作し、iPadとも連携しながら診療に関わるあらゆるデータを一元管理する。例えば、患者ごとの治療経過や検査結果、口腔内写真・レントゲン画像などを紐付けて保存でき、必要な情報にすぐアクセスできる。画像管理機能ではパノラマやCT、口腔内写真を取り込み、画面上で表示・拡大して患者と共有することが可能だ。紙のレントゲンフィルムや写真を探す手間が減り、チェアサイドでiPadに画像を表示して説明するといった使い方が現実的になる。
Dental Xには豊富な説明資料テンプレートが用意されている点も特徴的である。虫歯や歯周病の説明イラスト、補綴治療の選択肢や見積書、保健指導用の資料など、患者向けのコンテンツが数百種類以上搭載されている。これらはDX Finderと呼ばれるコンテンツ集に整理されており、必要に応じて呼び出しカスタマイズして使用できる。たとえば補綴治療のプランを患者と相談する際、iPadで該当するイラスト付き資料を見せながら説明し、そのまま治療計画書や同意書を作成できる。診断書や同意書の作成機能もあり、院内で入力したデータをもとにした文書をスピーディに出力可能である。
さらにDental X Rでは、上記のiQalteレセコン機能が標準搭載されている。従来は別途レセコンを併用する必要があったが、Dental X Rではカルテ作成から会計・レセプト請求までをシームレスにつなげている。そのため、紙カルテと独立したレセコンを二重入力する煩雑さがなく、一度の入力で診療記録と請求書類が同時に完成する。この一体型のシステムにより、入力ミスの減少と業務効率向上が期待できる。
動作環境として、Dental X Rのデータは院内設置のMacサーバーに保存される。iPadから操作する場合も、このサーバーにリアルタイムで情報が記録されていく形で、画面上はクラウドのように滑らかに連携する。ネットワークは院内LAN(有線またはWi-Fi)経由で同期され、複数のiPadやMac間でデータが即座に共有される。システム全体として、紙カルテ・フィルム時代には難しかった院内データの一元化とペーパーレス化を実現するスペックを備えている。
互換性や運用方法
プラネット社のシステムはApple製品を中心に構成されている。院内にはMacをサーバー兼用で1台設置し、歯科医師やスタッフはそれぞれiPadを手に持って業務を行うスタイルが基本である。ユニットごとに据え置きの端末を置く必要はなく、必要な数だけiPadを用意すればよい。iPadの台数ライセンス制限はなく、ユニット増設やスタッフ増員にも柔軟に対応できる。増設時はiPadを買い足し、院内LANに接続して既存のDental X/iQalteシステムに参加させるだけで運用開始できる。従来のWindowsレセコンでありがちだった「新しい端末導入のたびに高額な追加ライセンス費用が発生する」といった心配もない。
データ互換性の面では、他社製レセコンや電子カルテからの移行を支援するために、患者基本情報や診療履歴データのコンバートサービスが用意されている。例えば過去のレセプト電算データ2年分をiQalteに取り込むといった作業も可能で(有償対応)、乗り換えによる過去情報の断絶を極力少なくできる。また日常のデータバックアップについては、院内サーバー内のデータを定期的に外付けストレージへ保存したり、オプションでクラウドバックアップサービスを利用することもできる。データ保存が院内完結型である分、ユーザー側でのバックアップ体制構築が重要になるが、その点はプラネット社が適宜アドバイスしている。
外部機器や他ソフトとの連携については、Dental X Rが国産の主要デジタルレントゲン・CTシステムとの連携実績を多数持つ。具体的には、各社の画像ファイルをDental Xの患者画面から呼び出して表示したり、撮影指示を出すことが可能である(対応状況は機種による)。また、口腔内スキャナーや写真データも患者ごとにフォルダ管理でき、デジタルデータが点在せず一元管理される仕組みだ。予約システムとしてのDental Hubは、電話着信時に患者情報をポップアップ表示するCTI(Computer Telephony Integration)にも対応しており、アダプター設置により電話応対の迅速化・サービス向上が図れる。さらに、リマインドメール・SMSを自動送信してリコール率アップに繋げる機能も搭載している。これらは追加オプションではあるが、他社の単機能システムを別途導入しなくても、統合環境内で多彩な機能を実現できる点はDental Xシステムの強みである。
