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歯科の口腔内スキャナー「iTero(アイテロ)」とは?価格・値段や性能、インビザラインについて

歯科の口腔内スキャナー「iTero(アイテロ)」とは?価格・値段や性能、インビザラインについて

最終更新日

インビザラインのカウンセリングで、患者が頷いているのに最終説明で迷いが生じることがある。スキャン像を見せたつもりでも、仕上がりのイメージや治療の流れが患者の頭の中でつながっていない場面である。本稿は、その溝を埋めるコミュニケーション力と院内のデジタル動線を同時に高めたいという悩みに対し、iTeroの現行ラインを臨床と経営の両面から読み解き、導入可否の判断に資する視点を提示するものである。インビザライン連携の前提も含め、公開情報に基づいて整理する。

製品の概要

iTeroはアライン・テクノロジーの口腔内スキャナーであり、日本市場ではiTero LuminaとiTero Element 5Dプラスシリーズ、さらに携行型のiTero Element Flexが製品ポートフォリオを構成する。Luminaは従来機と比べ視野が広く高速化を志向した最新世代である。Element 5Dプラスは近赤外光画像による隣接面う蝕検知の補助機能を備え、カート型とモバイル型の構成がある。Flexは対応ノートPCに接続して用いるワンド中心の構成である。いずれも歯牙および口腔組織の画像記録を目的とする医療機器として位置付けられている。

価格については、メーカー公式の定価や販売価格の公表情報を確認できないため、本稿では断定しない。購入かリースか、またはサービスプランの範囲を含む見積制であると理解すべきである。保守は専用サービスプランが用意され、リモートサポートや交換部品の手配、ソフトウェアアップデート、クラウドバックアップなどが含まれる。

薬事区分や個別の認証番号は、公開カタログや一般向けサイトだけでは特定できなかった。は認証品目リストを公開しているが、販売名や事業者名での個別特定作業を要するため、本稿では区分を断定しない。導入検討時は最新の添付文書と認証情報を必ずベンダーから取得すべきである。

主要スペック

画像方式と視野の要点

LuminaはMulti‑Direct Captureという新方式を採用し、従来のコンフォーカル方式からの刷新をうたう。メーカー資料では、ワーキングディスタンス12ミリの条件でElement 5Dと比べ視野が約三倍に拡大すると説明されており、臼歯遠心や開口量が限られる症例で一度の走査で情報を拾える可能性が高まる。視野拡大は再スキャンや姿勢調整の手数を減らし、チェアタイムの短縮とブレの少ないデータ収集につながる。

Element 5Dプラスはカラー三次元スキャンに加え、近赤外光画像の取得ができる構成である。メーカーはこのNIRI画像を隣接面う蝕の検知を補助する機能として位置づけており、診断を断定するものではないことに留意するべきである。臨床的には、補助的な視覚情報が術者と患者の状況共有を助け、介入の必要性を説明する際の材料になり得る。

応用機能とワークフロー

iTeroのソフトウェア群は、Invisalign Outcome SimulatorやTimeLapseなどの可視化機能を備え、スキャンから説明までを一連で完結させる設計である。Outcome Simulatorは将来の歯列の予測像を提示し、TimeLapseは経時的変化を重ね合わせて強調表示する。これらは患者の意思決定支援に資するツールであり、説明時間の最適化や同意率向上に寄与し得る。

Elementプラス世代では処理待ち時間の短縮やワークフロー2.0による可視化強化が案内されている。インビザライン症例提出に関しては、5Dのカラースキャン画像を口腔内写真の代替として自動取り込みできる機能が紹介されており、提出作業の効率化に資する。

互換性や運用方法

データ形式と外部連携

iTeroはスキャンデータのSTLエクスポートに対応しており、サードパーティのCADやラボワークフローに持ち出す運用が可能である。メーカーのエクスポート手順資料が公開されており、MyAligntech経由でのSTL出力が案内されている。汎用出力の可用性は、インビザライン以外の補綴や装置設計、他アライナーシステムとも連携できるという意味で、機器の柔軟性を高める。実運用ではスキャンモードの選択によってエクスポート可否が異なるため、症例提出用途と外部出力用途を撮影前に切り分けておくことが重要である。

機器構成と設置

カート型は一体で安定した操作感が得られ、モバイルやFlexは設置自由度が高い。Flexは対応ノートPC要件が明示されており、グラフィックカードの互換性注意も示されている。診療室の動線やチェア間の移動頻度に応じて、構成を選ぶとよい。

教育とサポート

メーカーのエデュケーションハブでは操作動画やアプリケーション別の学習素材が提供されている。院内トレーニングを体系的に組む際は、これらの教材とサービスプランのリモートサポートを併用することで、導入初期の立ち上げを短期化できる。

