歯科医師は減少している?時代背景や地域ごとの違い、将来の推移予想について解説!
歯科医師は本当に減少しているのか?
最新の統計から見る歯科医師数の現状
日本の歯科医師数は近年まで増加傾向が続いていましたが、2020年(令和2年)頃を境に減少に転じたことが統計から確認されています。厚生労働省の調査によれば、令和4年末(2022年末)時点の全国の歯科医師数は約10万5,267人で、2年前(令和2年)に比べておよそ2,000人減少しました。このように歯科医師数は2020年前後にピークを迎え、以降わずかながら減少に転じているのが現状です。かつて「コンビニの数より歯科医院の数が多い」と言われた時期もあり、歯科医師過剰とも見られていましたが、実際には人口あたりの歯科医師数はOECD加盟国で中位程度にとどまっています。例えば2022年時点で人口10万人あたりの歯科医師数は81.6人で、前年よりわずかに減少しています。このようなデータから、日本の歯科医師数は緩やかながら減少傾向に入っていることが読み取れます。
一方で、歯科診療所の数も減少傾向が報告されています。全国の歯科診療所数は平成29年(2017年)に約6万8947軒でピークに達しましたが、そこからすでに減少が始まり、令和5年(2023年)時点では約6万6千軒程度と減少しています。これは歯科医師自身の減少や高齢化に加え、人口減少による患者数減少や地域偏在など複合的な要因で歯科医院の淘汰が進んでいることを示唆しています。以上のように、現在の日本では歯科医師数が増加から減少へと転換しつつあり, 歯科医療提供体制にも変化が生じ始めているのです。
歯科医師数の推移と時代背景を振り返る
昭和期の歯科医師不足と急増の経緯
現在では歯科医師が「多い」と言われる日本ですが、過去を振り返ると昭和中期には深刻な歯科医師不足の時代がありました。昭和40年代(1960年代後半)当時、人口10万人あたりの歯科医師数は30人程度に過ぎず、国民の歯科医療ニーズに対して明らかに供給が追いついていない状況だったのです。この歯科医師不足を解消するため、国は1970年代以降に全国各地で歯科大学・歯学部の新設を奨励しました。「10万人あたり50人の歯科医師」を目標に掲げ、多くの歯科大学が設立された結果、歯科医師の数は急増していきました。実際、1970年代から1980年代にかけて大量の歯科医師が養成され、その世代が現在60代となって歯科医療を支えている背景があります。
このように、昭和後期には国策として歯科医師の大幅増員が行われ、歯科医師不足の解消と口腔衛生の向上に大きく貢献しました。しかし急増の副作用として、1990年代以降は「歯科医師過剰」の声も聞かれるようになります。人口あたり歯科医師数が急速に増えたことで、特に都市部では「歯科医院が飽和状態」と言われ、コンビニエンスストアの数より歯科医院が多いという比喩まで生まれたほどです。昭和の終わりから平成にかけての時代背景として、歯科医師不足から一転して過剰供給への懸念が出てきたことが重要なポイントです。
歯科医師過剰への対策として取られた施策
歯科医師数が急増し飽和状態が指摘される中で、国や関係機関は歯科医師数の適正化に向けた施策を講じ始めました。特に1980年代後半から1990年代にかけて、当時の文部省(現・文部科学省)は歯学部の入学定員削減に着手しています。具体的には、新設された歯科大学・歯学部の定員を抑え、既存大学の定員も段階的に削減することで、将来的な歯科医師の供給を絞る方針がとられました。これにより1990年代以降、歯科医師国家試験の合格者数も徐々に抑制されるようになります。事実、平成に入ってから国家試験合格率は従来の80%前後から60%台に低下し、年間の合格者数もおおむね2,000人程度に抑えられてきました。
これらの施策の結果、日本の歯科医師数の増加ペースは2000年代に入って鈍化し、ようやく供給過剰の懸念に歯止めがかかったとされています。しかし一方で、その反動として将来的な歯科医師不足への懸念も指摘されるようになりました。つまり、歯科医師養成数の抑制策は一定の効果を上げたものの、長期的には世代交代の停滞や地域偏在など新たな課題を生む可能性があったのです。当時の政策決定者もこうしたジレンマは認識しており、歯科医師数の適正水準や地域配置について議論が行われてきました。このように時代背景を振り返ると、歯科医師数の推移は「不足」と「過剰」の間で政策的に揺り動かされてきたことが分かります。
歯科医師数が減少に転じたのはなぜ?
