歯科衛生士が知っておきたいSRPとは?
この記事で分かること
この記事の要点
SRPで迷いやすいのは、何を目的にどこまで行うか、そしてどの順で進めるかである。ここでは記事全体の結論を先に押さえ、読む順番を決められるようにする。
日本歯周病学会の資料では、SRPはプラークコントロールと並ぶ歯周治療の基本処置として扱われ、診査と計画、患者の協力が前提になる考え方が示されている。厚生労働省の資料でも、歯科衛生士は歯科医師の指示のもとで歯科診療の補助を行えると整理され、院内の指示系統が重要になる。
確認日 2026年2月18日 まず全体像を一枚でつかむために、SRPで起きやすい論点を表にまとめる。左から順に読むと、いまの自分に足りない項目が見つかりやすい。
| 項目 | 要点 | 根拠の種類 | 注意点 | 今からできること |
|---|---|---|---|---|
| SRPの位置づけ | 歯周基本治療の中心で、セルフケアとセットで考える | 学会ガイドラインと学術資料 | クリーニングの延長と考えると効果が落ちる | 担当患者の目的を一文で言えるようにする |
| 歯科衛生士の関わり | 指示のもとで安全に実施し、説明と記録で治療をつなぐ | 法令と行政資料 | 自己判断で範囲を広げない | 指示内容と実施範囲をカルテに残す |
| 診査と計画 | ポケット、歯石、炎症、リスクを把握して分割する | 学会資料 | いきなり深部に入ると痛みと出血で崩れる | 初回は診査とTBIを厚めに取る |
| 手技の要点 | 視野確保とシャープニングが成功率を上げる | 学術資料 | 鈍い器具は取り残しと痛みを増やす | シャープニングをルーティン化する |
| 再評価とSPT | 結果を見て計画を修正し、再発部位は再介入する | ガイドラインと論文 | 数値だけで判断せず、リスクも見る | 再評価で見る項目を固定する |
この表は、今の課題を一つに絞るための地図だ。項目欄で気になる行を選び、注意点だけ先に読むと、次の失敗を減らしやすい。
向いているのは、SRPを任され始めた新人、久しぶりにSRPに戻った歯科衛生士、院内で手順が人によって違う職場である。逆に、手技だけを短時間で上げたい人は遠回りに見えるかもしれないが、結局は安全と再現性が近道になる。
まずは担当患者を一人選び、この表の一行だけを今日の行動に落とし込むと進みやすい。
歯科衛生士が押さえるSRPの基本と誤解
SRPは何を目的に行うか
SRPは、歯肉の下にある歯石や汚れの温床を減らし、歯ぐきの炎症を落ち着かせるための処置だ。単なる着色除去や研磨とは目的が違い、歯周治療の一部として考える必要がある。
日本歯科医学会の歯周病治療に関する資料では、SRPは歯周病に罹患した歯根面の歯肉縁下歯石と、細菌や代謝産物を含む粗いセメント質などを除去して、為害性のない滑らかな根面にする処置と説明されている。これにより歯肉縁下のプラークコントロールが行われるという考え方が軸になる。
現場では、まず歯周ポケットの深さや出血の有無、歯石の沈着部位を把握し、除去が必要な部位を狙う。手用スケーラーと超音波のどちらを使うかより、狙う面に刃部が適合しているか、取り残しをどう評価するかが結果を左右する。
歯肉炎の範囲や炎症が強い時期に無理に深部へ入ると、痛みと出血で視野が崩れて精度が落ちやすい。深いポケットや根分岐部病変が疑われる部位は、歯科医師と治療の次の段階を含めて考える必要がある。
まずはSRPの目的を、担当患者に伝える一文として自分の言葉で書き出すと、処置中の迷いが減る。
用語と前提をそろえる
SRPの話が噛み合わない原因は、同じ言葉でも人によって意味がずれる点にある。用語をそろえると、歯科医師への報告や院内の申し送りが早くなる。
日本歯周病学会の歯科衛生士向け資料では、SRP前に歯周組織診査を行い、ポケットの形態と深さ、炎症、歯石の位置と量を把握することが述べられている。歯周基本治療の流れを示す資料でも、検査と再評価を前提に治療計画を修正する考え方が示されている。
ここでは、現場で頻出する言葉を表で整理する。誤解の欄を先に読むと、指示の取り違えが起きやすいポイントが分かる。
| 用語 | かんたんな意味 | よくある誤解 | 困る例 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|---|
