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歯科医師の生涯年収は?地域や年代別の違い、勤務医・フリーランスとの違いなど解説!

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歯科医師の生涯年収はどれくらい?

歯科医師の平均から算出した生涯年収: 歯科医師の生涯年収とは、現役期間中に得られる総収入のことです。歯科医師は高収入の専門職とされ、年間の平均年収も一般的な職種に比べて高い水準にあります。厚生労働省の令和5年「賃金構造基本統計調査」によれば、歯科医師全体の平均年収はおよそ850万円程度と報告されています。仮にこの水準で25歳前後から60~65歳程度まで働くとすると、生涯に稼ぐ総額は3億円台にのぼる計算になります。実際、あるシミュレーションでは歯科医師の生涯賃金は約3.15億円と試算されています。この数字は、日本人全体の平均的な生涯賃金(約1.9億円)に比べて1億円以上多い計算で、歯科医師という職業の経済的メリットを示す一つの指標と言えるでしょう。

日本平均と比べた歯科医師の生涯年収: 年間平均850~900万円程度という歯科医師の収入は、職業全体の中でもトップクラスです。厚労省の統計では歯科医師は平均年収ランキングで全職種中7位(約800万円)に位置しており、医師(約1,300万円)には及ばないものの公認会計士や大学教授と肩を並べる水準でした。そのため、生涯年収でも一般的な会社員より高額になる傾向があります。ただし注意したいのは、この生涯年収はあくまで平均的なモデルケースであり、実際の金額は働き方やキャリアによって大きく変動するという点です。例えば、勤務歯科医として定年まで勤める場合と、途中で自ら開業して経営者となった場合とでは、生涯に得られる収入に大きな差が生じます。ある開業支援企業の試算によれば、35歳で開業して65歳まで経営を続けたケースでは、勤務医を続けた場合に比べて生涯収入に1~2億円ものアドバンテージが生まれるとの試算結果もあります。このように、歯科医師の生涯年収は一概に○億円と断言できるものではなく、キャリア選択や働き方次第で数億円規模の差が出る可能性があることを念頭に置く必要があります。

地域によって歯科医師の年収は違うの?

都道府県別の歯科医師年収ランキング: 歯科医師の収入は勤務する地域によって差が出ることも知られています。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では都道府県別の平均年収データも公表されていますが、そのランキングを見ると少々意外な結果になります。例えば2020年の都道府県別歯科医師平均年収では、1位が富山県で約1,825万円、2位長野県1,777万円、3位大分県1,503万円と地方圏が上位に並びました。一方、東京は626万円、神奈川県は549万円と上位どころか全国平均を大きく下回る水準で、必ずしも都市部のほうが歯科医師の収入が高いわけではないことが読み取れます。この地域別データだけ見ると「都会より地方のほうが歯科医師は儲かるのか?」と思ってしまいそうですが、実際には統計上の注意が必要です。

地域差が生まれる背景や理由: 地域別の平均年収にはデータ上の偏りが影響している可能性が高いと専門家は指摘しています。上述の統計は一定規模以上の事業所(従業員5人以上など)が対象であり、小規模な歯科医院は調査から漏れやすいという背景があります。そのため、都市部では個人経営の小さな歯科医院(従業員数が少ない)が多く統計に捕捉されず、代わりに大学病院の勤務医など比較的低めの給与層がデータに表れやすい傾向があります。一方、地方では母数が少ない中で高収入の院長クラスが平均を押し上げたり、そもそも対象となった歯科医師数が少なく統計的なばらつきが大きかったりします。実際、調査年によって上位の県は大きく変動することも報告されており、「地域別平均年収はあくまで参考程度」と考えるのが妥当です。

とはいえ、地域による収入差の傾向が全くの無意味というわけではありません。一般論としては、都市部は歯科医院の競合が非常に多いため一人あたりの患者数を確保しづらく、自由診療の価格競争も起きやすい環境です。事実、日本全国の歯科医院数は約7万件超とコンビニの1.6倍以上も存在し(2010年時点、コンビニ約4.3万件に対し歯科医院約6.8万件)、特に都市部で過密状態にあります。患者さんにとっては選択肢が多い反面、歯科医師側にとっては経営努力をしないと収入が伸びにくい環境といえるでしょう。一方、地方や特定の地域では歯科医師数が少なく患者需要に対して供給が不足気味のケースもあります。そのような地域では1人あたりが担当する患者数が多くなり、結果として収入が高めになることも考えられます。また、自治体によっては医療過疎対策で高待遇の求人を出す場合もあり、地方勤務だからこそ得られる好条件が存在することも事実です。もっとも、地方であっても歯科医師が過剰な地域では開業医の年収が500万円を下回るような厳しい例も報告されており、一概には言えません。地域選びは歯科医師の収入に影響しうる要因ではありますが、統計値の裏にある事情を理解しつつ、自分が働くエリアの競争環境や患者ニーズを見極めることが大切です。

歯科医師の年収は年齢やキャリアでどう変化する?