歯科医師国家試験の合格者減少と要因
近年歯科医師数が減少し始めた背景には、新規歯科医師の供給数が抑えられていることが大きな要因として挙げられます。前述の通り、1990年代以降に歯科医師国家試験の合格者数は年間2,000人前後に抑制されてきました。特に直近では国家試験の難易度が上がり、合格率も60%台前半で推移しています。例えば、厚生労働省の発表によれば平成23年(2011年)の第104回歯科医師国家試験では合格者数約2,400名でしたが、最新の令和6年(2024年)の第117回試験では2,060名と合格者数が大きく減少傾向にあります。国家試験合格者数の減少は、新たに歯科界に参入する若手歯科医師の減少を意味し、総数の減少に直結します。
試験合格者減少の背景には複数の要因が考えられています。一つは試験内容の高度化です。最近の国家試験では在宅医療や全身管理など、本来は歯科医師になってから学ぶような分野の知識まで問われる傾向があり、難度が上がっているとの指摘があります。また、政府・大学側の方針として「歯科医師過剰」を懸念し合格者数を抑制する意図があったとも言われます。ここ10年ほど合格者数を毎年2,000人前後に抑えてきたこと自体が、結果的に若手歯科医師の供給不足を招きつつあるのです。つまり、歯科医師国家試験の難化と合格者減少という要因が、近年の歯科医師数減少の一因となっていると考えられます。
高齢化による歯科医師の引退と後継者不足
もう一つ重要な理由が、歯科医師の高齢化と大量引退の時代を迎えつつあることです。現在、日本の歯科医師の年齢構成を見ると、50代・60代が主要なボリュームゾーンとなっています。令和4年末時点で最も多い年齢層は60代(23,566人)、次いで50代(22,398人)で、70代以上も12,833人存在し、50代以上で全体の半数以上(約6万人)を占めています。一方、20代の歯科医師は5,963人、30代でも16,942人程度にとどまり、若年層が相対的に少ない状況です。このことから今後10~20年の間に大量の歯科医師が高齢に達し引退する一方、若手の補充が追いつかない可能性が高まっているといえます。
現実に、歯科医師の高齢引退に伴う後継者不足は各地で顕在化し始めています。調査によれば、高齢の開業歯科医師が引退を考える際、「自分の歯科医院を継いでくれる後継者が決まっていない」ケースが約9割にのぼるとの報告があります。その結果、院長が高齢のまま細々と診療を続け、患者対応に限界が生じたり、院長が体調を崩すとその地域の歯科診療が途絶えてしまったりするリスクが指摘されています。高齢歯科医師の引退が進むと就業歯科医師数の大幅な減少が予想されるため、実際に歯科医師数減少へ拍車がかかるでしょう。このように、ベテラン歯科医師層の大量引退と後継者難が相まって、歯科医師数の減少に大きな影響を及ぼしているのです。
都市部と地方で歯科医師数にどんな差がある?
