
朝日レントゲンの歯科用CT「SOLIO XZII」をレビュー!価格や性能の実際はどう?
日々の歯科診療で、レントゲン画像だけでは原因が特定できず悩む場面に心当たりはないだろうか。例えば、根尖病変の広がりが平面のX線写真では読み取りづらく治療計画に踏み切れなかった経験や、埋伏智歯(親知らず)の正確な位置関係を把握できず外科抜歯に不安を感じたことがあるかもしれない。2次元画像の情報量には限界があり、「本当にこの診断で大丈夫か」という見えない不安は、多くの臨床家が抱える共通の悩みである。
一方で、院内に歯科用CTを導入すればそうした悩みは大きく軽減できることは分かっていても、数千万円規模の投資や維持費に見合う効果が得られるか、導入を踏みとどまっている先生も多いだろう。本稿では、そうしたジレンマを抱える読者に向け、国内メーカー朝日レントゲンの歯科用コーンビームCT「SOLIO XZII」を取り上げる。本製品の臨床的価値と経営的インパクトを多角的に検証し、読者が自院に導入すべきか判断する一助となる情報を提供したい。臨床現場で得られる「見える」安心と、経営面での投資対効果を両立させるヒントを、本製品レビューを通じて探っていく。
製品の概要
朝日レントゲン工業株式会社のアーム型X線CT診断装置 SOLIO XZIIは、パノラマX線撮影と3DCT撮影の両方に対応する歯科用デジタルX線装置である。正式な医療機器区分は「デジタル式歯科用パノラマX線診断装置/アーム型X線CT診断装置」で、一般的に「歯科用CT」と称されるカテゴリに属する。2021年に発売された現行モデルで、前身機種「SOLIO XZ」の画像性能を大幅に向上させた後継機という位置付けである。歯科用CTとしては朝日レントゲン史上もっともコンパクトな設計となっており、設置に必要なX線室の広さは幅・奥行とも約1.5mで収まる(セファロ付上位モデル「SOLIO XZII maxim」の場合は幅約2.1m×奥行1.5m)。小規模なクリニックでも設置可能な省スペース性は、本機の大きな特徴の一つである。
本製品はクラスIIの管理医療機器であり、特定保守管理医療機器・設置管理医療機器に指定されている。つまり、院内で使用するには所定のX線防護措置を施した専用室が必要であり、導入に際しては都道府県への設置届出や、被ばく線量測定など法令遵守が求められる。また「特定保守管理医療機器」に該当することから、メーカー等による計画的な保守点検を実施し、管理者を定めて維持管理する義務が生じる。後述するように、朝日レントゲンは全国にサービス拠点を持ち充実した保守体制を敷いているため、その点は心強い。なお、本体の定価は税別1,500万円に設定されている。実際の販売価格は構成や時期によって変動するものの、オプションのセファロ撮影ユニットを付加すればさらに費用が上乗せされることになる。大規模な投資であるだけに、導入可否の判断にはこの価格に見合うだけの価値とリターンが得られるかが問われるだろう。本稿では、その判断材料となるスペックや運用性、経営インパクトについて順に見ていく。
主要スペック
SOLIO XZIIのコアとなるスペックは、画像取得能力(解像度・画質)と撮影範囲(FOV)、そして撮影時間に集約される。本機は新開発のフラットパネルセンサーにIGZO(酸化物半導体)技術を採用しており、前機種に比べ画質・解像度が大幅に向上したとされる。IGZOは液晶ディスプレイでも実績のある技術で、従来の非晶質シリコン方式のFPDと比べて低ノイズ・高速読み出し・高精細化を実現する。その恩恵で、本製品ではパノラマ画像のピクセルサイズ98µmと高精細化を達成し、総画素数も約450万画素(前機種比70%増)に拡大している。これは日常のパノラマ撮影において、例えば初期のう蝕や微細な骨変化の検出精度向上に繋がる。実際、メーカー独自の画像処理技術「AFパノラマ」(ノイズ除去・シャープ化・焦点合成の組み合わせ)により、高コントラストで粒状感の少ない鮮明なパノラマ画像が得られるとされる。特に顎関節部や大臼歯部のザラつきを低減できるため、う蝕や歯周炎の所見もパノラマ上で捉えやすくなるという。日常診療の基本であるパノラマ写真の画質向上は、CTをあまり活用しない症例でも恩恵がある点で見逃せない。
CT撮影モードは大きく2種類が搭載されている。高精細・小範囲撮影の「Dモード」と、広範囲撮影の「Iモード」である。Dモードでは直径51×高さ55mmの範囲をボクセルサイズ100µm(0.1mm)で撮影し、埋伏歯や根尖病変など局所の詳細観察に適する。一方Iモードでは直径98×高さ100mmと撮影視野が大きく、ボクセルサイズは177µmとなる。親知らず(第三大臼歯)を含む歯列全体を一度でカバーできる広さで、インプラント埋入部位の隣在歯との位置関係把握や、両側の顎骨の同時評価が必要なケースに有用である。177µmのボクセルは100µmより解像度は劣るものの、それでも肉眼では識別困難な微小構造(例えば細い根管や骨の微細な破壊像)を概ね捉えられるレベルである。広い視野と十分な解像度を両立しつつ、後述の部分再構成機能によって細部はさらに高精細化できる点が、本製品の強みである。
