
口腔内スキャナー「Medit(メディット)」のシリーズごとの価格やスキャン性能をレビュー
患者も術者もストレスの少ない印象採得を求めて
ある臨床現場で、クラウンの印象採得においてマージンに小さな気泡が混入し、再印象を余儀なくされたことがある。患者には再びシリコーン印象材を練和して咬んでもらい、貴重なチェアタイムが失われてしまった。このような従来のアナログ印象のストレスは、歯科医師にとって日常的な悩みである。患者にとっても嘔吐反射や長時間の開口など負担が大きく、診療効率や満足度を下げる一因となっている。
近年、この悩みを解決すべく口腔内スキャナーによるデジタル印象が急速に普及しつつある。その中でも注目を集めるのがMedit(メディット)社の口腔内スキャナーシリーズである。Meditは韓国発のデジタルイメージング企業で、ここ数年で高性能ながら導入コストを抑えた製品を次々と投入している。本記事では、Meditの代表的モデル(i500, i600, i700, i700 ワイヤレス, i900)について、臨床現場での有用性と医院経営への影響の両面から徹底比較する。読者自身の診療スタイルに最適な1台を選び抜き、投資対効果(ROI)を最大化するためのヒントを提供する。
Medit口腔内スキャナーのラインナップと概要
Medit社の口腔内スキャナーは、初代のMedit i500から始まり、順次性能向上とバリエーション拡充が図られてきた。各モデルの正式名称と位置づけを整理すると以下のようになる。
Medit i500
2018年頃に登場したエントリーモデル。十分な精度と速度を備えつつ価格を抑え、初めてデジタル印象に踏み出す医院に向けて発売された。薬事区分は当時一般医療機器(クラスI)に分類されており、比較的リスクの低いデバイスとされていた。
Medit i700
2021年発売の主力モデルで、i500の後継機にあたる。有線接続タイプで、スキャン性能が大幅に向上した。管理医療機器(クラスII)として承認・発売され、日本市場でも急速にシェアを伸ばした。
Medit i700 Wireless
2022年に追加されたi700のワイヤレスタイプ。ケーブルレスの自由度を得たことで操作性が向上している。性能自体は有線モデルと同等だが、バッテリーと無線通信を搭載した分だけ本体重量が増している。
Medit i600
2022年、i700 Wirelessと同時期にサプライズ的に発表された廉価モデル。「スマートで多彩な選択肢」と銘打たれ、i700と同等の基本性能を持ちながら一部機能を省略することで価格を抑えたモデルである。位置づけとしてはi700の弟分で、i500の実質的な後継でもある。薬事区分はi700同様にクラスIIとなっている。
Medit i900
2023年末~2024年に投入された最新のフラッグシップモデル。光学系を刷新し、さらなる高精度・高速化と小型軽量化を実現した。i700シリーズの成功を受けて開発された上位機であり、2025年には操作系を簡略化した派生モデルi900 classicも発表されている。薬事区分はクラスIIで、最先端の性能を提供する代わりにシリーズ中もっとも高価格帯に位置する。
以上がMeditスキャナーの主なラインナップである。いずれも歯科用デジタル印象採得装置として、う蝕治療の補綴物製作からインプラント・矯正まで幅広く活用可能な機器だ。それぞれのモデルごとにスキャン速度やデータ品質、ユーザビリティに特徴があり、価格も大きく異なる。次章では、これら主要スペックの違いが実際の臨床現場で何を意味するのかを詳しく見ていく。
主要スペック比較: スキャン性能とデータ品質の進化
Meditシリーズ各モデルのスペック上の違いは、単なる数字の比較にとどまらず臨床での体験の差となって現れる。本節では、スキャン速度・精度、データの品質、そして本体のサイズ・重量といった観点でi500からi900までの進化を読み解く。
スキャン速度とフレームレートの違い
スキャンに要する時間は、患者の負担軽減やチェアタイム短縮に直結する指標である。メーカー公表値や各種検証によれば、フルマウス(上下顎)をスキャンする時間は概ね以下の通りである。
Medit i500: 約60秒~1分強
Medit i600 / i700(有線): 約50秒前後
Medit i700 Wireless: 約50~55秒前後
Medit i900: 約35~40秒前後
i500とi700では「2倍近い速度向上」と喧伝された経緯があるが、実測ベースではフルアーチで10秒程度の短縮に留まる。ただ、これは同じ熟練者が最適条件で比較した場合の差である点に注意したい。i700ではスキャン中のフレームレート(1秒間に撮影される3Dフレーム数)が最大70FPSと大幅に増強されており、i500の最大約30FPSから飛躍的に向上している。この高速フレーム取得により、術者がスキャナーを動かすスピードに遅れずデータが付いてくるため、スキャンの体感速度は飛躍的に向上している。実際、i500では動きが速すぎるとデータ抜けや位置ロストが起こりやすかったが、i700以降ではスムーズに連続撮影ができるためストレスが少ない。また、新しいモデルほど単位時間あたりに取得できるデータ量が多いため、小刻みに停止して撮影位置を合わせ直す回数も減っている。結果として、特に習熟度が十分でないユーザーや複雑な症例であっても、i700やi900ではスキャン完了までの時間が格段に短縮される傾向がある。