都市部に歯科医師が集中する背景
日本の歯科医師数の問題を考える際には、地域による偏在(都市部への集中と地方での不足)も無視できません。統計上も、都道府県間で人口あたり歯科医師数には大きな差があります。令和4年時点で人口10万人あたりの歯科医師数を見ると、東京都は116.1人で全国最多であるのに対し、最少の青森県は55.9人と2倍以上の開きがありました。また都道府県別に100人を超える水準だったのは東京のほか徳島県、福岡県のみで、全国平均(81.6人)を上回っていたのも10都府県に限られています。多くの道府県では全国平均にも届かない歯科医師密度しかなく、地方ほど歯科医師が少ない傾向が明らかです。
なぜこのように都市部に歯科医師が集中するのでしょうか。その背景には都市部の方が患者数が多く経営が成り立ちやすいことや、歯科医師自身が都市部での就業を志向することが挙げられます。都市には人口が集中し、歯科治療のニーズが高い上に、給与水準や勤務条件も地方より恵まれていることが多いため、若い歯科医師ほど大都市圏で勤務医や開業医になる傾向があります。さらに、歯科大学の多くも首都圏や大都市に所在するため、地元を離れて都市の大学で学んだ若手歯科医師がそのまま都市圏に定着してしまうケースも少なくありません。こうした要因が重なり、都市圏への歯科医師偏在が進んできたと考えられます。
地方で進む「無歯科医地区」の現実
都市部に歯科医師が集まる一方で、地方や過疎地域では歯科医師不足が深刻化し、「無歯科医地区」と呼ばれる歯科医療過疎地が数多く存在しています。厚生労働省や関連団体の調査によれば、歯科医療機関が全く存在しない「無歯科医地区」は全国で784地区、1カ所しかなく利用が困難な「準無歯科医地区」が465地区あり、合わせて1,249地区が歯科医療過疎地域となっています。これらは半径4km以内に歯科医院がなく、50人以上の住民がいる地域と定義され、まさに歯科診療を受けたくても受けられない地域です。
具体的に地方で歯科医師が不足する典型例として、先述の青森県や島根県、沖縄県など人口10万人あたり歯科医師数が60人を下回る県が挙げられます。これらの地域では、高齢者を中心に虫歯や歯周病の治療を受けたくても近隣に歯科医院がない、あるいは遠距離まで移動せざるを得ないケースが現実に生じています。厚生労働省の調査でも、要介護認定を受けた高齢者のうち実に64.3%が何らかの歯科治療を必要と判断されたにもかかわらず、実際に歯科医院で治療を受けられたのはわずか2.4%に過ぎなかったという報告があります。この背景には、介護が必要な高齢者が通院できる範囲に歯科医療提供者がいないという地方特有の事情が大きいと考えられます。つまり、地方では歯科医師不足により口腔ケアの需要に応えきれていない現実が浮き彫りになっており、地域格差が歯科医療の分野でも重大な課題となっているのです。
歯科医師不足で生じる問題とは?
地域医療への影響と受療格差の拡大
歯科医師数の減少や地域偏在が進行すると、国民が適切に歯科医療を受ける機会にも支障が生じる恐れがあります。前述の通り、無歯科医地区では高齢者が必要な治療を受けられない状況があり、これは口腔の健康悪化が全身状態の悪化につながるリスクを高めます。例えば、歯科治療が行き届かないことで十分に咀嚼できず栄養状態が悪化したり、口腔内の感染症が肺炎など全身疾患を誘発したりする可能性があります。こうした歯科医療へのアクセス格差は高齢化社会において放置できない問題です。
また、都市部と地方で歯科医療資源の差が大きいと、地域による健康格差も広がりかねません。都市部では高度な歯科治療や専門医療に比較的容易にアクセスできる一方、地方では虫歯の抜歯や義歯作製といった基本的治療さえ受けにくい地域があります。特に今後、都市部でもし歯科医師数が減少傾向となれば、地方ではさらに急速に歯科医師が減ってしまうことが懸念されます。そうなると地方住民は都市部まで遠方通院を余儀なくされるなど、患者側の負担が飛躍的に増大します。歯科医師不足によるこうした受療格差の拡大は、医療の公平性や地域活性化の観点から看過できない大きな問題です。
歯科医院の後継者問題と医療提供への支障
歯科医師不足が進むと、歯科医院そのものの存続にも支障が出てきます。特に個人開業医が多い歯科業界では、院長の引退時に後継の歯科医師が見つからなければ、その地域の歯科医療拠点が失われてしまいます。現在、後継者不在の歯科診療所が多数報告されており、高齢の院長がやむを得ず高齢のまま診療を続けているケースも少なくありません。このような状態では、診療できる患者数に限界が生じたり、院長の健康問題で突然休診・廃業になるリスクも高まります。実際に、地方では高齢院長が亡くなったり体調を崩したりした途端に、その町から歯科医院が消えてしまった例もあります。後継者難による歯科医院閉鎖は、地域住民の歯科医療アクセスを断つ深刻な事態を招きかねません。
さらに歯科医師不足は、既存の歯科医療従事者の負担増にもつながります。人手が足りないために1人の歯科医師が抱える患者数や業務量が増え、結果として診療の質低下や待ち時間増大を招く恐れがあります。求人面でも、歯科医院側がどれだけ新卒や若手の歯科医師を雇用したくても「募集をかけても人が見つからない」という声が全国的に多く聞かれます。実際、歯科医師の求人倍率は13倍以上と非常に高く(2024年4月時点、一般新卒求人倍率1.71倍と比較しても突出)、慢性的な人手不足を示しています。これは歯科医院間で歯科医師の争奪戦が起きていることを意味し、経営上も待遇改善など負担が増す要因となります。総じて、歯科医師不足の進行は歯科医療提供体制の安定性を揺るがし、地域医療の質と持続性に深刻な影響を及ぼすものと言えるでしょう。
将来の歯科医師数はどう推移していく?