撮影時間は、フルスキャン(360度回転撮影)時で12秒、ハーフスキャン(180度撮影)時で6秒と非常に短い。12秒という照射時間は朝日レントゲン社のCT史上最短記録とのことで、高速撮影による患者の負担軽減と、動きによるブレの抑制に寄与する。実際には小児や高齢者で体動リスクが高い場合に6秒モードを選ぶこともできるが、通常は画質優先の360度撮影が推奨される。360度全周からデータを取得する本方式は、金属アーチファクト(インプラントや修復物による画像ノイズ)の低減にも有効である。回転角度が大きいほどアーチファクトの影響を平均化できるため、本機は従来180度撮影中心だった機種に比べ、シャープで鮮明なCT画像が得られる利点がある。もっとも、患者の体格等で機構的に360度回転できない場合は270度で停止する場合もあるが、その場合でもハーフスキャンより良好な画質が期待できる。
さらに高度な画像改善機能として、オプションの金属アーチファクト低減(MAR)機能「NEODYNA MAR」が搭載可能である。これは朝日レントゲン独自のアルゴリズムによってインプラント体周囲の放射状ノイズを低減する技術で、360度撮影と組み合わせることで難治なケースでもより診断しやすい画像を得ることができる。他にも画像処理ソフトウェア「NEOSMART」による散乱線補正(シャープ処理)やビームハードニング補正(スムース処理)が標準搭載されており、インプラント同士が近接した部位の金属アーチファクト軽減にも効果を発揮する。撮影後のソフト処理で画質を整えるこれらの機能は、例えば細かな骨梁構造を強調したり、不要なノイズを低減して病変部を視認しやすくするなど、読影の精度と効率を高めるのに役立つ。
部分再構成機能はSOLIO XZIIの特筆すべき機能だ。これは一度撮影したCTデータから関心部位を再計算し、より微細なボクセルで画像再構成する技術である。具体的には、通常の撮影で得た100µmボクセル画像から、後処理でその一部を75µm(0.075mm)相当の超高精細画像に変換できる。例えばIモード(広範囲177µm)で顎全体を撮影した後、インプラント埋入予定部位のみを抜き出して51×54mm範囲・100µmや、さらに絞って40×50mm範囲・75µmの画像を生成できる。Dモード(100µm)で撮影した場合でも、40×50mmで75µmに再構成可能である。これにより追加被ばくなしに局所の微細構造を確認でき、再撮影による患者負担や時間ロスを防げるメリットが大きい。本機能は、細い根管の分岐や根尖部の微小病変を確認したり、インプラント埋入シミュレーションで骨質の微細な状態を評価したりする際に有用である。筆者の経験でも、従来は全顎の大まかな構造把握用と局所高精細用に2回スキャンせざるを得なかったケースがあったが、この部分再構成があれば1回の撮影で済み、患者説明までスムーズに進められるだろう。
セファロ(一方向頭部X線)撮影にも触れておこう。SOLIO XZIIにはパノラマ・CTに加え、オプションで頭部X線規格写真(セファロ)の撮影ユニットを付加できるモデル「XZII maxim」が用意されている。セファロ用にも画質向上が図られており、新型FPDセンサーのピクセルサイズは76µmと従来より大幅に高精細化している。具体的にはラインペア解像度が前機種比1.7倍に向上したとの社内データがあり、頭部X線写真で重要な細かなランドマーク(骨格の指標点)もより明瞭に描出できることが期待できる。加えてワンショット撮影方式を採用し、露光時間は約1秒未満と非常に短い。従来のスキャン方式セファロで問題であった、撮影中の患者の体動ブレや、センサー走査中に肩が触れて生じる画像ゆがみが解消され、小児でもクリアな側面規格写真が得られる利点がある。頭部X線写真は矯正歯科や外科的矯正の診断に不可欠であり、高画質・短時間で撮影できる本システムは、矯正専門クリニックにも大きなアピールポイントとなる。
以上のように、SOLIO XZIIは「より広く、より速く、そしてより精細に」というコンセプトでスペックが強化されている。これら数値上の性能が実臨床で何を意味するかをまとめると、以下のようになるだろう。まずパノラマ・セファロともに画質が向上したことで、日常のスクリーニング精度と患者説明用の資料品質が上がる。CTモードでは一度に広範囲を撮影でき、インプラントから親知らずまで歯科領域の主要な三次元診断ニーズを1台でカバーできる。撮影の高速化と先進のブレ補正機構により、リテイク(再撮影)のリスクは極めて低く抑えられる。もし万一エリア設定ミスがあっても、撮影前に予備撮影(ス cout)で前後左右上下の位置補正が可能なため、導入直後の不慣れな段階でも失敗を防ぎやすい。このようにハード・ソフト両面から画像の質と取得効率を高めている点は、現場での使い勝手に直結する重要な強みである。
互換性や運用方法
