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歯科医師国家試験の難易度は?医師と薬剤師等との比較、合格率や家庭環境、幼少からの教育状況、合格率など様々な軸で難易度を解説!

最終更新日

歯科医師国家試験の難易度はどれくらい高い?

歯科医師国家試験は医療系国家資格の中でも難易度が高い部類に入ります。近年の合格率はおおむね60〜70%前後で推移しており、受験者の約3〜4割は不合格になる計算です。例えば2025年(第118回)の試験では3,039人が受験し2,136人が合格、合格率70.3%という結果でした。これは前年度の66.1%から上昇し、約12年ぶりに7割を超えた水準でしたが、それでも医療系国家試験としては決して容易ではありません。

こうした合格率の低さの背景には、試験そのものの難しさに加え、合格者数の調整があります。厚生労働省は毎年の歯科医師国家試験で合格者がおよそ2,000人前後になるように基準を設定しているとされ、実際にここ数年の合格者数は2,000~2,100人程度で推移しています。試験問題は歯科医学の基礎から臨床、そして歯科保健や法律まで幅広い領域にわたり出題され、2日間にわたって数百問規模の問題に解答する厳しい内容です。特に必修問題では全問の80%以上正答しなければ即不合格となる絶対基準が課されており、そのうえで一般問題や実地問題の総得点によって合否が決まります。総合的な知識が問われるうえ、相対的な得点上位者のみが合格できる仕組みのため、一定数の不合格者が出る構造になっています。

試験の難易度は歯学部在学中の努力とも大きく関わります。歯学部の6年間で確かな学力と臨床知識を身につけなければ国家試験に太刀打ちできません。実際に卒業試験に通らず国家試験を受けられない学生や、卒業後に浪人(既卒受験)して再挑戦する人も少なくありません。新卒で合格できなかった場合、次年度以降の合格率はさらに低下します。統計では新卒受験者の合格率が約76〜80%であるのに対し、1浪目で約60%、2浪目で50%程度、3浪目になると40%未満まで下がるデータもあります。このように、国家試験は一発で合格することが望ましく、浪人を重ねるごとに合格のハードルが上がっていくのが現状です。

医師国家試験と比べて歯科医師国家試験は難しい?

医師(ドクター)国家試験と歯科医師国家試験はともに厚生労働省が管轄する医療系の国家資格試験ですが、その競争の状況や合格率には大きな違いがあります。

入学難易度と学生の質の違い

まず両者の大学入学時点での難易度には歴然とした差があります。医学部の入試は極めて競争率が高く、私立医学部でも平均志願倍率24.67倍という狭き門です。大学受験偏差値も医学部は全学部中トップクラスで、入学者は高校時代から極めて優秀な成績を収めた学生が大半です。一方、歯学部の入試倍率は平均3.72倍程度と医学部に比べれば低く、とりわけ私立歯学部では定員割れ(定員に満たない入学者)となる大学も出る状況です。このため、歯学部の学生の学力層は医学部ほど均質に高いわけではなく、入学時の学力には幅があります。

ただし注意すべき点は、歯学部も国公立大学や難関私立大学では依然として高い人気と難易度を保っていることです。国公立の歯学部では定員充足率がほぼ100%で推移し、難関私立(例:東京歯科大学や昭和大学など)は高偏差値帯の受験生が集まります。その結果、こうした上位歯学部では入学者の学力も高く、勉強への意識が非常に高い学生が多い傾向があります。一方で定員割れするような歯学部では、入学後に勉強習慣を改めて身につける指導が必要になるケースもあると言われています。つまり、医師と歯科医師の難易度を比較する際には、「入学することの難しさ」は医師の方が圧倒的に高いものの、「入学後についていく大変さ」は歯学部の方が学生によって差が大きいとも言えるのです。

国家試験の合格率と試験方針の違い

国家試験の合格率を見ると、両者の難易度の違いが一目瞭然です。医師国家試験は例年合格率90%以上と非常に高い水準で安定しています。実際、直近の第116回医師国家試験(2022年)では受験者10,061人中9,222人合格、合格率91.7%(新卒合格率95%)という数字が公表されています。一方、歯科医師国家試験は前述のとおり合格率60〜70%程度で、医師に比べればかなり低い値です。例えば2024年(第117回)の歯科医師国家試験は合格率61.6%(新卒合格率77.1%)に留まりました。このように試験に合格できる割合だけを見れば、「歯科医師国家試験の方が医師国家試験より難しい」と言われる所以です。