| SRP | 歯肉縁下の歯石や汚れを取り、根面を整える処置 | 研磨まで含めてSRPと呼ぶ | 目的がぼやけて時間配分が崩れる | 今日は除石が中心か再評価前かを言語化する |
| スケーリング | 歯面の付着物や歯石を機械的に除去する | 歯肉縁上だけの処置だと思う | 歯肉縁下の必要部位が放置される | どの位置までを狙うかを共有する |
| ルートプレーニング | 汚れた根面の粗さを減らす操作 | 根面を鏡のように磨くことだと思う | 過剰な削合で知覚過敏が増える | 触覚で粗造と歯石の違いを確認する |
| PD | ポケットの深さの指標 | 数値だけで良し悪しが決まる | リスク要因が見落ちる | 出血や動揺、X線所見も合わせる |
| BOP | プロービング時の出血 | 出血がないと治癒だと思う | 炎症以外の出血要因が見落ちる | プロービング圧と部位をそろえる |
| PCR | プラーク付着の割合の指標 | 一度下がれば終わりだと思う | すぐ元に戻って再発する | 定期的に見せて本人の行動に結びつける |
この表は、院内で言葉の定義をそろえるための道具だ。困る例に近い状況があるなら、確認ポイントをそのまま申し送りの文にしてよい。
向いているのは、歯科医師と歯科衛生士で言い方が違う職場や、担当制で引き継ぎが多い現場である。用語をそろえたつもりでも、治療段階の共有が抜けると同じ誤解が起きる点には注意がいる。
まずは今日のミーティングで、この表から一語だけ選び、院内の言い方を統一するところから始めるとよい。
SRPを始める前に確認したい条件
全身状態と服薬を先に確認する
SRPの前に確認したいのは、歯ぐきの状態だけではない。全身状態と服薬の確認が甘いと、出血や偶発症のリスクが上がる。
日本歯科医学会の資料では、歯周病治療の流れの最初に医療面接が置かれ、全身の健康状態を把握することが示されている。日本歯周病学会のガイドライン関連資料でも、治療計画立案の際に患者背景や全身状態を考慮する考え方が挙げられている。
現場では、糖尿病の治療状況、抗血栓薬の内服、アレルギー歴、妊娠の有無、不安や失神歴などを押さえると安全側に寄る。歯科医師の診断と指示が前提なので、歯科衛生士は情報を集めて整理し、指示の質を上げる役割を担う。
痛みや出血が強いときほど、術者は手技に意識が偏りやすい。体調変化のサインや問診の違和感がある場合は、無理に進めず歯科医師に共有してから方針を決めるほうが安全である。
次回来院前の一分で見返せるように、問診で確認する項目を自分用の短いチェックにまとめておくとよい。
処置の優先順位と分割を決める
SRPは一回で終わらせるより、計画的に分割して精度を上げるほうが結果につながりやすい。どの部位から始め、どの範囲を一回で行うかがポイントになる。
日本歯周病学会の歯科衛生士向け資料では、歯石沈着の部位と程度、ポケットの深さ、歯肉の厚さや性状を参考にして回数を決める考え方が示されている。炎症が強い部位は治癒に時間が必要で、左右に及ぶ処置を避け、上下の片顎ずつ分割して進める配慮も述べられている。
まず病変が強い部位から始めるか、患者の不安が強いなら軽度部位から慣らすかを選ぶとよい。術後に噛みにくい期間が出ることもあるため、食事の影響を考えて範囲を決め、次回の計画までその場で伝えると納得が得やすい。
深いポケット、垂直性骨欠損、根分岐部病変などが疑われる場合は、SRPだけで完結しない可能性がある。歯周病専門医や高次医療機関への紹介を検討する考え方も学会資料で示されているため、独りで抱えない姿勢が重要だ。
今日の診査結果から、次回のSRP範囲を上下片顎のどちらかに決め、カルテと申し送りに同じ表現で残すとよい。
歯科衛生士のSRPを進める手順とコツ
SRP前の準備で結果が変わる
SRPは手を動かす前の準備で半分が決まる。診査、口腔清掃指導、計画、疼痛への配慮、器具の状態がそろうほど、処置中の迷いが減る。
日本歯周病学会の歯科衛生士向け資料では、SRP前に歯周組織診査を行い、歯周プローブやエキスプローラーによる触診、必要に応じたX線写真で歯石の位置と量を把握することが示されている。さらに、プラーク染色による口腔清掃指導は一回で身につく患者がほとんどいないため、治療のたびに状態を把握して指導を重ねる考え方が述べられている。