運用面では、訪問診療先でも使える点がiQalteの魅力となっている。iPadさえ持ち出せば、患者宅や施設でその場でカルテ入力ができ、帰院後に情報を再入力する必要がない。オフライン状態でも入力は可能で、院内に戻ってからサーバーと同期する運用にも対応する(リアルタイムでサーバーと通信する必要がある機能は除く)。またオプションサービスの「どこでもiQalte&Dental Hub」を導入すれば、院外からインターネット経由で院内サーバーにアクセスし、在宅先や自宅からでもカルテ・予約情報を参照入力できるようになる。これは専用のVPNのような仕組みであり、在宅診療専門のクリニックや複数分院を運営するケースでもデータを安全に共有できるメリットがある。
日常の院内オペレーションとしては、チェアサイドでの入力と即時共有が大きな変化となる。従来、診療後にユニット備え付けPCやカウンターの受付PCで行っていた入力作業が、iPad片手に診療中・直後に済ませられるため、診療後の事務作業時間が短縮される。入力直後から他のスタッフも内容を閲覧できるので、会計や次回予約も待ち時間なく進められる。紙台帳や口頭連絡に頼っていた情報伝達がリアルタイムデータ共有に変わり、院内のチーム連携が円滑になる効果も期待できる。感染対策の観点でも、キーボードやマウスに触れずタブレット上で操作が完結するため、ユニット間の移動時に機器の消毒を徹底しやすいという副次的利点がある。防水仕様のケースに入れたiPadであればアルコール清拭も容易であり、使い回す紙カルテより衛生的という意見もある。
経営インパクト
医院経営の面からiQalteおよびDental X導入を考えると、コスト構造の変化と業務効率化による収益改善効果がポイントになる。まずコスト面では、プラネット社のシステムは従来型のレセコンと比べ初期投資を抑えやすいサブスクリプションモデルである。公式価格では、iQalteとDental Hubのセット利用料は月額約20,900円(税込)とされている(非会員プランの場合)。なお、2023年末には歯科商社フィード社との提携により、ソフトウェア代0円・月額9,900円(税込)という新たなプラン(iQalte FEED Ver.)も発表された。販売経路によって料金設定が異なるケースがあるため、詳細は問い合わせが必要である。この中にはソフトウェア利用料および保守サポート費用が含まれており、従来のリース料+保守契約料に相当する。初期導入時には別途、必要台数のiPad購入費用やサーバー用Macの購入費用、そして導入支援サービス(セッティング料)の支払いが発生する。しかしソフト自体のライセンス料は不要で、例えば既存のiPad・Macがある場合にはそれらを活用して費用を抑えることもできる。総じてハード機器とネットワーク整備に限れば、数十万円規模の初期投資で始められるケースが多い。これは、専用機器込みで数百万円の初期費用がかかるような旧来型レセコンに比べて、資金繰り負担を軽減できる。
月額費用に見合うリターンについて考えると、いくつかの視点がある。ひとつは人的コストの削減である。iQalte導入により、診療後のレセプト点検やカルテ転記に追われていた時間が短縮されれば、スタッフの残業代削減や事務人員の効率的配置が可能になる。例えば毎日30分の事務作業短縮が実現すれば、月に約10時間の労働時間削減となる。時給換算1,500円のスタッフ業務とすれば、それだけで月15,000円分のコスト圧縮に繋がり、サブスク費用の相当部分を相殺できる。また、院長自身の業務時間短縮効果も見逃せない。終業後にレセコン入力や請求チェックをしていた時間がなくなれば、その時間を患者対応や自己研鑽に充てることができる。あるいは早く帰宅できればワークライフバランス改善となり、結果的に長期的な診療パフォーマンス維持に貢献するだろう。