合格率の差が生じる背景には、試験実施の方針や対象母集団の違いがあります。医師国家試験では基本的に医学部を卒業できる時点で十分な学力が担保されていること、そして国家試験自体もほぼ全員を合格させる前提で作問・採点されていることが挙げられます。医師は慢性的な不足を補う必要もあり、各大学とも国家試験合格に向けた対策を徹底しているため、新卒なら大多数が合格します。一方、歯科医師国家試験ではあえて一定の不合格者を出すことで新規歯科医師の数を調整するという側面が指摘されています。近年の歯科医師過剰傾向に鑑みて、厚労省が合格基準を相対評価で設定し合格者数を絞っているため、合格率が低めに出るのです。実際、「歯科医師国家試験の合格難易度は医師より高い。その背景には歯科医師数が余剰傾向にあることが影響している」とも言われています。

もっとも、医師国家試験と歯科医師国家試験の内容や範囲も異なるため、一概な難易度比較は難しい側面があります。医師国家試験は全身の医学知識を問う膨大な範囲ですが、優秀な学生が揃うこともあって試験の及第点自体は高くない(多くが合格できる)傾向です。一方、歯科医師国家試験は範囲こそ歯科領域に特化するものの、要求される得点水準が高く、合格基準に届かない受験者が一定数出てしまう構造です。このように、「門をくぐる難しさ」は医師、「門を出る難しさ」は歯科医師とも表現でき、両者の難易度の質は異なっていると言えるでしょう。

歯科医師国家試験は薬剤師国家試験より難しい?

歯科医師国家試験と並んで6年制大学卒業が必要な国家資格に薬剤師国家試験があります。では、この薬剤師国試と比べて歯科医師国試の難易度はどう位置付けられるでしょうか。いくつかの観点から比較してみます。

養成課程と入試の違い(歯学部 vs 薬学部)

まず前提として、歯学部と薬学部の教育課程はいずれも6年制です(※薬学部は2006年度以降、薬剤師資格コースが6年制)。そのため大学卒業までの年数は同じですが、入試難易度や学生の傾向には違いがあります。薬学部の偏差値や競争率は大学によって幅広く、最難関の国公立薬学部では高倍率ですが、中堅〜下位の私立薬学部では比較的入りやすいところもあります。一方の歯学部も先述の通り難易度に差があり、上位校以外では定員割れするケースもある状況です。文部科学省のデータによれば、私立歯学部の2023年度入学定員充足率は約78.5%であり、依然として定員に満たない学校がある一方、私立薬学部は近年入学者が増加傾向にあります。総じて言えば、「医学部 > 歯学部 ≒ 薬学部(上位校を除く)」の順で入学ハードルが高い傾向にありますが、歯学部と薬学部の差は医学部ほど極端ではありません。むしろ個々の大学や志望コースによる差の方が大きいでしょう。

学ぶ内容にも違いがあります。歯学部は解剖学や生理学など医学共通の基礎科目に加え、歯科保存学・補綴学・矯正学など歯科臨床に直結する専門科目を履修し、患者の治療を見据えた実習も行います。薬学部は有機化学や薬理学・生化学など理系色の強い科目を多く学び、医薬品の調剤や薬物治療の知識を深める教育が中心です。6年次には薬局や病院での実務実習もあります。こうした教育課程の違いから、学生が苦労するポイントも異なります。歯学部では実習で要求される器用さや膨大な暗記量、薬学部では有機化学など難解な科目の理解や研究実験などが挙げられます。どちらも容易な課程ではなく、しっかり勉強しないと卒業や国家試験に支障が出る点では共通しています。

国家試験の合格率と傾向の比較

国家試験の合格率を見ると、近年では歯科医師国家試験と薬剤師国家試験はほぼ同程度か、歯科医師の方がやや低い傾向にあります。薬剤師国家試験の合格率はここ数年70%台前半で推移しており、例えば2022年(第107回)は68.0%でした。一方、同年の歯科医師国家試験(第115回)は61.6%と薬剤師より低く、新卒合格率でも歯科77.1%に対し薬剤師85.2%と歯科の方が苦戦する結果となっています。直近では歯科医師国試の合格率がやや上昇し70%台となりましたが、依然として薬剤師国試と同程度か下回る水準です。このため、「難関度は歯科医師国試 ≧ 薬剤師国試」と見る向きもあります。

