
ヨシダのアーム型X線CT診断装置「ファインキューブ」とは?価格や性能を調べてみた
インプラントの埋入直前になって「あの神経との位置関係、本当に大丈夫だろうか?」と不安になった経験はないだろうか。あるいは、下顎の智歯抜歯でパノラマX線写真だけでは神経管との距離がつかめず、手探りの抜歯に冷や汗をかいたこともあるかもしれない。歯科用CTがあれば、こうした 診断の不確実さ に悩む時間は大幅に減る。とはいえ、「本当に元が取れるだろうか」「操作が難しくて使いこなせないのでは」と導入をためらう院長先生も少なくない。本稿では、そうした臨床現場のリアルな悩みに応えるべく、ヨシダ製のアーム型X線CT「ファインキューブ」について、臨床的価値と経営的視点の両面から徹底的に分析する。読者の先生方が自院にとってこのCTが必要かどうか判断する一助となれば幸いである。
製品の概要
ファインキューブ(FineCube)は、株式会社ヨシダ製作所が提供する歯科用コーンビームCT装置である。正式な一般的名称は「アーム型X線CT診断装置」および「デジタル式歯科用パノラマ・断層撮影X線診断装置」であり、歯科領域の頭部撮影に特化している。初代ファインキューブは2010年代前半に登場し、続いて改良版のファインキューブ E2(イー・ツー)が発売された。E2モデルではパノラマ撮影・セファロ(頭部X線規格写真)撮影・3D撮影が1台で可能なオールインワン設計となり、親知らず(智歯)を含む最後臼歯まで3次元撮影できる「ワイドモード」を搭載するなど、より日常臨床で使いやすい機能強化が図られている。ファインキューブは主にインプラント埋入計画、埋伏歯や根管の3次元的診断、顎関節の評価、矯正治療のセファロ分析など、歯科医院での幅広い診査・診断用途を想定して設計されている。なお本装置は管理医療機器・特定保守管理医療機器に分類され、設置に際しては所定の届出や十分な放射線防護措置が必要である。
主要スペック
ファインキューブのスペックを読み解くことで、その臨床的意義が見えてくる。まずX線管球の焦点サイズは0.2mmと小さく、細部まで鮮明な画像取得に寄与している。焦点が小さいほどX線ビームの発生源が点に近づき、画像のボヤけ(幾何学的ぼやけ)が減少するため、根尖病変の微小な陰影や細い根管も捉えやすい。
撮影視野(FOV)は標準モードで直径約8cm×高さ7.5cmと、一側の顎骨全体を包含できるサイズである。単独のインプラント埋入や片側の下顎智歯の位置把握には十分な範囲であり、上下顎いずれか一方の歯列をほぼ覆うことができる。さらにファインキューブ E2ではワイド撮影モードによって直径11.3cm×高さ7.2cmまで撮影範囲を拡大可能であり、左右両側の顎関節を含む広範囲撮影も実現している。このワイドモードでは2回のスキャンを連続して行い画像を合成する方式だが、それでも撮影時間は合計約18秒(9.1秒×2回)程度と短時間である。短時間スキャンは患者の動きを抑え、実用上のブレを減らす効果がある。
解像度(ボクセルサイズ)は公称でおおむね0.2mm前後と推定される(ファインキューブの公式資料ではピクセルサイズ200μmと記載)。数値上は大きいものの、日常のインプラント埋入や歯周組織の評価には0.2mmでも必要十分な描画能力である。実際、ファインキューブには高精細モードも搭載され、標準より長い撮影でより高コントラストな画像を取得可能かもしれない。小さな病変や細い骨の隔壁などを評価する際には高精細モードを用い、緊急時や被ばく低減を優先する場合にはクイック撮影(E2ではライト撮影)モードで短時間スキャンする、といった柔軟な使い分けができる。
2次元撮影機能にも触れておこう。ファインキューブ/E2はいずれもデジタルパノラマX線撮影を標準搭載し、E2の一部モデルではセファロ撮影用アタッチメントを追加して側貌頭部X線規格写真(矯正診断用のセファロ)も取得できる。パノラマ撮影の画素サイズは100μmと細かく、デジタルデンタル(口内法X線写真)並みの高精細パノラマ画像を得られる。日常のう蝕や歯周病の診査ではパノラマを主に用い、インプラントや難症例では3D撮影、と用途に応じてシームレスにモードを切り替えられるのはオールインワン機ならではの強みである。
互換性や運用方法
