
価格が安い歯科レセコンを徹底比較!メーカーごとの評判や使い方を解説
月末のレセプト処理に追われて深夜まで残業した経験はないだろうか。あるいは長年使ってきたレセコンのサポート終了に伴い、更新費用の見積もりを見て頭を抱えた先生もいるだろう。歯科医院の収入に直結するレセプト業務だが、システムの導入や維持には少なくないコストがかかる。新規開業を控えた先生なら初期費用を抑えたいという切実な思いがあるはずである。本記事では、そうした悩みを解決するためにリーズナブルな歯科レセコンに焦点を当て、臨床現場での使い勝手と医院経営への貢献度の両面から比較検討する。 本記事ではコストパフォーマンスに優れたレセコンを中心に比較しつつ、それぞれの評判や実際の使い勝手を解説する。臨床の効率化だけでなく経営への影響も考慮しているため、先生方の投資対効果(ROI)最大化に役立つヒントが得られるだろう。ぜひ最後まで読み進め、自院に最適な一台を見極める判断材料としてほしい。
歯科レセコン主要製品の価格比較早見表
まず、主要な歯科レセコン製品について、価格帯や導入形態、特徴を比較できる早見表を示す。特に「価格が安い」と評判のクラウド型を中心に、オンプレミス型の代表例も含めている。それぞれの初期費用・月額費用(概算)と特徴的なポイントを一覧で把握してほしい。
製品名(メーカー) | タイプ | 初期費用の目安 | 月額料金の目安 | 特徴(評判・使い勝手) |
---|---|---|---|---|
At-Rece(アットレセ)。(ベントサイド) | クラウド型 | 0円 | 14,410円〜 | 初期費用ゼロで導入可能。PC台数無制限で追加費用なし。必要最低限の機能に絞り操作が簡単だが、高度な連携機能は少なめ。コスト重視の医院から高い関心。 |
Dentis Cloud(デンティス)。(メドレー) | クラウド型 | 0円〜 | 約30,000〜40,000円 | Web予約・オンライン診療など周辺機能が充実した次世代レセコン。統合型電子カルテとしてCRM機能も搭載。月額費用はやや高めだが、機能充実による収益向上効果に定評。 |
WiseStaff-9 Plus。(ノーザ) | ハイブリッド型 | 要問い合わせ | 約30,000〜35,000円 | 老舗No.1シェアを誇る定番レセコン。安定した動作と多彩な他社システム連携が強み。長年の実績による信頼感があり、サポート体制も充実(365日24時間対応)。 |
MIC iDent / MIC WEB。(ミック) | オンプレミス型 / サブスク型 | 約1,900,000円。(6年ライセンス) | 6,600円(保守)。または16,280円〜 | 歯科ソフト開発の老舗メーカー。エントリープランでは基本機能を安価に提供し、追加機能はサブスクで柔軟に選択可能。テンプレート入力によるカルテ記入の効率化で評判。 |
α Dental Cloud。(PHC) | クラウド型 | 要問い合わせ | 30,000円〜 | 医科システムで実績のあるPHC社のクラウド型。保険点数改定の自動アップデートが特徴で、手動更新の手間を削減。大手メーカーらしくセキュリティやサポート面の安心感がある。 |
DOC 5(プロキオン)。(モリタ) | オンプレミス型 | 数百万円規模 | 保守契約制。(年数十万円) | モリタ社製の院内設置型レセコン。レセプトチェック機能の精度が高く返戻を低減すると評判。画像診断装置との連携実績もあり。導入費用は高額だが、機材連携や信頼性重視の医院に支持される。 |
WAVE Profit-QUATTRO。(ヨシダ) | オンプレミス型 | 約2,500,000円 | 保守契約制。(年12万円程度) | ヨシダ社の電子カルテ一体型レセコン。画像システム・予約管理とシームレス連携でき、大容量画像データの運用に強み。大型医院での導入事例多数。初期投資は大きいが、7年目以降は定額サポート制に移行し長期利用をサポート。 |
※1 Dentisは基本プランの初期費用が抑えられているが、詳細は要問い合わせ。 ※2 WiseStaffは院内サーバー型を基本としつつ、クラウド連携サービスやタブレットビューアを併用できるハイブリッド構成。 ※3 モリタDOC-5シリーズの価格は構成により異なるが、サーバー・クライアント機器を含め数百万円規模になる。
歯科レセコンを選ぶ際に比較すべきポイント