ただし薬剤師国家試験も近年難化傾向が指摘されています。過去10年で合格率が80%台後半から70%台へと低下してきており、試験制度が絶対評価から相対評価に移行したことで今後さらに合格率が下がる可能性があると関係者は注視しています。薬剤師についても供給過多が懸念されるなか、将来的に歯科医師国試並みに厳しい試験になるのではとの声もあります。実際、2023年には薬剤師国家試験の合格率がついに68%台まで低下し、難関国家資格の一つとして認識されつつあります。一方で歯科医師国家試験はすでに述べたように長年60〜70%前後で推移してきた経緯があります。したがって現時点では、「どちらも難しいが、僅差で歯科医師国試の方が難度が高い」と見るのが妥当でしょう。ただ個人の適性にもよるため、一概に優劣を断じることはできません。重要なのは、それぞれの試験に向けて十分な知識と対策を積むことです。

入学のハードルは?定員充足や志願倍率、学費から考える

歯科医師になるまでの入口の段階にも目を向けてみましょう。歯学部への入学は医・歯学系のキャリアの第一歩ですが、そのハードルの高さは時代や大学によって変化しています。ここでは入試倍率や定員充足率、さらに歯学部特有の学費の問題から、そのハードルを考えてみます。

私立歯学部の定員割れと入試倍率

近年、歯学部の入学者募集を取り巻く環境は大きく様変わりしています。特に私立歯学部では定員割れが長らく問題となっており、一部大学では志願者が定員を大きく下回る状況も見られました。文部科学省の調査によれば、2023年度時点で私立歯学部全体の入学定員充足率は約78.5%で、定員未達の大学が依然残っています。これは裏を返せば、「歯学部には募集定員に対して入学希望者が不足している」ことを意味します。要因としては、歯科医師過剰による将来不安から志願者が減少したことや、学費負担の重さ(後述)が敬遠されていることが挙げられます。

入試の実質倍率を見ても、歯学部の入りやすさが浮き彫りになります。私立歯学部の志願倍率(志願者数÷定員)は平均3〜4倍前後で、私立医学部の平均約25倍と比較すると大きく低い値です。極端な例では、募集定員を充足できず志願倍率1倍台となる歯学部も一時期存在しました。ただし改善の兆しもあります。近年はいくつかの私立歯科大学で入学定員の見直しや学費減額などの施策が取られ、その結果志願者数が増えて定員充足率が徐々に上向いてきたとの報告があります。2023年度は私立歯学部全体でも前年度より充足率が改善し、定員割れ解消に向けた動きがみられました。

一方、国公立歯学部に関しては状況が異なります。国立11大学と公立1大学(九州歯科大学)の歯学部は、全て定員充足率ほぼ100%を維持しており、志願倍率も高い水準です。国公立は定員そのものが少ないうえ、学費が安く人気が高いため、志望者数は定員を大幅に上回ります。また難関私立歯学部(例:東京歯科大、昭和大など)も毎年定員以上の志願者を集め、高倍率の入試が行われています。このように、どの歯学部を目指すかによって入学のハードルは大きく異なります。トップ校では依然難関ですが、全体として見れば「歯学部には入りやすくなっている大学もある」のが実情なのです。

高額な学費も乗り越えるべき難関

歯学部の学費は入学ハードルを語る上で避けて通れない要素です。医療系の学部は総じて学費が高額ですが、中でも歯学部は医学部と並んで突出しています。6年間に必要な学費は、国公立大学なら約350〜450万円と比較的抑えられるものの、私立大学では平均約2,900万円にも達します。最も高額な私立歯科大学では入学から卒業まで4,000万円を超える費用が必要とのデータもあり、大学によって学費には大きな開きがあります。医学部の私立平均(約3,420万円)よりやや低いとはいえ、歯学部も数千万円規模の出費となることに変わりありません。

