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「クラウド型」の歯科レセコン・電子カルテを徹底比較!価格や使い方は?

「クラウド型」の歯科レセコン・電子カルテを徹底比較!価格や使い方は?

最終更新日

夜診療後にスタッフ総出でレセプトチェックをしていて、うんざりした経験はないだろうか。旧式のレセコンでは入力ミスが後から見つかり、返戻対応に追われたことがあるかもしれない。あるいは、長年使ってきたレセコンのサポート終了や高額な更新料の請求に直面し、このまま使い続けて良いのか不安を感じてはいないだろうか。歯科医院の収入を左右するレセコン選びは悩ましい問題である。本記事では、そうした悩みを解決するための臨床的ヒントと経営的戦略を提示し、クラウド型の歯科レセコン・電子カルテの主要製品を徹底比較する。臨床現場での使い勝手から医院経営への効果まで、自院に最適なシステム選びの指針としてぜひ参考にしてほしい。

まず、結論を先取りすると、クラウド型レセコンはいつでもどこでも使える手軽さと最新アップデートの自動提供によって、忙しい歯科医師にとって強力な味方となる。一方で、オンプレミス型(自院サーバー設置型)はネット不要の安定稼働やカスタマイズの柔軟性を備えており、どちらが優れるかは医院の方針次第である。本記事では、その選択ポイントを客観データとともに解説し、主要クラウド対応製品の強み・弱みと活用術を紹介する。臨床の効率化と経営効率の最大化を両立するレセコン選びのヒントが得られるはずである。では早速、各製品の概要と比較結果を見ていこう。

クラウド対応歯科レセコン早見表

製品名(メーカー)初期費用(税込)月額料金(税込)導入形態特徴(簡単なポイント)
POWER5G(デンタルシステムズ)187,000円~25,300円クラウド型Windows/Mac/スマホ対応。紙カルテ感覚の直感的UI。高速レセプト請求や訪問入力を簡略化。
Sunny-NORIS(サンシステム)296,000円~40,000円~クラウド型・オンプレミス型クラウドとオンプレ両対応。電話・FAX・訪問まで手厚いサポート。保険証スキャナーやCTI連携を搭載。
MIC WEB SERVICE(ミック)要問い合わせ。※エントリー版:1,903,000円16,280円~。※エントリー版:6,600円オンプレミス型老舗メーカーの最新システム。必要機能を選んで導入可能。テンプレート入力でカルテ記入時間を短縮。
Dentis(メドレー)500,000円40,000円クラウド型レセコン・電子カルテからWeb予約・オンライン診療まで一括提供。業務効率化と患者リレーション強化を支援。
ジュレア(ピクオス)0円25,300円クラウド型台数無制限で定額利用可能。予約システム標準搭載で入力一元化。介護請求や経営分析まで網羅。
アットレセ(ベントサイド)0円14,410円クラウド型初期費用・改定費ゼロで導入可能。必要帳票類の作成やエラーチェックなど基本機能に特化。
iQalte(プラネット)0円~20,900円~クラウド型紙の1号2号カルテ様式を再現した画面で移行しやすい。部位選択からの手順化で操作も簡単。

※上記金額は2025年8月執筆時点で公表されている税込価格。実際の価格は構成や時期により変動する可能性がある。IT導入補助金の活用により費用負担を軽減できる製品も多い。各製品の詳細スペックや最新の価格・キャンペーンについてはメーカー公式情報も確認されたい。

クラウド型レセコンを選ぶポイント

操作性とユーザーインターフェースの比較

レセコンは診療の合間にも頻繁に操作するシステムであるため、直感的な操作性が重要である。例えばクラウド型のPOWER5Gでは、紙のカルテに近いシンプルな画面構成を採用し、初めてでも迷わず使えると評判である。ボタンを極力排したフラットなUIで文字も見やすく、入力手順も分かりやすい。このような設計は新人スタッフの習熟を早め、トレーニングコストの削減につながる。iQalteも紙の1号・2号様式を再現した画面で、紙カルテから移行した歯科医師でも違和感なく使えるよう工夫されている。文字表示の鮮明さにも配慮されており、細かな数値や所見の見間違いを防止できるだろう。結果として入力ミスによるレセプト返戻のリスク低減やチェアタイムの短縮に直結する。

