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歯科医師の主な就職先とは?歯科医師としての選択肢と、歯科医師以外の選択肢を紹介!

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歯科医師の就職先はどこが一般的?

日本の歯科医師は、どこで働くことが多いのでしょうか? 結論から言えば、圧倒的に歯科診療所(クリニック)で働くケースが一般的です。厚生労働省の令和4年(2022年)調査によれば、全国の歯科医師約10万5千人のうち約9割が診療所勤務で、その内訳は約54%が自ら診療所を開設し、約32%が他の歯科医院に勤務する立場でした。つまり、多くの歯科医師は開業医か勤務医として地域の歯科医院で働いているのが現状です。また残りの約1割弱が診療所以外の職場に従事しており、これには病院勤務や行政機関などが含まれます。ちなみに日本全国の歯科医院の数はコンビニエンスストアの数より多いとも言われ、都市部では歯科医院の密集による競争も存在しています。こうした背景から、新人の歯科医師が就職する際はまず民間の歯科クリニックで経験を積むのが一般的です。

歯科診療所で働く歯科医師が最も多いのは、患者さんに身近な医療機関が歯科医院だからです。虫歯や歯周病の治療、定期健診やクリーニングなど、地域住民の歯の健康を支えるのが診療所勤務の歯科医師の役割です。全国に多数存在する歯科クリニックでは、それぞれが特色を打ち出し競合との差別化に努めています。例えば最新の機器を導入したり、自費診療メニューを充実させたり、訪問歯科や予防歯科に力を入れる医院もあります。新人歯科医師は国家試験合格後、指定の研修施設で1年以上の臨床研修を受けることが義務づけられており、その研修先も大学病院附属の歯科や研修指定を受けた臨床研修病院・診療所となります。臨床研修修了後は、多くの若手歯科医師がまずは勤務医として一般の歯科医院に就職し、研修で学んだ診療技術を実践に活かしていきます。歯科医師の求人は全国的に多く、事実上「就職率100%」とも言われるほど歯科医師が職に就けないケースは少ないようです。ただし勤務条件や地域によって人気の求人と不人気の求人があるため、自分の希望に合った職場探しが重要です。

病院で勤務する歯科医師も一定数存在します。歯科医院の多くは個人経営のクリニックですが、大学病院の歯科口腔外科や総合病院の歯科・口腔外科部門などで働く歯科医師もいます。病院勤務の歯科医師は、一般の開業医では対応しきれない難症例や全身疾患を伴う患者の歯科治療を担うことが多いです。例えば親知らずの難抜歯や顎骨の手術、口腔がんの切除など高度な外科処置は病院の口腔外科が担当します。また病院ではチーム医療の一員として、がん患者の術前後の口腔ケアや入院患者の歯科管理、全身麻酔下での歯科治療など、医院とは異なる役割を果たします。病院勤務は給与体系や勤務時間が公的な基準に則るため比較的安定していますが、ポスト数は限られており専門性が求められる傾向です。なお、日本では病院の口腔外科に所属するのは医師ではなく歯科医師であることが多く、歯科医師が医科と連携して入院患者の口腔の健康管理を担っているケースも少なくありません。

開業医と勤務歯科医、どちらを選ぶ?

歯科医師としてキャリアを歩む上で、自分で開業するか、勤務医として働き続けるかは大きな選択肢です。それぞれメリット・デメリットがあり、多くの歯科医師はまず勤務医として経験を積み、ゆくゆくは開業を目指すかどうかを考えます。ここでは開業歯科医と勤務歯科医それぞれの特徴を整理します。

自分の歯科医院を開業する道には、大きなやりがいと責任が伴います。開業医とは、自ら資金を用意し設備を整えて院長として歯科クリニックを経営する立場です。日本の歯科医師の過半数は最終的に自身の診療所を構えています。開業のメリットは、診療内容や医院の方針を自分で決められる自由度と、経営が軌道に乗れば高収入を得られる可能性があることです。例えば、地域密着型で保険診療中心の医院にするか、高度な自費診療や予防歯科に特化したクリニックにするか、自分の理想の歯科医療を形にできます。一方、デメリットや課題としては初期投資の負担や経営者としての知識不足が挙げられます。特にゼロから新規開業する場合は、開業資金の借入手続き、物件選び、スタッフ雇用、医療法人化の検討など、歯科治療以外の業務にも追われることになります。また患者さんを集めるための地域リサーチやマーケティングも必要です。親の代からの事業承継(継業)で開業医になるケースでは、既存患者や設備を引き継げる利点がある反面、先代からの方針転換やスタッフ体制の見直しに苦労することもあります。いずれにせよ、開業には周到な準備と経営感覚が求められるでしょう。

