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訪問歯科の歯科衛生士は辛い?その理由ときつくならないための体制づくりについて解説!

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訪問歯科衛生士の仕事内容は? 外来との違い

自力で通院困難な患者に訪問して診療 訪問歯科診療とは、歯科医師や歯科衛生士が患者さんのご自宅や介護施設などを直接訪問し、歯科の治療や口腔ケアを行うことです。対象となるのは 何らかの理由で歯科医院に通えない高齢者や障がいをお持ちの方 で、例えば病気やケガで外出困難な方、寝たきりや認知症で通院が難しい方などが中心です。要介護認定を受けた高齢者数は年々増えており(平成28年時点で約632万人)、こうした方々の多くが歯科治療や専門的な口腔ケアを必要としています。しかし厚生労働省の調査(2016年)によれば、要介護高齢者の約9割が何らかの歯科ケアを必要とする一方で、実際に受けられているのは約27%にとどまる のが現状です。このように未だ多くのニーズが満たされておらず、訪問歯科は高齢社会において欠かせないサービスとなっています。

歯科衛生士が訪問診療で担う役割とは 訪問歯科の現場では、歯科医師とともに歯科衛生士が重要な役割を果たします。具体的な業務としては、患者さんのお口の中のクリーニング(口腔清掃)や歯磨き指導、食事時の注意点のアドバイスなどを行います。歯科衛生士による定期的な口腔ケアは、虫歯や歯周病の予防はもちろん、誤嚥性肺炎の予防や嚥下機能の維持 にもつながります。また、訪問診療では 義歯(入れ歯)の清掃・調整や口腔リハビリ の補助など、患者さんの生活の質(QOL)を支えるケアも大切な業務です。さらに 治療器具の準備・消毒や訪問記録の記入、介護者への口腔ケア指導 など、歯科衛生士が担う業務範囲は多岐にわたります。外来診療とは異なり、患者さんの生活空間で処置を行うため、明るい照明や歯科用ユニットなど万全の設備は期待できません。その分、現場では限られた機材で工夫しながらケアを提供する柔軟性が求められます。また患者本人だけでなく、ご家族や介護スタッフとの連携も必要 になるなど、訪問ならではの特徴があります。このように訪問歯科衛生士は、単に口の中を診るだけでなく患者さんの全身状態や生活環境まで配慮して支援する役割を担っているのです。

訪問歯科衛生士が辛いと言われるのはなぜ?

重い機材の運搬や移動で体力的な負担が大きい 訪問診療では診療に必要な機材一式を車に積み込み、患者さんのもとへ運搬しなければなりません。ポータブルの歯科ユニットや携帯用レントゲン などは重量があり、機材の積み下ろしや持ち運びは歯科衛生士にとって大きな負担になります。さらに一日に複数の患者宅・施設を訪問する場合、移動距離や回数が増えて疲労が蓄積しがちです。エレベーターの無い住宅で階段を機材と共に上り下りすることもあり、腰痛など身体への負担リスク は決して小さくありません。またベッドサイドで前屈みの姿勢をとって処置する場面も多く、無理な体勢が長時間続くことで体力的消耗が激しくなります。こうした身体への負荷が続くと疲労により集中力が落ち、診療の精度低下やスタッフの離職につながる恐れ も指摘されています。実際、「猛暑の日に重い機材を抱えて駆け回り、帰宅後には書類整理…体も心も限界」という声が上がることもあります。訪問歯科衛生士は常に車での移動と機材準備を伴うため、外来勤務にはない身体的タフさ が要求され、「きつい」と感じる要因の一つとなっています。