一方、廉価モデルのi600については、基本的にi700と同じ光学系を搭載しながらもフレームレート上限が約35FPSに抑えられている。これは意図的にハードウェア・ソフトウェア上の制限を設けることで上位機種との差別化とコスト削減を図ったためだ。そのため、ハイスペックなPCを用いてもi600のスキャン描画はi700ほど高速にはならない。しかし筆者自身が実際にi600とi700を比較使用した感覚では、通常のクラウンやブリッジ程度の印象では体感上ほとんど差を感じない。よほど高速にスキャナーを振って撮影しない限り、i600でも充分にスムーズであり、35FPSという仕様でも日常臨床では支障ないレベルに達している。ただし「できるだけ速くスキャンしたい」「1日に多数の症例をこなすので1件数秒の差も積み重ねたい」という場合には、フレームレート無制限のi700以上を選ぶ意義があるだろう。
精度・再現性と臨床アウトカム
デジタル印象で最も重要な精度(正確さ・再現性)について、Medit各モデル間で大きな差はない。メーカーは公に精度数値を強調していないものの、社内試験ではi700でフルアーチ約11μmの精度が得られたというデータが示されている。このレベルは従来法のシリコン印象材と石膏模型による場合と同等かそれ以上であり、少なくとも単冠や小~中規模ブリッジの範囲で臨床上問題のない適合精度が担保される。また、i600・i700・i900は基本的に同じカメラ光学系を共有しているため、モデル間で精度の差異はほとんど無視できる。実際、海外ユーザーからも「どのMeditを選んでも精度は同じなので、予算に応じて好きなものを買えばよい」という声があるほどだ。
ただし、データ品質やスキャンのしやすさという観点では、新しいモデルほど改良が加えられている。例えばi700とi900では、スキャン結果のメッシュ密度を高める「HDモード」が搭載されており(i600には非搭載)、細部表現をより精緻にすることが可能だ。またi900ではカメラが10ビットカラーに進化し、約10億色の階調でデータを取得できる。従来機種(8ビットカラー, 約1677万色)に比べて色情報の豊かさが64倍に向上しており、金属修復物や出血部位などでもノイズが少なく鮮明なスキャンが得られる。色調が滑らかに再現されることでシェードテイキング(歯の色調判定)にも有用で、患者への説明用としてもよりリアルな3Dモデルを提示できる。i500やi600でも8ビットカラーで十分実用的なカラー印象は可能だが、i900のデータを比較すると細部の陰影や光沢表現が自然で、特に審美領域の色調確認には心強い。
精度面でもう一点触れておくべきはスキャン深度である。これはカメラがピントを合わせられる範囲の深さで、歯肉縁下にどれだけ届くかに関係する。i500では約12~21mmであったのに対し、i700/i600では約12~23mm、i900では最大30mm程度にまで拡大している。深いマージンやインプラント周囲の歯肉形成まで撮影できる範囲が広がったことになり、肉眼では見えにくい領域のデジタル印象精度向上が期待できる。ただし実際には、歯肉縁下深く出血や唾液がある状況では最新機でも正確なデータ取得は難しい。従って深いマージンの支台歯形成時には、従来通りの歯肉圧排や乾燥、必要に応じた一時的な止血が不可欠である点は変わらない。
本体のサイズ・重量と操作性
各モデルのハンドピース形状と重量の違いも、使用感に大きく影響するポイントだ。Medit i500は全長266mm・重量約280gと、当時としては一般的なサイズだったが、i700で一気に245g・長さ248mmへと軽量・短縮化された。数字上は数10グラムの差だが、長時間スキャンしているとこの軽さ・小ささが手首への負担軽減につながることを実感する。特に女性や手の小さいオペレーターにとって、i700以降の細身で軽いハンドピースは扱いやすい筐体設計である。
i600はi700と寸法・重量が全く同じで、人間工学的デザインも共通している。一方、最新のi900シリーズではさらに設計が洗練され、i900 classicで165gと驚くほどの軽量化が実現している。i700から100g近い減量は画期的で、長時間連続してスキャンするようなケースでも疲労感が大幅に軽減するだろう。またi900では単に軽いだけでなく重心バランスが最適化されている。i500では先端寄りが重く手首へのモーメントがかかったが、i900はグリップ部を薄くするとともに重量配分を手元側に寄せており、ホールドした際の安定感が際立つ。著者も実機を手にした際、ペン型ハンドピースとしての完成度が非常に高いと感じた。