上の表からも分かるように、レセコンによって価格や機能、提供形態は大きく異なる。ここでは、製品を比較検討する上で欠かせない重要ポイントを掘り下げる。臨床面での使いやすさだけでなく、医院経営に与える影響まで含めて考えることが肝要である。
導入コストとランニングコストの総合評価
レセコン導入でまず直面するのが費用の問題である。初期費用が高額なオンプレミス型製品と、初期費用を抑えて月額課金で利用できるクラウド型製品では、5年間の総支出に大きな差が生じる。例えばクラウド型レセコンは、一般に5年トータルでオンプレミス型より30〜40%安価になるという試算もある。実際、あるシミュレーションでは「初期費0円+月3万円」のクラウド型を導入した場合、5年で約180万円に収まったのに対し、「本体250万円+年保守12万円」のオンプレ型では約310万円かかった。毎月のキャッシュフローを平準化できるクラウド型は、新規開業や小規模医院でも資金負担が少なく導入しやすい。一方、買い切り型のオンプレミス型は長期利用では資産計上できるメリットもあるが、数年ごとの有料アップデート費用やサーバー更新費を見落としてはならない。費用面を評価する際は、「1症例あたりのシステムコスト」や「○年間の総コスト」を見積もり、投資に見合う効果が得られるかを判断しよう。
また、価格が安い製品を選ぶ際には隠れたコストにも注意が必要である。例えば超低価格のレセコンでは、データ移行費や周辺機器(保険証スキャナ等)の別料金が発生するケースもある。さらに各種補助金(IT導入補助金など)が適用できる製品もあるため、問い合わせ時に確認すれば実質負担を減らすことも可能である。単純な価格比較に終始せず、総合的なコストパフォーマンスを見極めることが肝心である。
クラウド型とオンプレミス型の違い(機能・運用面)
歯科レセコンはその提供形態によってクラウド型とオンプレミス(院内サーバー)型に大別される。それぞれメリット・デメリットがあるため、自院の方針に合った方を選択したい。
クラウド型は、ソフトウェアをインターネット経由で利用する方式である。最大の利点はシステムの保守やアップデートをメーカー側がリモートで行ってくれる点だ。診療報酬の改定があっても、新点数への対応プログラムが自動配信されるため、改定直後から速やかに請求業務を継続できる。一般的に、クラウド型では改定反映までの時間が平均2日以内と短く、オンプレ型の平均約1週間と比べて業務への影響を最小限にできると報告されている。また初期費用が安く、院内に専用サーバーを置く必要がないため、パソコンとネット環境さえあれば導入しやすい。複数の診療所や在宅先からでもデータアクセス可能なため、訪問診療が多い場合にも有用である。
一方、オンプレミス型は院内にサーバーや専用PCを設置して運用する方式である。インターネット接続に依存しないため、院内ネットワーク内であれば通信障害に左右されず使える安心感がある。また、画像データやレントゲンのDICOMファイルなど大容量データを高速に扱える利点も大きい。例えばヨシダ社の「WAVE」シリーズは10TB超の画像を院内NASに保存するよう最適化されており、CT・セファロなど画像診断を多用する大型歯科医院にはオンプレ型が選択される傾向がある。ただしオンプレ型はソフトのアップデート時に手動作業やVPN接続が必要になりがちで、人為ミスによる取りこぼしリスクも報告されている。また、災害や停電時に院内サーバーが停止すると復旧まで請求業務が止まる点も考慮すべきだ。
総じて、小〜中規模の医院やITリソースに乏しい場合はクラウド型が運用負担の点で優れる。一方、画像診断設備が充実した大型医院や既存ネットワーク資産を活かしたい場合はオンプレ型が安心だろう。それぞれの違いを踏まえ、自院の診療内容とインフラ環境に適した方式を選択することが重要である。
機能連携と付加価値
レセコン本来の役割はレセプト(診療報酬請求書)の作成・点検であるが、近年の製品はそれだけに留まらない。各メーカーとも電子カルテ機能や予約管理、経営分析まで含めた統合システムとして進化している。製品ごとの機能差を理解し、自院が求める付加価値を提供してくれるかどうかが選定の鍵となる。
例えば電子カルテ一体型のレセコンであれば、診療記録入力と同時に請求データが生成されるため入力の二度手間が省ける。ミック社のシステムではカルテ・レセプトのプレビュー機能があり、記入漏れをその場でチェックできる。また、電子カルテ一体型なら紙カルテ感覚の画面で違和感なく操作できるよう工夫されている製品もある。一方で、従来の紙カルテ運用を続けつつ請求業務だけ電子化したいケースでは、レセコン単体機能に特化した製品も根強い人気がある。例えばノーザ社のWiseStaffシリーズは、必要に応じてレセコン機能とカルテ入力用PCを分離して使える柔軟性があり、段階的なデジタル化を図りたい医院にも対応している。
