
口腔内スキャナー「iTero(アイテロ)エレメント」とは?シリーズごとの価格まとめ
フルマウスの補綴設計で石膏模型が割れて撮り直しになった経験はないだろうか。アライナー矯正の説明で患者の理解が進まず、カウンセリングが長引いた場面も思い当たるはずである。スキャンを一発で決め、患者がその場で納得する体験を設計できれば、診療の流れは変わる。iTeroエレメントはそのための現実的な選択肢である。本稿では公開情報に基づき、シリーズ構成と価格の出し方、運用で差が出る要点までを臨床と経営の両面から解説する。
製品の概要
販売名はiTero エレメントであり、一般的名称はデジタル印象採得装置などに区分され、医療機器承認番号は22900BZX0022200である。管理医療機器かつ特定保守管理医療機器に該当し、国内の製造販売業者はインビザライン・ジャパンである。シリーズはカート型やモバイル型のほか、エレメント5Dプラス群と、その簡素化構成であるライトが用意される。なお、プラスシリーズの販売国はアジア太平洋地域内で国別に異なる運用が示されている。
iTeroエレメント5Dプラスは、近赤外光画像の活用による隣接面う蝕の検知補助機能を搭載する設計である。ライト構成ではこの機能の対象外であることが公式説明に明記されている。補綴や矯正のワークフローと連動し、撮影データは臨床判断や患者説明の補助に位置付けられる。
主要スペック
近赤外光画像の位置付けを理解する
5Dプラスは近赤外光画像を併用し、歯肉縁上の隣接面う蝕の検知を補助する。これは診断そのものを代替する機能ではなく、視診やエックス線を含む臨床所見の補強として用いるべきである。ライト構成には近赤外光画像の対象外とされるため、患者説明の材料をどこまで装置側に担わせるかで、選ぶべき構成が変わる。
出力データとラボ連携の実際
エクスポートはSTLとPLYに対応し、開放型のオープンシェルやオープンモデルを選択できる。補綴系ではオープンモデルが実務的であり、咬合付与や支台歯辺縁の視認性を確保しやすい。なお、症例種別の選択によっては外部出力に制限が生じるため、外部設計や外注加工を前提とするケースでは、スキャン時にiRecordやiCastの選択を徹底する運用が望ましい。
モバイル運用とPC要件の考え方
エレメントフレックスはノートPC運用が可能であり、Windows環境と十分なCPU性能、メモリ、SSD容量が求められる。運用上は一台の高性能マシンに集約するか、複数台に分散するかで院内導線と受付からの呼び出し対応が変わる。推奨構成は公式の要件表で公開されており、USBポートやフルHD以上の表示要件も明示されている。
互換性や運用方法
DICOMは画像診断装置の規格であり、口腔内スキャナーの運用ではSTLやPLYが基本になる。iTeroはMyiTero経由の症例管理からエクスポートが可能で、保存先はローカルのダウンロードフォルダが既定となる。エクスポート形式とファイル分割の選択は補綴ワークフローの後工程に直接影響するため、院外技工の要件に合わせてテンプレート化しておくとよい。
清掃や消毒は添付文書の手順に従い、水道水での清浄と乾拭きに加え、少量のアルコール拭きが案内されている。フレックスや5Dラップトップ構成では、初回使用前に専用ソフトウェアのインストールが必要であり、ネット配信リンクまたはUSBメモリで供給される運用が示されている。
価格とシリーズごとの価格まとめ
iTeroの新品本体は国内では見積提示が基本であり、公開定価の表示は限定的である。大手ディーラーのオンラインカタログでも、価格は会員ログイン後の表示とされている。したがって、市場価格の断定は避け、見積提示条件と保守条件を含めて比較するのが実務的である。
一方、公式オンラインショップでは認定整備済みのエレメント・フレックスが一八二万円で掲載されている。新品価格の公開は確認できないが、アフター市場の目安として実価情報の参照価値は高い。また、消耗品のディスポーザブルスリーブの価格も公開されており、ランニングの基礎データとして使える。
iTero エレメント5Dプラスの価格状況
カート構成とモバイル構成が存在し、ライト構成は近赤外光画像の対象外である。国内ディーラーのオンラインカタログでは製品構成の掲載とログイン後の価格表示の運用であり、一般公開価格の確認はできない。導入を検討する場合は、装置構成と保守内容、トレーニングの範囲を同条件で取り寄せて比較すべきである。
iTero エレメント5Dの価格状況