勤務歯科医として働き続ける道は、臨床に専念できる安定したキャリアと言えます。勤務医の最大の魅力は、経営上のリスクを背負わずに歯科診療に集中できる点です。開業医と比べて収入は給与制で一定ですが、勤務先によって福利厚生や勤務時間も安定しており、ワークライフバランスを重視する人には適した選択肢でしょう。特に若手のうちは様々な症例を経験して技術を高めることが大切なので、研鑽の場として複数の歯科医院で非常勤勤務をするケースもあります。勤務医で経験を積めば専門分野のスキルを伸ばしたり、あるいは週何日か別の医院で働く兼業も可能です。勤務医として働きながら、その医院で副院長的な立場に昇進したり、あるいは一定年数後に分院長や開業のオファーを受ける例もあります。注意点として、勤務医は院長の治療方針に従う必要があるため、自分のやりたい診療スタイルと合致した職場を選ぶことが重要です。また給与水準は院によって差があります。歩合給制を採用している職場では、自費診療をどれだけ担当するかで収入に差が出る場合もあります。勤務を続けるうちに将来開業したくなる人もいれば、逆に経営より診療に集中したいとして一生勤務医を貫く人もいます。それぞれのライフプランに合わせて柔軟に考えると良いでしょう。

公務員歯科医師として働く道もある?

歯科医師にはクリニックや病院での臨床以外に、公務員として働く選択肢も存在します。あまり知られていませんが、国や自治体の機関で歯科医師資格を活かして働くポジションがいくつかあります。代表的なのが厚生労働省など中央省庁の歯科系技官(医系技官)と呼ばれる職種で、歯科医療行政に携わる歯科医師です。また、防衛省・自衛隊で部隊の歯科衛生を担う歯科医官(自衛隊歯科幹部)や、都道府県・市区町村の保健所や病院に勤務する歯科医師も、公務員という立場になります。

行政機関で働く歯科医師(医系技官)は、厚生労働省や地方厚生局などに所属し、歯科保健行政や制度づくりに専門知識を提供する役割です。たとえば国民皆保険制度における歯科診療報酬の改定作業や、地域の歯科医療計画の立案、歯科保健施策の推進など、臨床現場とは異なる視点で歯科医療に貢献します。医系技官になるには厚生労働省が実施する医系技官採用試験に合格する必要があり、歯科医師免許取得者を対象に年1〜2回試験が行われています。応募には一定の臨床経験や推薦状が求められ、試験では筆記ではなくグループ討議や面接など人物重視の選考が行われます。採用倍率は2〜3倍程度と言われ、歯科医師国家試験より狭き門ともいえます。勤務場所は厚生労働省本省のほか、都道府県庁や保健所に出向して地域歯科行政を担うこともあります。勤務時間や給与は国家公務員の規定に準じ、安定した身分ですが、年功序列でキャリアが進む傾向や、職務によっては全国転勤の可能性がある点は民間勤務との違いです。また国家公務員として副業は原則禁止のため、公務員歯科医師は本業に専念することになります。

自衛隊や自治体病院で働く歯科医師も公務員の一種です。自衛隊では医科・歯科幹部自衛官として歯科医師を募集しており、医師と同様に幹部候補生として入隊し部隊の健康管理や駐屯地での歯科診療に従事します。自衛隊歯科医官は、有事の際の衛生業務だけでなく平時の隊員の歯科治療・予防、海外派遣時の医療支援なども任務となり、特殊な環境下で歯科医療スキルを発揮する仕事です。採用には防衛省の試験に合格する必要があり、こちらも一定の競争があります。一方、都道府県や市区町村でも歯科公務員としての求人が出る場合があります。例えば保健所で嘱託歯科医師として乳幼児や障害者の歯科健診事業を担当したり、公立の病院・医療センターの歯科口腔外科に勤務する歯科医師ポストもあります。自治体によっては、地域の障害者歯科センターや学校歯科保健(学校歯科医の統括)に歯科医師を配置することもあります。公務員歯科医師は求人枠が限られ狭き門ですが、歯科医療を社会の制度面から支える重要な役割を担える点でやりがいがあります。歯科医師としての専門性を活かしつつ安定した公的キャリアを築きたい方には一考に値する進路でしょう。