一方、古くからのMICやWiseStaffシリーズなどは、長年の改良で安定した操作性を備えるものの、レガシーな画面設計が残る部分もある。新規開業医やデジタル世代のスタッフには、直感性に欠けるUIはストレスとなりうる。特に訪問診療の増加する昨今、タブレット端末で素早く入力できる操作性は欠かせない。クラウド型でスマホ・タブレット対応のものなら、往診先で撮影した口腔内写真をその場でカルテに添付する、といった運用もスムーズである。操作性の高いレセコンは、日々の診療ストレスを減らし、残業削減やスタッフ満足度向上といった経営効果ももたらす。画面設計や入力フローは各製品で特色があるため、可能であればデモ機を試用して、自分やスタッフにとって使いやすいと感じるかを確認すると良い。

機能と拡張性の違い

レセコンによって搭載する機能範囲は様々である。基本的な保険請求機能は共通としても、電子カルテや予約システム、さらには経営分析ツールまで含めたオールインワン型も増えている。例えばDentisは、レセコンと電子カルテを中核に、Web予約、オンライン診療、キャッシュレス決済、リコール管理といった機能まで一括提供するクラウドサービスである。紙台帳や別ソフトに分散していた情報を集約できるため、医院全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進したいクリニックに向いている。予約システム連携により患者の来院ステータスが一目で把握でき、リマインド送信でキャンセル率低減やリピート率向上も期待できる。

一方、アットレセのように機能を保険請求の基本に絞ったシンプルな製品もある。低コストで導入しやすい反面、予約管理は6枠×30分単位の簡易的なものに限られるなど、拡張機能は最小限だ。現在の診療スタイルで必要十分な機能に留め、なるべくコストを抑えたい場合はこうした割り切った製品が適している。逆に、将来的に自費診療の拡充や訪問診療の本格展開など医院の戦略変化を見据えるなら、後から機能追加できる拡張性の高いレセコンを選ぶべきである。例えばMIC WEB SERVICEは約90種類もの機能モジュールから必要なものだけを組み合わせられるセミオーダー型で、規模やニーズの変化に応じてカスタマイズが可能だ。各種オプション(画像診断装置連携、デジタル問診、在宅支援ソフト等)の有無も製品によって異なるため、現状の課題と将来の展望をリストアップし、それを満たせる製品を比較検討すると良い。

コストとタイムパフォーマンス

歯科レセコン導入のコストは、初期費用と月額費用のバランスで考える必要がある。クラウド型は一般に初期費用が安く(中には0円のものもある)、月額課金制で始めやすい。例えばジュレアやアットレセは初期費用0円で、それぞれ税込月額25,300円と14,410円という明瞭な定額制である。一方、オンプレミス型は数十万円規模の初期投資が必要だが、ソフトを買い切れば月額費用は保守料程度で済むケースもあり、長期的には総支出が抑えられる場合もある。MICのエントリーモデルは1,903,000円のソフト使用権(6年間)を購入し、月額6,600円で運用する方式だ。このように資金繰りや運用年数に応じて、イニシャルコスト重視かランニングコスト重視かを選択できる。

しかし、単純な費用比較だけでは真の投資対効果(ROI)は測れない。例えばクラウド型レセコンを導入したことで、毎月のレセプト業務時間が大幅に短縮し残業代が減った、あるいは事務スタッフの配置を最適化できたというなら、それは見えにくいながら大きなコストメリットである。また、新しいシステムにより自費診療の成約率が上がったり、患者満足度が向上して増患に繋がったりすれば、収益面でのリターンが初期投資を上回る可能性もある。例えばDentisが搭載するオンライン診療機能やWeb問診機能は、忙しい患者の利便性を高め医院の付加価値となる。これにより口コミ評価が上がり新患増加を呼び込めば、月額40,000円の費用以上のリターンを生むだろう。投資対効果を最大化するには、単に価格の安いシステムではなく、「そのシステムで何が改善できるか」に目を向けることが重要である。

クラウド型 vs オンプレミス型

レセコンの導入形態として、クラウド型とオンプレミス型(院内サーバー型)はそれぞれメリット・デメリットがある。クラウド型はインターネット経由でサービスにアクセスするため、院内だけでなく自宅や訪問先からもカルテ・レセプト情報を扱えるのが大きな魅力だ。実際に筆者の医院でも、クラウドレセコン導入後は往診先でスマホから患者情報を参照し、その場で次回予約まで取れるようになった。これは従来紙台帳を持ち歩いていた頃には得られなかった利便性である。さらにクラウド型ではソフトのバージョンアップや診療報酬改定への対応をメーカー側で一括実施してくれるため、ユーザーは常に最新の状態を享受できる。厚労省のルール改正が頻繁な日本の歯科保険制度下では、この点は見逃せない。2024年に義務化されたオンライン請求への対応も各社クラウド製品はスムーズで、例えばSunny-NORISの新バージョンでは請求業務を自動化する機能まで搭載された。このようにクラウド型は最新技術への追随が早く手間がかからないのが強みである。