さらに予約システムや顧客管理(CRM)との連携も注目すべきポイントだ。DentisやMICの最新モデルでは、Web予約・リコール通知・キャンセル対策までシステム内で完結できる。例えばMICのiDentシステムはSMSリマインダーを組み込み、リコール率を15ポイント向上させた事例も報告されている。またDentis Cloudはオンライン診療や問い合わせメッセージ配信機能まで搭載し、患者との接点強化による増患効果が期待できる。単なる保険請求マシンではなく、医院経営をトータルで支援するプラットフォームとして機能する点は大きな付加価値である。
ただし、多機能ゆえの注意点もある。それは「宝の持ち腐れ」にならないよう、自院スタッフで機能を使いこなせるかという視点だ。高度な分析機能や外部連携があっても、現場に浸透せず使われなければ意味がない。導入前に、必要な機能と不要な機能を見極め、過不足のない製品選定を心掛けるべきである。
操作性・学習コスト
どれほど価格が安く機能豊富でも、実際の操作が煩雑では現場の負担になる。レセコン選定では、院長や事務スタッフはもちろん、歯科衛生士や助手まで含め誰もが直感的に扱える操作性が重要だ。具体的には、画面UIや入力フローの分かりやすさ、テンプレートや音声入力などの入力支援機能の有無がポイントとなる。
例えば、テンキー中心の操作に慣れた事務スタッフが多い医院では、旧来型の画面レイアウトを踏襲した製品の方が混乱が少ない。ノーザのWiseStaffは紙レセプト様式に近い画面構成とシンプルなナビゲーションで、ベテランスタッフでも移行しやすいと評判である。一方、若手スタッフが多くITリテラシーが高い医院では、DentisやOpt.OneのようにモダンなUIと対話型入力を取り入れたシステムが好まれる傾向がある。Opt.One3(オプテック社)では「デンタルSOAP」形式の対話入力やAIによる治療計画支援など、新しい操作概念を採用している。こうした先進的な機能は慣れれば効率的だが、導入初期に戸惑うスタッフもいるかもしれない。
操作性に関連して見逃せないのがスタッフ教育コストである。新人スタッフでも短期間で習熟できるかどうかは医院の生産性に直結する。低価格帯で人気のAt-Receは、eラーニング教材が整備されており、受付担当が1週間程度で基本業務をマスターできたという報告もある。教育体制が整ったメーカーであれば、導入後の研修サポートも期待できる。反対に、マイナーなメーカーや超廉価品ではマニュアルが貧弱だったり、サポートに問い合わせても即答が得られないケースもある。ヒューマンエラーを減らすインターフェース(例:入力漏れチェック、計算ミス警告など)を備えているかも重要だ。現場で誰もが迷わず使える操作性は、チェアタイム短縮や受付待ち時間減少といった形で患者サービス向上にもつながるのだ。
サポート体制と信頼性
最後に、メーカー各社のサポート体制やシステム信頼性の比較も欠かせない。レセコンが故障したり請求データに不具合が生じれば、医院の収入に直結するため、迅速かつ的確なサポートが得られるかは経営上のリスク管理である。
大手メーカー(ノーザ、ミック、メドレーなど)の多くは土日含めた電話サポートやリモートメンテナンスを提供している。特にWiseStaffやMIC、Dentisは365日・24時間体制のヘルプデスクを用意しており、夜間や休日のトラブル対応も安心との声がある。一方、安価なクラウド型を提供するベンチャー系メーカーでは、サポート時間が平日昼間のみだったり、問い合わせはメール中心で即時対応が難しい場合もある。コストダウンとサポート範囲はトレードオフになりやすい点に注意したい。
信頼性という点では、データのバックアップ体制も確認すべきだ。オンプレ型では院内サーバーのバックアップは自前で行う必要があり、外付けHDD交換を怠ってデータ消失を招いた事例も散見される。一方クラウド型では、自動バックアップやデータ暗号化が標準提供されていることが多い。例えばMICのクラウドサービスは医療情報ガイドライン準拠の堅牢なクラウドストレージと連携し、万一のサーバーダウン時もデータ復旧が速やかに行えるようになっている。