大学や研究機関で歯科医師が担う役割とは?

大学や研究所で働く道も、歯科医師にとって重要なキャリアの一つです。歯学部を持つ大学では多くの歯科医師が教員や研究者として在籍しており、臨床とは異なる形で歯科医学の発展に寄与しています。ここでは大学教員・研究者としての歯科医師の役割について見てみましょう。

歯学部の教員・研究者として働く歯科医師は、学生の教育と専門分野の研究を両立する立場です。大学の歯学部や医科歯科系の研究所では、歯科医師が講師・助教・教授などの教員として勤務し、学生に歯科医学を教えながら研究活動を行うのが一般的です。臨床系の教室(例えば保存修復学や補綴学、口腔外科学など)では附属病院で患者の診療も担当しつつ、新しい治療法や材料の研究開発を行います。一方、基礎系の分野(例えば口腔解剖学・生理学・病理学など)の教員は、実験や論文執筆に専念し歯科医療の土台となる研究に取り組みます。研究職の魅力は、自身の専門性を極めて歯科医学の発展に貢献できる点にあります。将来の患者さんのために新たな知見や治療技術を生み出せることは、他では得難いやりがいでしょう。また大学教員は学会活動や後進の育成にも関与し、国際的な視野で活躍する人もいます。しかし悩みもあります。一般に大学の研究職は給与水準が臨床より低めであることや、教授になるほど教育・管理業務が増え研究に割ける時間が減る傾向があります。さらに研究成果(論文)の評価がシビアで、特に基礎研究では歯科独自のテーマにしないと医学系研究に埋もれてしまうという厳しさも指摘されています。それでも、最先端の医療を創出する一員になれる喜びや、大きな成果を出した際には特許取得や学術賞などで評価される可能性もあり、研究者としてのキャリアは挑戦しがいのある道です。大学に残るには卒業後すぐ大学院に進学し博士号を取得するのが一般的で、その後助手(助教)から講師、准教授、教授へと長い年月をかけて昇進していきます。教育者としての熱意と研究への探究心が求められる世界ですが、「臨床の現場で役立つ発見をしたい」「将来の歯科医師を育てたい」という志を持つ方には適したキャリアと言えます。

法歯学や専門分野で活躍する道も研究系キャリアの延長上にあります。例えば近年注目される法歯学者(警察歯科医)は、歯科の知識を法医学の分野で活かす専門職です。警察歯科医は、事件や災害での身元不明遺体の個人識別において歯の所見から身元確認を行ったり、法医解剖の際に歯型を採取して死因究明に協力したりします。日本では東日本大震災で多くの身元確認に歯型情報が有用だったことから法歯学が注目され、警察と連携する歯科医師の研修制度も充実してきました。このように行政・研究の両面の要素を持つ仕事で、特殊技能を発揮する場と言えます。他にも、法医学のみならず労働衛生分野の歯科(産業歯科医)や、教育専門職としての予備校講師など、歯科医師免許を活かしつつ臨床以外で活躍するケースもあります。それぞれの領域で追加の研修や認定資格が必要な場合もありますが、自身の興味や適性に応じて専門性を伸ばせるのは歯科医師のキャリアの多様性を示しています。

企業で働く歯科医師のキャリアとは?