若手からベテランまで年代別の年収傾向: 歯科医師の収入はキャリアの進行とともに増加する傾向が顕著です。新人~若手の頃は勤務医として経験を積む時期であり、20代の平均年収は他業界に比べれば高めとはいえ、専門職としてはそれほど突出していません。厚生労働省の調査によると、25~29歳の歯科医師の平均年収は約651万円程度でスタートし、そこから年齢とともに右肩上がりに増えていきます。2023年の年齢別平均年収(賃金構造基本統計調査より)。青が男性歯科医師、赤が女性歯科医師、緑のラインが男女計の平均年収を示す。50代後半~60代前半にかけてピークに達する傾向が読み取れる。例えば令和2年(2020年)の同調査では、55~59歳の歯科医師平均年収は約1,426万円に達し、20代後半と比べて2倍以上の水準になっています。長年の経験に裏打ちされた技術力や信頼が収入に反映されるため、中堅以降の歯科医師は高い収入を得やすくなるのです。

年齢別の収入ピークと男女差: 歯科医師の平均年収は60歳前後でピークを迎えることが多いですが、その後定年や体力面の問題もあり若干下降する傾向があります。上述の令和2年調査でも60代前半で平均がやや減少していますが、興味深いことに70歳以上では平均1,484万円と再び高い水準になっています。これは、70代まで現役を続ける歯科医師は主に開業医であり、なおかつ地域で評判のベテランなど選りすぐられた層だけが残っているためと考えられます。つまり、体力や経営環境が許す限り働き続けることで、高収入を維持する歯科医師もいるわけです。また、男女差についても触れておきましょう。一般に医療職は男性のほうが平均収入が高い傾向がありますが、歯科医師も例外ではありません。直近の統計では男性歯科医師の平均年収は概ね900~1,000万円台、女性歯科医師は600~800万円台との報告があり、男女全体の比率では男性が上回っています。ただし年代別に見ると差の出方が異なり、男性は60代前半で平均収入がピーク(1,900万円近く)となるのに対し、女性は50代でピーク(1,200万円前後)というデータもあります。この背景には、結婚・出産期にあたる30代前後で女性歯科医師が一時的にキャリア中断・勤務形態変更するケースが多いことが影響していると考えられます。近年は女性歯科医師の割合も増え、結婚後も勤務を続ける方や復職する方も増加しています。その結果、若い世代では男女差が縮小しつつあるとの指摘もあり、一部統計では「女性歯科医師の平均年収が男性を上回るケースが報告された」といった話題も出ています(調査対象や方法で結果が異なるため鵜呑みにはできませんが)。いずれにせよ、年齢とキャリアの積み重ねが収入に直結しやすい職業であるため、自分のキャリアプランを中長期的に描くことが重要です。若手のうちは経験を積み信頼を築き、しかるべき時期に独立開業や専門性の追求など新たなステップに進むことで、生涯に得られる収入の最大化を図ることができるでしょう。

勤務医とフリーランス歯科医師では収入にどんな違いがある?

勤務歯科医の収入の実態: ここでは「勤務医」と「フリーランス歯科医師」の収入の違いについて解説します。まず勤務医とは、病院や歯科医院などに常勤の社員(雇用者)として勤務する歯科医師です。この場合、収入形態は基本的に給与制となり、経験年数や役職に応じて徐々に上がっていくものの、一定の上限も存在します。若手の勤務歯科医の場合、月給は30~50万円程度が一般的で、賞与などを含め年収にすると500~800万円前後が一つの目安とされています。20代後半~30代前半で500万円台~数百万円台後半、30代後半から40代にかけて経験を積み年収1,000万円に達する例も見られます。しかし、これはあくまで一部のケースであり、勤務先の規模や報酬体系によって昇給幅には限りがあるのが現実です。特に、地方の個人開業医に雇われている場合などは給与ベースのシンプルな体系であることが多く、大幅な昇給や歩合給は期待しにくいでしょう。