データ互換性と連携について、本製品は医用画像の標準規格であるDICOM形式による出力・保存が可能であり、他のシステムとの連携に支障はないと考えられる。取得したCT画像データは付属の画像閲覧ソフトウェア「NEOPREMIUM2」で表示・解析できるほか、DICOMデータとしてエクスポートすればサードパーティ製のインプラントシミュレーションソフトやガイド作製ソフトへの取り込みも可能である。例えば、他院の口腔外科に症例を紹介する際や、歯科技工所とサージカルガイド作製で連携する場合でも、撮影データを汎用形式で提供できるため情報共有は円滑に行える。朝日レントゲン独自のビューアを用いなくとも、一般的なDICOMビューアソフト上で断面図や3Dボリュームレンダリング表示が行えるので、既存の院内ネットワークや電子カルテへの組み込みも比較的容易である。パノラマ画像やセファロ画像についてもデジタル保存・プリントが可能で、必要に応じて紙面に高精細印刷して患者説明用資料や紹介状に添付することができる。
運用面の工夫として、本機を導入した場合の院内フローや留意点を整理する。まず撮影室の設置だが、前述の通り1.5m四方のスペースがあれば機器自体は収まる。ただし実際には患者の乗降や車椅子でのアクセスも考慮し、もう少しゆとりを見たレイアウトが望ましい。SOLIO XZIIは患者が立位・座位いずれでも撮影可能な構造で、垂直ストロークも780mmと広範囲に上下動するため、車椅子のままでも床上から高身長者まで幅広く対応できる。このような柔軟性ゆえ、撮影時の患者セッティングは比較的スムーズに行えるだろう。実際、独自開発の7点支持式ヘッドサポートと胸部固定グリップにより、患者の頭部・体幹をしっかり安定させた状態で撮影できるため、従来ありがちだった「あご台から顎がずれて前歯部がボケる」「姿勢が不安定で画像がブレる」といった失敗も起きにくい。操作手順としては、患者が入室する前にあらかじめPC上で撮影部位を選択すれば装置が自動で水平位置をセットして待機する機能があり、患者案内後はレーザーポインタ等で最終位置合わせをするだけでよい。必要に応じてX線露出前に低線量の予備撮影を行い、前後左右上下のズレを補正することも可能で、この際装置が自動で正確位置に再調整してくれるため、オペレーターの経験に左右されず常に的確なエリアで撮影できる。この予備撮影~自動補正のプロセスは数十秒程度で完了し、結果として「撮り直しゼロ」の安定運用に繋がる。
感染対策やメンテナンスの点では、口腔内を直接触れるパーツこそ少ないものの、顎や額を当てるヘッドサポート部分は患者ごとに消毒が必要である。幸い、本機の顎受けパッドや額当ては交換可能なパーツで、複数セットを用意しておけば使い回しの合間に消毒・乾燥させることが可能である。また、パノラマ撮影時に患者が軽く咬む位置決め用のバイトブロックも付属しているため、これもディスポタイプまたはオートクレーブ対応のものを症例ごとに交換する運用となる。撮影後の画像処理は撮影PC上で自動実行され、数十秒~1分程度で3D画像が表示可能だ。診療室のモニターとネットワーク接続しておけば、患者にその場で画像説明を行うことも難しくないだろう。筆者の知る限り、CT導入初期には「撮影したが画像を読影する時間がなく宝の持ち腐れになる」というケースも散見される。しかし本機の場合、パノラマ写真は従来通り数十秒で表示されるためまずそれをチェックし、3D再構成は後追いで完成次第確認する、といった効率的な運用もできる。画像のレンダリングを待つ間に他の診療作業を進め、後ほど落ち着いてCT断面を精査するといった段取りも可能だ。運用に慣れれば、診療の合間にCT解析を組み込んでも大きなタイムロスなく回せるはずである。
既存機器や他社システムとの連携も実務上は気になる点だろう。すでに院内に他社製のデジタルレントゲンシステム(例えば口内法センサーやパノラマ)がある場合でも、SOLIO XZIIはスタンドアロンで動作しつつ、画像をDICOM出力して院内サーバに保存する設定も可能である。つまりメーカーの垣根を越えた画像一元管理も工夫次第で実現できる。朝日レントゲン社は自社開発ソフトウェア「NEOPREMIUM2」を提供しており、他の朝日製機器(デジタル口内センサー等)と統合管理することもできるが、既存のワークフローを大きく変えたくない場合は撮影→DICOM保存のみ行い、閲覧はこれまでのビューワで行うといった最低限の導入も可能である。いずれにせよ、画像データの互換性という面では業界標準に沿っており、チェアサイドモニターや大型スクリーンに映し出して患者説明に用いることも容易である。
歯科医院経営者向け、経営インパクト
高額な設備投資である歯科用CTだけに、導入による経営面のインパクトは綿密に検討すべきである。ここではコストとリターンの両面から、本機導入による投資対効果(ROI)を考察する。