もう一つの視点は機会損失の削減と収益機会の増加である。リアルタイム入力と情報共有により、受付会計で患者を待たせる時間が減れば、その分だけ診療ユニットの回転率が上がる可能性がある。仮に待ち時間短縮で1日1人多く患者を受け入れられれば、1ヶ月で20〜25人分の診療収入増が見込める。また、リコールや予約の管理徹底によって定期メインテナンスの来院率が上がれば、長期的な来院延数が増え医院全体の売上底上げに繋がる。Dental X/Dental Hubにはリコール管理・自動リマインド機能があるため、これを活用することでキャンセル減少やメインテナンス率向上が期待できる。実際に「SMSリマインドで無断キャンセルが激減した」という報告もあり、これは売上ロスを防ぐ効果としてROI(投資対効果)に寄与する。
さらに、高額な定期リプレイス費用が不要になる点も経営上の安心材料である。プラネットのビジネスモデルでは、月額利用料を払い続ける限り常に最新バージョンへのアップデートが提供され、大規模な買い替えは基本的に発生しない。従来は5年毎に数百万円のレセコン更新投資を計画する必要があったが、iQalteではそれが不要となる。長期的にはハードの劣化でiPadやMacの入れ替え費用(数年〜十数万円程度)はかかるものの、システム全体の陳腐化リスクと一時金支出リスクが低減するメリットは大きい。
患者サイドから見ると、電子カルテ化やiPad活用はサービス品質向上にもつながる。診療中に過去のレントゲンや口腔内写真をその場で見せてもらえたり、治療内容を即座に画像付きで説明される体験は、患者満足度を高めリピートや自由診療成約に好影響を及ぼす可能性がある。実際、デジタル化されたわかりやすい説明により自費治療への移行率が上がったという院長の声も聞かれる。こうした間接的な売上増も含めれば、iQalte/Dental Xの導入は単なる経費増ではなく、戦略的投資と捉えることができる。ROIの観点では、「月額費用以上の価値を生み出せているか」が鍵だが、患者数増加や業務効率化による利益改善効果を総合すると、十分に元が取れるケースが多いと考えられる。
使いこなしのポイント
iQalteおよびDental Xを最大限に活用するには、導入初期の段取りと日常運用上の工夫が重要である。まず導入初期には、現場スタッフ全員で基本操作に習熟することが不可欠だ。幸いiQalteの操作性は直感的であり、紙カルテ経験しかないスタッフでも数日触れば概ね入力に慣れるケースが多い。プラネット社は利用者向けに「さぽせん」というサポート用アプリを提供しており、そこに操作動画やマニュアルが網羅されている。またFacebook上のユーザーコミュニティもあり、実際の利用者同士で質問や情報交換ができる環境も整っている。電話やリモートでのサポート体制も手厚く、操作方法の不明点はすぐに問い合わせ可能である。したがって、「ITが苦手なスタッフが使いこなせるか心配」という医院でも、計画的なトレーニングとサポート活用でスムーズな立ち上げが期待できる。
運用のコツとしては、院内ルールの再設計が挙げられる。例えばカルテ入力のタイミングを「診療後すぐ院長自身が行う」のか「アシスタントが行う」のか、あるいは「チェアサイドで入力してしまう」のか、クリニックの体制によって決めておくとよい。iQalteの場合、歯科医師が診療しながら自身でタブレット入力する運用も多く、治療内容を忘れないうちに即記録できる利点がある。一方、衛生士や助手が入力補助に回る場合でも、従来のように紙メモを渡すのではなく、口頭指示と同時にその場で入力してもらうことでスピードアップが図れる。いずれにせよ、「誰が・いつ・どこで入力するか」をチームで共有し、新システムに合わせたワークフローを構築することがポイントである。