サイズ面では、i700/i600の先端チップ断面はおよそ22×16mm程度で、奥歯遠心や小さな開口量での操作に支障ないレベルだ。ミラー角度もi500の40度から45度へ深くなっており、口腔内奥でも視界を確保しやすい。i900ではさらに先端チップのバリエーションが増え、大・中・小の3種類のチップを用途に応じて使い分けられるようになっている。小児や開口困難な患者には小サイズチップでアプローチし、大きな歯列弓を一気に掃引する際には大サイズチップで視野を拡大する、といった柔軟な対応が可能である。チップはいずれもオートクレーブ滅菌可能で清拭消毒に耐えるが、旧世代(i500)のチップは50回程度の滅菌で劣化・ひび割れが問題となっていた。i700では材質改良で100回まで使用可となり、さらに最近の新型チップでは150回まで耐えるとされる。コスト面でも頻繁にチップ交換せず済む恩恵は大きく、運用上の煩雑さを減らす改良点といえる。
ユニークな機能とソフトウェア面の特徴
ハード仕様以外にも、各モデルで付加された操作上の工夫やソフトウェア機能の違いがある。i700以降のモデルには、本体にリモートコントロールボタン(コントロールホイール)が搭載されている。スキャナーを握ったままこのボタンを操作することで、撮影の開始・停止や画面上のモード切替が可能で、毎回キーボードやマウスに触れる手間を省ける。感染対策の観点からも有用な機能だが、廉価版のi600ではこのボタンが省略されている。筆者自身はスキャン中にこのボタンを頻用することは少ないが、使用者によっては便利と感じるだろう。もし「手元で完結して操作したい」と考えるなら、Medit i700以上のモデルを検討したい。
i900では物理ボタンを廃し、代わりにタッチパッド式のインターフェースが採用された。ハンドピース側面のタッチバンドをスワイプしたり、メニューボタンに触れることで直感的に操作できるようになっている。これによりボタンの機械的な突起がなくなり、筐体の洗練さと防塵・防水性の向上にも寄与している。実際操作感は独特だが、慣れると手元で完結するUIとして評価できる。
ソフトウェア面では、Medit Linkという統合プラットフォーム上で各種アプリが無料提供されている点が大きな特徴だ。例えば矯正シミュレーション(スキャンしたデータから矯正後の歯列を自動予測する)、スマイルデザイン(顔貌写真とスキャンデータから補綴後の笑顔をシミュレート)、クラウンフィット(作製した補綴物データとの適合性を色分布表示する)等、患者説明や診断に役立つツールが豊富に揃う。これらはi500の時代から順次拡充されてきたが、モデルによる機能制限は基本的になく、古い機種でも最新ソフトウェアにアップデート可能である。特筆すべきは2025年リリースのMedit SmartXという新機能で、All-on-4/6のような無歯顎インプラント症例のスキャンワークフローを劇的に簡略化するソリューションが提供された点だ。従来、複数インプラントのフルアーチ印象は光学印象の難点とされてきたが、SmartXでは追加の特別な装置やソフトを用いずに、ガイド手術から最終補綴までのデータ連携が完結する。これは最新のi900シリーズのみならず、i700やi600ユーザーにも無償アップデートで解放されており、導入後も継続して進化し続けるプラットフォームであることがMedit製品の強みである。
データ互換性と院内運用フロー
新しいデジタル機器を導入する際には、その他システムとの互換性や運用方法も事前に押さえておく必要がある。Meditの口腔内スキャナーはオープンCAD/CAMシステムを標榜しており、そのデータ互換性は極めて高い。具体的には、スキャンした3Dデータは標準的なSTL形式をはじめPLYやOBJ形式でエクスポート可能である。スキャンソフト(Medit Scan for Clinics)上でボタン一つでエクスポートでき、クラウドサービスMedit Linkを介して提携先の技工所や他社ソフトウェアに直接送信することもできる。大手他社のIOSでは専用クラウド経由でしかデータ送信できなかったり、追加の利用料が発生するケースもあるが、Meditはソフトウェア利用やデータ転送に追加コストがかからないのも魅力である。医院で使い慣れた設計ソフト(exocadや3Shape Dental Systemなど)があれば、Medit LinkからSTLを出力してそのまま読み込み設計可能だ。もちろん歯科技工所側でも受け入れやすいデータ形式なので、従来のアナログ印象を宅配便で送っていたフローを、デジタルデータ送信に置き換えるだけでスムーズに運用できる。
院内の機器との連携面では、Meditスキャナーは基本的にPC接続型でありスタンドアロンでは動作しない。したがって導入には必ずハイスペックのWindows PC(推奨は最新のCore i7/i9 CPU搭載機)が必要で、場合によっては高性能ノートPCを1台新調する予算も見込むべきである。USB3.0(もしくは3.1 Gen1)のポートを持つPCであれば、i700/i600はUSBケーブル1本で接続・給電が可能だ。i500では専用の電源ハブを経由する必要があったため配線が煩雑だったが、i700以降はケーブル1本で取り回しが良く、配線断線時も簡単に交換できる。またワイヤレスタイプのi700Wの場合、PCとはWi-Fiによる接続となる。バッテリー駆動時間は連続スキャン約1時間程度で、付属の交換用バッテリーと充電ドックを使い回すことで長時間の診療にも対応できる。もっとも、ワイヤレスといえど受信機との距離や電波状況に影響されるため、確実な安定性を求める場合は有線での利用も可能である(i700Wは付属ケーブルで有線スキャナーとしても動作する)。