この学費の高さは、多くの学生にとって大きな経済的ハードルとなります。親が歯科医師で経営する歯科医院を持っているような家庭でも、兄弟がいれば複数人分の学費負担が重くのしかかりますし、そうでない家庭にとっては奨学金やローン無しで私立歯学部に通うのは容易ではありません。実際、文科省の調査でも歯学部生の退学理由の一つに「学費が高く経済的に続けられない」ことが挙げられています。各大学や自治体もこれを受けて、奨学金制度や特待生制度を充実させつつあります。近年では優秀な学生には大幅な授業料減免を行う私立歯科大学も増えており、経済的支援の輪は広がりつつあります。

それでも、歯学部進学には入試の難しさと並んで学費も高いハードルであることは事実です。将来歯科医師を志すのであれば、早い段階で学費に関する情報を集め、資金計画を立てておくことが重要でしょう。具体的には奨学金の活用や自宅から通える大学の検討、学費の比較検討などが挙げられます。学費を理由に夢を諦める人が出ないよう、各種制度を上手に利用しながら乗り越えていくことも、広い意味では「歯科医師になるための難関」を突破する工夫と言えるかもしれません。

歯学部の卒業や国家試験合格を阻む壁とは?

歯学部に無事入学できたとしても、その先には卒業・国家試験合格までの長い道のりが待っています。6年間の課程を修了し国家試験に受かって初めて歯科医師になれるわけですが、その過程で挫折してしまう学生も一定数存在します。ここでは留年・退学や国家試験浪人といった観点から、歯科医師への道を阻む壁について考えてみます。

留年や退学の原因から見る難しさ

歯学部のカリキュラムは専門性が高く、学ぶ内容も膨大なため、途中で留年したり退学したりする学生が他学部に比べ多い傾向があります。文科省の調査によれば、私立歯学部の年間退学率は平均で数%に達する大学もあり、国公立に比べて高めです。その主な原因として報告されているのが「勉強についていけず留年を重ね、結果的に退学」というケースや、「学費負担が重く経済的に継続困難」というケースです。つまり、学業面と経済面の両方でプレッシャーがかかり、志半ばで去らざるを得ない人が出てしまうのです。

勉強面に関して言えば、歯学部では1年でも留年すると卒業が最低7年になるため、精神的負担も大きくなります。特に低学年で基礎科目の単位を落としてしまうと、その後の専門科目にも影響が及び、悪循環に陥りがちです。また実習や試験が重なる高学年では、実技試験の不合格や卒業研究の不達成などが留年の要因になることもあります。一度留年するとモチベーション維持が難しくなり、結果として退学に至ってしまう例もあるようです。このような状況を受け、文部科学省は「適正な入学者選抜と入学後の適切な指導」によって留年・退学者を減らすよう大学に求めています。各歯学部でも、追試制度の充実や学習支援体制の強化など、学生を脱落させない工夫が進められています。

新卒で合格できない場合の厳しさ

歯学部をなんとか卒業しても、国家試験に合格できなければ歯科医師にはなれません。前述の通り、新卒時点で国家試験に合格できるのは卒業生の約7〜8割程度です。残りの2〜3割の卒業生は、いわゆる「国試浪人(既卒受験生)」として翌年以降に再挑戦することになります。既卒で合格を勝ち取るのは、新卒時よりもハードルが高いのが実情です。統計では既卒受験者全体の合格率は毎年35〜45%程度と、新卒より大幅に低くなっています。浪人回数が増えるほど合格率は下がり、第3回以上の受験では合格できる人が少数になってしまう傾向が顕著です。

この背景には、学力の維持とメンタル面の難しさがあります。卒業後は大学の手厚い授業や指導を受けられなくなり、自主的に予備校等で勉強する必要があります。既卒生の多くは予備校に通って対策をしますが、一度不合格を経験したプレッシャーや孤独感から、思うように成績が伸びないケースもあります。また周囲の同級生が先に歯科医師として働き始める中、自分だけが浪人生活を送ることへの焦りも重荷となります。それでも翌年に合格できれば良い方で、2浪、3浪と長期化するほどモチベーション維持が困難になり、途中で受験を諦めてしまう人もいるようです。

現状では、一度国家試験に失敗しても再受験に挑む人が多いですが、歯科医師国家試験は回数制限がなく何度でも受験可能なため、ずるずる浪人を続けてしまうケースもあります(経済的・精神的負担は大きくなりますが)。歯科大学によっては卒業生に対するフォローアップ(予備校紹介や勉強会の支援など)を行い、既卒生の合格率向上に努めているところもあります。例えば東京歯科大学は既卒者への支援が手厚く、そうした取り組みもあって合格率全国トップ級を維持していると分析されています。いずれにせよ、理想は新卒で合格を決めることであり、そのためには在学中から計画的に勉強し、余裕を持って国試対策に臨むことが肝要です。「入学すること」と同じくらい「卒業して国家試験に通ること」を見据えた学生生活を送る必要があるでしょう。

家庭環境や幼少期の教育で歯科医師への難易度は変わる?