今後の歯科医師数の見通しと需要の変化
上述のような傾向から、今後日本の歯科医師数は緩やかながら減少が続く可能性が高いと見られています。現時点でも歯科医師の総数はピークを過ぎて減少に入りつつあり、この流れが大きく逆転する兆候はありません。むしろ、これから2025年以降、本格的に団塊の世代(1947~49年生まれ)の歯科医師が70代後半となり引退を迎えることで、歯科医師不足の時代が訪れるとの指摘もあります。ある試算では、現在の養成ペースのまま推移した場合、歯科医師の人口10万対比率は2050年代に大幅低下し、再び1970年代並みの水準に戻る可能性が示唆されています。このため、中長期的には日本の歯科医師数は漸減傾向をたどり、地域によっては深刻な歯科医不足状態が常態化する恐れがあります。
もっとも、歯科医師数の将来推計には不確定要素もあります。政府や関連団体が養成数の見直しや配置転換策を講じれば、減少幅を緩和できる可能性もあります。また、現在は歯科医師がやや過剰とも言われる首都圏でも、人口減少により患者需要が減れば一人当たりの必要数は変化するでしょう。興味深い点として、日本歯科医師会(日本歯科医師連盟など)からは「2030年代前半まではむしろ歯科医師は過剰気味」との予測もあり、国家試験合格者数をさらに減らして年間1,500人程度に抑えるべきとの提言もなされています。これは現在の高齢歯科医師が一斉に引退する前提での需給見通しですが、引退時期が後ろ倒しになれば過剰状態が長引く可能性があるためです。したがって、将来の歯科医師数は政策対応や歯科医師の就業動向によって増減し得るものであり、現状の延長線上で一概に不足に陥るとは断定できない面もあります。
歯科医療ニーズの増加と求められる役割
歯科医師数の将来動向を考える上では、歯科医療ニーズそのものの変化にも目を向ける必要があります。日本は超高齢社会に突入し、今後も高齢者の割合が増えていくと予想されています。高齢者が増えるということは、歯を失うリスクや歯科治療・口腔ケアを必要とする人口が増加することを意味します。実際、要介護高齢者の大多数が何らかの歯科治療ニーズを抱えている一方で、その多くが十分な歯科医療を受けられていない現状があると前述しました。さらに、近年は歯科領域が全身の健康維持や生活の質(QOL)向上に直結する重要な分野として注目されています。口腔の健康が糖尿病や心疾患、認知症予防にまで関与することが明らかになるにつれ、虫歯や歯周病の治療のみならず、予防歯科や全身管理における歯科医師の役割が拡大しています。
こうした状況下で、たとえ歯科医師数が現状維持や微減で推移したとしても、歯科医師一人ひとりに求められる役割は今後ますます大きく、多様化していくでしょう。例えば、高齢者施設や在宅への訪問歯科診療の需要は高まる一方であり、地域包括ケアシステムの中で歯科医師が果たすべき役割は拡充しています。また災害時の検視など「災害歯科」の分野での貢献や、要介護者のオーラルフレイル予防など、従来想定されていなかった分野への関与も広がっています。歯科医師不足が懸念される将来だからこそ、歯科医師の働き方改革やチーム歯科医療の推進、歯科衛生士・技工士との連携強化などによって少ない人数でも質を維持しつつ需要に応えていくことが求められます。つまり、単純な頭数の議論以上に、今後の歯科医療需要にどう対応するかという質と体制の議論が重要になってくるのです。
歯科医師不足に備えるための取り組み
国による適切な配置への検討と支援策