一方で、クラウド型はネット回線の依存というリスクがある。仮に通信障害やサーバートラブルが発生すれば、その間カルテも会計も閲覧できなくなってしまう。実際、筆者の知るある歯科医院ではクリティカルな月初のレセプト送信日に回線不調で送信が遅れ、冷や汗をかいたケースがあった。こうした不安要素を払拭したい場合、オンプレミス型(院内サーバー型)が安心感をもたらす。オンプレミス型なら院内LANだけで完結するため、インターネットが無くても業務を継続できる。大手メーカーのモリタ DOC-5シリーズなどは「院内クラウド」という考え方で、一見クラウドのような利便性を持たせつつデータは院内に保管するハイブリッド型を採用している。また、オンプレミスは自院サーバー内にデータを置くため、第三者のクラウド上に患者情報を預けることへの心理的抵抗が少ない点もメリットと言える。もちろん現在のクラウド型も医療用として高いセキュリティ対策が施されており、厚労省のガイドライン(電子保存三原則)に則った運用が提供されている。しかし最終的には、「利便性を取るか、従来からの安心感を取るか」の価値観による部分が大きい。インターネット環境が不安定な地域であればオンプレミス有利だろうし、逆に訪問診療主体でどこからでもアクセスしたい場合はクラウド型が有効だ。複数院を展開している場合もデータを一元化できるクラウド型が適している。自院の状況に照らし、優先すべきポイントに沿って選択するとよい。

サポート体制とアップデート対応

システムは導入して終わりではなく、安定稼働と継続的なサポートがあってこそ真価を発揮する。レセコンは月初のレセプト請求期間など、特にトラブル対応が急を要するタイミングがあるため、メーカーのサポート体制は重要だ。例えばデンタルシステムズ社のPOWER5Gは月曜から土曜の9~18時にサポート対応しており、レセプト提出時期(毎月1日~10日)にもしっかり支援が受けられる。同社はリモートサポートでユーザーと同じ画面を見ながら問題解決してくれるため、トラブルシューティングに慣れないスタッフでも安心感がある。一方、地域密着型で訪問サポートまで行うサンシステムのようなメーカーもある。操作説明に不安がある場合や、機械が苦手なスタッフが多い医院では、電話・オンラインに限らず訪問して直接指導してくれるような手厚いサポートは心強いだろう。実際、筆者の医院でも新システム導入時にはメーカー担当者が現地で操作研修を行ってくれたことで、スタッフの抵抗感が減りスムーズに移行できた。

また、法改正や点数改定へのアップデート対応も見逃せない。日本の診療報酬は2年ごとに改定が行われ、その度にレセコンのプログラム修正が必要となる。クラウド型であれば改定日に即応したアップデートが自動適用されることが多いが、オンプレミス型ではユーザー側でインストール作業が発生する場合もある。メーカーによっては改定キットを送付しユーザー自身が対応することになるため、ITに明るくないと手間取るケースもある。改定作業に不安があるなら、改定のたびに費用0円で自動アップデートしてくれるクラウド型が安心だろう。一方で、オンプレミス型でもメーカーの保守契約を結んでいればリモートで更新プログラムを当ててくれる場合もある。サポート内容(電話・リモートの可否、対応時間、改定料の有無など)は各社様々なので、契約前にサポート範囲と費用を確認しておくことが肝要である。

以上の観点を踏まえ、次章では主要なクラウド対応レセコン・電子カルテ製品について、その特徴と向いている医院像を具体的に見ていこう。

主要クラウド型歯科レセコンのレビュー

POWER5G(パワーファイブジー)――Mac対応の直感的クラウドレセコン

POWER5Gはデンタルシステムズ株式会社が提供するクラウド型レセコンである。WindowsだけでなくMacやiPadなどマルチOSに対応し、院内の端末環境に縛られず導入できる点で業界でもユニークな存在だ。画面UIは紙カルテを模したシンプル設計で、カルテ入力時は筆記体フォントを使うなど細部にこだわりがある。実際に触れてみると、従来紙で記載していた世代の歯科医師でも馴染みやすく、電子カルテ移行の心理的ハードルを下げていると感じる。操作レスポンスも軽快で、算定もれ防止のためのリアルタイムチェック機能や、処置パターンの自動学習機能など時短に繋がる工夫が多い。特に訪問診療の入力は3ステップで完了するよう最適化されており、煩雑な在宅診療のレセプト作成が驚くほどスムーズだ。