また、定期的なデータチェックとメンテナンスも心がけたい。電子カルテ化すると紙より検索性が上がる反面、入力ミスが発見されにくいという側面もある。iQalteでは入力内容の点検機能やアラートも備わっているが、月次のレセプト請求前にエラーがないか確認する習慣を持つことが望ましい。オンライン請求に移行した場合も、送信ボタンを押す前に内容をざっと見直す基本は変わらない。また、iPadやサーバーMacのOSアップデートは医院のスケジュールを見計らって行い、自動アップデートはオフにしておくことが推奨される。これは、診療中に突然OSやアプリが更新されて使えなくなるリスクを避けるためである。プラネット社からは最新バージョンの案内が適宜あるので、動作検証済みの環境下でアップデートするよう注意したい。
患者説明への活用も見逃せないポイントである。Dental Xの資料機能や画像表示機能は、単にカルテを電子化するだけでなく患者とのコミュニケーションツールとして威力を発揮する。診療チェア横でiPad画面を患者と一緒に見ながら、虫歯の箇所を拡大写真で示したり、次回予定している処置の図解を見せて説明したりすれば、患者の理解度と安心感は格段に高まる。紙のパンフレットを渡すよりもインパクトがあり、その場で質問にも答えやすい。スタッフ間での情報共有時も、患者ごとの資料をDental X上に蓄積しておけば、新任スタッフでも過去の経緯を容易に把握できる。「記録をとるシステム」から「記録を活かすシステム」へと発想を転換し、患者説明用タブレットとしても積極的に活用することで、本システムの価値を最大化できるだろう。
適応と適さないケース
iQalte/Dental Xシステムが特に威力を発揮するのは、中小規模の歯科クリニック全般である。1〜数ユニット規模で保険診療が中心の医院では、受付事務の効率化やコスト削減効果が高く、導入メリットが大きい。訪問診療に力を入れている場合も、持ち運び可能なiPadカルテは必須と言ってよいほど相性がよい。一方、注意すべきケースとして、以下のような状況が考えられる。
まず、既存システムとの兼ね合いがある場合だ。例えば、医科併設の歯科や病院歯科で、院内のITインフラがWindows主体で統一されている場合には、Mac/iPad環境のiQalte導入は慎重な検討が必要である。他部署とのデータ連携(例えば医科の電子カルテや予約システムとの連動)が求められる場合、プラネット社のシステムはスタンドアロン色が強いため、完全統合は難しいことが多い。そのようなケースでは、病院採用の汎用電子カルテに歯科モジュールを追加するか、もしくは歯科のみ別運用にするか判断する必要がある。また、大学病院口腔外科のように非常に多数のドクターが同時利用する環境では、iPadの台数管理や権限管理を綿密に設定する必要が出てくる。基本的にはユーザーアカウントごとの操作ログ機能も備わっているが、運用設計が煩雑になる規模では専門のIT担当者を置くことも考えたい。
次に、技術的リテラシーや院内風土の問題もある。院長やスタッフが日頃からiPhoneやiPadに親しんでいるなら導入ハードルは低いが、そうでない場合、最初の抵抗感は無視できない。特にベテランスタッフほど「長年使い慣れたWindowsから離れたくない」「紙のカルテが安心」という心理も働く。このような場合でも、実機デモに触れてもらうことで「意外と簡単」「これなら使えそう」と評価が変わるケースが多いが、人心管理として丁寧な説明と試用期間を設けることが望ましい。もし院内合意が得られないようであれば、無理に即座の全面移行をせず、一部機能だけ試験導入するアプローチも現実的だ。例えば、まず予約システム(Dental Hub)のみ運用し、紙カルテは当面併用するといった段階的導入である。プラネット社も移行支援に経験豊富であり、このような段階的な活用方法について相談すれば適切なアドバイスが得られるだろう。