まず初期投資コストは本体価格が約1,500万円(税別)で、これに据付工事費用が加わる。既存のパノラマ装置と置き換える場合でも、CT対応の防護工事(遮へい壁や扉の鉛当量確認など)が追加で必要になるケースがある。仮に工事費や付帯設備費を数百万円と見積もると、総初期費用はおおよそ1,600~1,800万円規模となる。また、導入後の維持費としては年間の保守契約費が発生する。本製品は特定保守管理医療機器に指定され計画点検が義務化されているため、基本的にメーカー(または代理店)との保守契約締結は必須と考えてよい。契約内容によって費用は異なるが、フルメンテナンス契約では年間数十万円以上、簡易なパーツ保証程度でもそれに準じた費用がかかるだろう。例えば筆者が関与した他機種CTの例では、本体価格の約5~8%程度を年間保守費(点検校正・故障時出張費込み)として設定するケースが多かった。仮に本機でも年間80〜120万円程度(1,500万円の5〜8%)を保守予算と見込んでおけば、大きく外れることはないだろう。さらに消耗品や部品交換費用も長期的には考慮が必要だ。X線管球(球管)は寿命があるため7~10年程度での交換が想定されるし、FPDセンサーも経年劣化や故障リスクがゼロではない。これらの交換には数百万円規模の費用がかかることもあるため、購入後も減価償却費に加えて将来の設備更新積立を視野に入れた資金計画が望ましい。
こうしたコスト面に対し、収益への寄与を具体的に試算してみる。直接的な収益としては、CT撮影自体の診療報酬または自費収入が挙げられる。2025年現在、歯科用3D撮影は診断料・撮影料等合わせて1170点(約11,700円相当)の算定が可能である(条件を満たす場合)。患者の自己負担が3割であれば1回の撮影で約3,500円の収入、自費診療として実施する場合は医院が自由に価格設定できるが、一般的に1万円前後を患者に請求しているケースが多い。そのままでは1回数千~1万円の売上に過ぎないが、CT撮影は単体で完結する処置ではなく、その後の高額治療に結びつく 「起点」 となる点が重要である。例えば、CTを用いた精密診断ができることでインプラント治療を院内完結できるようになり、1本あたり数十万円の自費収入を新たに得られるようになるかもしれない。仮にインプラント埋入を年間20本(平均1本あたり利益20万円と仮定)増やせれば、それだけで年間400万円の利益増となり、機器代は4~5年で償却可能な計算である。また親知らずの難抜歯や歯内療法の難症例も、CTがあることで自院対応できる範囲が広がり、紹介せずに自ら処置することで収益化できるケースが増えるだろう。これまでCT設備の無い医院では、埋伏歯抜歯や高度な根管治療は大学病院や口腔外科に紹介していたものが、CT診断を武器に自院で対応可能となれば、患者の利便性向上と収益機会の拡大につながる。
もう一つの視点は診療効率とコスト削減効果である。CT導入によってチェアタイムが短縮できれば、その分他の患者を診療できるため機会損失を減らせる。例えば、外部の画像診断センターにCT撮影を依頼していた場合、紹介状作成や患者のアポイント調整など見えない労力と時間コストが発生していた。院内にCTがあればその場で撮影・診断が完結し、再来院の手間を減らせるため、結果的に治療開始までのリードタイム短縮によるキャンセルリスク低減や、患者満足度向上によるリピート増にも寄与する。筆者のクライアント医院でも、CT導入後に「インプラント相談から手術までの期間が半減し、患者さんの同意取得率が向上した」という声があった。これは経営的に見ると、治療成約率アップによる収益増という効果である。また、CTにより術前シミュレーションが精密に行えることで術中トラブルや追加処置が減り、材料ロスや時間外労働の削減にもつながる。例えば埋伏智歯抜歯でCT無しに挑み結局抜けずに大学病院送り…といった事態が避けられれば、患者の信頼低下や返金対応等の損失リスクも減るだろう。長期的には、CTによる適切な診断で再治療率が下がれば、保証対応や無償再処置に費やすコストの圧縮にもつながっていく。
以上のように、本機の導入効果は単に撮影料の収入だけで測れるものではなく、新たな自費診療メニュー創出による売上増と診療効率化・質向上による経費削減の両面からもたらされる。もちろん、こうした効果は医院の方針と活用次第で大きく差が出る。撮影件数や活用場面を具体的にシミュレーションし、自院の年間利益にどう貢献するかを数字で捉えておくことが重要である。保険診療中心でCTを活かす症例が月数件しかなければROIはマイナスかもしれないし、インプラントや矯正でフル活用できるなら大きなプラスとなろう。経営判断としては、初期費用の銀行借入に対する返済計画も踏まえ、何年で投資回収する目標かを定めて導入を決断することになる。その意味で、価格を抑えコンパクトさを追求したSOLIO XZIIは、「初めてのCT導入」でROIを重視する医院に適したモデルと位置付けられる。より大型で高額な他社CTと比べ導入ハードルが低いため、小~中規模クリニックでもチャレンジしやすいだろう。朝日レントゲン CTの価格設定はサービスや保守費も含めて適正と言えるか、ぜひ本項の試算を参考に吟味してほしい。