メーカーの評判についても触れておこう。ユーザーコミュニティでの口コミや導入医院の声からは、その製品が「エラーが少なく安定している」とか「アップデートのたびに不具合が出る」など、生の評価が聞こえてくる。老舗メーカー製品は長年の改良で安定感がある半面、新規開発のクラウド製品はリリース初期にバグ修正が頻発するケースもあった。心配であれば導入前にデモ機を試用したり、同業の先生に使用感を尋ねてみるとよいだろう。レセコンは一度導入すると数年単位で使い続ける基幹システムである。価格の安さだけで飛びつかず、サポートと信頼性込みでコストを評価する視点が、結果的に医院経営のリスクを減らすことにつながる。
主な歯科レセコン各社の特徴と評判【製品別レビュー】
以上の比較ポイントを踏まえ、ここからは主要メーカーごとの代表的な歯科レセコン製品について、客観的なデータに基づいたレビューを行う。価格が安いクラウド型を中心に取り上げつつ、シェアの大きい定番製品も含めた。各製品の強み・弱みを解説する。先生ご自身の診療スタイルや経営方針を思い浮かべながら読み進めてほしい。
Dentis(デンティス)はデジタル活用で経営を支える次世代クラウド
Dentisはメドレー社が提供するクラウド型レセコン&電子カルテである。その強みは、単なる保険請求ソフトの枠を超えて歯科医院のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する総合力にある。具体的には、Web予約システムやオンライン資格確認、電子問診票、さらにはオンライン診療機能まで統合されており、患者の来院前からアフターフォローまでデジタルで完結できる仕組みだ。カルテ画面も直感的で、手書きメモをそのまま電子カルテに添付できるなど、現場の発想に寄り添った設計が光る。レセプトチェック時にエラーがあればワンクリックで該当カルテに飛んで修正できるなど、業務効率化を徹底して追求している。
Dentisの弱みとして挙げられるのは、月額費用が比較的高めである点だ。標準的な利用で月3〜4万円程度となり、これはクラウド型の中では上位レンジに入る。ただし初期費用は抑えられており、例えば他社からの乗り換え支援も充実しているため、導入ハードル自体は高くない。また、高機能ゆえに全機能を使いこなすには十分なITリテラシーが必要になる。多忙な院長一人ではなく、スタッフ全員で機能活用に取り組む体制を作らないと、宝の持ち腐れになる恐れがある。しかしそれを差し引いても、Dentisは「攻めの経営」を目指す歯科医院にとって魅力的な選択肢だ。実際、予約リマインドやキャンセル削減機能を活用してリコール率向上や患者数増加に成功した医院もあると言われる。自費診療や予防プログラムの提案など、患者との接点を強化して収益を伸ばしたいと考えるなら、Dentisが強力な武器となるであろう。
WiseStaff(ワイズスタッフ)は定番の安心感と広範な連携性が魅力
WiseStaffはノーザ株式会社が長年提供している歯科レセコンの定番シリーズである。国内シェアNo.1(約18%)との調査結果もある老舗製品で、その安心感と実績は群を抜いている。強みはまず安定した基本機能だ。保険請求ルールの改定にも素早く対応し、チェック機能の精度も信頼できるため、レセプト返戻を極力減らした運用が可能である。また標準機能だけでなく、多彩なオプションや外部連携を備える点も特徴だ。予約システムやデジタルレントゲン、ペリオ検査ソフト「+Perio」など、他社製のシステムとの接続実績が豊富で、既存の院内IT環境に柔軟に組み込める。最近のバージョンWiseStaff-9 PlusではiPad用ビューアや問診票タブレット入力にも対応し、紙業務を一層減らせるよう進化している。
弱みといえる点は、価格とアップデート費用である。WiseStaff自体の価格は公式に「要問い合わせ」で公表されていないが、一般に導入時に数百万円規模の費用がかかり、その後も年間保守料が発生する。またメジャーバージョンアップの際には有償更新となるケースが多く、長期的にはコスト高になりやすい。クラウド型と違って院内サーバーの管理も必要なため、ITに詳しくない医院では管理に苦慮するかもしれない。ただし、その点は手厚いサポートでカバーされている。ノーザ社は土曜日含め専門スタッフがサポート対応し、導入後のフォローアップ研修も実施している。新規開業から何十年も経つベテラン開業医まで幅広く支持される背景には、「困ったときに頼れる」という信頼感がある。
At-Rece(アットレセ)は初期費用ゼロで小規模医院の強い味方