歯科医師の中には、民間企業に勤務する道を選ぶ人もいます。一般的なイメージでは歯科医師=臨床現場という印象ですが、実は歯科に関連する企業や業界にも歯科医師の専門知識を求める仕事が存在します。ここでは企業で活躍する歯科医師の具体例を紹介します。

歯科関連メーカーや製薬会社で働くケースでは、臨床経験豊富な歯科医師がその知見を商品開発や営業支援に活かしています。例えば歯科用の材料・機器メーカーでは、製品開発チームに歯科医師が加わり、実際の診療ニーズに即した新製品の企画や改良を行うことがあります。また医薬品・オーラルケア製品の企業では、歯科領域の研究職や学術担当(メディカルアフェアーズ)として、エビデンス収集や論文作成、大学との共同研究に携わる場合もあります。これらの企業ポジションでは直接患者さんを診ることは少ないですが、専門知識で企業活動を陰から支える役割を担います。企業での勤務は基本的に給与が安定しており土日休みなども取りやすい傾向にあります。そのため「臨床より安定した勤務環境を重視したい」「歯科の知識を広い視野で役立てたい」という歯科医師にとって魅力的な選択肢です。一方で企業が求めるのはビジネスパーソンとしての能力も含まれるため、コミュニケーション力や企画力など臨床以外のスキルも磨く必要があります。企業によっては臨床経験○年以上と応募条件が設定されていることもあるので、興味がある人は若いうちに臨床経験を積んでおくと有利でしょう。

その他の民間企業で求められる歯科医師のスキルとしては、医療保険やIT分野での活躍が挙げられます。例えば民間の医療保険会社では、歯科医療の支払い審査や給付判定に歯科医師の知識が役立つケースがあります。また近年増えているデンタルテック系のスタートアップ企業(オンライン歯科矯正サービスや歯科医療プラットフォーム等)では、開発チームに歯科医師が参画してサービスの質を担保したり、ユーザー対応を行ったりすることもあります。さらに、かつて存在した「産業歯科医」という働き方も企業内歯科医師の一例です。これは労働安全衛生法関連の制度で、特定の有害物質を扱う工場などで従業員の歯の健康診断を行う歯科医師のことを指します。産業医(医師)の歯科版ですが、法律上「産業歯科医」という言葉があるのみで企業に常勤で置く例は多くありません。かつては大企業が福利厚生で自社歯科診療所を構え、社員向けに歯科医師を雇うケースも見られました(銀行や新聞社などが典型)が、最近では外部の歯科医院と提携して定期健診を委託する形が主流となり、常勤の企業内歯科医師の需要は減少傾向といわれます。そのため現在「企業で働く歯科医師」といえば、歯科産業に関わる会社員や、保険・ITなど歯科知識を活かせる異分野の職種を指すことが多いでしょう。こうしたポストは求人の数自体は多くないものの、歯科医療を別の角度から支える重要な役割です。臨床とは違った環境で自分の専門性を発揮したいと考える歯科医師にとって、企業でのキャリアは一つの魅力的な選択肢となっています。

非常勤勤務や副業という選択肢もある?

近年、歯科医師の働き方は多様化しており、非常勤で複数の職場を掛け持ちしたり、副業に挑戦したりする例も増えています。従来、医師や歯科医師は一つの病院・医院で常勤勤務するのが一般的でしたが、歯科業界では人材の流動化やライフスタイルの変化に伴い、様々な働き方を模索する動きが見られます。ここでは歯科医師の非常勤・副業について考えてみます。

非常勤歯科医師として勤務する形態は、特に若手歯科医師にとってスキルアップと収入確保の両面で活用されています。非常勤とは週に数日だけある医院で勤務するスタイルで、例えばA歯科医院で週3日、B歯科クリニックで週2日働くといった具合に複数の職場を組み合わせることも可能です。メリットとして、様々な環境で幅広い症例を経験できるため視野が広がり、自分に合った診療スタイルを探せるという点があります。また勤務日を調整しやすいため、育児や介護と両立したい場合にも有効です。非常勤医は雇用形態上「アルバイト」扱いになることも多く、常勤に比べると福利厚生や給与面で劣る場合があります。ただし歩合制(インセンティブ制度)を導入している医院では、自費治療を担当すればその一部が報酬に加算されることもあり、実力次第で収入を伸ばす余地もあります。都市部では競争が激しいため歩合率が低めになる傾向がありますが、歯科医師が少ない地方では待遇が良いケースもあるようです。注意点として、非常勤先は若手のうちは見つかりやすく重宝されますが、年齢を重ね給与が高くなるとポストを維持しにくくなるという声もあります。将来長く勤められるか、スキルを十分磨ける環境か、といった視点で非常勤先を選ぶことが大切です。