経営面では料金プランの柔軟さも光る。初期費用を抑えて月額25,300円(税込)で利用できるサブスクリプション方式と、IT補助金の活用を見据えた買取ライセンス方式の両方を用意している。自院の資金計画に合わせて選択できるのはありがたい。さらに土曜日含めた充実の電話サポート体制は、開業医にとって心強いポイントだ。実際、レセプト請求直前の週末に疑問が生じた際もすぐ電話で確認でき、安心して月初を迎えられた。こんな医院におすすめ

パソコンが苦手なスタッフがいる、あるいはMac環境を好む院長先生。在宅診療に力を入れており、移動先からも操作したい場合や、シンプルで直感的なUIを求める先生にはPOWER5Gが刺さるだろう。月額制で始めやすいため、新規開業時にも導入しやすい。

一方、デメリットとしては機能の自由度が高すぎない点が挙げられる。画面レイアウトなどは固定でカスタマイズ性は限定的であり、自院独自の運用に細かく合わせ込むことは苦手だ。また、老舗の他社製品に比べ導入シェアがまだ伸び始めた段階のため、利用者コミュニティから情報収集する機会は少なめかもしれない。しかしメーカーサポートが手厚いので、大きな問題にはならないだろう。総じてPOWER5Gは「わかりやすさ」と「機動力」で診療を支える次世代型レセコンである。電子カルテ一体型でペーパーレス化を図りつつ、院内外での情報アクセスを重視するクリニックにとって有力な選択肢となる。

Sunny-NORIS(サニーノリス)――クラウド/オンプレ自由選択のハイブリッド型

Sunny-NORISはサンシステム株式会社が提供する歯科用レセコンで、クラウド版とオンプレミス版の両方を選択できる珍しい製品である。基本は院内サーバーを設置するオンプレミス型だが、希望に応じてクラウドサービス「Sunny-NORIS Cloud」を利用できる柔軟さを持つ。このため、例えば「平時は院内サーバーで運用しつつ、往診時だけクラウド経由でアクセス」といったハイブリッドな使い方も可能だ。機能面では、誰にでも使いやすい設計と充実した入力支援を謳っている。患者登録の際にはレセプト必須項目が赤字表示され入力漏れを防止する仕掛けや、処置ごとの定型カルテ文を豊富に用意してワンクリックで詳細な記載ができる工夫など、不慣れなスタッフでも迷わず入力できる配慮が光る。これによりカルテ記載漏れや点数算定忘れを減らし、提出後の返戻削減に役立つだろう。

独自色の強い機能としては、オプションで保険証スキャナー連動や電話着信ポップアップなどを備えている点が挙げられる。保険証スキャンは受付時の入力時間短縮とミス防止に直結する有用機能だ。またCTI連携により、電話が鳴ると同時にその患者情報を画面表示してくれるため、受付がスムーズになる。これは忙しい診療時間帯に重宝する機能であり、患者からの信頼感向上にも繋がる。価格は初期費用296,000円~、月額40,000円~(税込)とハイエンド寄りだが、IT導入補助金の対象にもなっており活用次第では負担を抑えられる。

こんな医院におすすめ

サポートの手厚さを最重視する先生。Sunny-NORISは電話・メールはもちろんFAXや直接訪問まで対応する万全のサポート網を敷いており、機械操作に不安がある場合でも導入後に丁寧にフォローしてくれる。また「クラウドに興味はあるがネット依存は心配」という慎重派の先生にとって、自院サーバーで運用しつつ必要に応じてクラウドも利用できる柔軟性は大きな安心材料だ。デメリットとしては、対応地域によっては訪問サポートに時間を要するケースや、月額費用が高めな点である。しかしその分、困ったとき駆け付けてくれる安心感は経営上のリスクヘッジにもなる。Sunny-NORISはまさに「徹底サポートで安心を買いたい」医院にマッチしたレセコンと言える。

MIC WEB SERVICE(ミック)――老舗メーカーが提案するカスタマイズ型システム

MIC WEB SERVICEは、歯科レセコンの草分け的存在である株式会社ミックが展開する最新の歯科用カルテ・レセコンシステムである。1976年創業の老舗が手掛けるだけあって、現在全国の歯科医院で高い導入実績を誇る(2019年調査ではミック製品全体でシェア2位)。その強みは何と言っても豊富な機能オプションとカスタマイズ性にある。レセコン、電子カルテ、予約、文書作成、訪問診療など約90種類の機能から必要なものだけを組み合わせて導入できるため、クリニックの規模や方針に合わせた“セミオーダーメイド”運用が可能だ。例えば保険請求中心の小規模医院であれば基本機能だけを契約し、逆に自費メインで経営分析を重視する医院は分析ツールを追加、といった具合に無駄のない構成にできる。「導入した機能分だけ料金が追加されるのでコストパフォーマンスが高い」というのがメーカーの謳い文句である。