患者対応やチーム内人間関係のストレス 訪問歯科の患者さんは高齢で全身状態が優れない方が多く、認知症や嚥下障害を抱える方 も少なくありません。そのため、口腔ケアや治療の必要性を理解・納得してもらうだけでも一苦労というケースがあります。認知症の方の場合、こちらの説明が伝わらず混乱や抵抗を招き、無理に処置を進めれば暴言を浴びせられたり暴力的な反応を受けるリスクすらあります。例えば「家族が依頼したから訪問したのに、当の患者さんから『頼んでない』『やらなくていい』と拒否されてしまう」といった板挟みも起こりがちです。このように在宅では患者・家族との意思疎通に非常に神経を使い、外来以上に高いコミュニケーション力と忍耐が求められます。加えて訪問診療は歯科医師・歯科衛生士・歯科助手など 少人数のチームで長時間行動する ため、一緒に働くスタッフとの相性もストレスに直結します。車内や狭い空間で一日中同行する中で、メンバー間で診療方針や仕事観のズレ があると対立が生じやすく、場合によってはハラスメントに発展する恐れもあります。実際に「休憩中も常に仕事の話で息が詰まる」「尊敬できない先生と1日中行動するのが苦痛」といった声が挙がることもあります。このように患者対応の難しさと職場の人間関係の両面で悩みを抱えやすいのが、訪問歯科衛生士の仕事の辛い部分と言えるでしょう。

診療環境の制約や業務過多による精神的負担 訪問先では院内のような整った設備がないため、できる処置や検査に限りがあります。例えば吸引機や明るい照明のない環境で工夫して処置を行う必要があり、「歯を見るだけでは済まない」総合的対応の難しさ があると指摘されています。また患者ごとに環境が異なるため、その場に応じた臨機応変さと幅広い知識が要求され、プレッシャーを感じやすくなります。さらに、訪問診療には 診療以外の業務も多い ことが負担感につながります。訪問前後の器材準備や消毒、患者ごとの記録作成、ケアマネージャーや主治医への連絡など、外来では専門スタッフが担う事務作業も歯科衛生士自身がこなす場面が少なくありません。加えて診療報酬の算定要件も複雑で、保険点数のルール確認や書類作成に時間と労力 を取られることもしばしばです。こうした非臨床業務に割く時間が長いと、本来の口腔ケアに使える時間が圧迫されてジレンマを感じるでしょう。一方、訪問診療では終末期の患者さんを担当することや、長くケアしていた患者さんが亡くなる場面に直面することもあります。看取りの経験や、「頑張ってケアしても病状が改善しない」といった無力感は、歯科衛生士にとって精神的ストレスとなり得ます。常に細心の注意を払っていても時に避けられない事態もあり、訪問の現場では燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥るリスクも抱えています。このように、限られた環境下で多くの業務を背負うプレッシャーや患者さんの生死に向き合う精神的負担が、訪問歯科衛生士の「辛さ」を一層際立たせているのです。

外来勤務より訪問の方がきつい?働きやすい?

訪問歯科衛生士の方が大変だと言われる点 訪問歯科の仕事は一般の歯科クリニック勤務と比べ、「大変だ」「きつい」と言われる場面が多々あります。その理由としてまず挙げられるのが前述した 機材運搬や移動の負担 で、外来では経験しない肉体労働が伴うことです。院内であれば診療台や機器は固定されていますが、訪問では全てを自前で持ち運ぶ必要があり、移動そのものが仕事の一部になります。特に車の運転を自分たちで担当する場合、運転による神経疲れも加わります(※運転中の事故防止も重要な責任です)。また 診療環境の違い も大きなハードルです。クリニックでは明るいライトや吸引設備の整ったユニット上で治療できますが、訪問先ではベッドや車椅子上での処置となり、衛生面・姿勢面での不自由さがあります。加えて、多職種や家族との調整 が必要な点も訪問特有の難しさでしょう。患者さん本人の希望だけではなく、ご家族の意向や介護サービスのスケジュールも考慮して進める必要があり、調整業務に労力を割かれます。さらには 一日のスケジュール管理 も外来以上に難しく、当日の交通事情や患者さんの体調次第で予定通りにいかないこともしばしばです。1件の訪問が長引けば次の訪問が遅れ、全体が押してしまっても簡単に「ではまた明日続きは」とはいきません。このように、訪問歯科には外来にはない苦労が多いため、一部では「訪問の方が圧倒的にきつい」と感じる人もいます。

