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歯科衛生士の離職率は何%?厚生労働省の調査を基に離職率が高い理由等の勤務実態について解説!

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歯科衛生士の離職率はどのくらい?厚労省データで確認

歯科衛生士は重要な医療専門職ですが、離職率の高さがしばしば課題として指摘されています。では実際、歯科衛生士の離職率はどのくらいなのでしょうか。厚生労働省や関連団体の調査データから、その実態を見てみます。

新卒歯科衛生士の3年以内離職率は?

まず、新人の歯科衛生士がどの程度早期に離職しているかを確認します。厚生労働省「新規学卒者の就職後3年以内の離職率」によれば、歯科衛生士の3年以内離職率は約30~35%と報告されています。これは他の医療系専門職と比べてもやや高い水準であり、若手歯科衛生士の離職が深刻な問題となっていることがわかります。つまり、新卒で就職した歯科衛生士の3人に1人程度が3年以内に職場を去っている計算です。医療業界全体でも新卒離職は一定数ありますが、歯科衛生士の場合はそれがやや高めで推移していることが特徴です。

また、「現在の職場での勤務年数が5年未満」の歯科衛生士は約38.7%にのぼるとの調査結果もあります。常勤者のみの統計ですが、およそ4割が5年以内に職場を離れていることを示す数字です。非常勤まで含めるとこの割合はさらに高くなるとみられ、長期勤務よりも早期に職場を変えるケースが目立つ状況です。

多くの歯科衛生士が転職を経験している

歯科衛生士の場合、転職(職場の変更)を経験する人の割合も非常に高いことが知られています。公益社団法人日本歯科衛生士会がまとめた調査報告書(令和2年3月発行)によれば、歯科衛生士の76.4%が1回以上勤務先の変更を経験しているというデータがあります。言い換えれば、4人中3人以上の歯科衛生士が一度は職場を辞めて別の勤務先へ移っているのです。しかも、そのうち半数以上は複数回にわたり転職を経験しており、一つの職場に長く留まる歯科衛生士は決して多くありません。

さらに、資格保有者全体の数と就業者数を比較すると、有資格者のおよそ半数しか現場で働いていない現状も浮かび上がります。例えば2020年(令和2年)時点では、全国で約30万人もの人が歯科衛生士免許を保有しているのに対し、実際に歯科衛生士として就業している人数は約14万人にとどまります。残りの16万人前後は免許を持ちながら歯科衛生士として働いていない「潜在歯科衛生士」となっているわけです。このギャップは、結婚・出産などで一時離職して復職していない人や、他職種へ転向した人が相当数いることを意味します。以上のような数字から、歯科衛生士は離職と再就職を繰り返しやすい職種であり、結果的に業界全体で人材が定着しにくい状況にあることが読み取れます。

歯科衛生士の離職率が高い主な理由

では、なぜこれほどまでに歯科衛生士は離職しやすいのでしょうか。その背景には、職場内外の様々な要因が関係しています。厚生労働省や日本歯科衛生士会の調査から明らかになっている、離職率が高い主な理由を解説します。

結婚・出産などライフイベントによる離職

歯科衛生士の離職理由でまず挙げられるのが、結婚・出産・育児などライフイベントに伴うものです。歯科衛生士は圧倒的に女性が多い職業で、その割合はほぼ99%が女性という統計もあります。そのため、20代後半から30代にかけて結婚や妊娠・出産を機に仕事を離れるケースが少なくありません。実際、日本歯科衛生士会の調査でも「出産・育児」は離職理由のトップ(16.7%)になっており、家庭と仕事の両立が難しくなって離職に至る典型例と言えます。

こうしたライフイベントによる一時的な離職後、子育てが一段落した35~40歳代以降になって復職する傾向も指摘されています。いわゆるM字カーブと呼ばれる現象で、20~30代で就業者数が減少し40代で再び増加に転じる歯科衛生士の年齢構成は、この傾向を如実に示しています。このように女性ならではのライフステージの変化が、歯科衛生士の離職率の高さに大きく影響しているのです。加えて、個人経営の歯科医院が多い業界では産休・育休の制度が整っていない職場もあり、出産前後の退職がそのまま離職に直結しやすい面もあります。