MICのカルテ画面は昔からのユーザーにはお馴染みのデザインだが、最新バージョンではテンプレート文字列を選ぶだけでカルテ記入が完了する支援機能が追加されている。診療中はなかなか詳細な電子カルテ入力まで手が回らないものだが、この機能により後追いでのカルテ記載時間が紙カルテ時代より大幅に短縮できる。また紙レセプトからの移行を円滑にする工夫として、電子レセプト内容を紙帳票イメージで表示できる「Ecoレセプトビューワ」も搭載されている。ベテランスタッフでも紙に付箋を貼ってチェックしていた作業感覚を、そのままデジタル上で再現できるユニークな機能だ。これらは長年現場を知る老舗メーカーならではの気配りと言えるだろう。

料金プランは少々複雑だが、代表的なものとして、Entry Suite(基本機能パッケージ)とMIC WEB SERVICE(必要機能選択型サブスク)の2本柱がある。前者は前述の通りソフト6年使用権付きで1,903,000円を支払い、月額6,600円とする買い切りモデル。後者は初期費用を抑えつつ月額16,280円~でフル機能版を使うサブスクリプションモデルだ。初期投資を抑えてまず始めたいクリニックから、旧ミック製品(Palette等)からのリプレースで乗り換えるケースまで、顧客の事情に合わせた提案ができるよう工夫されている印象だ。こんな医院におすすめ

現在使っているレセコンに部分的な不満があり「もう少し〇〇ができれば」と思っている先生。また、細かい経営分析や独自の運用フローがあり、市販のパッケージソフトでは物足りないと感じる場合に、MICの柔軟性は大きな魅力となる。カスタマイズには担当者との詰めが必要だが、そのプロセス自体が医院の業務を見直す良い機会になるだろう。

注意点としては、MIC WEB SERVICEは導入形態こそ「WEBサービス」と銘打っているが実態は院内設置型(オンプレミス)である点だ。データは基本的に院内PC上に置かれるため、外出先から直接アクセスする用途には向かない(リモートデスクトップ等でアクセスする手はある)。クラウド全盛の現在では珍しいが、その分ネット依存しない堅牢さとスピードを両立しているとも言える。総じてMIC WEB SERVICEは、「痒い所に手が届く」職人的レセコンであり、自院のニーズが明確な院長ほど使いこなせるポテンシャルを持った製品である。

Dentis(デンティス)――多機能なクラウド歯科システムで院内DXを推進

Dentisは株式会社メドレーが提供するクラウド型の歯科業務支援システムだ。特徴は何と言っても歯科医院に必要な機能を一式パッケージしたオールインワン性にある。電子カルテ・レセコンはもちろん、Web予約、事前のWeb問診、来院リマインド、オンライン診療、電子サブカルテ(患者とのチャットや写真共有)、会計の現金/カード/物販管理など、診療から経営・マーケティングまでをトータルにカバーする。まさに「歯科医院のDXプラットフォーム」といえる存在だ。例えばWeb問診に対応しているので、患者は来院前にスマホから問診票を入力でき、受付での紙記入が不要になる。これにより待ち時間短縮と患者満足度アップに繋がる。またカルテ作成と同時にリアルタイムでレセプトチェックが走り、月末には一括チェックも可能なので、エラー箇所があれば即座にカルテ画面から修正できる。このシームレスなエラーチェック機能により、月初の返戻訂正作業が大幅に効率化する。

UIは洗練されており、特にスケジュール画面の作り込みが秀逸だ。院内スタッフ全員の稼働状況がひと目で把握でき、アポイント配置の最適化に役立つ。忙しい院長でも、スタッフ配置やチェア稼働率をリアルタイムで可視化できるため、人的リソースの有効活用に繋がる。筆者が見学したあるDentis導入医院では、受付が患者属性に応じて色分け表示された予約画面を見ながら「この後インプラントの患者さんが入るから〇〇さんアシスト入って」と即座に指示していた。スタッフ全体が同じ情報を共有できることで、無駄なくチーム医療が回っている印象を受けた。

Dentisの導入ハードルは決して低くない。初期費用500,000円、月額も40,000円(税込)とクラウド製品の中では高額な部類だ。しかしその価値は価格以上に大きいと考える。こんな医院におすすめ