歯科医師になる難易度には、本人の努力や学力以外に家庭環境や幼少期からの教育環境も影響すると言われます。特に歯科業界は親子二代・三代で歯科医師という例が多く見られ、「歯科医師家庭に生まれ育つことが歯科医師になる近道になるのか?」という点は興味深いテーマです。この章では、家庭や幼少期の環境が与える影響について考察します。

親が歯科医師だと有利と言われる理由

歯科医師の世界では昔から「歯科医師の子は歯科医師になる」という傾向が知られてきました。実際、ある歯科業界の記事によれば、歯科大学で学生に「なぜ歯医者になろうと思ったのか」を尋ねると、「親が歯医者だから」という答えが約9割を占めることがあるといいます。これは極端な一例かもしれませんが、少なくとも歯科医師の家庭で育った子供がそのまま歯科医師を志すケースが非常に多いことを示唆しています。親が歯科医院を経営している場合、幼い頃から歯科医療の仕事を身近に感じる機会が多く、自然と「自分も将来は歯科医師に…」という意識が芽生えやすいでしょう。また親が母校の歯科大学を勧めたり、受験勉強をサポートしたりといった精神的・物理的支援を受けられる点も、有利に働く面です。

さらに、歯科医師の親を持つ子供は経済的ハードルを越えやすいという利点もあります。前述した高額な学費も、親が現役の歯科医師であれば資金計画を立てやすく、私立歯学部へ進学することへの抵抗感が小さい場合があります。実際、私立歯学部には開業医の子弟が数多く在籍しており、「跡継ぎ」として家業を引き継ぐ前提で進学するケースが目立ちます。こうした若者にとっては、歯科医師になることはある意味既定路線ともいえ、周囲の協力も得ながら比較的迷いなく目標に進めるでしょう。

もっとも、家庭環境が恵まれているからといって必ずしも楽に国家試験に受かるわけではないのも事実です。親が歯科医師であっても勉強は本人次第であり、学校の試験や国家試験に代わりに合格してもらえるわけではありません。ただ、幼少期から科学や医学に興味を持つ機会が多かったり、家庭で勉強の習慣づけがなされていたりすれば、確かにその子は歯学部で成功しやすい土壌が培われていると言えるでしょう。逆に親が歯科医師でなくとも、学校の勉強に熱心で早い段階から理系科目の素養を伸ばしていれば、歯学部に合格し国家試験にも通ることは十分可能です。要は幼少期からの教育環境がプラスに働けば難易度を下げることに寄与し得るが、最終的には本人の努力が決め手になる、ということです。

歯科医師一家における最近の変化

興味深いことに、近年では歯科医師の親子関係に変化も見られます。それは「親が子に歯科医師になることを勧めない」ケースが増えているという現象です。かつては「子供は親の歯科医院を継ぐもの」というのが業界の常識でしたが、近年の歯科業界の競争激化や将来不安の影響で、親の側が子に歯科医師の道を無理に勧めなくなってきているのです。「うちの医院は継がなくていい」「歯医者にならなくてもいい」と子に伝える歯科医師の親も増えていると言われます。

この背景には、歯科医師を取り巻く経営環境の厳しさがあります。歯科医院の数は全国で約68,000件にも上り、コンビニエンスストアの店舗数より多いほどだとされています。都市部では歯科医院同士の患者の奪い合いが起き、地方でも人口減少で経営が成り立たず自主廃業する医院が増えている状況です。その結果、現役の歯科医師たちが「この先、歯科医師になっても苦労が多いのではないか」と将来を悲観し、自分の子供には別の道を歩ませたいと考えるケースが出てきました。実際に「子どもには歯科医師になってほしくない」と考える親世代と、「親の医院は継がず他の職業に就きたい」と考える子世代が互いに増えたため、歯科医院を継ぐ人がいなくなり廃業する例もあると報告されています。