人間関係の悩みや職場風土の問題

職場の人間関係のトラブルも、歯科衛生士が離職を考える大きな要因です。日本歯科衛生士会の調査では、離職理由の第2位に「経営者(院長)との人間関係」が挙げられており、その割合は15.6%にのぼりました。歯科医院はスタッフの人数が少ない職場が多く、院長や先輩スタッフとの人間関係が良好でないと職場環境が非常に息苦しいものになりがちです。特に小規模な歯科クリニックでは、人間関係の悪化が職場全体の雰囲気に直結し、結果として歯科衛生士が逃げ場を失って辞めてしまうケースがあります。

また、職場風土や働く雰囲気自体が原因となることもあります。例えば、歯科衛生士の専門性が軽んじられ「雑用ばかりさせられる」「やりがいを感じられない」といった不満が蓄積すると、将来に不安を感じて退職を選ぶことがあります。上司である歯科医師とのコミュニケーション不足や指導体制の不備も、人間関係のストレスにつながります。こうした職場内の人間関係・風土の問題は、金銭的な待遇以上に離職を決意させる引き金となることがあるのです。

給与・労働条件への不満と身体的負担

給与や待遇への不満も、見逃せない離職要因です。歯科衛生士の給与水準は医療職の中では決して高いとは言えず、特に勤務年数を重ねても昇給やキャリアアップの機会が少ない点が不満につながりやすいです。調査でも「給与・待遇の面」が離職理由の約12.9%を占めており、頑張りに見合った処遇が得られないという思いから退職に至る人もいます。小規模歯科医院では賞与や福利厚生が十分でない場合もあり、将来への不安からより条件の良い職場や別職種への転職を図るケースもあるでしょう。

さらに、仕事そのものの身体的・精神的負担も理由の一つです。歯科衛生士の仕事は一日中立ちっぱなし・前傾姿勢での作業が多く、腰痛や肩こり、手首の痛みなど筋骨格系への負担が大きい職種です。実際、「自分の健康上の理由」で離職した人は14.4%にのぼり、肉体的な疲労や体調不良が原因で仕事を続けられなくなることも珍しくありません。特に若手のうちは無理が利いても、慢性的な痛みや体力の消耗が蓄積すると将来を悲観して退職してしまうことがあります。また、長時間労働や残業が発生しやすい職場では体力的・精神的な余裕がなくなり、燃え尽き(バーンアウト)による離職につながることもあります。

このように、ライフイベント、人間関係、待遇、身体的負荷といった複合的な要因が歯科衛生士の離職を招いています。個々の事情による部分も大きいですが、業界全体として共通する課題が浮かび上がっており、離職率の高さには構造的な背景があると考えられます。

歯科衛生士の勤務実態:職場環境と働き方の特徴

歯科衛生士の高い離職率を理解するには、実際の職場環境や働き方の実態を知ることも大切です。歯科医療の現場における歯科衛生士の配置状況や業務内容、勤務形態の特徴を見ていきましょう。

一人職場が多く代替要員の確保が困難

歯科衛生士の勤務環境で特徴的なのは、一つの歯科医院に配置される歯科衛生士の人数が非常に少ないことです。多くの歯科診療所では歯科衛生士が「0~1人」程度しかおらず、それ以上多数の衛生士が在籍する職場はむしろ少数派です。つまり、多くの歯科医院では歯科衛生士が1名いれば良い方で、ゼロのところも珍しくないのが現状なのです。このようにマンパワーに余裕がないため、一人でも衛生士が退職するとすぐに人手不足に陥ってしまいます。

衛生士が欠員になると、その穴を埋める人材を確保するのは容易ではありません。求人倍率の高さがそれを物語っています。歯科衛生士の求人倍率は年々上昇傾向にあり、令和4年時点では20倍前後にも達しています。これは、求職者1人に対し20件もの求人がある計算で、需要に供給が全く追いついていない状況を示します。とりわけ地方の歯科医院では代わりの衛生士がすぐに見つからず、既存スタッフで何とか業務を回さざるを得ない負担が生じます。一人職場ゆえに同僚に業務を引き継ぐことも難しく、退職者が出ると院長や他のスタッフへのしわ寄せが大きくなるのが現場の実態です。