最新技術を積極的に取り入れ、患者サービスや医院経営の質を高めたい先生。たとえば都心部で自費率が高く、患者層にITリテラシーがあるクリニックでは、オンライン予約やキャッシュレス決済はもはや必須だろう。Dentisならそれらを単一プラットフォームで実現でき、患者データも一元管理できる。逆に言えば、提供機能が多岐に渡るため「使いこなせなければ宝の持ち腐れ」になる恐れもある。診療メニューが少なく予約も電話受付のみというような小規模医院では、宝石箱のようなDentisもオーバースペックかもしれない。導入時にはメーカーの手厚い支援(操作トレーニングや設定代行)があるとはいえ、システムに業務をある程度合わせる柔軟性が求められる。しかし、それを補って余りある先進機能群は、志向の合う医院にとって圧倒的な武器となるだろう。特に自費診療や予防歯科で「選ばれる医院」作りを目指すケースでは、Dentisが掲げる「患者とのつながり強化」は経営理念とも合致するはずだ。

ジュレア――予約連携に優れた定額制クラウドシステム

ジュレアはピクオス株式会社の提供するクラウド型レセコン・電子カルテで、シンプルな料金体系と予約機能連携の充実が特徴の製品だ。初期費用0円、月額は一律25,300円(税込)で、利用端末の台数に制限がない。院内のPCはもちろん、タブレットやノートなど好きなだけ接続できるので、例えば受付・診療室・院長室それぞれに端末を置いて運用しても追加費用が発生しない。専用端末の購入も不要で手持ちの一般的なPCで動作し、法改正時のバージョンアップ費用も一切かからない。月額以外の隠れコストを徹底的に排除したわかりやすさが、開業医には嬉しいポイントである。

ジュレア最大の強みは、予約システム「デンタマッププラス」を標準搭載している点だ。受付の予約簿とレセコンが完全連携しており、患者情報の重複登録や転記ミスが起こらない仕組みになっている。新患のWeb予約にも対応しており、予約と同時に患者基本情報がシステムに取り込まれるため、初回来院時の事務手続きがスムーズだ。さらに、居宅療養管理指導書やケアマネ向け提供文書など訪問診療で必要な帳票テンプレートも揃えており、訪問系業務が多いクリニックにも配慮されている。カルテ入力は処置セットを選ぶだけでSOAP形式の記録が作成できるようになっており、詳細な文章を書く時間がない場合でも要点を漏らさず記録できる。経営分析機能も内蔵し、自費と保険の比率や月次推移などをグラフ化して表示できるため、院長が診療後にサッと経営状況をチェックするといった使い方も可能だ。

こんな医院におすすめ

予約管理を含めてシステム一本化したい先生。特に新患獲得やリコール促進に力を入れたい場合、ジュレアの予約・リマインド機能は強い味方となるだろう。例えばリコール対象患者に一括でメール・SMS配信する機能もあり、定期メンテナンスの来院率アップが期待できる。価格が定額で台数無制限なので、スタッフが多く複数PCで同時入力したい中規模医院にも向いている。デメリットとしては、提供開始から年数が浅いため実績データが少ない点や、症例写真の細かな管理など一部高度な要求には専門システムとの連携が必要になる点か。だが、今後のアップデートで機能拡張が予告されており、何よりシンプルで使いやすいUIと料金設定は導入後のイメージを描きやすい。クラウドで迷ったらまず候補に入れたいバランス型の製品である。

アットレセ――初期費用ゼロで始められる低コストクラウド

アットレセは株式会社ベントサイドが提供するクラウド型歯科レセコンで、その名の通り「レセプトをお任せ」できる手軽さと低価格が売りだ。初期費用・サポート費用が完全無料、月額14,410円(税込)のみで利用可能という業界屈指のコストパフォーマンスを実現している。さらに3ヶ月間の無料お試し期間も用意されており、まずは実際に使ってみて納得してから本契約できる点は開業医にとって安心材料だ。低価格ゆえ機能は絞られているが、それでも保険請求に必要な帳票類の作成(レセプト電算処理、統括請求書、明細付き領収書、処方箋、歯科疾患管理書など)には一通り対応しており、日常業務で不足を感じることは少ない。入力時のリアルタイムエラーチェック機能も備え、記入漏れや誤請求を即座に警告してくれる。

アットレセのもう一つの魅力は、クラウドならではの身軽さだ。自宅や訪問先からのアクセスにも対応しており、往診先でカルテを入力したり、夜間に自宅でレセプトチェックを行ったりといった使い方もできる。サポートデスクも充実しており、スタッフがユーザーと同じ画面を見ながら操作説明をしてくれるため安心感がある。操作画面は必要最低限でシンプルなため習得も容易で、専門用語に不慣れなスタッフでも戸惑いにくい。