この変化は歯科医師になる難易度にも間接的に影響し得ます。というのも、これまで歯科医師を目指す主な層であった「歯科医師の子供」が減れば、歯学部志願者全体の母数が減少し、結果として入試難易度が下がる方向に働く可能性があるからです。実際、志願者減少で歯学部定員割れが起きた一因には、業界の将来性を案じて子に継がせたがらない親の存在もあると考えられます。一方で、その流れが行き過ぎて歯科医師志望者が減りすぎると、今度は必要な歯科医師数の確保に支障が出かねません。業界としては若手の魅力を取り戻すべく、働き方改革や収入構造の見直しなどに取り組み始めています。いずれにせよ、家庭の後押しが得られにくくなった今の若い世代にとっては、ある意味「自分自身の意思」で歯科医師を目指すケースが増えるでしょう。その分、自ら情報を集め資金計画やキャリア設計を考える必要があり、以前より主体性が求められる点では難易度が上がったとも言えるかもしれません。

臨床研修は歯科医師に必要?難しさはどの程度?

歯科医師国家試験に合格した後、すぐに開業医として自由に治療できるわけではありません。日本では歯科医師免許取得後に臨床研修を修了することが法律で義務付けられており、これを終えて初めて一人前の歯科医師として診療に従事できます。この臨床研修(歯科医師臨床研修)について、その概要と難易度を解説します。

歯科医師臨床研修が義務化された背景

現在の歯科医師法では、「歯科医師として診療に従事しようとする者は、原則として1年以上の臨床研修を修了しなければならない」と定められています。この制度は2006年(平成18年)から必修化されたもので、それ以前は任意でした。義務化の背景には、歯科医師の質の確保があります。国家試験に合格したばかりの新人歯科医師は知識はあっても実地臨床の経験が不足しているため、患者に安全・適切な医療を提供するには卒後の研修が不可欠との判断がなされたのです。実際、研修必修化以前は卒業直後に開業して治療を始める歯科医師も存在しましたが、技術未熟によるトラブル防止やチーム医療への適応力を養う観点から研修制度の充実が求められていました。

臨床研修制度は5年ごと程度に見直しが行われており、直近では2021年(令和3年)に新たな研修到達目標が示されています。研修期間は原則1年間(1年以上)で、大学附属病院や厚労大臣指定の研修先で行います。研修先には大学病院のように体系的プログラムが組まれた基幹型施設と、開業医の診療所などにおける協力型施設があります。新人歯科医師はこれらの研修施設で指導医の下、実際の患者を診療しながら経験を積みます。1年と言えど内容は盛りだくさんで、一般歯科診療の基本から救急対応、地域保健活動まで幅広く研修カリキュラムが組まれています。義務化以降、ほぼ全ての新人が研修を受けており、研修修了時には厚労省から「臨床研修修了登録証」の交付を受けることで、正式に一人で診療できる資格を得ます。

研修で求められる技術と心構え

臨床研修は試験ではありませんが、別の難しさがあります。それは、実際の患者と向き合う中で真の意味での歯科医師として成長する過程だからです。研修医は指導医の監督下とはいえ、自分の手で処置を行い、診断や治療計画の立案にも携わります。模型相手の学生実習とは比べものにならない緊張感や責任感があり、初めは戸惑うことも多いでしょう。また、患者とのコミュニケーションや医療チーム内での協調も求められます。技術面では、簡単な充填処置から抜歯、義歯作製の補助、予防指導まで、多岐にわたる基本スキルを習得する必要があります。特に全身疾患を持つ患者の対応や、医科との連携が必要なケースなど、臨機応変な判断力も研修を通じて磨かれます。

研修の難易度は研修先や本人の姿勢によっても異なります。大学病院の研修は症例も豊富で体系立てて学べる反面、担当症例数が多く忙しい毎日となります。開業医の下での研修は実際の開業所運営を肌で感じられますが、指導医とのマンツーマンの関係性が大事になります。いずれにせよ、研修を乗り越える鍵は「積極的に学ぶ姿勢」と「粘り強さ」です。失敗も貴重な経験と捉え、指導医や先輩のアドバイスを吸収しようとする研修医ほど、大きく成長できます。1年の研修を終える頃には、多くの新人歯科医師が一通りの基本処置を自信を持ってこなせるようになり、患者さんから感謝される喜びも実感できるでしょう。研修そのものに落第制度は基本的になく、真面目に参加すれば修了できる仕組みですが、中には心構えが足りず指導医から叱責を受けたり、社会人マナーの未熟さを指摘される場面もあります。研修とはいえ一人の医療人としての自覚を持ち、謙虚に学ぶ姿勢で臨むことが何より重要です。