担当業務の幅広さと仕事量

歯科衛生士の仕事内容は多岐にわたり、その業務範囲の広さも勤務実態の特徴です。国家資格者として本来担うべき業務は、スケーリング(歯石除去)やPMTC(専門的な歯面清掃)、フッ素塗布、ブラッシング指導などの予防処置・保健指導が中心です。しかし実際の職場では、それに留まらずさまざまな役割を兼務することが多いです。たとえば、診療のアシスタントとして器具の受け渡しや準備・片付けを行ったり、消毒滅菌や在庫管理などの業務を任されることもあります。小規模な歯科医院では受付業務や会計補助、雑務までこなすケースもあり、一人で複数の帽子を被るような働き方になりがちです。

このように幅広い業務を抱えるため、仕事量が多く忙しい職場環境も少なくありません。患者一人ひとりにじっくり時間をかけたいと思っても、予約が詰まっていればテキパキ処置をこなす必要があります。特に予防処置の需要が高まる中、1日に多数の患者を相手に休みなく動き回る衛生士もいます。業務が立て込み休憩時間が削られるような日が続けば、疲労感やストレスも蓄積するでしょう。専門職としてのやりがいを感じる一方で、求められる役割の多さゆえに負担も大きいというのが、歯科衛生士の現場の本音かもしれません。

働き方の多様性(常勤と非常勤、勤務時間など)

歯科衛生士の勤務形態には、常勤(フルタイム)と非常勤(パートタイム)の両方が多く存在します。結婚・出産後に復職する際、家庭との両立を図るため非常勤として短時間勤務を選ぶ人も多く、業界全体で見るとパートタイムで働く歯科衛生士の割合がかなり高いことが特徴です。実際、日本歯科衛生士会の調査では回答者の約半数が非常勤勤務となっており、特に40代以降の年代では「週に数日だけ勤務」「午前中のみ勤務」といった柔軟な働き方が一般化しています。こうした多様なシフトや勤務日数の選択肢は、出産・育児からの職場復帰を後押しする上で重要な要素となっています。

一方で、常勤で働く場合の勤務時間を見ると、歯科医院の診療時間に合わせた長時間労働になりやすい面もあります。多くの歯科医院は朝から夕方まで診療し、お昼休憩を挟む「中抜け勤務」の形態が一般的です。勤務日は平日+土曜という医院も多く、終業時間が夜遅くなることもあります。常勤の歯科衛生士は開院準備から終業後の片付けまで担当するため拘束時間が長く、家庭との両立が難しく感じることもあるでしょう。そうした事情もあり、「出産を機に常勤から非常勤へ切り替える」「一定の年齢で退職し非常勤で復帰する」というキャリアパスが珍しくありません。業界としては、非常勤をうまく活用して人材の柔軟配置を行うことで離職を防ぐ取り組みも見られます。

また、歯科衛生士には明確な昇進の階梯が少ないことも勤務形態に影響します。大きな病院の口腔外科などでは主任的なポジションもありますが、一般的な歯科医院では役職よりも年次による給与差程度で、大半の衛生士は同じ職位のままです。そのため、「長く勤めても待遇があまり変わらないなら家庭を優先しよう」と早期に退職・非常勤化を選ぶ人もいるようです。柔軟な働き方ができる反面、キャリアの見通しが立てにくいことが離職につながる側面もあり、勤務実態として押さえておきたい点です。

歯科衛生士不足と離職率の高さがもたらす影響

歯科衛生士の離職率が高く人材が定着しにくいことは、業界や医療提供の現場に様々な影響を及ぼします。ここでは、慢性的な歯科衛生士不足が招く具体的な影響について、患者ケアや歯科医院経営の視点から考えてみます。

歯科医療現場への影響(人手不足による支障)

離職者が多く補充が追いつかないことで、歯科衛生士の人手不足が慢性化しています。全国の約7割の都道府県が「地域で歯科衛生士が不足している」と認識しているとの報告もあり、都市部・地方を問わず人材難が深刻です。この不足により、歯科医療の現場ではいくつかの支障が生じています。

まず、患者へのサービス低下が懸念されます。歯科衛生士は本来、予防処置や保健指導を通じて患者の口腔健康を支える役割ですが、人数が足りないと一人ひとりの患者に割ける時間が減ってしまいます。たとえば、本来30分かけたいクリーニングを20分で切り上げざるを得ない、忙しくて十分なブラッシング指導ができない、といった状況が生まれがちです。患者とのコミュニケーション時間が削られることで、きめ細かなケアや信頼関係の構築にも影響が出ます。長期的には、予防ケアの質低下が虫歯や歯周病の増加につながりかねず、口腔保健推進の観点からも由々しい問題です。