勤務医の場合、自費診療の利益がどこまで自分の収入に反映されるかも勤務先次第です。同じ歯科医院であっても、自費診療(自由診療)を多く扱う医院で働けば病院全体の売上は伸びますが、その分が勤務医の給与に反映されるかどうかは雇用契約や院長の方針次第です。成果主義でインセンティブがある職場もありますが、そうでなければ「忙しいのに収入は頭打ち」という状況も起こりえます。また、勤務医は雇用されている安心感がある反面、定年制や人事異動など自分ではコントロールできない要因もあります。近年の法改正で企業は希望者に65歳までの雇用機会を与えることが義務化され、70歳までも働けるよう努める方向になりました。とはいえ歯科医院という業態では、院長の定年設定や事業承継の問題もあり、「何歳まで勤務医を続けられるか分からない」という不安の声もあります。一般に、病院勤務など組織に属する歯科医師は60代半ばで退職し、その後は嘱託的に非常勤で勤務したり、研修機関の講師になったりといった道が考えられます。総じて言えば、勤務医の収入は「安定しているが大きく跳ね上がりにくい」傾向であり、特に飛び抜けて高収入(例えば年収1500万超え)を得るケースは限定的です。

フリーランス歯科医師(非常勤・開業)の収入事情: 一方で「フリーランス歯科医師」とは、特定の勤務先に常勤せず自らの裁量で働く歯科医師を指します。この中には、自分で歯科医院を開業して経営するケース(いわゆる開業医)と、非常勤アルバイト的に複数の医院で掛け持ち勤務をするケースの両方が含まれます。まず、非常勤歯科医師として働く場合について見てみましょう。非常勤勤務では時給制で報酬が支払われることが一般的で、その相場は1時間あたり5,000~10,000円ほどとされています。専門的なスキルや経験年数が高い歯科医師ほど高時給の案件を得やすく、また夜間診療や休日診療、急募の案件など人手確保が難しい時間帯には、さらに高い日給・時給が提示される場合もあります。こうした条件の良い非常勤枠を複数掛け持ちし、効率良く働くことで常勤勤務医より高年収を得ることも十分可能です。実際、週5日フルタイムで1か所に勤める代わりに、週数日ずつ複数の歯科医院を回る働き方を選ぶ歯科医師も増えており、「フリーランス歯科医師」というキャリアも徐々に市民権を得つつあります。

フリーランスとして働く利点は収入面だけではありません。複数の職場を経験することで様々な医院の方針や治療法を学べる、多彩な分野の患者症例を経験できるといったメリットもあります。これはスキルアップや視野拡大にもつながるため、若手からベテランまでキャリア形成の一環として非常勤を選ぶ人もいます。また、フリーランス=個人事業主という立場になるため、経費計上や税制上のメリットも享受できます。具体的には、仕事に必要な器具・材料費、学会やセミナー参加費、通勤交通費などを経費として申告し課税所得を圧縮できるほか、青色申告特別控除(最大65万円)を受けたり、家族を従業員にして給与を支払うことで所得分散(青色事業専従者給与)したりといった節税策も可能です。さらに、小規模企業共済に加入すれば自営業者向けの退職金制度を利用でき、掛金は全額所得控除になるなど将来の蓄えを作りながら節税できる仕組みもあります。ただし、フリーランスは収入が不安定になりがちである点や、社会保険料・年金を全て自己負担する点には注意が必要です。厚生年金や企業の福利厚生がない分、自分で国民年金・国民健康保険を払い、必要なら民間保険で補う必要があります。また、繁忙期と閑散期で収入が変動したり、将来的に継続して働ける職場を自力で探し続ける手間もあります。こうしたリスクとメリットを天秤にかけて、自分の志向に合う働き方を選ぶことが重要です。

次に開業医(自ら歯科医院を経営する歯科医師)の収入について見てみましょう。開業すると勤務医と比べて収入は大幅に増える可能性があります。前述のように公的統計には開業医の収入は直接反映されませんが、業界の目安として開業歯科医の平均年収はおおよそ1,200~1,400万円程度とされることが多いです。これは同じ医師系でも大学病院勤務の医師(勤務医)レベルに匹敵し、個人で開業すればトップクラスの年収を狙えることを意味します。実例として、ある都市部の勤務歯科医が年収800万円だったのに対し、郊外で開業した後は個人所得で1,100~1,500万円程度を得られる見込みとなったケースがあります。このモデルでは開業によって年収が300~700万円ほど増加しており、医院の規模や運営方法次第ではその差は更に開く可能性があります。さらに、生涯収入の観点でも開業は有利です。仮に35歳で開業し65歳まで院長を務めた場合、ずっと勤務医のまま定年まで働くケースに比べて生涯で1~2億円もの収入差がつく試算も先に述べた通りです。