訪問歯科衛生士の方がメリットがあると言われる点 一方で、訪問歯科の働き方には外来にはない良さや働きやすさがあるとの声もあります。まず 残業や夜間勤務が少ない傾向にあります。訪問診療のスケジュールはご高齢の患者さんの生活リズムに合わせて組まれるため、訪問時間は午前から午後早めの時間帯に集中します。その結果、診療が夜遅くまで長引くことは少なく、夕方頃までに業務が終了する 職場が多いのです。また、勤務時間の融通が利きやすい 点もメリットの一つです。予約状況や訪問先の都合に合わせる必要はありますが、比較的ゆったりとスケジュールを調整しやすく、子育て中の時短勤務や特定の曜日に休みを取る希望も通りやすい傾向があります。さらに技術面では、高度な歯科治療スキルへの要求がそれほど高くない と言われます。もちろん基本的な予防処置や対応力は必要ですが、一般歯科のように難易度の高いSRP(スケーリング・ルートプレーニング)や精密な補綴物製作などをこなす機会は多くありません。むしろ大切なのは 口腔ケアや摂食嚥下などの知識と、患者さんに寄り添うコミュニケーション能力 であり、ブランクがあって細かな技術に不安がある衛生士さんでも活躍しやすい現場と言われています。使用する機材も必要最小限に絞られるため、覚える器材操作が少なくて済む 点も復職時などにはプラスでしょう。さらに訪問診療は1日に対応する患者数が限られるため、一人ひとりに比較的ゆっくり向き合える傾向があります。外来のように短時間で次々と患者対応に追われるより、余裕をもってケアできることを働きやすさと感じる衛生士さんもいます。以上のように、訪問歯科衛生士の仕事には大変な面だけでなく、働きやすさややりがいにつながる側面も確かに存在しています。

訪問歯科できつくならないための体制づくりとは

スタッフを充実させ役割分担で無理をなくす 訪問歯科の負担を軽減するには、まず 人員体制を見直すこと が重要です。特に訪問診療に慣れた歯科衛生士や歯科助手を十分に配置し、一人の衛生士に業務が集中しすぎないよう役割分担 することが効果的です。例えば、訪問経験が豊富で高齢者対応に慣れた衛生士がチームにいれば、患者さんとのコミュニケーションや介助もスムーズに進むでしょう。一緒に訪問するメンバーは歯科医師と衛生士だけでなく、場合によっては歯科助手や訪問コーディネーター を加えることも検討できます。訪問コーディネーターは患者や施設との日程調整・連絡を専門に担うスタッフで、歯科医院でいえば受付スタッフのような存在です。このような専任スタッフを配置し、運転や機材準備、予約調整といった業務を衛生士と分担 すれば、体力的・精神的にゆとりが生まれます。実際にある医院では「それまで衛生士が運転兼任でヘトヘトだったのを、新たにドライバー兼助手を雇用して任せたところ、“帰宅後の疲労感がまるで違う” と喜ばれた」という例も報告されています。また院長や管理者はスタッフに対して日頃から「無理をしていないか?」と声をかけ、負担が偏っていれば早めに業務配分を調整する ことが求められます。厚生労働省の報告でも、歯科衛生士は全国で約4.7万人が不足していると推計されており(2017年)、人手不足のまま放置すればスタッフの燃え尽きや離職を招きかねません。だからこそ組織として十分な人員を確保しチーム医療で支える体制を作ることが、訪問歯科を「きつくならない」よう持続させる鍵になります。