現場で効くのは、視野を確保する工夫と、器具を鋭利に保つ習慣である。歯肉縁下は直視できず触覚に頼るため、刃部の適合と評価の流れを決めておくと、取り残しが減りやすい。
準備が不十分なまま深部に入ると、出血で視野が取れず、患者の痛みも強くなりやすい。プラークコントロールが崩れた状態では再付着も早くなるため、先にセルフケアの協力を得ることが遠回りに見えて近道になる。
次回のSRP前に行うことを三つに絞り、診査、TBI、シャープニングの順でルーティン化するとよい。
手順を迷わず進めるチェック表
SRPは場当たり的に進めると、説明漏れと記録漏れが起きやすい。手順を固定すると、患者対応と精度の両方が安定する。
日本歯科医学会の資料では、歯周病検査、プラークコントロール、スケーリング、必要に応じたSRP、その後の再評価と治療計画の修正という流れが示されている。日本歯周病学会のガイドライン関連資料でも、患者教育、歯肉縁上スケーリング、SRP、再評価の流れが整理されている。
下の表は、SRPを進める順番を迷わないためのチェック表である。目安時間は施設の予約枠によって変わるため、まずは自院の枠に合わせて読み替えるとよい。
| 手順 | やること | 目安時間や回数 | つまずきやすい点 | うまくいくコツ |
|---|---|---|---|---|
| 事前診査 | PDとBOP、歯石、動揺、リスク要因を把握する | 目安5分から10分 | 記録が粗くなり部位が曖昧になる | 測定部位を固定し、所見は短い言葉で残す |
| セルフケア確認 | 染色やプラークスコアで課題を共有する | 目安1回から2回 | 指導が一方通行になる | 本人の手元を見て一つだけ改善点を決める |
| 範囲と分割決定 | 上下片顎など処置範囲を決める | 目安1分 | 両側を一度にやって噛めなくなる | 食事の影響を聞いてから範囲を決める |
| 口腔内の準備 | 視野確保、簡易防湿、必要に応じ洗口を行う | 目安2分 | 出血と唾液で評価ができない | 吸引と乾燥を先に整えてから入る |
| SRP実施 | 触覚で歯石を探知し、少量ずつ重ねて除去する | 目安15分から30分 | 刃部が合っていないのに押し続ける | 器具を替える判断を早くする |
| 評価と終了 | プローブや探針で残存歯石と粗造を確認する | 目安2分 | 仕上げの確認を飛ばす | 評価の器具を決めて必ず通す |
| 術後説明と記録 | 反応、注意点、次回の範囲を伝え記録する | 目安3分 | 次回計画が曖昧になる | 次回の範囲を一文で復唱してもらう |
この表は、処置の前後で抜けやすい工程を埋めるためのものだ。つまずきやすい点の欄を読むと、経験が浅い段階で起きやすい失敗を先回りできる。
向いているのは、担当制で一人で完結する時間が長い職場や、複数の歯科衛生士で引き継ぐ現場である。目安時間はあくまで目安なので、過密な予約枠にそのまま当てはめないほうがよい。
まずは自院の予約枠に合わせて目安時間を書き換え、明日から同じ順番で回せる形に整えるとよい。
SRPで起きがちな失敗と防ぎ方
失敗パターンを早めに見抜く
SRPの失敗は、処置中よりも、準備不足と評価不足から始まることが多い。サインを早めに拾えると、痛みを増やさずに立て直せる。
日本歯周病学会の歯科衛生士向け資料では、刃部が鋭利でない場合に歯石除去が不十分になり、歯石表面を滑沢化してしまうことで残存歯石の触知が困難になる点が述べられている。視野の確保や乾燥が不十分だと判定が難しくなる点も示され、失敗の芽は手技の前にあることが分かる。
下の表は、よくある失敗をサインから逆算して防ぐためのものだ。最初に出るサインの欄を見て、早い段階で介入するイメージを持つとよい。
| 失敗例 | 最初に出るサイン | 原因 | 防ぎ方 | 確認の言い方 |
|---|---|---|---|---|
| 歯石の取り残し | 探針で引っかかりが残る | 刃部の適合不足 | 器具交換と角度の見直しを早くする | この面に引っかかりが残るので器具を替える |