歯科用CTを導入する際に心配になるのが他システムとの互換性や日常運用への影響である。ファインキューブは撮影データをDICOM形式でエクスポート可能であり、他施設への症例紹介状に付ける画像や、インプラントガイド作製用のシミュレーションソフトへの読み込みも支障なく行える。例えば他社のガイデッドサージェリーソフト(ノーベルクリニシャンやSimPlant等)にもDICOMデータをインポートして植立シミュレーションが可能かもしれない。ヨシダはOneSystemと呼ばれる院内ネットワーク画像管理ソフトウェアを提供しており、ファインキューブで取得した3D画像やパノラマ画像を院内の各診療ユニットのPCから閲覧できる環境構築もサポートしている。これは撮影後すぐに診療チェアサイドで患者に画像を見せながら説明する、といったスムーズな運用に役立つ。
設置要件も確認しておきたい。ファインキューブE2本体の寸法はおよそ幅1.2m・奥行き1.3m・高さ2.0mで、質量は260kg(セファロ付は300kg)である。初代ファインキューブは質量390kgとさらに重かったが、それでも従来のパノラマレントゲン装置と同程度の床面積・重量であり、電源も単相100Vで動作する。鉛当量1.5mmの遮蔽があれば設置可能とされ、専用の機械室を新設する必要は基本的にない。既存のレントゲン室にそのまま搬入できる省スペース設計であるため、レイアウト変更の負担も比較的少ない。とはいえ患者が立位で回転アーム内に立つ必要があるため、天井高2.1m程度と前後左右の余裕(おおむね2m四方程度のスペース)は確保したい。またセファロ付モデルを選ぶ場合は側面にセファロアームが延びるため、幅方向に追加の余裕が求められる(本体幅1.2m→1.8m)。クリニックによってはレントゲン室の扉幅・通路幅が狭く、本体搬入にクレーンや壁開口が必要になるケースもあるため、導入時には事前に業者と搬入経路や室内レイアウトを詳細に打ち合わせておくべきである。
日常の運用管理に関しては、まずスタッフ教育が重要である。パノラマ撮影と似た操作とはいえ3D撮影には患者の頭位固定や露光条件の設定などコツがあるため、メーカーの導入時トレーニングを活用して十分習熟しておく必要がある。具体的には、患者さんにしっかりと顎を固定してもらい、撮影中は不動を保つよう声かけを徹底することが肝心である。高精細モードなど撮影時間が長いモードではわずかな動きでもブレにつながるため、必要に応じてヘッドバンドの使用やスタッフの立ち合いで安定を確認すると良い。感染対策としては顎置きやバイトブロックにディスポーザブルのカバー(あるいは交換式部品)を使用し、患者ごとに交換・廃棄する運用が推奨される。また機器の定期校正・メンテナンスも忘れてはならない。X線装置は法規により定期点検が義務付けられており、ヨシダのサービスマンによる年次点検や校正を受けることで、長期に安定した画質と安全性を維持できる。仮に重要部品であるX線管球が故障すると修理費用は100万円以上かかることも報告されているため、故障を未然に防ぐ保守管理が経営上も重要である。導入時にメーカーの保守契約に加入すれば、定期点検から部品交換まで計画的に行ってもらえるので安心である。
経営インパクト
次に、この高額なCT装置が歯科医院の経営に与えるインパクトを考察する。導入コストはリースも含め大きな投資だが、価格は年々下がる傾向にある。初代ファインキューブ発売当初の標準価格は約3,000万円(税別、取付費別途)であった。しかし改良型のファインキューブE2では本体価格がおよそ2,041万2,000円(税別、セファロ無モデル)まで抑えられている。セファロ付きでも2,291万2,000円程度であり、従来より数百万円単位で安価になった。このように近年は「歯科用CTは高嶺の花」ではなくなりつつある。実際、国内では7軒に1軒の歯科医院が既にCTを導入する時代となってきている。価格の低下と需要の増加で、中古市場やリース会社のプランも整備され、開業医でも手の届く医療機器となりつつある。