機材の軽量化や動線の工夫で体力消耗を防ぐ 次に 使用機材や訪問スケジュールの工夫 によって、スタッフの身体的負担を減らす取り組みも大切です。近年は訪問専用の機材も改良が進み、例えば 最新型のポータブルユニットは5kg前後と軽量化 され扱いやすくなっています。多少の投資であっても、こうした機材をアップデートすることはスタッフの身体を守ることに直結します。また訪問ルートの見直しも効果的です。患者宅の位置を地理的にまとめて、一筆書きで回る経路を計画 すれば、移動時間と疲労の削減につながります。訪問件数が多い場合には、医院所有の専用車を用意し、カーナビやドライブレコーダーを完備すると安全かつ効率的です。駐車スペース確保が難しい地域では小型車を選ぶなど、地域事情に合わせた工夫も必要でしょう。さらに、腰痛対策の用具を活用することも有効です。訪問診療専用の簡易チェア(ポータブルチェア)や体位変換クッションを現場で使えば、術者の姿勢負担を和らげることができます。スタッフ自身にもストレッチや筋力トレーニングの習慣づけを促し、体調管理に努めてもらうことも大事です。そして何より、過密すぎる訪問スケジュールを避けることが基本となります。1日あたり3~5件程度に抑えている職場もある一方、7件以上こなす現場ではスタッフの疲弊が顕著になるという報告もあります。訪問診療1件ごとの診療報酬には加算等で一定の補填がありますが、件数を増やせば外来以上に効率が上がるわけではありません。無理のない件数設定と移動効率化で生産性を高めつつ、スタッフの体力消耗を防ぐ体制づくりが必要です。

情報共有と研修で安心して診療できる環境に 訪問歯科診療はチーム医療です。スタッフ間の情報共有を徹底してミスや負担を減らすことも、重要な体制づくりとなります。例えば 訪問前後に必ずブリーフィング(打ち合わせ) を行い、患者さんの最新の全身状態や当日の注意点をチーム全員で共有する習慣をつけるといった工夫です。近年はクラウド上でリアルタイムに訪問先の情報を連携できるシステムもありますから、積極的に取り入れて記録の二重入力を防ぐなど IT活用で効率化 を図るのも良いでしょう。また 緊急時の連絡体制 も決めておき、もし訪問先で患者さんの容態急変等が起きた場合には速やかに歯科医院と連携して対応できる準備を整えておくことが大切です。さらに、定期的な研修や勉強会の開催もチームの力を底上げします。高齢者の歯科医療や摂食嚥下リハビリ、医療安全や感染対策など、訪問歯科で必要となる知識・技術は幅広いです。院内でこれらのテーマについて定期研修を行えば、スタッフ全体のスキルアップにつながります。特に認知症ケアや嚥下障害への対応法を学ぶことは、患者対応の不安を和らげコミュニケーションストレスの軽減にも役立つでしょう。研修の場を通じて「困ったときはお互い相談し支え合える」雰囲気を醸成することも大切です。忙しさのあまりスタッフの疲弊に気づかず放置してしまうと、「もう辞めたい」と突然言われるケースにもなりかねません。定期的に面談やミーティングを開き、現場の声を経営陣が把握してフォローする仕組みを作ることが望まれます。なお、国の制度面でも訪問歯科を支える施策が進んでいます。例えば2024年の診療報酬改定では、末期がん患者等に歯科衛生士が訪問口腔ケアを行う場合の 算定上限回数が月4回から6回に緩和 されました。これは訪問歯科の需要増に対応し、より頻回な口腔ケア提供を可能にする措置です(令和6年度改定)。こうした制度の追い風も活用しつつ、現場ではスタッフ間で知識と情報を共有し合える安心な環境を整えることで、訪問歯科の負担を減らし質の高いケアを継続できるでしょう。