歯科医師の副業や兼業も徐々に増えてきています。収入補填や新たな挑戦を目的に、本業の診療と並行して別の仕事を持つ歯科医師もいます。代表的なのは他院での非常勤勤務ですが、それ以外にも全く異業種に挑戦する例があります。例えば、歯科医師国家試験の予備校講師として週末に教壇に立ったり、歯科専門メディアのライター・編集者として執筆活動を副業にする人もいます。医療系の出版やWEBサイトでは歯科医師の知識を持った人材が重宝されるため、文章を書くのが得意なら執筆業は副収入の手段となりえます。また最近ではYouTubeなどの動画配信やSNS発信を行う歯科医師もおり、動画編集スキルを磨いて自分や他者のチャンネル運営を手伝うケースもあります。これらは在宅でできる仕事として人気が高まっています。さらに全く医療とは別に、趣味や特技を活かした副業(例えばイラスト制作やプログラミング、副業投資など)に取り組む歯科医師も存在します。副業をする際には本業への支障や守秘義務の順守に注意が必要ですが、歯科医師であっても自分らしい働き方を模索する時代になってきたと言えるでしょう。ただし、公務員歯科医師の場合は副業禁止ですし、民間でも就業規則で副業を制限している医療機関もあるため、事前に許可を取ることが大切です。厚生労働省も副業・兼業を促進する流れを見せていますが、患者さんの信頼を損なわない範囲でスキルアップや収入確保に繋げていく工夫が求められます。

歯科医師以外のキャリアパスには何がある?

「歯科医師以外の選択肢」というテーマも、歯学部生や若手歯科医師が悩むポイントかもしれません。中には「臨床の仕事が向いていないかもしれない」「他の業界も見てみたい」と感じる人もいるでしょう。歯科医師免許を取得したからといって、必ずしも一生臨床歯科医師として働かなければならないわけではありません。ここでは歯科医師資格を持ちながら別の職種・業界で活躍する道について考えてみます。

歯科の知識を活かせる他職種への転身は、比較的取り組みやすいキャリアチェンジと言えます。前述したように歯科予備校の講師や歯科医療系ライターはその代表例で、臨床で培った知識や経験を教育・メディア分野で活かす仕事です。特に予備校講師は歯科学生に国家試験対策を教える仕事で、歯科医師免許があるからこそできる教育職です。教えることが好きでコミュニケーション力に自信がある人には適しているでしょう。また執筆・編集の仕事では、歯科専門誌の記事執筆や一般向け健康本の出版、あるいはWebメディアの記事監修など、専門家として情報発信する役割が期待されます。最近ではブログや電子書籍で自ら発信し収益化を図る歯科医師もいます。さらに、医療系のコンサルタントやマーケティング職に転身する例もあります。歯科医院向けの経営コンサル会社や、歯科用品の商社などでは、歯科医師の視点を持った企画営業やアドバイザーが求められることがあります。これらは一旦歯科医師としての臨床を離れますが、自分の専門知識をベースに違う形で貢献できる仕事と言えます。

全く異なる業界・職種に挑戦する歯科医師も存在します。例えばIT企業のエンジニアやデータ分析職にキャリアチェンジしたり、金融業界や公務員試験に再チャレンジして医療と無関係の道を歩む方もいます。実際、「歯科医師を辞めて他業種に転職したい」という相談は珍しくなく、転職エージェントでも医療従事者から異業種へのキャリア支援事例が増えているそうです。歯科医師は国家資格で専門性が高いため異業種転職は簡単ではありませんが、論理的思考力や手先の器用さ、責任感など歯科医師として培った資質は他の仕事でも活かせる場面があります。具体的な例として、ITベンチャーで医療系プロジェクトを担当する、あるいは製薬会社のMR(営業)として自社製品を歯科に売り込む、といったケースがあります。また全く趣味を仕事にしてしまう人もおり、プロスポーツトレーナーになったり、デザイナーやイラストレーターとして第二の才能を開花させた歯科医師もいます。副業の延長が本業に発展するパターンもあるでしょう。歯科医師免許自体は一生ものですから、たとえ一時的に臨床から離れても資格は保持できます。将来また歯科界に戻る可能性を残しつつ他業界を経験するのも、本人の幸福につながる選択なら決して悪いことではありません。ただ、異業種では新人扱いで一から学ぶ姿勢が必要であり、収入面でも歯科医師時代より下がる覚悟がいるかもしれません。重要なのは自分にとって何が天職かを見極めることです。臨床に向いていないと感じて悩んでいる人も、世の中には多様な道があると知ることで気持ちが楽になることもあります。自分の適性や興味を見つめ直し、必要ならキャリアカウンセリング等も利用しながら、納得のいく進路を選びましょう。