経営インパクト

iTeroの経営的価値は三つに分解できる。第一にチェアタイムの短縮である。メーカー公表の処理時間短縮やLuminaの視野拡大は、再撮影や姿勢調整の頻度を下げる方向に働くため、同一時間内の患者対応数や説明時間の再配分余力を生む。第二に患者コミュニケーションの質的向上である。Outcome Simulatorやスキャンレポートは、説明の繰り返しや再来院の動機付けに寄与し、治療受容のプロセスを前に進めやすくする。第三に外部連携の自由度である。STLの汎用出力は、院外ラボや自院プリンティングなど複数経路を選べるため、コスト構造の最適化余地が広がる。

費用試算は、機器本体またはサブスクリプションの年間総支出に、サービスプラン費と消耗品を加えた総額を分子とし、月間スキャン件数と年間稼働月数を分母に置く一稼働当たりコストが起点になる。チェアタイム短縮による人件費削減は、スタッフの時給相当額と短縮時間の積を症例別に積み上げ、説明時間の再配分で追加成立した自費メニューの粗利を加味して評価するのが実務的である。いずれも院内の実測値と連動させ、一般的な平均値を安易に流用しないことが重要である。公開価格がない以上、見積書の条件とサービスプランの範囲を精査することが投資判断の肝になる。

使いこなしのポイント

スキャンの学習曲線は走査経路の一貫性で短縮できる。上顎は口蓋側から前歯切縁、頬側に抜けて咬合面へ、下顎は舌側から頬側へと、院内で経路を標準化すると良い。エッジ部の欠損や歯間部の孔は、その場で拡大表示し二度なぞりで埋める。術者とアシスタントの役割分担を明確にし、スキャン直後にOutcome Simulatorやスナップショットで説明を開始すると、患者の集中が途切れない。メーカーの学習ビデオとウェビナーはルーティン構築に有用である。

補綴での適合精度を安定させるには、唾液と軟組織のコントロールが要である。吸引とエアの手元制御を徹底し、マージン周囲は乾燥からスキャンまでのタイムラグを極小化する。Luminaの広い視野はマージン周辺を含めた一筆描きの走査に有利であり、撮影回数が減ることで微妙な位置ズレを抑えやすい。

適応と適さないケース

矯正と補綴の双方に適応し、初診カウンセリングの可視化に強みがある。一方で、重度の出血や強い反射がある患者では、撮影前の環境整備と体位工夫を要する。近赤外光画像はあくまで補助的情報であり、単独での診断確定に用いない運用が求められる。外部出力を前提とする場合は、症例開始前にモード設定やデータ保管先を統一しておくと漏れが減る。

導入判断の指針

保険中心で効率を最優先する院には、Flexやモバイル構成でチェア間の回転率を上げ、説明はスナップショットとスキャンレポートに絞る導入が向く。インビザラインを中核とする自費強化型には、Outcome Simulatorや自動アップロードを活かした相談導線の構築が効果的である。補綴中心で適合に妥協したくない院には、視野が広くワンドが小型軽量化した最新世代の優位性がある。いずれの場合も、見積時にはサービスプランの範囲、交換機の手当、クラウド保管容量、ソフト更新の提供形態を確認し、年間稼働件数に対する一稼働コストで比較することが肝要である。

よくある質問

iTeroの価格レンジはどの程度か

メーカーの公開定価を確認できないため、本稿では回答できない。購入かリースか、サービスプランの組み方で総支出は変動する。見積書で保守とソフト更新、代替機対応、クラウド保管の範囲を必ず確認するべきである。

インビザライン以外のワークフローでも使えるか

STLの汎用エクスポートが可能であり、補綴や外部アライナー、サードパーティCADへの連携は運用上可能である。症例提出用の撮影モードを選ぶと外部エクスポートに制約が出る場合があるため、撮影前にモード選択を確認する。

近赤外光画像はう蝕の診断に使えるか

メーカーは隣接面う蝕の検知を補助する機能と説明しており、単独で診断確定に用いるものではない。臨床判断は視診や他の検査所見と総合して行うべきである。

操作習得にどの程度の教育資源があるか

操作動画、ウェビナー、エデュケーションハブが提供されている。導入時はこれらを用いた標準化手順の整備と、サービスプランのリモートサポートを併用すると立ち上がりが円滑である。

最新機種の違いは何か

Luminaは従来機と比べ視野が広く、高速化と小型軽量化を志向する設計が案内されている。補綴や小児の撮影アクセス性でメリットが見込める。一方、5DプラスにはNIRIによる補助機能がある。医院の主たる診療に合わせて選択するのが妥当である。