なお、極めて専門特化したケースでは別途検討が必要な場合もある。例えば完全自費専門クリニック(審美中心など)で保険請求が一切発生しないのであれば、レセコン機能の多くは不要になる。そうした場合、もっとシンプルな自費カルテソフトや、あるいはExcelベースの自作管理で十分という考え方もある。ただ、自費中心であってもカルテや予約の一元管理ニーズは変わらず存在するため、iQalte/Dental Xの導入が無駄になるわけではない。むしろ説明資料や見積書作成機能は自由診療でこそ活きるため、自費専門の先生にも選択肢として検討されている。一方、手術中心で膨大な画像データや3D解析を行うインプラント専門クリニックでは、画像保管容量や他社のプランニングソフトとの連携が気になるところだ。Dental Xは画像管理に対応するものの、3Dシミュレーションまでは扱えないため、インプラントシミュレーションソフトとは別途併用が必要になる。この点はデメリットと言うより適材適所の使い分けだが、ワークフロー上でデータの二重管理が発生することは留意しておきたい。
まとめると、iQalte/Dental Xが「まったく適さない」ケースは限定的である。強いて言えば、Windows環境に深く依存している歯科医院(院内でWindows用の会計ソフトや他科連携ツールを多用している等)くらいで、それ以外の多くの開業医にとって有用なソリューションになり得る。
導入判断の指針
システム導入の判断は、医院ごとの診療スタイルや経営方針によって変わってくる。ここでは、いくつかのタイプ別にiQalte/Dental Xがマッチするかを考察する。
保険診療が中心で効率最優先の医院
日々多数の患者を回し、保険点数の積み重ねで経営している一般歯科では、業務効率こそが収益を左右する。このタイプの医院にはiQalte+Dental Hubの組み合わせが強くフィットする。理由は、紙カルテ・紙レセプトの煩雑さを一掃し、チェアタイム外の事務作業を極小化できるからである。例えば院長一人で1日30人以上診る忙しいクリニックでは、従来なら診療後に残務処理が山積みだっただろう。iQalte導入後は、その日のカルテ記載と会計入力が診療と同時並行で完了し、終業後の後片付け作業が劇的に減る。受付スタッフの負担も軽くなり、人件費当たりの処理件数が向上するため、人手不足の状況でも診療回転を維持しやすい。保険中心の医院は収益率が低めだが、iQalteは月額費用が比較的安価(場合によっては1日あたり数千円程度)で導入できるため、コストパフォーマンスも良い。高価な機器リース契約に縛られる心配もなく、自由度高く経営できる点は効率重視の院長にとって魅力的である。したがって、「とにかくスピーディーに診療を回し、コストも抑えたい」という保険メインの医院には、iQalteは有力な選択肢となる。
高付加価値の自費治療を提供する医院
インプラントやセラミック治療、矯正など自費率の高い診療を展開する医院では、患者満足度の向上とブランディングが経営の鍵となる。このタイプの医院には、Dental Xを含むフルセット導入が有用だろう。理由は、豊富な説明ツールと美しいUIによって患者体験の質を高められるからである。自費治療の提案では、患者に十分な理解と納得を得てもらうことが重要だ。Dental Xの資料機能を使えば、例えば矯正治療のシミュレーション画像やホワイトニングのビフォーアフター例などをその場で見せることができ、患者のイメージを具体化させやすい。iPadを介したスマートなプレゼンテーションは医院の先進性もアピールし、他院との差別化にもつながる。また、高額治療の見積もり書や治療計画書もDental Xから即時に発行できるため、カウンセリングから契約までの流れがスムーズになる。これらは患者一人ひとりに丁寧に向き合う自費中心医院のニーズにマッチする。さらに、Dental X導入医院では患者データが一元管理されているため、きめ細かなフォローが可能だ。例えば施術後◯ヶ月目に自動リコール連絡をする、誕生日にメールを送る、といったCRM的なサービス展開もシステム上で管理できる。こうした付加価値サービスが評判を呼び、口コミで富裕層患者を紹介してもらえるといった好循環も期待できるだろう。「質の高い医療とおもてなしで患者に選ばれたい」という医院には、Dental X/iQalteの導入が戦略的武器となる。