また、衛生士不在の場合には歯科医師や他のスタッフの負担増にも直結します。歯科医師が本来衛生士が行う業務まで兼務すれば、その分診療に集中できなくなりますし、受付や歯科助手が無資格でできる範囲内で衛生士業務を代行するにも限界があります。人手不足が続くと職場全体が忙殺され、残ったスタッフの疲弊からさらなる離職を招くという悪循環に陥るリスクもあります。こうした現場のひずみは最終的に患者さんへのサービス低下や待ち時間増加といった形で表れ、歯科医療提供体制の質にマイナスとなってしまいます。

採用難による経営への負担と競争激化

歯科衛生士の人材確保が難しいことは、歯科医院の経営にも直接響いてきます。前述のように衛生士の求人倍率は20倍前後と非常に高く、多くの歯科医院が限られた衛生士を奪い合う激しい採用競争を強いられています。その結果、求人募集にかけるコストや労力が増大しているのが実情です。たとえば求人広告を出し続けたり、知人の紹介に謝礼を出したりと、人材獲得のための出費がかさんでいるケースもあります。人手不足が解消しない地域では、給与水準を引き上げたり好条件を提示しないと応募が来ないため、人件費の高騰も避けられません。

さらに、高離職率に伴う新人教育コストの増加も経営上の負担です。せっかく採用しても数年で辞められてしまっては、また新たに新人を一から育て直さなければなりません。業務に習熟する前に辞めてしまうと戦力化できず、人件費だけでなく教育にかけた時間も無駄になってしまいます。頻繁なスタッフ入れ替えは医院のチームワーク構築にもマイナスで、組織としての安定性を損なう要因となります。

このように、歯科衛生士の確保と定着は歯科医院経営の安定に直結するため、各院とも頭を悩ませています。特に地方の小規模医院では、一人でも衛生士がいることが診療の幅を広げ患者サービスを向上させる鍵となるだけに、その一人を失うことの影響は甚大です。結果として、歯科衛生士が働き続けやすい職場づくりを経営戦略上も真剣に考えざるを得ない状況に追い込まれていると言えるでしょう。

行政・業界による離職率改善への取り組み

歯科衛生士の離職率改善に向けて、厚生労働省や業界団体(日本歯科衛生士会など)も対策に乗り出しています。人材の定着と復職支援を目的とした研修制度の整備や、労働環境を見直すための提言など、公的な取り組みについて見てみましょう。

復職支援研修や制度づくり

厚生労働省は近年、離職した歯科衛生士の復職支援に重点を置いた事業を展開しています。その一つが、ブランクのある歯科衛生士向けの研修制度です。例えば2017年度(平成29年度)からは、厚労省の委託事業として日本歯科衛生士会が「歯科衛生士復職支援等研修指導者養成研修事業」を実施し、復職希望者に対する研修プログラムの整備や指導者育成に取り組んできました。このプログラムでは、長期間現場を離れていた衛生士が最新の知識や技術を学び直し、自信をもって職場復帰できるよう支援することを目的としています。実際、復職を希望する離職者の5割以上が「自分の技術や知識の衰え」を不安要素に挙げており、研修によってその不安を解消することは離職防止・人材確保に大いに役立つと期待されています。

具体的には、診療用ユニット(歯科用チェア)やマネキン模型などを用いた実習設備を備え、臨床実習さながらの訓練を行える研修会が各地で開催されています。経験豊富な現役の衛生士や歯科医師が講師となり、ブランクが長い人でも一から勘を取り戻せるよう指導を行います。こうした研修を受けた離職中の衛生士が無事に復職できれば、貴重な人材を再び現場に呼び戻すことができます。厚労省や衛生士会は、研修受講者にアンケートをとって復職率の向上効果を検証したり、必要に応じてプログラム内容を見直すなど、事業の効果を高める努力も行っています。これら復職支援策は、離職そのものを減らすというより「離職者を再び戦力化する」側面の取り組みですが、結果的に業界全体の人材数を底上げし、慢性的な人手不足の緩和につながる重要な施策です。