もっとも、開業すれば必ず儲かるわけではない点には注意しましょう。開業歯科医の収入は医院経営の成否に直結します。日本歯科医師会の「歯科白書」による統計(2007年のデータ)によれば、開業医の収入分布はかなり幅広く、下位20%では月収約16万円(年収にして200万円弱)しかない一方、上位20%は月収260万円超(年収3,000万円超)と桁違いの開きがあります。中央値は月収約103万円(年収1,200万円程度)で、多くの開業医はこの前後に位置しますが、地域や経営状況によっては年収500万円を下回る開業医も存在するのです。特に、歯科医師が過剰な地域で集患に苦しめば、開業しても勤務医時代より収入が減ってしまうケースすらあります。また、開業には初期投資も必要です。平均して4,000~5,000万円もの開業資金を銀行融資などで調達し、機材や内装、人材を揃える必要があります。開業後もテナントの家賃やスタッフ給与、材料費など固定費・変動費が常にかかり続けます。患者数が減って収入が目減りしても、固定費は簡単には下がらないため、利益はダイレクトに圧迫されます。加えて、開業医には会社員のような退職金制度もありません。こうしたリスクを乗り越え、経営を軌道に乗せて初めて開業のメリットが享受できるわけです。まとめると、勤務医 vs フリーランス(開業医含む)では、「安定性の勤務医、高リスク・高リターンのフリーランス」という対比になります。自分の性格やライフステージに応じてどちらが適しているかを考え、必要ならキャリアの途中で働き方をシフトさせることも検討するとよいでしょう。

歯科医師の収入にはどんな要因が影響する?

診療内容(保険診療か自費診療か)と収入の関係: 歯科医師の収入は、単純な肩書や年数だけでなく様々な要因によって影響を受けます。まず大きな要素の一つが、診療内容や治療の性質です。日本の歯科医療は公的医療保険が適用される範囲(保険診療)と、患者が全額自己負担する自由診療(自費診療)の範囲に分かれています。保険診療は国が定めた診療報酬点数に従って料金が決まるため、どんなに丁寧に治療しても収入は一定の枠内になります。そのため保険診療中心の歯科医院では、いくら患者数を増やしても収益率には限界があり、歯科医師一人あたりの年収も天井が見えやすいのです。一方、自費診療(例えばインプラント治療、矯正歯科、審美歯科など)は医院ごとに自由に価格設定ができ、患者さんにとって高額でも必要とされれば提供できます。自費診療の割合が高い歯科医師は一件あたりから得られる収入が大きくなるため、結果として年収も高くなる傾向があります。実際、近年の傾向として歯科治療の専門分野化が進み、高齢化社会では訪問歯科や嚥下リハビリの需要、若年~中年層では矯正やホワイトニング需要が拡大しています。例えば訪問歯科診療では、外来と比べて診療報酬点数の加算が多く1件あたりの報酬が約3倍になるとも言われます。このように、どの分野に注力するかが収入にダイレクトに響く職業でもあります。歯科医師自身が専門資格を取得している場合、その専門領域で高い需要があれば収入アップにつながりますし、逆に保険診療の一般治療に留まるのであれば大きな伸びは期待しにくいでしょう。

勤務先の規模や役職による収入差: 次に、どのような職場で働くかも重要な要因です。歯科医師の勤務先は大学病院、公立病院、一般の歯科医院(個人経営から医療法人まで規模色々)など様々ですが、それぞれ報酬体系に特徴があります。興味深いデータとして、歯科医院の規模別に見た歯科医師の年収では「従業員10~99人規模の歯科医院に勤務する歯科医師」が最も高い平均年収だったという分析があります。これは、中規模の医療法人などで役職手当や歩合給が適度にあり、かつ症例数も多い環境が収入にプラスに働いた可能性があります。逆に大学病院など大規模組織では公務員的な給与テーブルに従うため突出した高給にはなりづらく、小規模すぎる個人医院では経営状況によっては高い給料を出せない場合もあります。また、役職も収入を左右します。当然ながら一開業医の院長や、医療法人の理事長・分院長ともなれば報酬は一般勤務医より格段に高くなります。勤務医であっても院長代理や診療科長など責任あるポジションに就けば手当がつくでしょう。こうしたポジションアップは通常経験と実績を積まないと任されませんから、結局のところキャリアと年齢に連動する部分ではありますが、同じ年数働いていても役職に就くか否かで収入に差が出ます。