口腔外科・インプラント中心の医院
難症例の外科処置や多数のインプラント治療を手掛ける医院では、正確な記録と豊富なデータ管理が求められる。こうした医院にも、プラネット社のシステムは大いに貢献しうる。まず術前術後の写真・X線画像を一元的に患者ファイルに紐付けられるため、経過観察やトラブル発生時の振り返りが容易だ。例えばサイナスリフトを伴うインプラント治療でも、術前CT画像・術中写真・装着後の定期X線をすべてDental X上で時系列管理でき、必要なときに即座に参照できる。これは医療記録の信頼性向上につながり、万一の訴訟リスクに備える上でも有益である。また、複数ドクターで手術を分担するクリニックでも、iPadを用いてチーム全員が同じ情報にアクセスできるため、情報伝達ミスが減り安全管理に寄与する。さらに、歯周外科や再生療法などで細かい検査値(ポケット深度や骨レベル等)を扱う場合も、Dental Xならグラフ表示や比較が簡単で、視覚的に分かりやすく経過を追跡できる。インプラントメンテナンスでは年単位の長期フォローが鍵となるが、Dental Hubのタイムラインで患者の来院履歴や処置内容が一覧でき、担当者が変わっても一貫したケアを提供しやすい。以上から、専門性の高い外科系歯科でも、記録と情報管理の面でiQalte/Dental Xは強力なインフラとなる。ただし、先述の通りインプラント埋入シミュレーションそのものは別ソフトに頼る必要があるため、その結果データ(例えばサージカルガイド情報等)をどう保管・共有するかは別途工夫が必要だ。とはいえ、それらを含めた包括的な症例管理を見据えるならば、プラネット社システムの導入価値は大きい。
在宅・訪問診療を主体とする医院
高齢化に伴い在宅歯科医療に注力する医院も増えている。このタイプの医院にとって、iQalteはほぼ必須と言える存在である。理由は明快で、訪問先でカルテ入力と請求処理が完結できるからだ。紙カルテで訪問診療を行う場合、帰局後に事務スタッフへ伝達したりカルテ転記する手間が発生しがちだが、iQalte導入後は往診先から戻る時点で既に会計計算まで終わっていることも可能になる。例えば施設で10名まとめて口腔ケアを行った場合でも、その場で一人ひとりiPadに処置内容を記録し、必要なら領収書もモバイルプリンタで発行できる。これにより訪問診療の生産性が飛躍的に向上する。在宅専門クリニックでは、受付事務員を置かず歯科医師と衛生士だけで訪問に回るケースもあるが、そうした運営形態との親和性も高い。また、訪問診療では複数の患者を並行して管理する必要があり、訪問日程や経過を一覧する機能が欠かせない。Dental Hub上で患者グループ別に予約リストを作成したり、訪問診療専用のリスト表示に切り替えたりできるため、スケジュール管理の効率化にも寄与する。さらに、訪問診療では介護保険の請求も発生するが、iQalteはオプションで介護レセプト請求機能にも対応している。これにより医科歯科と介護の請求業務を一元的に処理でき、ダブル入力の手間が省ける。在宅中心の医院にとって、iQalte/Dental Xの導入はもはや「あると便利」ではなく「無ければ業務が回らない」レベルで有用と言えるだろう。
よくある質問(FAQ)
電子カルテとして法的に認められているか?
iQalteおよびDental Xは、多くの歯科医院で正式な診療記録として利用されており、関連法規(医療法や厚労省の電子保存指針)に準拠したシステムである。電子カルテの要件であるタイムスタンプ付きの記録保存や改竄防止措置、バックアップ体制などについて、プラネット社はガイドラインに沿った設計を行っている。実際にiQalteで作成したカルテやレセプトで診療報酬請求が認められていることがその証左である。ただし、電子カルテ全般に言えることだが、適切な運用(ユーザーIDごとの記録管理や定期的なバックアップ保存など)を行うことが前提となる。
データ紛失のリスクはないだろうか?