労働環境改善に向けた指針

行政や業界団体は、歯科衛生士の労働環境や待遇の改善についても指針を示しています。日本歯科衛生士会が令和6年(2024年)に実施した最新の勤務実態調査(第10回調査)の報告書では、調査結果を踏まえて衛生士が離職を考えずに働き続けられる職場づくりの重要性が強調されました。その中では、給与や待遇の改善、勤務形態や休暇制度の柔軟化、そして歯科衛生士の専門性を正当に評価する仕組みの構築が不可欠であると提言されています。実際、同調査では「現在の職場に求めること」として57.6%もの衛生士が給与・待遇の向上を挙げたほか、スキルアップの機会ややりがいを感じられる職場であり続けることを望む声が多く集まりました。

厚労省も、こうした現場の声を受けて業界への働きかけを行っています。例えば、歯科医療機関に対して労務管理や人材育成の情報提供を行ったり、地域ごとの関係団体と協力して職場定着支援のモデル事業を展開するなどの施策が取られています。東京都など一部の自治体では、歯科衛生士の離職防止に資する相談窓口や研修会を独自に開催する動きもあります。国・自治体・業界団体が連携し、歯科衛生士が働きやすい環境整備のためのガイドライン策定や啓発を進めることが、離職率改善のための次なるステップと認識されています。

歯科医院で進めるべき離職防止策とは

公的な取り組みに加え、現場である歯科医院ごとにできる離職防止策も重要です。日々働く歯科衛生士が「この職場で長く働きたい」と思えるような環境づくりは、院長やスタッフの工夫次第で実現可能です。ここでは、歯科医院が主体的に進めるべき離職防止のポイントを紹介します。

良好な人間関係づくりと教育サポート

職場の人間関係を良好に保つことは、離職防止の基本中の基本です。院長をはじめ歯科医師やスタッフが互いにコミュニケーションを取りやすい雰囲気を作り、困ったときに相談し合える職場風土を育むことが大切です。具体的には、定期的なミーティングや面談の場を設けて意見交換をしたり、新人衛生士には先輩がマンツーマンでフォローするメンター制度を導入するなどの工夫が考えられます。小さな組織だからこそ、人間関係の歪みが生じないよう早めにケアし、問題があれば対話によって解決を図る姿勢が求められます。

また、歯科衛生士の成長を支援する教育サポートも重要です。単調な業務の繰り返しではなく、新しい技術や知識を学べる機会を提供することで、衛生士のモチベーションを維持できます。院内勉強会の開催や外部セミナーへの参加支援(受講料補助など)を行えば、衛生士は「この職場でスキルアップできている」と感じられるでしょう。キャリア初期の衛生士には特に、できる処置を少しずつ増やして任せていくことでやりがいを持ってもらうことが大切です。反対に、せっかく資格を持っているのに雑用ばかりでは不満が募ってしまいます。適切な業務配分と指導で専門職としてのプライドを尊重することが、離職の抑制につながります。

もちろん、院長や歯科医師側も忙しい中ですが、スタッフに感謝の言葉をかけたり成果を認めたりする日頃の気配りが信頼関係の醸成に寄与します。小さな積み重ねではありますが、「ここで働いていて良かった」と思える瞬間を増やすことが、結果的に衛生士の定着率を高めることになるでしょう。

働きやすい勤務条件の整備(柔軟なシフトなど)

勤務条件や労働環境の整備も、歯科医院が取り組むべき離職防止策です。まず、ライフステージの変化に対応できるよう柔軟な勤務シフトを用意することが有効です。結婚・出産後も働き続けられるよう、短時間勤務や週数日の非常勤勤務を認めたり、子どもの行事や急病の際に休みを取りやすい雰囲気を作ったりすることが大切です。小規模な院では代替要員の確保が難しいかもしれませんが、スタッフ同士で助け合って休みを融通し合える体制を整えるだけでも、働く側の安心感は大きく向上します。

また、休日や残業に関する取り決めを明確にし、過度な負担がかからないようにすることも必要です。週休二日制の導入や、有給休暇を取得しやすい雰囲気づくりは、仕事とプライベートのバランスを保つ上で欠かせません。特に歯科衛生士は女性が多いため、産前産後休業や育児休業の制度を整備し、休業後に復帰しやすいよう職場復帰プログラムを用意するのも有効でしょう。復帰後は無理なく働けるよう段階的に勤務時間を延ばす配慮をするなど、きめ細かな対応が望まれます。