職場選びで見ておきたい体制・環境のポイント

訪問診療のスタッフ数や同行者の体制 現在、訪問歯科で働いていて「辛い」と感じている歯科衛生士の中には、職場環境を変えることで状況が改善するケースも少なくありません。そこで、訪問歯科への就職・転職時にチェックしておきたいポイントを紹介します。第一に スタッフの配置状況 です。訪問チームの人数が明らかに不足していれば、一人ひとりに過重な負担がのしかかります。「歯科医師1名+衛生士1名」のように最少人数で回している職場もありますが、できれば 衛生士が複数名いて交替で訪問に出られる 体制や、助手・コーディネーターなど 役割分担されたチーム がある職場が望ましいでしょう。求人情報では「先輩衛生士が複数人在籍」「3人1組体制」などと記載されていることもあります。面接や見学の際には、「普段の訪問は何名で行っていますか?」「運転や器材準備は誰が担当していますか?」といった質問をし、人員体制の充実度を確認してみてください。スタッフが足りず常にギリギリで回している職場では、休みが取りづらかったり緊急時のフォローが難しいなど、後々自分に跳ね返ってくるリスクがあります。厚労省も 在宅歯科医療を支援する診療所(在宅療養支援歯科診療所) の届出制度を設けており、これは複数の歯科医師や医科・介護との連携体制など一定の基準を満たす歯科医院が届け出るものです。こうした体制整備に前向きな歯科医院なのかどうかも含めて、チェックすると良いでしょう(2023年時点で約9,700歯科診療所が届出済みと報告)。

業務範囲やスケジュール管理の仕組み 次に確認したいのは、自分に課される 業務範囲の明確さと、スケジュール管理の方法 です。訪問歯科衛生士の仕事は前述の通り、診療補助から口腔ケア、書類作成まで多岐にわたります。しかしそのすべてを一人で抱える必要はなく、医院によって役割分担の仕方が異なります。例えば「訪問専任の事務スタッフがいて請求書類は任せられる」「滅菌や機材の片付けは帰院後に他スタッフがサポートする」といった仕組みがある職場では、衛生士は患者ケアに専念しやすいでしょう。一方、「事務も含め全て自分でやるのが当たり前」という職場では負荷が大きくなります。求人票や面接で業務内容を詳細に確認し、曖昧な点は質問しておきましょう。また、訪問スケジュール管理についても重要なポイントです。無理のない訪問件数や移動範囲を設定しているか、急なキャンセルやスケジュール変更時のフォロー体制があるか、といったことです。例えば「訪問範囲は医院から半径○km以内」と明確に定めている、専任のコーディネーターが調整役を担っている、週に一度はチームで予定を見直すミーティングをしている等、計画と調整の仕組みがある職場は安心です。反対に場当たり的で行き当たりばったりな運営をしている所だと、衛生士個人が振り回され疲弊しやすくなります。時間管理や段取りに関する質問(「1日の訪問件数は平均何件ですか?」「予約変更への対応は誰が行いますか?」など)も、職場選びではぜひしておきたいところです。こうした点を見極めておくことで、入職後に「話が違う」「こんなはずでは…」と後悔するリスクを減らせます。

職場の人間関係や雰囲気も重要 最後に見逃せないのが、人間関係や職場風土です。訪問歯科は少人数チームで動くため、スタッフ同士の相性や雰囲気が仕事のやりやすさに直結します。求人情報ではなかなか掴みにくい部分ですが、可能であれば職場見学をさせてもらい、スタッフの表情や会話の様子、院長の人柄などを感じ取ってみると良いでしょう。「休憩がしっかり取れているか」「意見を言いやすい空気か」といった点も重要です。休憩時間なのに誰も席を外さず事務作業をしていたり、院長が一方的に指示するばかりでスタッフが萎縮している様子が見られたら要注意です。一方、和やかに雑談が交わされていたり、新人が先輩に気軽に相談している姿が見えれば安心材料と言えます。近年は 人間関係が原因で訪問歯科を辞めてしまう衛生士 もいるため、働き続ける上で人間関係の良し悪しは軽視できません。口コミサイトや知人の紹介なども活用し、その医院の評判や離職率などの情報も集めてみましょう。もちろん入職前に完璧に把握することは難しいですが、「スタッフ同士でフォローし合っているか」「衛生士の意見を取り入れようという姿勢があるか」といった点を少しでも感じ取れれば、長く働きやすい職場かどうかの判断材料になります。自分に合った職場環境を選ぶことが、結果的に「訪問歯科衛生士は辛い」という状態を避け、やりがいを持って働き続けることにつながるでしょう。