メンテナンスと院内感染対策も重要な運用ポイントだ。前述の通りチップは患者ごとに外してオートクレーブ滅菌し、本体表面はアルコール清拭などで毎回消毒する。i700には内部にUV-LEDが搭載され、待機中に内部送風路の除菌を図る機能があるが、この効果については賛否がある。過信せず、基本は患者ごとのチップ交換と清拭を徹底すべきである。またカメラ部のキャリブレーション(較正)も定期的に必要だ。Meditは専用のキャリブレーション用治具を同梱しており、ソフト上の指示に従っておよそ2週間に1度の較正を推奨している。i900シリーズでは較正間隔が90日に延長されているが、通常のi600/i700でも較正作業は数分で完了するため、煩雑さは大きくない。これを怠るとスキャン精度が徐々に落ちたり色味がずれてくる可能性があるため、導入後は定期ルーチンに組み込む必要がある。
スタッフ教育の面では、Meditは初心者に配慮した「練習モード」をソフト内に用意している。付属のデンタル模型を使って何度でもスキャン練習できるシステムで、ゲーム感覚で精度や時間を競えるスコア表示もあり、スタッフが楽しみながら習熟できる工夫が凝らされている。実際、導入初期に数症例こなすまでのハードルは決して低くはない。スキャナー特有の持ち方やスキャン経路のコツ、映りづらい部位へのアプローチ方法など、習熟には一定のトレーニングが必要だ。しかし練習モードやメーカー/ディーラーの講習サポートを活用することで、多くの医院では数週間~1ヶ月ほどで日常の補綴に支障なく使えるレベルに到達している。院長自身だけでなくスタッフも巻き込んで操作を標準化することが、せっかく導入した機器を宝の持ち腐れにしないポイントとなる。
経営インパクト
いくら臨床的メリットがあっても、高額な設備投資が医院経営に与えるインパクトは看過できない。ここではMeditスキャナー導入による費用対効果を多角的に評価してみよう。
初期導入コストの比較
まず直接的な導入費用である本体価格をモデルごとに整理する。日本国内で公表されている価格情報によれば、Medit i500は約100万円前後(基本セット)、i600は定価1,580,000円(税抜)とされ実質税込約175万円の水準である。i700有線モデルは定価約250万円(税込)と公表されており、ワイヤレス版のi700Wはそこにバッテリーや無線モジュール分が上乗せされおおよそ300万円弱とみられる。最上位のi900シリーズは日本で正式な価格発表はないものの、海外での販売価格(約19,000ドル~)から推測すると300~350万円程度になる可能性が高い。つまりMeditシリーズ内でも最廉価モデルと最上位モデルで2~3倍の価格差があることになる。
この価格だけを見ると尻込みする向きもあるかもしれない。しかし留意すべきは、競合する他社ハイエンド機(例えば3Shape社Triosやデンツプライ社Primescanなど)が500万~700万円にも達する中、Medit i700シリーズはそのほぼ半額で導入できるコストパフォーマンスが大きな強みだという点である。実際、日本市場でも「数百万円台で買える高性能スキャナー」として口コミが広がり、ここ数年でMedit採用医院が急増した経緯がある。さらにソフトウェア使用料が無料であることも長期コストに大きく影響する。他社では年間数10万円のライセンス料やクラウド利用料が発生するケースもあるが、Meditは購入後の追加課金なしでソフト更新やクラウド利用が可能だ。加えて、付属保証も海外では3年間標準提供されるなど(国内では販売代理店によるが)アフターサポートも比較的手厚い。総じて言えば初期購入費用以外のランニングコストが抑えられる点で、Meditシリーズは経営的リスクの低い選択肢といえる。
1症例あたりのコスト試算
では、実際にスキャナーを導入すると1症例ごとにどれだけコスト構造が変わるのだろうか。ざっくりと保険のクラウン1装着あたりで比較してみる。
従来法では、個人トレー作製→シリコーン印象→咬合採得→石膏模型→技工といった流れになる。材料費としては印象材・個人トレー材料・バイト材などで1症例あたり数百円~1000円程度、さらに技工所への模型発送コスト(宅配便代)が数百円かかる場合もある。また印象・模型の管理や技工指示書作成にも人手と時間が割かれる。
デジタル印象に切り替えると、基本的に印象材やトレーが不要になり、消耗品はスキャナーの滅菌チップ程度となる。仮にチップ寿命を100回とすれば1回あたり数10円から100数十円程度であり、材料費は大幅に削減できる。技工指示もデジタルで送信できるためペーパーワークが減り、宅配の手配も不要だ。技工所側でも模型を起こすプロセスが省略できるため、データ入稿割引などが適用されるケースでは1ケースあたり数100円程度のコストダウンにつながることもある。