データは院内のMacサーバーに蓄積され、RAID構成など耐障害性の考慮されたストレージに保存される。サーバー自体が故障した場合でもバックアップから復元できるよう、外付けドライブやクラウドへの定期バックアップを行っておけば紛失リスクは極めて低い。プラネット社もバックアップの重要性を啓蒙しており、希望すれば設定方法のサポートも受けられる。万一iPad本体を紛失・破損した場合でも、データはサーバー側に残っているため、新しいiPadで再び接続すれば業務を再開できる。重要なのは、サーバー機の定期点検とバックアップ習慣である。それさえ怠らなければ、紙カルテよりも安全と言える。
Windowsパソコンや従来のレセコン端末は本当に不要なのか?
日常業務においては不要である。iQalte導入後は、カルテ記入から会計処理、レセプト作成までiPad上で完結するため、受付にWindowsのレセコン専用機を置いて操作するといった作業は一切発生しない。ただし、オンライン請求の初期登録やマイナンバーカード対応のために、専用のWindows端末を補助的に用いるケースはある。これは、社会保険のオンライン請求システムやオンライン資格確認のソフトウェアが厚労省提供のWindowsプログラムであるためだ。しかしこれらも、一度設定を済ませれば日々の請求処理はiQalte側で自動的にデータ連携・送信できるようになっている。そのため、「請求処理の度にWindowsを操作する」といった手間は不要である。要約すれば、メインのカルテ・レセコン業務はiPadのみで賄え、Windows機は必要に応じ裏方で使う程度という認識でよい。
システム導入後のサポート体制はどうなっているか?
プラネット社は全国にユーザーを持つだけあり、サポート体制は充実している。導入時には遠隔または訪問での初期設定支援が受けられ、スタッフ向けの操作講習も実施されることがある。導入後も、電話サポートはもちろん、インターネットを通じたリモートサポートで画面を共有しながら問題解決を図ることができる。さらに、前述の「さぽせん」アプリやユーザーコミュニティで自主的に情報収集・交換できる環境も提供されている。ソフトウェアのバージョンアップも定期的に案内があり、ユーザーは常に最新機能や最新ルールを取り入れていくことが可能である。加えて、ハード面でトラブルが起きた場合(例・サーバーMacの故障など)も、Apple製品に強いプラネット社スタッフが相談に乗ってくれるため安心である。
導入を検討するにあたり、費用以外に確認すべきポイントは?
いくつか重要な確認事項がある。まず、自院のインフラ面では、ネットワーク環境と端末台数である。院内LANの整備状況(有線・無線の速度や安定性)やインターネット回線の信頼性をチェックし、不安があれば事前に増強しておくとよい。iPadやMacの台数も、現状の運用フローを洗い出して何台必要か見積もっておく。次に、データ移行について、現在使っているレセコンからどの程度のデータを移せるかプラネット社に相談しよう。患者基本情報や直近の診療履歴は移行可能だが、詳細な治療メモなどは移せない場合もあるため、必要に応じて紙出力して保管しておく対策も考えておく。また、スタッフのITリテラシーも事前に把握しておきたい。もし懸念がある場合は、導入前に説明会を開いて不安点をヒアリングし、追加の研修計画を立てておくと円滑である。最後に、ランニングコストと期待効果を自院の数字で試算してみることもおすすめする。月額費用と想定削減工数や増患効果をざっくり計算し、費用対効果に納得感を持ってから契約に臨めば、導入後も腰を据えて活用できるだろう。