訪問歯科衛生士になるには?必要な資格と経験

歯科衛生士の国家資格取得と臨床経験が前提 「訪問歯科衛生士」として働くために、特別な国家資格が新たに必要になるわけではありません。基本的には歯科衛生士の国家資格を取得しさえすれば、法的には訪問歯科での業務に従事できます。歯科衛生士資格は3年間(または2年間)の養成学校を修了し、国家試験に合格することで取得できます。資格を取った後、すぐに訪問診療の現場に飛び込むこと自体は可能ですが、現実的には ある程度の臨床経験を積んでから の方が望ましいという声が多く聞かれます。なぜなら訪問歯科では、高齢で全身に不調を抱えた方への対応や、急変時の判断、介護職など他職種との連携など、新人にはハードルが高い業務が多いからです。まずは一般歯科で 健康な口腔の状態を診る経験 を積み、そこで基礎的な技術や患者対応力を身につけておくことが推奨されます。例えば「短時間で処置を終えるテクニック」「異常のサインに気づく目」「緊急時に落ち着いて対応する力」などは、やはり臨床経験を積む中で培われる部分が大きいでしょう。実際、新卒でいきなり訪問専門で働き始めるケースも無くはありませんが、その場合は新人育成のノウハウが整った職場を選ぶなど、相応の覚悟と工夫が必要です。まとめると、「歯科衛生士になること」がスタートラインであり、そこから 一般歯科や予防歯科で経験を積んだ上で訪問分野に挑戦する のが一般的なキャリアパスと言えるでしょう。

認定訪問歯科衛生士など専門知識を習得する道 さらに訪問歯科の分野で専門性を高めたい場合、民間の認定資格や研修制度を活用する道があります。代表的なものに、一般社団法人日本訪問歯科協会が認定する 「認定訪問歯科衛生士」 の資格があります。これは国が定める国家資格ではなく協会独自の認定制度ですが、訪問歯科診療に必要な専門知識・技能を備えた衛生士であることを公式に認める称号です。取得しなくても訪問診療は可能ですが、取得しておくと患者さんや介護関係者に対して一定の安心感を与える指標になるとも言われます。主な取得条件は、歯科衛生士免許を持った上で 訪問歯科を行う歯科医院で2年以上の実務経験 を積み、かつ協会に2年以上所属して所定の講習会を修了することなどです。条件を満たすと筆記試験(訪問歯科に関する学科試験)が課され、合格者には認定証が授与されます。試験内容は高齢者歯科、摂食嚥下、口腔ケア、義歯管理、感染対策など幅広い医療知識や関連制度について出題される傾向にあります。このような専門資格に挑戦する過程で、訪問歯科に関する体系だった知識や技術を身につけることができます。例えば嚥下機能評価や多職種連携のノウハウを学ぶことで、現場での対応力に一層自信が持てるでしょう。認定衛生士が在籍していること自体が医院の質担保や対外的アピールにもなり、ケアマネジャーや医科からの信頼獲得につながるとの指摘もあります。注意点として、この認定はあくまで民間資格であり取得しなくても訪問診療は法的に可能です。資格よりも実務経験や研鑽が大切という点は忘れてはいけませんが、研修・セミナーへの参加は知識のアップデートや横のネットワーク作りにも役立ちます。例えば各地の歯科医師会・歯科衛生士会も在宅歯科医療に関する講習会を開催していますし、摂食嚥下や訪問口腔ケアに特化したセミナーも充実してきています。忙しい中でもこれらの機会を活用し続けることで、訪問歯科衛生士として安心・安全なケアを提供し続けることができるでしょう。専門知識を深める努力は自分の成長にも直結しますし、高齢社会で長く活躍できる衛生士になるための大きな武器となるはずです。