ただし、減価償却的なコストとして高額機器の償却分を症例あたりに按分する必要がある。仮にi700(約250万円)を5年で減価償却すると年間50万円、月当たり約4.2万円となる。月に20症例のクラウンブリッジを行う医院の場合、1症例あたり2100円ほど機器代コストが載る計算だ。一方で上記のように材料費・送料で症例あたり数百円~1000円のコスト削減が見込めるため、単純計算では約1000~1500円の増加となる。しかしこの差を埋めてなおROIをプラスに転じさせるのが、次に述べる時間的・質的価値である。
チェアタイム削減と無形のメリット
デジタル印象の導入で特筆すべきは、時間の節約である。例えば上述のクラウン症例では、従来法だと患者の口腔内にトレーを入れて硬化を待つ時間が5分程度発生し、その後の後片付けや模型作業の依頼まで含めると実質10分近いスタッフ稼働時間を要していた。IOSならスキャン自体は1~2分で完了し、データ送信も即座に行える。多少の補助的作業を見積もっても、1症例あたり5分以上のチェアタイム短縮は十分に現実的である。この5分は患者の拘束時間短縮でもあり、医院としては他の業務に充てたり、1日の診療枠数を増やすことも可能になる。極端な例を挙げれば、1症例5分短縮が1日10症例で計50分浮けば、もう1人患者を受け入れられる計算になる。人件費換算しても、例えばユニット1台あたり歯科医師+アシスタントの人件費が1分あたり数百円と考えれば、5分短縮は数千円のコスト削減効果に相当する。
さらに再製率の低減によるロス削減効果も見逃せない。例えば従来の印象で微妙な気泡や変形が起きた場合、技工所から「模型不良」「マージン不明瞭」の連絡が来て取り直し…といった経験はないだろうか。IOSではスキャン直後に3Dモデルを拡大表示し、マージンや適合を自ら確認できる。万一不備があってもその場で再スキャン・追加スキャンが可能なので、患者が帰宅した後で印象不良に気付くといったリスクは激減する。またデータ上で適合試験(クラウンフィット機能)を行い、補綴物設計段階で咬合干渉やマージン適合をチェックできるため、補綴物の適合不良による再製作率も下げられる可能性が高い。再製作が減れば患者の再来院負担も減り、医院にとっては無償調整や作り直しに費やすコストも削減される。これらは1件あたり金額換算しにくいが、積み重ねると大きな経営改善要素となる。
自費診療への寄与と付加価値創出
Meditスキャナー導入の経営インパクトで最もエキサイティングなのは、新たな収益機会の創出である。具体的には、デジタルデータを活用した自費診療メニューの拡大や患者満足度向上による増患といった波及効果が期待できる。
まず矯正領域では、マウスピース型矯正(アライナー矯正)の需要増に伴い、口腔内スキャナーは事実上必須のツールとなっている。IOSがなければ受託できないようなインビザライン等の症例も、スキャナーさえあれば取り扱い可能となり、新たな収益源となり得る。実際、一般開業医が部分矯正やセットアップ矯正を自費メニューに加えるケースが増えており、そのハードルを下げたのは安価なIOSの普及である。Medit i700クラスなら十分矯正用の精密な全顎スキャンが可能で、ソフト上で治療後シミュレーションを患者に見せて契約率を上げることもできる。
またインプラント分野でも、スキャナーを用いたガイデッドサージェリーや即時負荷のワークフローが現実味を帯びてくる。スキャンデータとCBCTデータをマッチングさせたデジタルプランニングやサージカルガイド製作は、従来外注が中心だったが、クリニック内で完結させる例も出てきた。Meditのオープンデータなら他社のプランニングソフトや3Dプリンターとも連携自在であり、先述のSmartX登場も相まって、フルデジタル即時補綴へのチャレンジがしやすくなるだろう。こうした高度なデジタルインプラントは高額自費治療として医院の収益に直結する。
審美治療の面でも、患者への説明・同意獲得にデジタルは威力を発揮する。例えばスマイルデザインによる“治療後の笑顔”をその場でシミュレーションして見せれば、ラミネートべニアやフルマウス補綴といった大掛かりな治療にも患者が前向きになりやすい。術前のデータを保存して経年的に比較できることも定期メインテナンスの啓発につながり、リコール率向上という面での貢献も期待できる。
以上のように、単純なコスト計算だけでは測れない定性的メリットが多々存在する。Meditのスキャナーは導入して終わりではなく、その活用次第で医院の診療の幅と質を拡げ、収益構造に好影響を与える可能性を秘めていると言える。
導入後に使いこなすためのポイント
機器は購入してからが本番である。高価なスキャナーも、宝の持ち腐れになっては意味がない。ここではMeditスキャナーを導入初期からフル活用するためのコツを紹介する。
初期研修とスタッフの巻き込み
導入が決まったら、まずは充分な初期トレーニングの計画を立てたい。メーカーや販売店による講習会・ハンズオントレーニングを積極的に利用し、院長はもちろんスタッフ全員が機器に慣れることが重要だ。特にアシスタントや衛生士がスキャン補助や一部スキャンを担う場合、彼らのモチベーションと習熟度が鍵を握る。前述のMedit練習モードを活用し、院内でスキャン大会のようなイベントを行ってゲーム感覚で習得していくのも一法だ。現に、あるクリニックでは新人スタッフが練習モードでベテランより高スコアを出し、全員で表彰したところ大いに盛り上がり、結果的に全員が積極的にスキャン業務に取り組むようになった例もある。チームとしてIOSを運用する雰囲気づくりが、稼働率向上のポイントである。