使いこなしのポイント
高性能な機器も使いこなせなければ宝の持ち腐れである。ここではSOLIO XZII導入後にその価値を向上するための運用ポイントを述べる。
まず導入初期の注意点として、スタッフ教育と撮影プロトコルの標準化が挙げられる。歯科用CTの操作自体は基本的にソフトウェアで撮影条件と範囲を選択しボタンを押すだけだが、患者ごとの最適な撮影モード選択や位置合わせのコツは経験がものを言う部分もある。メーカーによる据付時の操作説明会に加え、実際の患者でのトライアル撮影(もちろん許可を得て)を重ねてスタッフの習熟を図りたい。特にアシスタントや衛生士にも操作を任せる場合は、ポジショニングや前処置(義歯の除去確認、防護エプロン装着など)の手順をマニュアル化し、誰が担当しても一定の画質が得られる体制を整える必要がある。また、撮影適応の選別も重要なポイントだ。闇雲にCTを撮れば良いわけではなく、被ばくと費用対効果を考えて「ここぞ」というケースで的確に撮影する判断力が求められる。医療被ばくに関するALARAの原則(合理的に低く抑える)は歯科でも例外ではないため、院内でCT撮影のガイドラインを定め、インプラント・外科・難治症例の診断時には必ず撮る一方で、必要のないルーチン撮影は避けるといったルール作りも望ましい。
撮影時の実技的なコツとしては、患者の姿勢と固定具の使い分けがある。SOLIO XZIIは前述の通り固定具が充実しているが、義歯の有無や体格によって微調整が必要だ。例えば無歯顎症例では咬合器を使わず顎台のみで固定する形になるため、通常より頭部が後傾しやすい。その際は額部のパッド位置を微調整し、顎と額で軽く挟み込むように固定すると安定する。また、長時間じっとできない患者には6秒スキャンを選択するなど臨機応変さも必要だろう。小児や障がい者で協力が難しい場合には、鎮静や支台具の活用も視野に入れる。特にパノラマでは嘔吐反射が強い患者向けに部分的なパノラマ撮影(必要部位だけX線を当てるモード)が搭載されており、そうした機能を駆使することで患者負担を減らしつつ必要情報を得る工夫ができる。
院内体制としては、被ばく管理責任者の配置とルール作りも欠かせない。歯科医師が自ら放射線取扱主任を兼務することになるが、撮影ごとに被ばく線量を台帳に記録し、年1回は装置の精度管理チェックを実施するなど、法令に沿った運用を徹底する。加えて万一のトラブルに備え、CT停止時の診療フロー(近隣施設への紹介など)も決めておきたい。機器トラブルは朝日レントゲンの保守サポートが迅速に対応してくれるとはいえ、完全復旧まで時間がかかるケースも想定し、バックアッププランを用意しておくのが経営リスク管理の観点から望ましい。
最後に患者説明での活用ポイントについて。CT画像は診断だけでなく患者カウンセリングにも強力なツールとなる。例えばインプラントの相談では、CTの断面画像を見せながら「骨の厚みがこれだけしかないので増骨手術が必要です」と説明すれば、患者の理解度と納得感は飛躍的に高まる。従来の平面的なレントゲン写真では伝わりにくかった情報が、3D画像によって直感的に共有できるのである。筆者もCT導入直後は患者説明用に模型や図を用意していたが、実際のCT断面をタブレットに表示して説明するよう変えたところ、高額治療の同意率が上がった経験がある。患者側からすれば「先生は自分の状態を立体的に正確に把握してくれている」という安心感に繋がるようだ。SOLIO XZIIで撮影した画像データは高精細ゆえ拡大表示してもクリアであり、小さな病変も示しやすい。必要に応じて3D表示にして眺めてもらうことで、治療計画への興味と理解を深めてもらえるだろう。ただし注意したいのは、あまりに専門的な画像用語を並べたり複雑な断面を見せすぎたりしないことだ。患者説明では、画像はあくまで視覚的な補助と捉え、要点を絞って使うと効果的である。例えば「この黒い陰は骨が薄い部分です」「神経の位置はここで、距離が○mmあります」程度にシンプルに伝えるとよい。高度な機器を導入するととかく説明も冗長になりがちだが、患者目線を忘れずに活用すれば、CTは強力なコミュニケーションツールになる。
適応と適さないケース
高性能とはいえ万能ではない。本製品が真価を発揮する適応症例と、逆に慎重な判断が必要なケースを整理しておく。
まず適応が広がる代表例としてインプラント症例が挙げられる。骨の高さ・幅や神経管の位置、傾斜歯の有無など、インプラント埋入には欠かせない情報を事前に得られるため、CT無しでは見送っていたようなケースにも対応しうる。上顎洞底挙上(サイナスリフト)を伴う難症例や全顎的なインプラント計画でも、広いFOVで顎全体を一度に撮影できるXZIIならシミュレーションが一度で済み効率的である。また水平埋伏智歯や埋伏過剰歯の診断にも有用だ。顎骨内での歯や病変の三次元的位置関係が把握できるため、術式の難易度評価や隣接歯への影響予測が正確になる。これにより抜歯の可否判断や患者へのリスク説明もしやすくなる。さらに根管治療の難症例、例えば複雑な根管形態や根尖病変の広がりを疑うケースでは、部分再構成機能を使うことで微細な病変まで描出でき、治療計画の精度が上がる。歯根破折の有無判断や、外科的歯内療法を行う際の根の位置関係把握にもCTは有用である。重度歯周病で骨欠損形態が複雑なケースでも、残存骨の三次元形態を把握して適切な再生療法を検討できるため、CTが治療方針決定に役立つだろう。要するに、「従来の2Dレントゲンでは情報不足で治療が手探りになる」ような症例こそ、SOLIO XZIIの得意分野と言える。