とはいえ2000万円前後の設備投資は医院にとって大きな負担であり、その投資対効果(ROI)は慎重に見極めねばならない。まず単純な試算として、仮に本体2,000万円・耐用年数7年・残存価値なしとすると、減価償却費は年約285万円になる。年間285万円を捻出するには、例えば自費のインプラント治療を年間数件増やすだけで達成できる可能性がある。1件あたりのインプラント治療で得られる利益(材料・ラボ代等を除いた粗利)を仮に20~30万円程度と見積もれば、年間10件程度のインプラント増加で元が取れる計算である。むしろCT導入によりインプラントや難症例治療へのチャレンジが可能になり診療メニューが拡大すれば、新たな収入源の創出につながる。例えばこれまでインプラントは外部に紹介していた医院が、自院でCTを用いて安全にインプラント手術を提供できるようになれば、その分の売上が丸ごと自院に計上できるようになるわけである。
さらにチェアタイム短縮効果や他院流出防止といった間接的なメリットも大きい。従来、CTが無い医院では患者を大学病院や放射線診断センターに紹介し、撮影してもらってから結果を持ち帰って治療計画を立てる、という手順が必要だった。これでは少なくとも1~2週間のタイムロスと患者の手間が発生し、その間に患者のモチベーションが下がるリスクもあった。院内にCTがあれば初診から即日で詳細な診断を行い、その場で治療計画を提示することも可能であり、患者の不安解消と治療着手までのリードタイム短縮に直結する。また撮影した3D画像を患者自身に見せることで、病巣の存在や骨の状態を直感的に理解してもらえるため、高額なインプラントや再生療法なども説明・同意(インフォームドコンセント)が得やすくなる効果が期待できる。これは治療受諾率の向上=売上増にもつながるだろう。さらに、CTで周到に術前計画を立てることで手術時間の短縮や偶発症リスク低減が見込まれ、結果的に再治療コストの削減や紹介率アップ(安全・高度な治療ができる医院として評判が広がる)といった中長期的メリットも見逃せない。
一方で、留意すべきは維持コストである。前述の通り年次の点検費用や保守契約料が発生し、X線管の交換時期が来れば数十万円以上の出費もあり得る。また撮影ごとのディスポ用品代や電気代、画像保存用のサーバ増設費用など、細かなコストも積み上がる。ただし1症例あたりに換算すれば、例えばバイトブロック等の消耗品は数百円以下、電気代も1回の撮影で数円程度に過ぎない。結局のところ、このクラスの設備投資は活用しなければ意味がない。購入しただけで宝の持ち腐れになれば単なる経費増だが、フル回転で使い倒してこそ設備投資の回収が見えてくる。ファインキューブを診断から患者説明までフル活用し、それ自体が医院のブランド力向上に寄与し、長期的な増患・増収効果も期待できるのである。
使いこなしのポイント
高額な機器を導入しても、使いこなせなければ意味がない。ここではファインキューブを臨床で活用するためのポイントを紹介する。まず導入初期の段階では、院内で撮影プロトコルを標準化しておくと良い。例えば「インプラント相談の患者には必ずCT撮影を提案する」「下顎智歯抜歯前にはCTで下顎管との位置関係を確認する」といったルールをあらかじめ決め、スタッフ全員で共有する。これによってCTの撮り忘れや活用漏れを防止し、常にフル稼働に近い形で運用できる。また歯内療法(根管治療)においても、従来は難しかった根管の形態把握やヒビの検出にCTが威力を発揮するため、根管治療再治療や難治症例では積極的に3D画像を撮ることを推奨したい。筆者自身、経験的に「何度も痛みがぶり返す根管治療症例はCTで原因を探すと道が開ける」ケースを幾度となく体験してきた。ファインキューブのような高精細CTがあれば、見逃していた第四根管の存在や骨の菲薄化まで把握でき、再治療の方針を的確に立てられる。
患者説明への活用も重要な使いこなし術である。撮影した3D画像を患者と一緒に見ながら、「ここにこれだけ骨が薄いのでインプラントには骨造成が必要です」「親知らずの根っこが神経にこれだけ近接しています」といった説明を行うと、患者の理解度と同意率が格段に上がる。人は平面的なレントゲン写真よりも立体画像の方が直感的に状況をのみ込みやすいものだ。ファインキューブで得られる立体画像は、そのまま患者とのコミュニケーションツールにもなる。とりわけインプラントや矯正など高額な自費治療では、患者が治療の必要性を実感できるかどうかが契約成立のカギとなるため、CT画像の説得力を存分に活かすべきである。さらに、CT画像は医療訴訟やトラブル防止の切り札にもなる。術前に十分な説明をCT画像で行っていたことが記録として残れば、万一の際にも「適切な診査・説明を尽くした」という客観的証拠になる。こうしたリスクマネジメントの観点からも、撮影した画像は患者カルテと紐付けて長期保管し、診療録の一部として活用することが望ましい。