こんな医院におすすめ

新規開業や分院展開などで初期投資を極力抑えたいケース。月額1万円台前半というランニングコストの安さは、保険診療が中心で利益率が限られる診療所にとって大きな魅力だ。あまり高機能は望まないので「とにかくレセプト作成と基本帳票が問題なくできれば良い」という割り切ったニーズにもフィットする。また、現在手書きレセプトで頑張っているような小規模医院が、初めて電子レセコンを導入する際の入門編としても適している。実際に「まずはアットレセで電子請求に移行し、その後軌道に乗ったら上位機種に乗り換えた」という医院もある。ただしデメリットとして、自費診療の細かな管理や、複雑な訪問診療算定など高度な機能は苦手である。将来的に医院規模の拡大や自費メニュー増加を計画している場合は、いずれ物足りなくなる可能性も念頭に置きたい。しかし、そのシンプルさゆえにトラブルが少なく安定動作するとの評価もあり、必要十分な機能でローコスト運用したい医院にはうってつけのソリューションだ。

iQalte(アイカルテ)――紙カルテ感覚で使えるスマートUI

iQalte(アイカルテ)は株式会社プラネットが提供するクラウド対応の歯科用電子カルテ・レセコンシステムである。最大の特徴は、紙のカルテ様式を踏襲したユーザーインターフェースにより、デジタル化への抵抗感を極限まで下げている点だ。具体的には、手書きの1号カルテ・2号カルテのレイアウトをそのまま画面上に再現し、余計なボタン類を排除している。ディスプレイにははっきりとしたフォントで文字が表示され、視認性にも優れるため、年配のドクターでも紙に書いていた頃の感覚で内容を読み取ることができる。カルテ入力のプロセスも紙の流れに沿って設計されており、まず部位や傷病名を選択し、次に処置内容を入力する順序だ。初めて触れるスタッフでも手順が分かりやすいため、習熟に時間を要さないだろう。

iQalteは見た目の親しみやすさだけでなく、機能面でも必要十分なものを備えている。予約管理、画像管理、歯周検査データの入力、会計処理など、日常の歯科診療に欠かせない機能は一通り網羅されている。価格も初期費用0円、月額20,900円(税込、非会員の場合)とクラウド型では平均的な水準である。特徴的なのは、販売形態としてプラネット社の会員向けプランが用意されている点だ。詳細は要問い合わせとなっているが、何らかの団体や流通チャネルを通じたユーザーには優待価格が適用される可能性がある。導入を検討する際は、自院が該当するかメーカーに確認すると良いだろう。

こんな医院におすすめ

長年紙カルテで診療してきて、電子化に不安を感じている先生。iQalteのUIは紙からの移行組に寄り添った作りで、「電子カルテは難しそう」という先入観を和らげてくれる。また歯周病検査値や口腔内写真の管理など、保存領域を要するデータもクラウドでバックアップされるため安心だ。複数のチェアで同時に検査・入力するような歯周病専門のクリニックでも、リアルタイムにデータ共有でき効率的である。ただ、尖った追加機能や派手な最新技術は搭載していないため、デジタルでどんどん新しいことをしたいタイプの医院には物足りなく映るかもしれない。むしろ「シンプルでいい、紙と同じように確実に記録できれば十分」というスタンスの先生にマッチする製品と言えるだろう。iQalteは電子カルテ移行の心理的ハードルを下げつつ基本機能に忠実な、いぶし銀のクラウドレセコンである。

資料請求やデモの依頼

メーカー各社のウェブサイトからカタログ請求やオンラインデモの申し込みが可能だ。実際の画面操作感や機能の詳細を確認しよう。百聞は一見に如かずである。

同業の評判を聞く

地域の歯科医師会やスタディグループで、使っている先生の生の声を尋ねてみるのも有益だ。「○○はサポートの対応が早い」「△△はアップデートで不具合があったがすぐ解決した」など、現場目線の情報は貴重である。

補助金の活用を検討

IT導入補助金など、公的支援策が利用できる場合がある。予算の都合で導入を諦めていた機能も、補助を得れば手が届くかもしれない。補助対象になっているか、メーカーや事務局に問い合わせてみよう。

現行システムのデータ整理

乗り換えをスムーズに行うために、今使っているレセコンや紙カルテのデータを整理・バックアップしておく。移行時に患者マスタや継続治療の情報をきちんと引き継げれば、新システム導入後すぐに本来の診療に集中できる。