一方、適さないケースや注意が必要な状況も認識しておきたい。まず、撮影視野が直径98mmに限られるため顎顔面全体の包括的評価には向かない。顎変形症の術前評価や気道スペース評価など、より広範囲の画像が必要な場合は、医科用CTやより大視野の歯科用CTが必要になる可能性がある。XZII maximではセファロ撮影が可能だが、これはあくまで頭部の2D規格写真であり、例えば顎関節の形態や鼻腔・咽頭まで含めた3D評価はこの機種のFOV外となる。次に金属アーチファクトが完全には避けられない点にも留意が必要だ。インプラントやメタル修復物が多数入った患者では、MAR機能でかなり低減できるとはいえ、部位によっては画像に写り込み診断を妨げることがある。金属だらけの患者を撮れば万能というものではないため、場合によっては対象エリアを絞ったり、診断自体は他の情報と総合するなどの工夫が要るだろう。また被ばくへの配慮も適応判断に影響する。妊娠中の患者や若年者では、CT撮影が本当に必要か慎重に検討すべきである(もちろん防護すれば歯科領域の被ばくは微量ではあるが、リスクとベネフィットを天秤にかける姿勢が大切だ)。経年劣化した歯内療法充填材が多い患者も要注意だ。ガッタパーチャやMTAによるアーチファクトは金属ほどではないが、根管内の評価を難しくする場合がある。そのような時は部分再構成で解像度を上げたり、コントラストを調整するなど画像調節のテクニックが必要だ。
適さないケースとは少し異なるが、導入したものの活用しきれない失敗パターンにも触れておきたい。例えば「CTを導入したが忙しくて読影に時間を割けず、結局インプラント以外ではほとんど撮っていない」という医院がある。これは宝の持ち腐れであり、経営的にも無駄が大きい。本機をフルに活用するには、院長自身がCT読影スキルを磨くことはもちろん、スタッフにも積極的に撮影を提案してもらえるよう症例カンファレンスを開いたり、過去症例をCT画像で振り返る勉強会を院内で行うといった工夫が有効だ。CTを撮れば新たな気付きや診断力向上があることをチームで共有し、「このケースもCT撮りましょうか」とスタッフから声が上がるくらいになれば活用は軌道に乗る。逆に、院長一人だけが意気込んでもスタッフが怖がって「被ばく多いから撮らない方が…」などと消極的では稼働しない。メリットとリスクを正しく理解し、チーム全員でCTを活かす意識を持つことが重要である。
読者タイプ別導入判断の指針
最後に、読者それぞれの診療スタイルに照らし合わせてSOLIO XZIIの導入適性を考えてみよう。医院の志向によってCT導入の是非や選ぶべき機種は変わってくる。本製品が特にマッチしやすい医院像、そうでもない医院像をタイプ別に示す。
1. 保険診療中心で効率優先の医院
う蝕処置や義歯・ブリッジ等がメインで、あまり高額自費治療は手掛けていない医院の場合、CT導入の優先度は高くないかもしれない。日常診療でCTが本当に必要となる場面が月に何件あるだろうか。おそらく難抜歯や難治性根管治療で時折出番がある程度ではROIは見合わない可能性がある。このタイプの医院では、まずは近隣口腔外科や画像診断センターとの連携で必要最低限を賄い、将来的にインプラントや再生療法など領域拡大を図るタイミングで導入を検討するのが堅実である。ただし、保険診療中心でも患者満足度向上や差別化のためにCTを置く価値はゼロではない。地域に競合が多い場合、「うちはCT完備で精密診断します」とアピールすることで新患獲得につなげる戦略も考えられる。この場合は本機のようなコンパクトCTが費用面でも適している。導入するなら、インプラントオペを月1件でも増やすなど、具体的な収益プランを描いてからの方が良いだろう。
2. 高付加価値な自費診療を強化している医院
インプラントやセラミック治療、矯正など自費率が高い医院にとって、CTはほぼ必須のインフラと言える。すでに他院に依頼してCT撮影を行っているなら、院内完結にすることで患者の利便性と治療成約率がさらに向上する可能性がある。このタイプの医院では、むしろCTを導入しない理由が見当たらない。SOLIO XZIIは画質と機能に優れつつ大型機よりは価格を抑えているため、投資対効果は高いと考えられる。例えばインプラント中心の自由診療クリニックであれば、CT無しでは診療コンセプト自体が成立しないし、矯正メインの医院でもセファロとCTの両方を駆使した総合的な治療提案が可能となり差別化につながるかもしれない。既に旧式のCTを持っている場合も、画質向上や機能充実を目的に買い替える価値があるだろう。特にセファロ画質向上は矯正専門医には魅力的で、76µmの高精細画像はトレーシング精度や解析の信頼性アップに直結する。また自費診療の患者層は医院に良い設備があること自体に安心感や付加価値を感じる傾向があるため、マーケティング的にもプラスに働く可能性がある。