さらに、給与水準や処遇の見直しも長期的には必要です。地域の相場や衛生士の経験年数に見合った適正な給与を支給し、頑張りに応じて昇給・賞与で報いる仕組みがあれば、生活の安定から離職の抑制につながります。予算の許す範囲で構いませんが、例えば数年勤続した衛生士には役職手当やリーダー手当を付ける、資格取得や研修修了にインセンティブを設けるといった工夫も考えられます。こうした待遇面の改善は、一朝一夕には難しいかもしれませんが、優秀な衛生士に長く勤めてもらうための投資と捉えて前向きに検討したいところです。

最後に、職場の物的環境にも目を向けましょう。例えば、ユニット周りのレイアウトを工夫して衛生士が動きやすくするとか、疲労軽減のマットやアシストスツールを導入するなど、身体的負担を和らげる設備投資も効果があります。スタッフルームや更衣室を清潔で居心地よく保つといった配慮も、小さいながら働きやすさに直結します。総じて、歯科衛生士が「この医院でずっと働きたい」と思えるような働きやすい職場環境づくりこそが、離職防止の鍵と言えるでしょう。

歯科衛生士の将来展望:需要増に応えるために

高い離職率の問題はありますが、その一方で歯科衛生士の需要は今後ますます高まると予想されています。超高齢社会の進展や予防歯科重視の流れの中、歯科衛生士にはこれまで以上に重要な役割が期待されています。最後に、歯科衛生士を取り巻く将来展望と、需要増に応えるために必要な取り組みについて考えてみます。

予防歯科で高まる需要と役割

日本では近年、「8020運動」に象徴されるように生涯自分の歯で過ごすための予防歯科が重視されています。加えて、高齢者のオーラルケアや介護予防における口腔衛生管理など、歯科衛生士が活躍できるフィールドは広がっています。今後も高齢化が進めば、要介護高齢者への訪問口腔ケアや、全身疾患と口腔衛生の関わりに着目したケアなど、歯科衛生士の需要は確実に増えていく見通しです。事実、就業歯科衛生士数は年々増加傾向にあり、令和2年度は142,760人と平成16年度から約1.8倍に増えています。しかしそれでもなお、各現場からは人手不足の声が上がっており、これからの需要増に対応するにはさらなる人材確保と定着が不可欠です。

将来に向けては、歯科衛生士の活躍の場を広げる取り組みも進むでしょう。例えば、医科歯科連携のチーム医療に衛生士が参加したり、特定の分野に特化した認定歯科衛生士の制度活用が進んだりする可能性があります。そうしたチャンスを活かすためにも、若い衛生士が早期離職でキャリアを中断せず、経験を積んで専門性を高めていけるような支援が求められます。予防歯科のキーパーソンとして、歯科衛生士一人ひとりが長期にわたり力を発揮できる環境整備は、これからの歯科医療にとって極めて重要です。

離職率改善が歯科医療の質向上に直結

歯科衛生士の離職率を改善することは、単に人手不足を解消するだけでなく歯科医療サービスの質向上につながる点を忘れてはなりません。経験豊富な歯科衛生士が職場に定着すれば、患者は常に信頼できる担当者から継続的なケアを受けられます。衛生士も一つの職場でキャリアを重ねることで地域の患者ニーズを深く理解し、より的確な対応ができるようになります。その結果、予防から治療まで一貫性のある質の高い歯科医療提供が可能となり、患者満足度の向上や口腔健康の維持増進に直結します。

また、衛生士の定着は歯科医院の安定経営にも寄与します。離職による業務停滞や新人育成のコストが減り、スタッフ間のチームワークも熟成されます。働きやすい職場には自然と人材が集まり、好循環が生まれるでしょう。ひいては、歯科医療界全体でサービスの質が底上げされ、国民の口腔保健水準が向上するという大きな成果につながります。

その実現のためには、これまで述べてきたような職場環境の改善や復職支援策を着実に進めていくことが大切です。行政・業界・歯科医院・そして歯科衛生士本人が協力し合い、優秀な人材が長く活躍できる基盤を築くことで、将来の需要増にも十分対応できるでしょう。歯科衛生士が安心して働き続けられる環境を整えることこそが、患者にとっても医療者にとっても明るい未来をもたらす鍵と言えます。離職率の高い現状を改善し、歯科衛生士がその専門性と情熱を持続的に発揮できる職場づくりを進めていくことが、これからの歯科医療に求められているのです。

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