以上のステップを踏めば、最適なレセコンの導入がぐっと現実味を帯びてくるだろう。新しいシステムは費用も労力もかかる投資だが、適切に選んで使いこなせば計り知れないリターンを医院にもたらす。ぜひ本記事の情報をヒントに、先生方の医院にとって「これだ!」と思える一台を見極めてほしい。

よくある質問(FAQ)

Q. インターネットが不安定な地域だが、クラウド型レセコンを導入して大丈夫だろうか?

A. 回線が不安定な環境では、クラウド型の利用に注意が必要である。クラウド型はネット接続が前提のため、通信障害時にはレセコンが使用できなくなるリスクがある。もしインターネット回線の信頼性に不安がある場合は、院内サーバー型(オンプレミス型)も検討するとよい。例えばモリタのDOC-5のように院内クラウド方式でネット不要でも動作する製品も存在する。どうしてもクラウド型を使いたい場合は、予備回線を用意したり定期的にデータバックアップを取るなど、万一に備える対策を講じると安心である。

Q. クラウド型に患者データを預けることに不安がある。情報漏えいの心配はないか?

A. 医療情報のクラウド保管に不安を感じるのはもっともだが、信頼できるメーカーの製品であればセキュリティ面の対策は万全に講じられている。具体的には、通信の暗号化、データセンターでの厳重なアクセス管理、バックアップの多重化などが行われている。厚生労働省の「診療録等の電子保存ガイドライン」に沿った運用がなされており、法的にも適切に設計されている。もちろん「絶対安全」と断言はできないが、それは院内サーバーでも同様だ。むしろクラウド事業者の専門チームによる24時間監視や定期的な脆弱性チェックが入る分、個々の医院で管理するより高い安全性を確保している場合も多い。心配な場合は各社のセキュリティ対策内容を問い合わせ、納得した上で導入するとよいだろう。

Q. 使い慣れた今のレセコンから乗り換えるメリットは?データ移行はできるのか?

A. 旧来のレセコンから最新のクラウド型に乗り換えることで得られるメリットは大きい。例えば操作性の向上による入力ミスの減少や、訪問先・自宅からのアクセスが可能になる業務効率の向上などがある。また、オンライン資格確認や電子処方箋など今後義務化・普及が進むデジタル施策への対応もスムーズだ。データ移行については、多くのメーカーが患者マスタや診療履歴の移行サービスを提供している。移行元システムのデータをCSV等でエクスポートし、新システムにインポートする形で主要な情報を引き継げるケースが多い。ただし完全にすべての履歴を移せるとは限らないため、必要に応じて旧システムも参照できるよう一定期間はバックアップを保管しておくと安心である。メーカーによっては移行作業をサポートしてくれるので、契約前に相談してみよう。

Q. 電子カルテ未導入だが、レセコンと一体化したクラウド製品にすべき?紙カルテのままレセコンだけでもいい?

A. 電子カルテを導入するかは医院の運用スタイル次第だ。紙カルテ運用に不便を感じていない小規模医院であれば、レセコンだけ電子化してカルテは紙のままでも運用は可能である。ただし、紙カルテと電子レセコンの二重入力(カルテ記入とレセコン入力)になるため、どうしても事務負担は増える。近年のクラウド型レセコンの多くは電子カルテ機能を標準またはオプションで備えており、一体化することで入力の効率化やペーパーレス化によるメリットが大きい。例えばMICやDentisではカルテ入力内容がそのままレセプトデータになるため、二度手間がない。将来的な働き方改革や在宅診療拡大を見据えても、電子カルテ導入は避けて通れない流れだ。現在の紙カルテに強い愛着がある場合は、iQalteのように紙感覚で使えるシステムも選択肢になるだろう。まずはレセコン導入を機に、電子カルテ化も含めて検討してみることをおすすめする。

Q. レセコンを選ぶ際に失敗しないための一番のポイントは何?

A.「自院の課題を明確にし、それを解決できるかで選ぶ」ことが何より重要だ。価格や知名度に惑わされず、現場で困っていることを洗い出して、それを解消できる機能・サービスを持つ製品を選ぶのが失敗しない近道である。例えば予約のダブルブッキングが課題なら予約連携が優秀なものを、返戻が多いならチェック機能が強力なものを、といった具合だ。また、導入後のサポート体制も含めて判断すること。操作に不安がある場合は研修が充実しているか、スタッフが使いこなせるか心配なら直感的なUIか、といった観点で各社を比較してみよう。本記事の比較ポイントを参考に、「何が自院にとってベストか」を軸に選定すれば、大きく道を踏み外すことはないはずだ。