さらに、労働時間や働き方も収入に直結します。これはどんな職種にも言えますが、歯科医師の場合も夜間診療や休日診療に従事すれば手当がついたり、非常勤で掛け持ち勤務をすればその分収入が上乗せされたりします。ただ、肉体的・時間的な負荷と収入増のバランスを考える必要はあります。歯科治療は体力と集中力を使う仕事ですので、無理をして働きすぎれば長期的には健康を損ねかねません。交渉力も見逃せないポイントです。同じスキルを持った歯科医師でも、勤務先との交渉で有利な条件を引き出せる人は収入面で得をします。例えば医院側に「これだけ患者を担当して売上に貢献しているのだから」と歩合給や昇給を掛け合ったり、転職時に希望年収を明確に主張したりすることで待遇アップを勝ち取るケースもあります。逆に提示された条件をそのまま受け入れていれば、なかなか収入は上がらないかもしれません。総じて、歯科医師の収入は様々な要因の組み合わせで決まります。地域、診療内容、勤務先規模、ポジション、働き方、そして本人の交渉や経営手腕。自分の志向するキャリアに沿って、これらの要素を上手く選択・調整していくことで、望ましい収入水準に近づけることができるでしょう。

歯科医師が生涯年収を高めるためにはどうすればいい?

開業やキャリア戦略で収入アップを目指すポイント: 歯科医師としての生涯年収を最大化するためには、長期的な視野に立ったキャリア戦略が欠かせません。前述したように、最も大きな収入アップの分岐点は「開業するか否か」です。したがって、将来的に経営者として成功したいと考えるなら、適切なタイミングで開業に踏み切る計画を立てることが重要です。勤務医として十分な臨床経験と地域の患者層ニーズを学んだ上で、30代後半~40代での独立開業は一つのモデルケースと言えます。開業に際しては、資金計画や物件選び、スタッフ採用から広告戦略まで多岐にわたる準備が必要です。最近では開業コンサルタント会社や歯科医師向けの経営セミナーも充実しており、そうした専門家の力を借りるのも有効でしょう。経営の勉強はおろそかにできません。せっかく開業しても経営が軌道に乗らなければ収入増どころか負債を抱えるリスクもあります。逆に言えば、経営努力を重ねて地域で信頼される医院に育て上げれば、前述の通り生涯で数億円規模の収入差を生むことも可能です。開業までは考えていないという方でも、勤務先の選択や転職を戦略的に行うことで収入アップを図れます。例えば、自費診療に力を入れている医院に移る、インセンティブ制度のある法人に転職する、あるいは人手不足の地域の病院に応募するなどです。

専門スキル習得や勤務先選びの工夫: キャリアの中で専門性を磨くことも、長い目で見れば生涯年収にプラスに働きます。歯科の分野では、例えば矯正歯科や口腔外科、小児歯科、歯周病専門医などの資格や認定医制度があります。これらを取得するには研修や試験が必要で一時的に大変ですが、専門医資格を持つことで就けるポストが増えたり、患者から選ばれやすくなったりします。結果的に、高収入のチャンスが広がるでしょう。特に矯正やインプラントなど自費率の高い分野のスキルを持つ歯科医師は、どの医院からも必要とされる存在となり得ます。また、近年の需要トレンドに合わせてスキルを習得するのも賢いやり方です。例えば超高齢社会では訪問歯科のニーズが高まっていますから、摂食嚥下リハビリテーションの知識や訪問診療のノウハウを身につけておけば、それを武器に独立したり高齢者施設と提携したりして新たな収入源を開拓できます。一方で若年層へのアプローチとして審美歯科やマウスピース矯正など新しい技術に習熟するのも良いでしょう。「専門性×時代のニーズ」がマッチすれば、収入アップに直結する可能性があります。