歯科医師数の減少や偏在に対応するため、国も重い腰を上げ始めています。厚生労働省では2025年(令和7年)に「歯科医師の適切な配置等に関するワーキンググループ」を立ち上げ、現在の歯科医師配置の実態把握と将来の必要歯科医師数・配置の在り方について本格的な議論を開始しました。この場では、地域差を是正するためにどのような施策が必要か、例えば歯科医師の地域偏在解消に向けたインセンティブ制度(地方勤務した若手への奨学金返還免除など)や、無歯科医地区への遠隔歯科医療や巡回診療の導入なども検討テーマとなっています。政府はまた、歯科医師不足が深刻な地域への情報提供やマッチング支援、自治体との協力による赴任支援など、政策的な誘導策にも乗り出しています。
加えて、歯科医師の絶対数確保に向けた養成数の見直しも議論されています。仮に今後、想定以上に急激な歯科医師減少が起きる兆しがあれば、歯科医師国家試験の合格者数(ひいては歯学部定員)の弾力的な増加も視野に入れる必要があります。実際、医学部では医師偏在対策として地域枠入試や定員増を行った例があり、歯科でも将来的に定員是正による人員確保策が取られる可能性があります。国としては、現在の緩やかな減少傾向を注視しつつ、将来に備えて歯科医師数の需給バランスを継続的にモニタリングし、迅速に政策介入できる体制を整えつつあります。重要なのは、質の高い歯科医療を全国どこでも享受できるように、人材の数と配置の両面から備えることだといえます。
地域や大学が進める人材確保の工夫
現場レベルでも、歯科医師不足に備えた様々な取り組みが始まっています。例えば、歯科医師の地域定着に力を入れている自治体では、地元出身の歯科学生に奨学金を給付し、卒業後一定期間地元で勤務することを促す制度を設けるところがあります。また、都市部の歯科医師を週末だけでも無歯科医地区に派遣する「歯科医師ボランティア診療」の仕組みづくりなど、地域独自の創意工夫もみられます。こうした取り組みは、地方の住民にとって貴重な歯科医療機会を提供するとともに、都市部の歯科医師に地域医療への貢献意識を芽生えさせる効果も期待されています。
また、歯科大学や関連団体も人材確保と活用に向けた工夫を凝らしています。一般社団法人日本私立歯科大学協会では、地域包括ケアシステムを支える人材育成の観点から、在学中から地域医療や訪問歯科に関する教育を充実させています。さらに、地方の歯科医師不足に対応するために、歯科医師が複数の診療科や介護サービスを一体的に提供できる「多機能歯科診療所」の設置を支援する取り組みも進められています。これは、一つの拠点で一般歯科だけでなく訪問診療や口腔リハビリ等も担える体制を作ることで、少ない人員でも地域住民の多様なニーズに応えようというものです。加えて、現役歯科医師に対しても生涯研修を通じて新しい分野(在宅歯科医療や全身管理など)の知識習得を促し、少人数でも質の高い歯科医療サービス提供ができるよう支援が強化されています。
このように、歯科医師不足の時代に向けて国・地域・教育機関が一体となり様々な対策を講じ始めています。最も重要なのは、時代のニーズに即した歯科医療提供体制を柔軟に構築していくことです。歯科医師という職業は0歳から100歳まで全世代の生活を支える重要な役割を担っており、時代背景によって求められる数や役割も変化します。減少傾向にある今だからこそ、一人ひとりの歯科医師が幅広い領域で活躍できるよう環境を整え、どの地域においても口腔の健康が守られる社会を目指す取り組みが今後ますます求められていくでしょう。