スキャン術式のコツと注意点
実際の患者への初スキャンでは、いくつか留意すべきポイントがある。まず十分な乾燥と明視野の確保はアナログ印象同様に重要だ。水分や血液が多いとどんなスキャナーでもデータ抜けやノイズの原因となるため、エアーブローと吸唾器で可能な限りドライフィールドを維持する。鏡で見るのと同じように、スキャナーも見えていない部分は記録できない。頬粘膜や舌を排除し、必要に応じ開口器やミラーで視野を確保して撮影することが成功の第一歩となる。
撮影テクニックとしては、一定のリズムでスキャナーを動かし続けることが肝心である。初心者が陥りがちなのは、1箇所で止めて細部を取ろうとしてしまうこと。しかし止まりすぎると機種によっては位置合わせが崩れてエラーになったり、逆に動かしすぎるとデータが飛ぶこともある。i700以降はかなり寛容だが、それでも適度なスピードで動かし続け、不足部位は後から戻って追加撮影する方が結果的に早く綺麗に取れる。経験上、最初は意図せず抜けだらけになってしまうが、同じ患者で何度か追加入力すれば最終的に完璧なデータになるので焦らず取り組むと良い。Meditソフトには「信頼性マップ」という機能があり、データが十分取れている箇所と不足箇所をリアルタイムで色分布表示できるため、これを参考に漏れのないよう追加スキャンしていくと効率的だ。
院内ワークフローと患者説明への組み込み
スキャナーを日常診療に溶け込ませるには、ワークフローの見直しも必要になる。例えば、アポイントの予約段階で「当日は光学印象で型取りします」と患者に伝えておくと良い。来院後にいきなりカメラを口に入れられて驚かれないよう、事前説明や待合室での掲示物でデジタル印象のメリットをアピールするのも良策だ。最近では「うちの歯医者は型取りもデジタルで凄い」とSNSに投稿する患者もおり、それが新患増加につながった例も見られる。
また、スキャン後のデータ活用も積極的に行いたい。例えばその場で患者に3Dデータをお見せし、「ここのむし歯を削りました」「奥歯の噛み合わせがすり減っていますね」などと説明すれば、患者の理解度と満足度は飛躍的に高まる。模型やレントゲンだけでは伝わりにくかった情報も、自分の口腔内をリアルに再現したカラー3Dモデルで見せられることで納得感が増す。さらに必要に応じてデータを患者に提供することも可能で、セカンドオピニオンや将来の比較にも役立てることができる。
最後に、失敗を恐れず使い倒すことも大切だ。導入当初はどうしてもアナログ印象に頼りたくなる場面(例えば難しい全顎ケースなど)があるが、せっかくの機器を使わなければ上達しない。筆者の知る限り「最初は時間がかかっても全症例でデジタル印象をやり切った」医院ほど習熟が早く、結果的に最も有効活用している。逆に「忙しい時は従来法でいいか」と逃げ道を残すと、いつまで経っても本格的にデジタル化できない。もちろん無理は禁物だが、初期の試行錯誤期間は投資と割り切って積極的にIOSを稼働させることが、早期にROIを得る近道になる。
適応症例と注意すべきケース
優れたツールではあるが、口腔内スキャナーが万能というわけではない。適する症例と不得手なケースを理解し、使い分けることが大切だ。
適応が得意とするケース
Meditを含む最新のIOSは、単冠修復や小~中規模の補綴でその真価を発揮する。クラウン・インレー・ラミネートべニア・3~4ユニット程度のブリッジなら、デジタル印象で精度良く再現できると多くの論文や臨床報告が示している。またマウスピースやスプリントの製作にも有用で、咬合スプリントやスポーツマウスガード、さらには義歯のトライインプレートなど、何でもデジタル印象で賄える。印象材が苦手な嘔吐反射の強い患者、高齢者や小児でも、デジタルなら比較的スムーズに型取りが可能だ。矯正領域では歯列全体の型取りが日常的に行われるが、Medit i700クラスの精度があればアライナー矯正用のデータ提出も十分可能である(事実、インビザラインなど海外大手アライナーもMeditのSTL受付に対応している)。さらに、インプラントではアバットメントレベルの印象でIOS活用が進んでいる。Meditソフトにはインプラントスキャンボディを自動認識してライブラリに置換する機能があり、アナログより効率的に高精度の最終デジタル模型を作成できる。一本植立の単独インプラントや少数歯欠損のブリッジ症例なら、IOSで即日印象まで完了することで治療期間短縮にもつながるだろう。
不得意なケースと代替策