院内体制の整備にも触れておきたい。CT画像の読影には専門知識が要るため、可能であれば導入前にスタッフ向けの勉強会や読影セミナーを受講しておくと安心である。ヨシダや歯科メーカー各社もユーザー向け講習を開催している場合があるので積極的に情報収集すると良い。歯科用CTは医学的には比較的新しい診断法であり、例えば偶発的に副鼻腔内の病変や顎骨嚢胞を発見した際の対応など、事前にシミュレーションしておくべき場面もある。必要に応じて画像診断専門医に読影所見を書いてもらうネットワーク(遠隔読影サービス)を確立しておけば、医院で対応困難な症例も適切にフォローできるだろう。要は、「撮ったはいいが所見のまとめ方がわからない」という事態に陥らないよう準備しておくことである。
最後に機器のフル活用という観点では、歯科用CTを他のデジタル機器と組み合わせる発想も重要だ。例えば口腔内スキャナーで採取したデジタル印象データとCTの骨データを重ね合わせれば、サージカルガイドの製作や埋入シミュレーションが高度に行える。これはまさにデジタルデンティストリーの醍醐味であり、ファインキューブ導入後はぜひデジタルワークフローへの拡張も検討してほしい。ヨシダのCTデータはオープンフォーマットで他社システムと連携可能なので、アイデア次第で様々な応用が利く。宝の持ち腐れにならないよう、「CTがあるから何ができるか」を常に問い、自院の強みに結びつけることが肝要である。
適応と適さないケース
歯科用CT全般に言えることだが、「どんな症例でも撮れば良い」というものではない。ファインキューブが真価を発揮する適応症例としては、まずインプラント埋入予定部位の評価が挙げられる。顎骨の厚み・高さ、神経管や上顎洞との位置関係を3Dで把握できる恩恵は計り知れず、インプラント治療にCTは事実上必須といっても過言ではない。また水平埋伏智歯(横向きの親知らず)の抜歯も重要な適応である。下顎管や隣接歯根との位置を事前に把握しておけば、抜歯の術式検討や患者説明が的確になる。歯内療法では難治性の根尖病変や根管形態の複雑な症例に有用で、肉眼では見えない部位の破折ファイルや根管の穿孔位置を突き止める助けとなる。さらに顎関節症の診断では、関節頭の変形や偏位を3次元的に評価できるため治療方針の決定に役立つ。矯正歯科の分野でも、顎骨の厚みや歯牙の位置関係(埋伏犬歯の位置など)をCTで確認することで、抜歯の選択や矯正用アンカースクリュー埋入位置の検討がより精密になる。セファロも撮影できるE2モデルであれば、2Dセファロ分析と3D画像を併用して包括的な矯正診断を行うことも可能性がある。
一方、適さないケースや注意点も認識しておきたい。まず被ばくを伴う検査である以上、不要な撮影は避ける原則は絶対である。若年者や妊娠中の患者では慎重に適応を判断し、代替のデンタルX線やMRIなどで足りる場合は安易にCTを撮らない方が良い。特に小児に対しては被ばく線量を抑えるべく、成人より低出力・短時間の設定に変更するなど細心の配慮が必要だ。また診たい部位が撮影視野より広範囲に及ぶケースも向いていない。ファインキューブでは顎顔面領域には十分だが、例えば顎変形症の手術計画で頭蓋全体の形態把握が必要な場合や、気道狭窄の評価で咽頭部まで含めた画像が欲しい場合など、FOVを超える領域は一度では撮影できない。そのような場合は医科用のCTや、より大視野の歯科用CT(他社製機種)に頼るほかない。さらに金属アーチファクトにも注意が必要だ。口腔内に多数の金属修復物がある患者では、画像に白黒のノイズ(アーチファクト)が生じて診断を妨げることがある。これはCBCTの構造上避けがたい現象で、金属が多い場合には事前に患者へ「画像が不鮮明になる可能性」を説明し、必要に応じて金属除去後に撮影するなどの対応が考えられる。どうしても診断困難な場合には、医科用CTの方がアーチファクト補正技術が優れているケースもあるので、柔軟に検討したい。