法的な視点でみる歯科医師国家試験の難易度

最後に、法律や制度の観点から歯科医師国家試験の難易度を考えてみましょう。歯科医師となるための要件や試験制度は法令によって定められており、その枠組み自体が難易度に影響を与えています。ここでは歯科医師法などの規定を踏まえつつ、制度上の特徴に触れます。

歯科医師になるための法律上の要件

日本で歯科医師になるには、歯科医師法という法律で定められた要件を満たす必要があります。具体的には、大学の歯学部(6年制)を卒業するか、もしくは歯科医師国家試験予備試験に合格することが前提となります。予備試験とは大学に通わず独学などで学んだ人のための試験ですが、非常に狭き門であり現実的にはほとんどの人が大学卒業を経路とします。さらに外国の歯科大学出身者の場合は所定の審査を経て「日本の歯学部卒業者と同等以上の学力・技能あり」と認められる必要があります。こうした受験資格をクリアした者だけが歯科医師国家試験の受験を許可されます。

歯科医師国家試験そのものは例年2月に全国主要都市で実施され、厚生労働大臣がその合格者を決定します。合格発表後、厚生労働省から免許の交付を受けて晴れて「歯科医師」を名乗ることができます。ただし、前述のように臨床研修の修了が法的に義務付けられているため、免許を取得しても研修を終えるまでは独り立ちして診療できません。歯科医師法では無免許での歯科医業禁止はもちろん、臨床研修を終えない者が勝手に診療することも禁止されています。つまり、国家試験合格=ゴールではなく、その後の研修修了までがワンセットで資格要件となっているのです。このように法律上のプロセスが厳格であることも、「歯科医師になるのは大変だ」と言われる一因でしょう。

国家試験の合格者数調整と制度上の意図

歯科医師国家試験の難易度を語るうえでもう一つ重要なのが、制度上の合格者数調整の問題です。法律上、歯科医師国家試験の合否基準は厚生労働省が決めることになっています。先述のとおり、必修問題で絶対基準を課す一方、一般問題については各回の問題難易度に応じて相対基準(上位○%が合格など)が採用されています。その結果、合格者数がおおよそ毎年2,000人前後に収まるようになっているのは前述の通りです。この暗黙の定員は法令に明記されているわけではありませんが、厚労省が歯科医師供給数をコントロールする政策的意図があると考えられます。

実際、歯科医師の数は2020年時点で10万人を超えており、人口あたりの歯科医師密度は先進国の中でも高めです。医師や薬剤師など他の職種と違い、歯科医師はすでに充足ないし過剰との見方が強く、国も「これ以上急増させる必要はない」と判断している節があります。医師国家試験が合格率90%超でも合格者数9,000人以上となるのに対し、歯科医師国家試験は合格率60〜70%で合格者数2,000人程度と、絶対数が抑えられているのはこのためでしょう。制度的には何度でも挑戦できる試験ですが、あまりにも不合格が続けば事実上歯科医師への道は閉ざされてしまいます。

もっとも、合格者数の調整にはメリットだけでなく課題もあります。不合格者を多く出す試験運営は、受験生に長期間の浪人生活を強いることになり、人的資源の無駄遣いとの批判もあります。また歯科医師数の需給見通しが誤れば、将来的に逆に不足を招くリスクもあります。国もこうした点は認識しており、例えば歯科医師数が少ない地域への就業を促す対策や、歯科医療の需要動向の調査を行っています。制度は固定的なものではなく、時代に応じて変更も起こり得るため、今後の合格基準がどう推移していくかも注視が必要です。いずれにせよ、現行制度下では「歯科医師国家試験はある程度の人数を振るい落とす試験」であることは確かであり、受験生はその厳しさを踏まえて準備することが求められます。

将来の歯科医師需要と難易度への影響

歯科医師国家試験の難易度を考える上では、将来の歯科医師需要や社会的な動向にも目を配る必要があります。今後の人口構造や医療ニーズの変化が、歯科医師の供給数や試験の競争率に影響を及ぼす可能性があるからです。この章では、将来的な視点から難易度がどう変わり得るか考えてみます。