At-Rece(アットレセ)は株式会社ベントサイドが提供するクラウド型歯科レセコンで、その最大の特徴は圧倒的な低コストにある。初期費用は0円、月額料金は14,410円(税込)からという破格のプランで、必要なものは汎用のWindowsパソコンとインターネット環境だけだ。この料金にはサポート費用も含まれており、「レセコン導入には高額なリース料が必要」という常識を覆した存在として注目を集めている。機能面では、レセプト電算処理に必要な基本帳票の作成・請求に特化しており、操作画面も極めてシンプルだ。紙カルテ運用の医院がはじめて電子請求に移行する用途に適しており、「とにかく安く必要最低限のことができるレセコンが欲しい」というニーズに合致する。
At-Receの弱みは、裏を返せば高機能ではない点である。電子カルテ機能や予約システムとの連携といった付加機能は基本的に持たず、レセプト作成と簡易な患者管理が主な役割となる。そのため、将来的に本格的な電子カルテや院内ネットワークを構築したいと考える場合には機能不足を感じるかもしれない。またサポート面でも、24時間対応ではなく平日営業時間内のサポートが中心である。他社に比べてサポート拠点が少ないため、トラブル時の訪問対応などは即日対応が難しいケースもあろう。しかし、実際のユーザーからは「必要な時には電話やリモートで丁寧に対応してもらえた」との声もあり、低価格だからといってサポート品質が著しく劣るわけではないようだ。何より、安価なサブスクで常に最新版が使えるため保険点数改定時にも追加費用なしで済む点は小規模医院にとって計画が立てやすい。
α Dental Cloud(アルファデンタルクラウド)は自動アップデートで保守負担を軽減
α Dental CloudはPHC株式会社(旧PHCホールディングス、医療IT大手)が提供するクラウド型歯科レセコンである。PHCは医科向け電子カルテ「Medicom」シリーズで知られる企業であり、その歯科版にあたるα Dental Cloudも安定性と保守性に定評がある。最大の特徴は、診療報酬改定やプログラム更新への対応がきわめて迅速かつユーザーの手間がかからない点だ。新しい保険点数が発表されると翌日にはシステムに反映される自動アップデート機能を備え、オンプレミス型のように煩雑なパッチ作業が不要である。また、PHCは全国にサービス網を持ち、365日体制のコールセンターも運営しているため、万一のトラブル時にも安心感がある。
機能面では、α Dental Cloud自体はオーソドックスな保険請求・電子カルテ一体型だが、PHCの他システムとの連携で真価を発揮する。例えば薬剤情報提供や地域医療連携の仕組みなど、医科・薬科分野で培われたIT基盤と接続可能なため、全人的な患者情報管理が視野に入る。弱みを敢えて言えば、価格帯が月額3万円前後と平均的な水準で、最安ではないことぐらいだろう。また、新興クラウドサービスほど尖った機能(Web予約やCRM統合など)は持たないため、地味に映るかもしれない。しかし、レセコンとしての堅実な動作と業界動向への確実な追随という点で、特に保守的な運用を望む医院には好適だ。現場の声としても「トラブルがほとんどなく、保険改定も気づけば終わっている」という評価が聞かれる。
MIC(ミック)の歯科用ソフトは柔軟なプラン提供で幅広いニーズに対応
株式会社ミックは1970年代から歯科向けソフトウェアを開発してきた業界老舗であり、多くの歯科医院で「ミックのレセコン」の愛称で親しまれている。その最新ラインナップは大きく二本柱になっており、ひとつはオンプレミス型+ライセンス制の「Entry Suite」、もうひとつはサブスクリプション型の「MIC WEB SERVICE」である。Entry Suiteは6年使用権付きのパッケージで、初期費用約190万円+月額6,600円(保守料)という設定だ。初期投資は大きいが、長期的に使えばコストメリットが出るよう設計されている。一方、MIC WEB SERVICEは初期費用を抑え月額16,280円〜利用できるクラウドプラットフォームだ。このように医院規模や予算に応じてプランを選択できる柔軟性がミックの魅力である。
機能面でも、ミックのシステムはカスタマイズ性の高さが光る。必要な機能のみを組み合わせて契約できるため、無駄なコストをかけずに済む。例えば「基本は保険請求のみ、でも訪問診療にも対応したい」といったニーズには、訪問管理オプションだけ追加することが可能だ。また、カルテ記入ではテンプレート文字列を選ぶだけで入力完了できる機能が評判で、紙カルテと遜色ないスピードで電子入力が行える。さらに予約システム(ApoDent)やリマインドSMSとの一体化により、患者の再来促進やキャンセル減少にも寄与する統合ソリューションを展開している。