訪問歯科衛生士のやりがいも知っておこう

患者の生活を支え感謝される喜び 訪問歯科衛生士の仕事は大変なことも多いですが、その分 やりがい も大きい仕事です。最大のやりがいは、やはり 患者さんやご家族から直接感謝の言葉をもらえる瞬間でしょう。通院できない方にとって、歯科医療者が自宅に来てくれること自体が大きな支えになります。「おかげでご飯が美味しく食べられるようになったよ」「いつも丁寧に磨いてくれてありがとうね」といった言葉をいただいたとき、歯科衛生士冥利に尽きると感じる人は多いはずです。口腔ケアを継続していく中で、最初は拒否が強かった認知症の患者さんが次第に心を開いてくれたり、訪問を重ねるごとに笑顔が増えていったりするのを見るのも大きな喜びです。口の中の健康改善は嚥下機能や全身の栄養状態の維持にもつながり、患者さんの QOL(生活の質)向上 に貢献できます。例えば定期的な口腔ケアによって誤嚥性肺炎の発症を防げたケースや、入れ歯を新調して食事を楽しめるようになったケースなど、目に見える成果が現れることもあります。そのたびに「この仕事をやっていて良かった」と実感できるでしょう。また訪問では患者さんの生活背景まで見えるため、ちょっとした困り事をケアマネージャーに伝えて解決につなげるなど、生活全般を支える多職種連携の一端を担えるのも醍醐味です。現場で得られる感謝の言葉や笑顔は何にも代えがたい報酬であり、それが訪問歯科衛生士として働き続ける原動力になるのです。

高齢社会で必要とされる誇りと使命感 もう一つ、訪問歯科衛生士のやりがいとして挙げられるのが 社会的意義の大きさ です。日本は超高齢社会に突入し、2040年に向けて在宅医療の需要はさらに高まると見込まれています。厚生労働省の推計によれば、2020年から2040年にかけて 75歳以上の歯科訪問診療の需要は約43%増加 し、とりわけ85歳以上では62%増加するとされています。つまり今後ますます多くの高齢者が自宅や施設で歯科ケアを必要とすることになり、訪問歯科の役割は重大です。その一翼を担う歯科衛生士は、まさに 社会から強く求められている職種と言えます。現状では全国の歯科診療所のうち訪問診療を行っているのは約2割に過ぎず(2017年時点)、提供体制の地域差も課題となっています。それだけに、訪問歯科に積極的に関わる歯科衛生士の存在は貴重です。「自分の仕事が地域の高齢者の安心につながっている」という誇りと使命感を持って働けるのは、大きなモチベーションになるでしょう。実際、訪問歯科の現場で経験を積んだ衛生士さんからは「口腔ケアを通じて患者さんの人生に寄り添えることにやりがいを感じる」「歯科の枠を超えてチーム医療に参加でき、自分の視野が広がった」という声も聞かれます。社会全体を見ても、要介護高齢者の 約300万人近く が必要な歯科ケアを受けられていないと推計される現状があります。その未充足の部分を埋め、「最後まで口から食べる楽しみを支える」訪問歯科衛生士の役割は計り知れません。自分の仕事が誰かの生活を支え、笑顔を生み出し、社会の課題解決にもつながっている――そう実感できることこそ、訪問歯科衛生士という職業の大きなやりがいではないでしょうか。日々の苦労を乗り越えた先にある達成感と誇りを胸に、ぜひ多くの歯科衛生士の方々に訪問歯科というフィールドで活躍していただきたいと思います。

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