歯科医師の将来性はどう?需要と供給の見通し

最後に、歯科医師という職業の将来性について触れておきます。就職先の選択肢を考える上で、その職業の将来的な需要や環境変化も重要なポイントです。日本の歯科医師を取り巻く状況は近年少しずつ変化してきていますが、果たして将来は明るいのでしょうか。

歯科医師数の推移と今後の動向を見てみると、実は歯科医師の供給はピークを過ぎつつあるというデータがあります。厚生労働省の統計(令和4年末時点)によれば、全国の歯科医師数は105,267人で、2年前に比べ約2,000人減少しました。特に年代別では、60代の歯科医師が23,566人と最も多く、次いで50代が22,398人と、中高年層が全体の半数以上を占めています。一方で20代の歯科医師はわずか5,963人しかおらず、世代交代が進まないまま高齢化が進行しているのです。背景には、かつて歯科医師が過剰と言われた反省から歯科医師国家試験の合格率が近年60%台まで絞られていることや、若者人口自体の減少で歯学部入学者が横ばいで推移していることがあります。1980年代には8割前後だった国家試験合格率は現在6割台前半となり、新規歯科医師は年間2,000人程度に抑えられています。その結果、団塊世代の大量リタイアが進む2025年以降、むしろ歯科医師不足の時代が来る可能性も指摘されています。特に地方で後継者のいない歯科医院が増えると懸念されており、地域格差が広がるリスクがあります。

高齢化社会で高まるニーズに照らすと、歯科医師の需要は決して減ってはいません。むしろ日本は超高齢社会に突入し、要介護高齢者の約6割に歯科治療が必要とのデータもあるなど、口腔ケアの重要性はますます増しています。要介護になると自力で歯科通院することが難しくなるため、訪問歯科診療が今後一段と求められるでしょう。しかし現状、訪問診療を担える歯科医師は十分とは言えず、高齢者施設や在宅でのケアを拡充するには若手歯科医師の参入が不可欠です。また歯の本数が少ない高齢者ほど認知症リスクが高まるという研究もあり、全身の健康維持のために歯科医師が果たす役割は大きいと考えられます。幸い、日本人の口腔衛生への意識は高まっており、直近1年間に歯科健診を受けた人の割合は58.0%にのぼるとの統計もあります。つまり予防歯科やメインテナンス需要は確実に存在し、社会が歯科医師に期待する領域は広がっています。問題はそのニーズに応える人材配置であり、国も「歯科医師の適切な配置」を議論するワーキンググループを設けるなど対策を検討中です。都市部では依然「歯科医院はコンビニより多い」と言われるほど競争が厳しい一方、郊外・地方では歯科医療過疎が顕在化しているというアンバランスも課題です。若手歯科医師にとっては、あえて需要の高い地域に活躍の場を求めることで早くから成功するチャンスもあるでしょう。

総じて、歯科医師の就職先は多岐にわたり、臨床から行政、研究、企業、さらには異業種まで自分次第で選択肢を広げられる職業です。専門職でありつつキャリアの柔軟性も持ち合わせている点が歯科医師の魅力と言えます。将来に不安を抱く場面もあるかもしれませんが、需要の高まりが見込まれる分野で力を発揮したり、新しい働き方を模索したりすることで道は開けていきます。歯科医師としてのスキルと資格は大きな財産です。それを軸に、自分に合った進路を選び取っていけば、きっと実りあるキャリアを築けることでしょう。

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