弱点としては、オンプレ版の場合は初期費用が大きいため資金負担になること、クラウド版でもフル機能を揃えると月額費用がそれなりの水準になることが挙げられる。また歴史が長いぶんシステムが大規模化しており、古参ユーザーからは「設定項目が多すぎて難しい」との声もある。とはいえ、多様なニーズに応えて磨かれてきた製品であることは間違いなく、自分の医院にピタリとフィットする組み合わせを実現できれば非常に心強いパートナーとなるだろう。
Morita DOC-5(プロキオン)は精度重視の院内完結型レセコン
モリタのDOC-5 Procyon(プロキオン)シリーズは、歯科用ユニットやCT機器で知られるモリタ社が手掛けるオンプレミス型レセコンである。特徴は何と言ってもレセプトチェック機能の精密さにある。モリタは歯科診療報酬の算定に関するノウハウを豊富に蓄積しており、DOC-5には点数算定ミスや入力漏れを極力減らすための強力なチェック機構が組み込まれている。その結果、返戻(レセプト差し戻し)の発生率を下げられたという評価が多く、保険請求の確実性を重視する医院には心強い。また、モリタ製のデジタルレントゲンシステムや口腔内スキャナー等との連携オプションが用意されており、診療画像をカルテと一体管理することも可能だ。電子カルテ画面のUIは、ツリー式の選択パネルで診療内容をスピーディに入力できる工夫がなされており、診療チェアサイドでも短時間で記録を済ませられる。
弱みとしては、やはり導入コストの高さが挙げられる。専用サーバーや複数台のクライアントPC、周辺機器をセットで導入するケースでは初期費用が数百万円規模となり、中小規模の医院にはハードルが高い。またオンプレミスゆえにソフト更新やバックアップが自己責任となり、IT管理に手間がかかる面も無視できない。過去には、ユーザーが保守契約を更新していなかったために点数改定版へのアップデートが遅れ、手作業で請求修正を強いられた例もあるようだ。もっとも、現在ではIT補助金の活用やリース契約によって初期負担を下げる提案も行われており、モリタ自体もクラウド連携サービス(Moricatなど)を開始するなど時代に合わせた展開を見せている。トラブル発生時も全国のモリタメンテナンス網でハード含め対応してもらえるのは、機器メーカー系ならではの強みである。
ヨシダ WAVE Profit-QUATTROは画像&予約連携に優れ大型医院向き
ヨシダのWAVE Profit-QUATTRO(ウェーブ プロフィットクワトロ)は、歯科総合メーカーのヨシダデンタルシステムズが提供する電子カルテ一体型レセコンである。最大の特徴は、同社のデジタル製品群とシームレスに連携する包括的なシステム統合にある。例えば、受付の待ち患者画面からパノラマX線画像を即座に呼び出し表示できたり、予約システム「e-Apo」と連動して患者の来院状況と診療内容をひと目で把握できる。ヨシダならではの強みとして、チェアユニットやCTとのリアルタイム連携、症例写真のカルテ貼付、在庫管理モジュールなど、大型歯科医院のトータルニーズをカバーしている点が挙げられる。また、院内端末はシンクライアント化も可能で、複数フロアに多数のPCを置くようなケースでも安定したレスポンスを確保できる。
WAVEシリーズの弱みは、まず高額な導入費である。先述の通り、本体価格だけで数百万円、さらに画像機器等を統合すればトータルで大きな投資となる。しかしヨシダでは7年目以降に定額制サポート契約に移行し、最新システムへのアップグレードを続けて受けられる仕組みを用意している。これは長期間使って古くなるほどサポート費が増す従来モデルとは逆で、一定期間使ったら新モデルへソフト更新するスタイルである。結果として機能陳腐化しにくく、長期的なROI向上につなげている点は評価できよう。また小規模医院にはオーバースペック気味で、必要な機能だけを安価に提供するミドルクラス製品(WAVE Fineなど)も存在するため、導入検討時には自院の規模に適したモデル選定が必要である。サポート体制については、ヨシダの全国サービスマンがハード・ソフトともに対応してくれるため、機械の知識がなくても安心して任せられる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 一番安い歯科レセコンはどれですか?