3. 外科・インプラント中心の口腔外科系医院
親知らず抜歯やインプラントを日常的に多数こなすような口腔外科系クリニックでは、CT無しの診療はもはや考えられないだろう。すでに何らかのCTをお持ちの場合は、その性能が十分かを再評価したい。SOLIO XZIIは高精細モードで75µmまで描出可能なため、細かな根の形態や微小骨折線まで見落としたくない外科系のニーズに応えうる。コンパクト設計とはいえ、一度に顎全体を撮影できる視野も有しており、多発埋伏歯や複数インプラント症例でもストレスなく活用できる。オプションのMAR機能でインプラント埋入後の経過観察CTもノイズ少なく撮影できるため、術後管理にも役立つだろう。外科系では患者紹介も多いが、院内に高性能CTがあることは他院からの信頼獲得にも繋がる。紹介元の一般歯科医に「うちでCT撮って精査しました」とフィードバックすれば、その先生も安心して送り出せるメリットがある。強いて懸念を挙げるなら、外科系クリニックは症例によってはFOVが98mmでは不足し両顎や気道まで見たいこともある点だ。しかしその場合は医科用CTを使う選択もできるので、日常診療の9割以上をカバーできる本機は導入価値が高いと言えよう。
4. 矯正歯科中心の医院
矯正専門医にとってセファロ分析は必須であり、従来は2Dセファロ写真のみで治療方針を立てていた。しかし近年は3Dデータを併用した矯正診断(例えば顎骨の非対称評価やデジタル矯正システムへの活用)が広がっており、CTを導入する意義が増している。SOLIO XZII maximならセファロとCTの3 in 1として一台で完結するため、省スペースで導入しやすい。高精細な76µmセファロ画像に加え、埋伏犬歯の位置関係把握や顎関節の評価にCTを活用できれば、診断の精度が飛躍的に上がるだろう。実際、埋伏歯の開窓牽引をCTでシミュレーションしてから行えば、無駄な切開や迷いが減り術者・患者双方の負担軽減につながる。矯正患者は小児から成人まで幅広いが、小児でも1秒以内でセファロ撮影が終わる点は安心材料である。ただし矯正単科の場合、外科手術を併用しない限りCT撮影頻度はそれほど多くないかもしれない。月数件程度の撮影のために高額設備を持つのは贅沢という意見もあろう。その場合は他院との共同利用や、簡易な低被ばくCT機種を選ぶ手もある。しかし、本機はパノラマも撮れるため一般診療のX線装置としても兼用できる点に留意したい。矯正専門医であっても、小さな虫歯チェックや経年的な歯槽骨の観察にパノラマ写真はしばしば必要となる。SOLIO XZIIならパノラマ+セファロの用途だけでも導入価値があり、将来CTを本格活用する素地として先行投資しておくのも一つの戦略と言える。
以上、医院タイプ別に見てきたが、総じて言えるのは「将来的にCTを使った診療を柱に据えたいかどうか」が導入判断の分かれ目ということである。本機は価格・機能のバランスが良く、多くの一般歯科医院にマッチする設計だが、宝の持ち腐れにしないためには院長の明確なビジョンが必要だ。自院の5年後10年後を見据え、CTを活かしたどんな診療を展開したいのかイメージできるなら導入の価値は大いにある。逆に現状の延長線上で漫然と導入しても、おそらく十分には使いこなせないだろう。ROIという視点では、CTによって生み出される将来のキャッシュフローを具体的に描き、それが支出を上回るかを冷静に判断すべきである。朝日レントゲンのSOLIO XZIIはそうした戦略的導入を検討する読者にとって、有力な選択肢の一つとなる製品である。
よくある質問(FAQ)
Q. 歯科用CTの被ばく線量は患者にとって安全か?
A. 歯科用コーンビームCTの被ばく線量は、医科のCTスキャンと比べると桁違いに少ない。部位や撮影条件にもよるが、本機で顎骨全体を撮影した場合でも数十マイクロシーベルト程度と報告されており、これは胸部エックス線写真数枚分~自然放射線数日分ほどの線量である。パノラマ撮影に至ってはさらに低線量で、デンタルX線数枚分程度である。したがって、適応がある限りは患者への利益が被ばくリスクを上回ると判断できる。ただし不要な撮影は避け、低被ばくで済むモード(例えば半分の範囲だけ撮る部分撮影など)を活用して、ALARA(できるだけ低く)の原則に従った運用を心掛けるべきである。また妊娠中の患者などには基本的にCT撮影は控えるか、どうしても必要な場合は防護エプロンや頸部シールドを使用するなどの配慮を行う。適正に使えば非常に安全性の高い装置だが、患者説明時には「必要最小限の低被ばくで撮影する」ことを丁寧に説明し、不安を取り除くようにしたい。