また機器仕様に関連しては、ファインキューブの解像度限界も踏まえた使い方が求められる。例えば0.1mm以下の歯根ひびや極細の根管を完璧に描出するのは、本装置では難しい場合がある。そのような超高精細イメージングが必要な場合、モリタ社のAccuitomoのようにボクセルサイズ80μmクラスの機種が適しているかもしれない。ただし視野が限られるためピンポイントの診断に限られる、といったトレードオフもある。いずれにせよ、「CTを撮れば万能」という誤解は禁物であり、各モードの特性と限界を理解して活用することが大切である。
最後に代替アプローチについて補足すると、もしCTを院内に置かない場合には外部の歯科放射線施設に依頼する方法が取れる。大都市圏では歯科用CTの撮影センターや画像診断クリニックが存在し、患者に紹介状を持って行ってもらい撮影・診断だけアウトソースすることも可能かもしれない。この場合、院内に装置を持つよりコスト負担は軽いが、その分結果説明までに時間がかかるなどデメリットもある。自院の症例数や方針に照らし、院内完結と外注のバランスを決めるとよいだろう。
歯科医院経営者むけ、導入判断の指針
すべての歯科医院にとってファインキューブが絶対必要というわけではない。ここでは医院の特徴別に、本製品の導入適性を考えてみる。
1. 保険診療が中心で効率優先型の医院
主に一般歯科診療を高回転で行い、インプラントや自費外科はほとんど扱わない医院では、コスト回収につながる高額治療が少ないため、投資に見合う収益増が得られにくい可能性が高い。例えば親知らずの抜歯や難症例が年に数回程度しか無いようであれば、都度大学病院に紹介する方が経済的合理性は高いだろう。一方で、近年は保険診療中心の医院でもCTを導入する例が増えている。それは診断精度向上による業務効率アップという側面もある。たとえ保険診療メインでも、CTで事前に難所を把握しておけば処置時間の短縮やトラブル回避につながり、結果的に時間当たり収益の向上をもたらす可能性がある。したがって「うちは保険中心だからCTはいらない」と決めつけず、自院の症例傾向を見極め、今後インプラントなど新規メニューに取り組む予定があるなら前向きに検討してもよい。コスト重視でどうしても難しければ、ヨシダの廉価版CT(例えばエクセラNF/MFシリーズは約1,000万円前後)や他社のエントリーモデルも選択肢となる。まずはそうした低価格機からスタートし、症例増加に合わせて高性能機種にステップアップする戦略も現実的だ。
2. 高付加価値の自費治療を積極的に提供する医院
インプラントや再生療法、矯正治療、審美治療など自費メニューに力を入れている医院では、ファインキューブ導入のメリットは極めて大きい。このタイプの医院では患者も高度な治療を期待して来院するため、「CT完備」は一種のステータスとなる。例えば「3D診断で精密な治療を意識している」というアピールはマーケティング上も有効であり、他院との差別化につながる可能性がある。また自費治療では治療計画の説明や合意形成に時間をかける傾向があるが、その際にCT画像が果たす説得力は計り知れない。患者一人ひとりに3D画像を見せながら説明することで、治療への納得感と安心感を提供でき、高額治療の成約率アップも期待できる。ROIの面から見ても、自費治療の利益率は高く、CT導入によって年間数件のインプラントや矯正が増えれば投資回収は十分可能かもしれない。さらに、このタイプの医院では歯科医師自身の探究心やプライドとして「より良い診断・治療を提供したい」というモチベーションも強いだろう。CT導入はその情熱に応える武器となり、診療の幅を広げクオリティを高める原動力になる。総合的に見て、高付加価値診療志向の医院にファインキューブはまさにうってつけである。
3. 口腔外科・インプラント中心の医院