A1. 現時点で初期費用・月額費用ともに最も安い部類に入るのはクラウド型の「At-Rece(アットレセ)」である。初期投資ゼロ円で始められ、月額14,410円(税込)という低価格で必要最低限の機能を利用できる。ただし安さだけで選ぶのは危険でもある。例えば、他にも「大樹レセコン」のように2年ライセンス約10万円(実質月4,000円弱)という格安の製品も存在するが、サポート体制や機能面で制約が多いとの情報もある。安価な製品ほど自院で補うべき点が増えるため、その覚悟と対策があるかを踏まえて選ぶとよい。
Q2. クラウド型レセコンを使っていてインターネットが故障したら、請求業務は止まってしまうのでしょうか?
A2. 一時的にインターネット回線がダウンすると、クラウド型ではその間リアルタイムのデータ入力や請求送信ができなくなる。ただ、多くのクラウド製品はオフライン時の対策も用意している。例えば一時的にローカルPCにデータをキャッシュし、回線復旧後に同期する機能や、緊急時に備えた手書きレセプト出力機能がある。またスマートフォンのテザリングなど代替回線で急場をしのぐことも可能だ。長時間ネットが使えない事態は稀だが、万一に備え予備回線を契約したり、オンプレ型をバックアップに残しておく医院もある。重要なのは診療データのバックアップを日頃から確実に取っておくことであり、これはクラウド/オンプレを問わず心掛けたい。
Q3. 歯科レセコンだけ導入すれば電子カルテも不要になりますか?
A3. それは製品による。近年の歯科レセコンの多くは電子カルテ機能と一体化しているため、カルテとレセコンを別々に用意しなくても一台で診療録管理から請求まで完結できる。DentisやMIC、WiseStaff、MoritaのDOC-5などは電子カルテ機能を標準搭載しており、紙カルテを廃して運用可能である。ただし、医院によっては紙のカルテ記載を続けつつ保険請求部分だけ電子化したいという方針もある。その場合、電子カルテを無理に導入する必要はなく、レセコン単体モードで使えるシステム(例えばWiseStaffをレセコン用途に限定して使う等)も選択肢となる。要は、先生の診療スタイルとスタッフの運用体制次第である。将来的に診療データの分析や情報共有を行いたいなら電子カルテ一体型がおすすめだが、まずは無理のない範囲で電子化を進めることが肝要である。
Q4. 他社のレセコンから乗り換える際に、過去の患者データやカルテ情報は引き継げますか?
A4. 多くの場合、主要なデータは移行可能である。メーカー間でデータ形式が異なるため簡単ではないが、各社とも他社システムからのコンバート実績を蓄積している。例えば、ある事例ではDentNet(旧システム)からDentisへの3万件のデータ移行を2日で完了したケースも報告されている。一般的に移行対象となるのは患者基本情報や保険証情報、診療歴、残高などで、画像データは必要に応じて手動で移行することもある。移行には事前打ち合わせとテストが欠かせないので、導入を決めた段階で早めにメーカーと移行計画を策定しよう。古いシステムだとデータの抜き出し自体が難しい場合もあるため、数年間は旧システムを参照用に残しておくと安心である。乗り換え時には休診日や連休を利用し、万全の体制でデータ移行と動作確認を行うことが成功のポイントだ。
Q5. レセコン導入にあたり、何か補助金や支援制度はありますか?
A5. はい、利用できる可能性があります。代表的なのはIT導入補助金で、歯科レセコンや電子カルテも対象ツールに登録されていれば一定の補助率で経費をカバーできます。例えばクラウド型レセコンを導入する際に初期費用や数年分の利用料の一部が補助されるケースがあります。また、地域の医師会や歯科医師会が独自にデジタル化推進補助を行っていることもあるので、所属団体の情報をチェックすると良いでしょう。申請には事前準備と書類作成が必要で、募集時期も限られるため、検討中の製品があれば早めに補助金対応状況を問い合わせ、申請のスケジュールを確認してください。上手に制度を活用すれば、初期コストを大幅に抑えつつ高機能なシステムを導入できる可能性があります。