5Dはプラスの前世代構成であり、ラップトップ構成の掲載を含め国内向けに案内が残る。公開価格は確認できず、販売は見積提示ベースである。院内の説明資材として近赤外光画像を使う設計思想は共通である。
iTero エレメント・フレックスの価格状況
フレックスはノートPC運用に適した構成である。認定整備済み品の実売として一八二万円の掲載が公式ショップにあり、新品は見積提示である。ノートPCの要件を満たす前提で、ユニット間の可搬性や設置自由度を重視する医院に適する。
iTero Luminaの位置付け
Luminaはエレメントの後継として位置付けられる最新機であり、日本語の製品ページが公開されている。価格の一般公開はなく、性能評価や価格検討は別途の見積比較が必要である。エレメント系列での比較検討では、機能拡張と価格差の妥当性を整理しておきたい。
経営インパクト
一稼働時コストは本体の減価償却と保守費を稼働日数で按分したものに等しい。例として、認定整備済みフレックスの取得価格一八二万円を年数で割り、院内の稼働日数で再度割ることで、一日当たりの設備費の目安が得られる。新品は見積提示であり、保守範囲やトレーニングの有無でイニシャルとランニングが変わるため、条件の統一が重要である。
スキャナーがもたらす時間価値は、再印象採得の減少、セット時適合確認の迅速化、矯正カウンセリングの可視化による説明時間の短縮に現れる。これらは医院の人件費とチェアタイムに直結するが、定量化には医院固有の運用実績が必要である。まずは一か月のスキャン件数と再撮率、カウンセリング時間を計測し、装置導入前後での差分を設備費と比較する評価が妥当である。公開データのない数値は各院での実測値を用いるべきである。
使いこなしのポイント
スキャンの外部出力を前提とする補綴ワークフローでは、症例選択をiRecordやiCastに設定する。スキャン完了後はMyiTeroからオープンモデル形式でSTLやPLYを出力し、ダウンロードフォルダの保存先を院内標準に合わせて整理する。受付からの技工所送信までの所要時間を短縮するため、命名規則と共有フォルダの運用を決めておくとよい。
清掃は水道水での清拭と乾拭きを基本とし、必要に応じ少量のアルコール拭きを行う。フレックスやラップトップ構成は初回に専用ソフトの導入が必要で、ネット配信またはUSB供給の案内があるため、セットアップ手順を院内マニュアル化しておく。
適応と適さないケース
補綴から矯正までのデジタル印象採得に広く適応し、5Dプラスでは近赤外光画像による隣接面う蝕の検知補助を患者説明に活用できる。ただしライト構成では近赤外光画像の対象外となるため、この機能を前提とする説明設計には適さない。禁忌や注意は添付文書に準拠し、装置の清掃や滅菌、消耗品交換の条件を遵守する。
読者タイプ別入判断の指針
効率最優先の保険中心運用では、フレックスの可搬性と既存ノートPCの活用余地が収益性に直結する。まず認定整備済みの実売価格を基準に、保守と消耗品費、スキャン件数から一件当たりの設備費を算出すると判断しやすい。
高付加価値自費強化を志向する医院では、5Dプラスの近赤外光画像をカウンセリング体験の質向上に割り当てる設計が合う。説明時間の短縮と成約率の変化を、見積取得した新品価格と保守費で回収できるかを評価したい。
口腔外科やインプラント中心の医院では、スキャンデータの外部出力と院外設計の安定運用が鍵である。エクスポートの自由度とファイル運用の標準化を優先し、PC要件とネットワークの冗長化も含めて装置構成を決めると良い。
よくある質問(FAQ)
新品本体の定価は公開されているのか?
国内では見積提示が基本であり、ディーラーサイトでもログイン後表示の運用が多い。公開定価は確認できない。
認定整備済み品の価格水準はどれくらいか?
公式オンラインショップでエレメント・フレックスの認定整備済み品が一八二万円で掲載されている。新品の価格は別途見積となる。
外部設計や他社ミリングで使うためのデータは出力できるのか?
STLやPLYに対応し、オープンシェルまたはオープンモデルを選べる。補綴用途ではオープンモデルが実務的である。症例の選択が外部出力に影響するため、iRecordやiCastの選択を徹底する。
ライト構成と通常の5Dプラスの違いは何か?
ライト構成は近赤外光画像の対象外である。カウンセリングで隣接面う蝕の可視化を重視するなら、ライト以外のプラス構成や5Dの検討が適する。
ノートPCでの運用に必要な条件はどこで確認できるか?
公式の要件表が公開され、CPUやメモリ、表示解像度、USBポート、Windowsエディションが示されている。導入前に既存PCの適合を確認する。