サードパーティーのインプラント専門クリニックや歯牙移植など口腔外科処置を多く行う医院では、もはやCT無しの診療は考えにくい。これらの医院では高解像度かつ多機能なCTが望ましく、ファインキューブE2のようにパノラマ・セファロも一体化した機種は、術前・術後のあらゆる画像診断を一元管理できるという利点がある。例えば術前にCTで骨評価を行い、術後にパノラマで経過観察する、といった一連の流れを同じシステム内で完結できるのは効率的だ。解像度については、もし根管内の微小構造まで厳密に診る必要がある場合には、更に小視野・高解像度のモリタ「3D Accuitomo」シリーズなどが適しているかもしれない。しかしAccuitomoは撮影できる範囲が限られるため、インプラント専門のクリニックで全顎的な評価をするにはファインキューブE2のような中~大視野のオールラウンド機の方が汎用性が高い。実際、モリタのオールインワンCT「Veraview X800」もファインキューブE2と競合するポジションであり、80μmという極めて高い解像度と複数FOV選択を両立している。こうした最高峰クラスの機種同士の比較では、画質・機能・価格の僅かな差異よりもアフターサポートやソフトの使い勝手などが最終的な決め手になることが多い。ヨシダは全国規模のサポート網と、日本語表示の直感的な専用ビューアソフトを備えているため、国産メーカーとしての安心感は大きいだろう。口腔外科・インプラント中心の医院にとってファインキューブE2は有力な選択肢であり、導入すれば診断・安全管理レベルをワンランク引き上げてくれるはずだ。
よくある質問(FAQ)
Q. 保守費用やランニングコストはどのくらいかかる?
A. 公開情報として明確な数字は示されていないが、一般的に歯科用CTの保守契約は年間数十万円程度が相場である。ヨシダの場合、基本保証期間終了後も有償の保守プランに加入すれば定期点検・校正や故障時の部品交換を受けられる。中でもX線管球は高価な消耗部品で、故障時の交換費用は100万円を超えることもある。したがって購入時に5~7年程度の長期保証や保守契約を結んでおくと安心である。またランニングコストとしては電気代は撮影1回あたり数円~数十円程度、ディスポーザブルのバイトブロック代が数百円以下である。他には画像保存用のストレージ増設費用や将来的なソフトウェアアップデート費用などが発生し得るが、これらも含め1症例あたり数百円~千円以下に収まるのが通常である。高額機器ゆえ心理的ハードルはあるが、実際のランニングコストは過度に心配するほど大きくない。むしろ稼働率を上げて経済効果を創出することに注力すべきだろう。
Q. 現在パノラマレントゲンを使っているが、置き換えは可能か?
A. 可能かもしれない。ファインキューブE2はパノラマ撮影機能を内蔵しており、既存のパノラマ装置と同等の用途を満たせる。設置スペースもパノラマ装置とほぼ同程度で、電源も標準の100Vで動作するため、院内改装なしで入れ替えできたケースも多い。ただし装置本体のサイズ・重量はパノラマよりやや大きいため、床補強が必要ないか事前確認すると安心だ。実際にヨシダは「従来のレントゲン室にそのまま設置できます」と案内しており、基本的な寸法・防護条件は共通である。強いて言えばセファロ付加を検討する場合は横幅スペースの確保くらいが注意点になる。現行のパノラマ装置が老朽化しているなら、この機会にCTへのアップグレードを図るのも一つの選択肢だ。
Q. 導入までの期間や手続きはどのくらいかかる?
A. 注文から設置までは通常数か月を見込むとよい。まずメーカーまたは代理店による現地調査が行われ、部屋の寸法・電源容量・遮蔽状況などを確認する。その後、必要に応じて放射線取扱いに関する行政手続き(設置届の提出等)を行い、装置搬入・据付工事の日程を決める流れである。ヨシダ製品であれば国内生産・在庫状況によるが、発注から設置完了までおよそ1~3か月程度が目安となるだろう。設置当日はユニック車や台車で装置を搬入し、数時間かけて組立・調整を実施する。そして歯科医師・スタッフ向けに操作説明が行われ、その日から使用可能となる。医療法規上、歯科用CTの導入には都道府県への届出や、X線作業主任者による施設検査なども必要だが、これらは通常メーカーや設置業者がサポートしてくれる。具体的なスケジュール感は各地域の行政手続きによっても異なるため、余裕をもって計画することを勧めたい。
記事に関する問い合わせ先 https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSewq6H2OQE7zI5rfbKxNwH-yY729J3FCTT96g0eQdsf3ZrfsA/viewform