Q. SOLIO XZIIの撮影データは他社ソフトやシステムで利用できるのか?
A. はい。SOLIO XZIIで取得したCT画像やパノラマ画像は、一般的なDICOM形式で出力・保存できるため、他社の画像ビューアやシミュレーションソフトが役に立つ可能性が高い。例えばインプラントプランニング用のサードパーティソフト(シンプラントやノーベルガイド等)にもDICOMデータを取り込んでシミュレーションが行える。実際、朝日レントゲンの提供する専用ソフト「NEOPREMIUM2」は使わず、既存の電子カルテやPACSにCT画像を連携させている医院もある。パノラマ写真についてもJPEGやTIFF等の汎用画像形式に変換できるため、他社製の画像管理ソフトに取り込んでカルテ画面に表示するといった運用に期待できる。セファロ画像も同様で、矯正分析ソフトに画像を読み込ませてトレースするといったことができる。要するに、SOLIO XZIIは「朝日レントゲンの機械だから自社ソフトでしか見られない」ということはなく、オープンなデータ互換性を備えている。過去の症例データを将来他のシステムに移行する場合も、DICOM標準に沿っている限り資産が無駄になる心配は少ないだろう。
Q. 保守や故障対応の体制は?ランニングコストも心配です
A. 朝日レントゲンは全国に9か所のサービス拠点と専用サポートセンターを配置しており、万一の故障時にも迅速に対応できる体制を整えている。SOLIO XZIIは特定保守管理医療機器なので、導入時にメンテナンス契約を結ぶのが基本となる。契約内容には、年1~2回の定期点検・精度校正、緊急故障時の優先対応、消耗部品の交換割引などが含まれる。契約プランは複数用意されており、フルサポートから部分保証、スポット点検まで医院の予算とリスク許容度に合わせて選べる(詳細は営業担当者に確認)。ランニングコストとしては、その保守契約費用が主なものになるが、前述の試算の通り年あたり数十万~百数十万円程度が目安だ。これには故障時の出張費や軽微な修理費も含まれるため、突然多額の修理費が発生するリスクを平準化できるメリットがある。また、仮に保守契約外でも、不具合発生時には朝日レントゲン社が自社エンジニアを派遣して修理対応する体制があるので安心だ。筆者の知るユーザー医院でも、問い合わせから概ね翌日~2日以内に技術者が駆け付け、部品交換で復旧したケースが多い。どうしても時間を要する大掛かりな修理では、代替機の貸し出し対応なども検討してくれる。経年劣化部品(X線管球など)の交換費用は別途かかる場合もあるが、そのタイミングも定期点検で把握できるため計画的に予算化可能である。電気代に関しては、CTは常時稼働する機器ではないので医院全体の光熱費に大きな影響はない。撮影時のみ一時的に消費電力が上がる程度で、待機時は省エネモードも備わっている。総じて、定期的な保守点検さえ適切に行えば、SOLIO XZIIは長期間安定して稼働するよう設計されており、運用コストも許容範囲と言えるだろう。
Q. 歯科用CT撮影は保険で算定できる?患者への費用負担は?
A. 一定の条件下では算定に期待できる。保険診療でCTを撮影する場合、基本的には「通常のレントゲンでは診断困難でCTが必要」と認められるケースに限られる。例えば水平埋伏智歯の抜歯計画、難治性の根尖病変や根管の解剖評価、顎骨嚢胞の範囲診断などが該当する。診療報酬点数は2025年時点で、CT撮影を行った月に診断料450点+三次元撮影料600点+電子画像管理加算120点=計1170点を算定できる。これは患者負担3割の場合で約3,510円、1割負担なら約1,170円が患者自己負担額となる。つまり保険適用内では患者さんに大きな負担なくCT検査を提供できる。一方、インプラントや矯正など保険外診療の場合は自費となる。この場合、CT撮影料を単独で設定して別途請求することもできるし、インプラント手術代等に含めてパッケージ料金とする医院もある。自費のCT料金相場は1回あたり5,000~15,000円程度と様々だが、多くのクリニックでは1万円前後に設定しているようだ。患者への説明では「高精度な診断にはCTが必要で、そのための費用がかかる」ことを事前にしっかり伝えることが大切である。なお、自費診療であっても医療費控除の対象にはなるので、領収書発行の際に「歯科診断用エックス線検査」と明記しておくと患者さんに親切だ。保険算定要件については改定で変わる可能性もあるため、導入時には最新の点数表を確認し、算定漏れや過剰算定に注意して運用する必要がある。
Q. 機器の耐用年数はどのくらい?買い替えのタイミングは?
A. 税法上の耐用年数は一般的に「医療用機械器具」で5~6年と定められているが、実際の使用可能期間はそれ以上であることが多い。歯科用CTの場合、適切に保守すれば10年前後は十分実用に供せるだろう。朝日レントゲンの旧モデルでも10年以上にわたり稼働し続けている事例は珍しくない。本機SOLIO XZIIも堅牢な設計で、主要部品の定期交換を行えば長期使用が期待できる。ただし技術進歩も早いため、画質や機能の陳腐化を考慮すると7〜8年程度を一つの目安に次世代機種へのリプレースを検討する医院が多いようだ。実際、先代のSOLIO XZシリーズも発売後約5年で本機にバージョンアップしており、その間にセンサー技術や画像処理が飛躍的に進歩している。よって耐久性的には10年使えても、経営戦略的には7〜8年で減価償却を終え、後継機への更新も視野に入れるのが理想と言える。なお買い替え時には古い機器の下取りやリセールも可能だ。とくに動作品であれば中古市場で一定の値が付くこともあるため、廃棄してしまうより専門業者に相談すると良い。いずれにせよ、長く使うほど性能差が開いていくのが医療機器の宿命なので、耐用年数を過ぎたら無理せず新型導入を検討することをお勧めする。その意味でも、本機の導入でまずは約7年のスパンでROI計画を立て、順調に軌道に乗れば次期機へのスムーズな移行につなげる…という長期視点が経営上望ましいだろう。
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