一方、全ての症例がデジタル印象に向いているわけではないことも認識しておく必要がある。例えば歯肉縁下に大きく入り込んだ支台歯で激しく出血している場合、どんなスキャナーでも正確なマージンを撮るのは難しい。従来のコード二本法や電気メスによる歯肉圧排をきちんと行い、出血を抑制してからでないと結局データが得られず、試行錯誤の末にアナログ印象に切り替えざるを得ないこともあり得る。また広範な無歯顎症例も依然としてチャレンジングだ。上下無歯顎でランドマークとなる点が少ない状態だと、スキャンデータを安定的に結合するのが難しく、特に咬合採得(バイト)の正確さに課題が残る。こうしたケースでは、従来通り個人トレーとシリコン印象材でファイナル印象を取ったり、IOSと咬合床を組み合わせたハイブリッドなアプローチが現実的かもしれない。もっとも、前述のMedit SmartXのように無歯顎でもAll-on-4治療を完遂するデジタルソリューションが登場し始めており、近い将来こうした不得手領域も克服されていく可能性がある。
多数歯の長いブリッジやフルマウスの咬合再構成なども注意を要する。IOSで精密なデータが取れても、臨床現場では患者のわずかな顎位変動や口腔内コンディションの変化が大きく影響する。フルマウス補綴などの場合、たとえデジタルでもチェックバイトやプロビジョナルを活用し段階的に調整・確認するステップは依然として必要だ。ゆえに、IOSを使えば一発で全部完璧という誤解は持たず、あくまで新たな手段として長所短所を理解した上で併用していくことが大切である。
最後に、経済的・経営的な視点で不得意なケースも挙げておきたい。例えば補綴症例が月に数件しかないような小規模医院で、わざわざ数百万の投資をしてもROIが合わない可能性がある。あるいは院長がもう数年で引退予定という場合、機械の償却前に使わなくなるかもしれない。そのようなケースでは、無理に最新IOSを買わずとも外注サービス(訪問スキャニングや技工所での模型スキャン)を利用する手もある。全ての医院・症例に一律にIOSが必須というわけではないことも念頭に置き、自院の状況に即した導入判断が求められる。
医院コンセプト別: Meditはどんな歯科医に向いているか
同じ製品であっても、医院の診療方針や経営戦略によって適するかどうかは異なる。このセクションでは、いくつかの歯科医院のタイプ別にMeditスキャナー導入の向き・不向きを考えてみる。
保険診療中心で効率最優先の医院
日々の保険治療をとにかく効率よく回し、限られた人員で高い患者数をさばきたいタイプの医院には、Meditスキャナーは業務効率化のツールとしてマッチする。特にi600は低価格ながら必要十分な性能を備えており、保険のクラウン・インレー程度なら難なく対応できる。チェアタイム短縮による回転率向上や印象材コスト削減のメリットがダイレクトに効いてくるため、ROIも見込みやすいだろう。一方で、患者層によっては高齢者が多くデジタルに馴染まない可能性もある。その場合は全員に無理強いせず、若年者や嘔吐反射の強い人から段階的にデジタル印象を適用していくと良い。また保険診療中心だと自費治療ほど直接的な収益増にはつながりにくいため、投資回収には時間がかかる点は織り込み済みである。スタッフ数も限られることが多いので、i600/i700のように手頃でシンプルな機種から始め、まずは日常臨床の効率アップにフォーカスするのが賢明だ。
高付加価値の自費診療を謳う医院
セラミック治療やインプラントなど自費率が高く、クオリティを追求する医院にとって、Medit i700やi900は品質管理と顧客サービスのツールとして非常に有用だ。患者に最新設備としてアピールできることはもちろん、色調や適合の確認をデジタルで行うことで再製作率を下げ、長期的なトラブル減少による利益確保につながる。実際、高額な審美治療を提供するクリニックでは、治療前後の状態説明にIOSデータを活用し、患者の納得度を上げているケースが多い。i900の高精細カラーや多彩なアプリ機能は、そうした患者体験価値の向上に大きく貢献するだろう。また、高付加価値診療では1件あたり利益幅が大きいため、仮に1件増患できれば機器代くらいすぐペイできる計算になる。例えば自費クラウンを月に2本多く契約できれば、それだけでリース代相当が捻出できるかもしれない。したがって、「質」で勝負する医院ほどハイエンドIOSの導入メリットは大きい。Medit i900の先進機能は、そうした医院のブランディングや差別化にも寄与するはずだ。ただし、高級志向の患者層には実績やブランド力も重視されるため、必要に応じて「当院では信頼性の高いMedit社製スキャナーを使用しています」といった情報発信で安心感を与える工夫も望ましい。
外科・インプラント中心の医院
サージェリーやインプラント治療を多く行う医院では、デジタル技術の導入が不可欠になりつつある。このタイプの医院にはMedit i700 Wirelessやi900が向いていると言える。理由の一つは、手術時にケーブルレスで使用できる恩恵だ。i700ワイヤレスなら、無影灯やドリルが行き交うオペ環境でもケーブルが邪魔にならず、無菌エリアへの配慮もしやすい。埋入直後に口腔内をスキャンして即時プロビジョナルを設計・製作するといったワークフローも、ワイヤレスIOSならスムーズに行える。また前述のSmartXのようなインプラント特化ソリューションも、積極的に取り入れていける点でデジタル化のメリットは大きい。