歯科医師過剰問題と試験難易度の関係

日本の歯科医師数は長年増加を続け、前述の通り歯科医院数はコンビニ店舗数より多いとも言われる状況です。この過剰供給気味の状況は、国家試験の合格者数調整という形で難易度にも反映されています。すなわち、需要がさほど伸びない中で供給だけ増やさないように、試験をやや難しくして調節するという構図です。もし今後も歯科医師過剰が続くなら、試験の難易度(低い合格率)は現状維持か、さらに引き締め方向になる可能性があります。例えば問題を難化させたり、合格基準点を引き上げたりして合格者を減らす措置が取られるかもしれません。

しかし一方で、歯科医師過剰とは地域差のある問題でもあります。都市部では確かに歯科医院の競争が激しい一方、地方や特定地域では歯科医師不足が懸念される場所も出てきています。高齢化で歯科医師の高年齢化が進み、後継がいない地域では将来的に歯科医療へのアクセスが悪化する恐れも指摘されています。国としては全体の数を調整しつつも、地域偏在の是正にも取り組まねばなりません。そのための一つの方策として、地域枠的な合格枠や卒後の地域勤務を条件とした奨学金制度などが検討される可能性もあります。仮にそのような制度が導入されれば、一定の条件下で地域ニーズに応じて合格しやすくなるといった変化も考えられます。

総じて、歯科医師過剰か不足かというマクロの需給バランスは、国家試験難易度と表裏一体の関係にあります。現状では過剰感が強いため難易度高めですが、将来的に歯科医療の需要が増えたり供給側が減少に転じたりすれば、難易度が下がる(合格者を増やす)方向に舵が切られることもあり得ます。例えば新たな需要として、超高齢社会に対応した在宅歯科医療の拡充や、予防歯科への注力などが進めば、それを担う歯科医師を増やす必要性が出てくるでしょう。その際には国家試験の位置づけも「振るい落とし」から「一定水準を満たせば全員合格」へと変わる可能性があります。もっとも、そうした劇的な変化が起きるには時間がかかるため、当面は今の難易度水準が維持されると見るのが妥当です。

人口減少時代における歯科医師の役割

今後、日本は本格的な人口減少・少子高齢化の時代を迎えます。この流れは歯科医師を取り巻く環境にも影響を及ぼします。若年人口の減少はそのまま歯学部志願者数の減少につながりかねず、事実一時期の歯学部定員割れにも少子化の影がありました。志願者が減れば入試難易度は下がる可能性があります。しかし一方で、総人口減により患者となる人口も減少するため、歯科医師の需要も縮小することが予想されます。そうなれば国家試験で合格者数を絞る現在の方針が続行され、難易度はむしろ上がる方向に働くかもしれません。少ないパイを多くの歯科医師で奪い合う事態は望ましくないため、国としても安易に大量合格させることはしないでしょう。

ただ、高齢化が進むことで歯科医師の活躍領域が広がる可能性もあります。例えば高齢者のオーラルケアや誤嚥性肺炎予防、在宅や介護施設での歯科治療など、これまで以上に歯科医師が必要とされる分野がクローズアップされています。口腔の健康が全身の健康に密接に関わることが知られるようになり、医科と歯科の連携も強化されています。そのため将来的には「歯科医師はまだまだ重要であり、一定数を社会に送り出す必要がある」という認識が強まる可能性があります。そうなれば、現在のような合格率抑制策も見直され、志のある若者はできるだけ歯科医師に育てる方向に転換することも考えられます。

結局のところ、歯科医師国家試験の難易度は固定不変ではなく、社会のニーズや政策によって変動し得るものです。今、歯科医師を目指して勉強している人にとって大切なのは、目の前の試験に全力で備えることはもちろん、将来の歯科医療の在り方にも関心を持って学び続ける姿勢でしょう。そうした幅広い視野を持つ人材こそ、これからの時代に求められる歯科医師像であり、難易度の高い試験を乗り越える原動力にもなるはずです。歯科医師への道は決して平坦ではありませんが、その先には多くの人の健康を支えるやりがいと使命があります。社会の変化を見据えつつ、着実に実力を蓄えて挑戦していきましょう。

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