勤務医としてキャリアを積む場合でも、勤務先選びの工夫で収入は変わります。求人票を見る際には、基本給だけでなく歩合給や各種手当の有無、昇給制度、将来的な役職ポストの空き状況なども確認しましょう。例えば、地域によっては自治体や医師会が若手歯科医師の定着を図るために支援金を出したり、医療法人が分院長候補に高報酬を提示して募集をかけたりしていることがあります。また、思い切って需要の高い地域に移るのも選択肢です。都市部で過当競争に晒されるより、歯科医師が少ないエリアで働いたほうが感謝される上に収入も高水準という例は実際に存在します。最近では「勤務5年目で年収1,200万円稼げる」といった求人が取り沙汰され、「狙い目の職種になりつつある」という声も出ています。こうした情報にアンテナを張り、自分に合った高待遇のポジションを逃さない姿勢も大切です。ただし、高収入に飛びつく前に、その職場で本当に自分が長く働けるのか、スキルを発揮できるのかといった点もよく検討しましょう。収入アップとキャリアの充実は両輪です。最終的には患者さんに良い医療を提供しつつ、自身も適正な報酬を得られる環境を見つけることが、歯科医師人生を豊かにするポイントになります。

歯科医師の収入の将来展望:増える?減る?

歯科医師数の動向と競争環境の変化: 最後に、今後の歯科医師の収入はどうなっていくのか展望を考えてみましょう。日本の歯科業界は長らく「歯科医師過剰時代」と言われてきました。事実、ここ数十年で歯科医師数は大きく増加し、2010年頃には全国の歯科医院数が約6.8万件と、コンビニエンスストアの店舗数(約4.3万件)を大きく上回りました。この傾向を受け、厚生労働省は平成28年(2016年)に「2029年には約14,000人の歯科医師が余剰になる」という将来予測を発表しています。つまり、需給バランスだけ見れば10年後くらいには「日本には歯科医師が1.4万人も多すぎる」状態になる可能性が示唆されたわけです。供給過多になれば競争がさらに激化し、一人当たりの患者数が減ることで収入は頭打ち、むしろ低下傾向になる懸念があります。特に都市部では医院乱立が続けば体力勝負の消耗戦になり、収入面でも厳しさが増すかもしれません。

加えて、人口構造の変化も無視できません。日本は少子高齢化が進み、総人口は2010年頃をピークに減少傾向にあります。歯科医療の需要も、若年層の虫歯患者は減少する一方で高齢者向けケアの需要は増えるなど質的な変化が起きています。しかし患者の絶対数という観点では、長期的には減っていく可能性が高いでしょう。ある試算によれば、2030年までに歯科医院が今より15%増え、かつ人口減で患者数が12%減ると、一医院あたりの平均患者数は25%以上減少する計算になるといいます。単純計算で年収1,200万円が900万円に落ち込むイメージですが、実際には固定費の負担割合が増すため利益率がもっと低下することが予想されています。このようにマクロ的に見れば、「放っておけば歯科医師の稼ぎは先細り」というシナリオも現実味を帯びます。

需給バランスと収入への影響: しかしながら、一方で明るい材料もあります。現在歯科医師の平均年齢は50歳を超えており、今後10~20年のうちに多くのベテラン歯科医師が引退時期を迎えます。特に地方で開業している先生方が後継者不足で廃業するケースも増えるとみられ、地域によってはむしろ歯科医師が足りないという逆転現象が起きる可能性があります。実際、「過剰」と言われて久しい歯科医師ですが、近年になって「将来的に歯科医師不足になるのでは」との指摘も一部で出始めています。国も歯科医師養成数の適正化を図っており、歯学部の定員削減や統廃合などで新規歯科医師の輩出は抑制されつつあります。加えて、団塊の世代の歯科医師が引退すると歯科医院数自体も減少に転じる可能性があり、需給バランスが再調整されれば一人当たりの患者数・収入も持ち直すことが期待されます。実際、ある業界誌では「団塊世代引退で歯科医師の年収が再び伸びる可能性が高い」とも報じられています。

いずれにせよ、将来の収入を左右するのは時代の変化にどう対応するかです。業界全体の平均が仮に下がる局面があったとしても、先述のように高齢化ニーズへの対応や専門分野の確立、地域ニーズへの適応ができている歯科医師・歯科医院は生き残り、十分な収入を維持できるでしょう。逆に昔ながらのやり方に固執して患者離れを起こしたり、新技術への対応が遅れたりすれば、収入は減ってしまうかもしれません。将来、歯科医師が増えようと減ろうと、患者から「この先生に診てもらいたい」と選ばれる歯科医師であり続けることが、長期的な収入の安定と向上につながると言えます。歯科医師を取り巻く環境は今後も変化が予想されますが、その中で自らの価値を高め、柔軟に立ち回ることで、たとえ平均像がどうであれ自分自身の生涯年収を高水準に保つことは十分可能でしょう。

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