ただし、フルアーチ即時負荷のような難度の高いケースでは、現在でも一部で専用の光学印象デバイス(フォトグラメトリ)の併用が検討されるなど、IOS単体では不十分な場面もある。このため外科・インプラント系の医院では、Medit IOSを補助的なポジションとしてまず導入し、ガイド作製や小規模症例の補綴で効果を発揮させつつ、将来的な技術進歩に合わせて適用範囲を広げていくのが現実的だ。幸いMedit製品はソフトウェアアップデートで新機能が追加されるため、設備価値が陳腐化しにくい点は心強い。機器投資に対する感度が高いタイプの医院だからこそ、そこも評価ポイントになるだろう。
大規模で多診療科を抱える医院
ユニット数が多くスタッフも充実した大型医院では、IOS導入も複数台体制を視野に入れることになる。この場合、Meditシリーズのコストパフォーマンスの良さが非常に有利に働く。予算内で2台導入し、1台を予備または研修用に充てるなど柔軟な運用が可能だ。例えばメインユニット2台にi700を設置し、補綴科と矯正科でそれぞれ活用するといった使い分けもできる。あるいはi700とi600を1台ずつ購入し、精密を要するケースはi700、研修用途や簡易ケースはi600と役割分担するのも手だ。Meditはどのモデルも同じソフトウェアプラットフォームで動作するため、モデル混在でも操作方法は共通である。大所帯の医院でスタッフが入れ替わっても、全員が同じシステムに習熟していれば教育コストも低く抑えられるだろう。
また多診療科型の医院では患者サービスの一環としてデジタル設備の充実をアピールできるメリットもある。「うちの医院は最新のデジタル技術で包括的な歯科医療を提供しています」というメッセージは、新患獲得や対外的な信用力向上につながる。Meditのように導入ハードルが下がった今だからこそ、早めにデジタル化を進めて医院全体の競争力強化を図る価値は大いにある。
よくある質問
Q. Meditスキャナーで本当に補綴物の適合精度は大丈夫ですか?
A. 単冠や3~4ユニット程度のブリッジであれば、適合精度は従来の印象と遜色ないことが多数の報告で示されている。実際にi700で印象採得した補綴物を装着した筆者の経験でも、適合調整がほとんど不要なケースが大半である。ただしフルマウスレベルの大規模補綴では、症例によって咬合調整が必要になる場合もある。どうしても精度が要求されるケースでは、デジタルに加えて咬合採得や仮歯調整など従来法の併用を検討すると良いだろう。
Q. 取得したデータはどのように技工所へ送るのですか?
A. Medit Linkというクラウドプラットフォームを通じて、ワンクリックで提携先のラボにデータ送信が可能である。もちろん従来通りUSBメモリにSTLファイルをコピーして渡すこともできる。多くの技工所はMeditに対応済みで、こちらから招待を送ればクラウド上でデータ受け取りから納品管理まで行ってくれる。送信後に電話やメールで「データ届きましたか?」と確認する手間もなく、非常に便利である。
Q. 故障や不具合時の保守体制はどうなっていますか?
A. 国内代理店経由で購入した場合、基本的には代理店(例:ヨシダ、フォレスト・ワン等)が窓口となりサポート対応する。保証期間内であれば無償修理・代替機貸出などのサービスが受けられることが一般的である(契約内容によって異なる)。保証期間後も有償での修理対応や、場合によってはメーカー本国での対応となることもある。定期校正やソフトウェア更新についてはオンラインで案内が来るため、適宜アップデートして常に最新状態を維持すると良いだろう。
Q. スタッフが高齢でデジタルが苦手そうですが導入できますか?
A. 実際にパソコン操作に不慣れなスタッフでも使いこなしている例がある。Meditの操作は直感的で、スキャン自体はハンドピースを動かすだけだ。データ送信などのPC作業も決して複雑ではなく、数回練習すれば高齢の方でも問題なく習得できる。むしろ1度慣れてしまえばアナログ印象の重労働より楽だという声もある。大切なのは導入前に「みんなで使いこなそう」という前向きな雰囲気をつくることだ。メーカーの研修動画や実習用模型も活用し、楽しみながら慣れてもらえるよう工夫してみると良い。
Q. 買ったはいいが使いこなせず放置してしまうケースが心配です。導入リスクへの対策はありますか?
A. 高価な機器だけに、その心配はもっともである。対策としては、導入目的を明確にすることと具体的な運用計画を立てることが挙げられる。例えば「◯月までに保険クラウンは全てIOS化する」「スタッフ◯名をスキャナー担当に育成する」といった目標を設ける。また、最初の3ヶ月はメーカー担当者や導入支援コンサルタントと定期的に進捗を振り返る場を持つのも有効である。実は、導入後に使わなくなる医院の多くは「忙しさに追われて後回し」になるケースである。スケジュールに組み込み、時には患者説明用に敢えて使ってみるなど、意識的に稼働率を上げる工夫をすることだ。それでも難しい場合は、ディーラーに相談すれば追加トレーニングや活用提案をしてくれることもある。決して1人で悩まず、周囲のサポートも活用すれば必ず乗り越えられる。きっと数ヶ月後には、「導入して良かった」という実感を得られるはずである。