| 根面を削りすぎる | 知覚過敏の訴えが増える | 目的が滑沢化に偏る | 歯石と粗造の違いを触覚で確認する | 痛みが出やすいので圧と回数を調整する |
| 痛みが強い | 体がこわばる、手が上がる | いきなり深部に入る | 範囲分割と合図の確認を先にする | 痛みが出たら合図してもらい一度止める |
| 出血で視野が崩れる | 乾燥してもすぐ血液がたまる | 炎症が強い | 先にセルフケアと除石範囲を調整する | 炎症が強いので範囲を分けて進める |
| 記録が残らない | 次回に同じ部位を触る | 手順が固定されていない | 終了前の記録をルーティン化する | 今日の範囲と反応をここに残す |
この表は、失敗を責めるためではなく、早めに気づくためのものだ。サインが出た時点で一段階戻り、視野、器具、範囲のどれを直すかを決めると、傷を大きくせずに済む。
向いているのは、忙しい日に手技が荒れやすい人や、痛みの訴えが続く症例を抱えている人である。サインを無視して押し切るほど、患者の信頼と術者の疲労が同時に増える点には注意がいる。
次のSRPでは、この表からサインを一つだけ選び、出た瞬間に行動を変えるとよい。
痛みと不安が強いときの立て直し
SRPがうまくいかない場面で多いのは、痛みと不安が先に立つケースだ。手技の前に、安心してもらう仕組みが必要になる。
日本歯周病学会の歯科衛生士向け資料では、不安感を抱かせる用語を避け、痛みがあれば合図をするよう事前に説明する配慮が述べられている。薬物のアレルギー確認や局所麻酔剤の使用量と濃度への注意にも触れられており、疼痛管理はチームで担う前提がある。
現場では、合図を決めてから開始し、違和感が出たらいったん止めて状況を言語化すると落ち着きやすい。深部は少量ずつ除去し、刃部の適合を優先し、強い圧で押し切らないほうが結果も痛みも改善しやすい。
痛みが想定以上に強い、腫れや発熱がある、排膿が疑われるなどの所見がある場合は、SRPで解決しようとせず歯科医師に速やかに共有する必要がある。患者の訴えを軽視すると、通院中断につながりやすい。
次回の説明文を短く決め、合図、範囲分割、痛みが出たときの止め方を同じ流れで伝えるとよい。
SRPの進め方を選ぶ判断軸
SRPの進め方を選ぶ判断軸表
SRPには手用中心、超音波中心、併用など複数の進め方がある。大事なのは、症例と自分の技術、そして院内の体制に合う選択をすることである。
SRPは歯周基本治療の一部として、プラークコントロールや診査とセットで進むという考え方が学会資料で繰り返し示されている。歯科衛生士が行う場合も、歯科医師の指示のもとで安全に実施し、評価と報告で次の治療につなげる枠組みが重要になる。
下の表は、進め方を選ぶときの判断軸を整理したものだ。おすすめになりやすい人と向かない人を見比べると、自分の改善ポイントが見えやすい。
| 判断軸 | おすすめになりやすい人 | 向かない人 | チェック方法 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 手用中心 | 触覚に自信をつけたい人 | 手首や肩に痛みが出やすい人 | 取り残し評価が安定するか | 姿勢と支点が崩れると疲労が増える |
| 超音波中心 | 時間短縮と除石効率を上げたい人 | エアロゾル対策が弱い環境 | 吸引と視野が保てるか | チップ適合と当て方が雑だと傷が増える |
| 併用 | 効率と精度を両立したい人 | 器具交換で手順が乱れる人 | どの段階で切り替えるかを固定する | 切り替え基準が曖昧だと時間が延びる |
| 分割方法 | 術後の生活に配慮したい人 | 一回で終わらせたい人 | 噛みにくさの訴えを記録する | 両側同時処置は避けるほうが無難だ |
| 疼痛への配慮 | 不安が強い患者が多い人 | 説明が短くなりがちな人 | 合図の説明をしたか確認する | 麻酔や薬剤は歯科医師の判断と指示が前提だ |
この表は、正解を一つに決めるためのものではない。自分の得意と不得意を見つけ、得意な型を作った上で、症例で微調整するほうが安定しやすい。
向いているのは、同じ職場でも人によってやり方がばらつく環境や、短時間で焦りやすい人である。器具や方法を変えるときは、患者への説明と記録もセットで変える必要がある点には注意がいる。
まずはこの表の判断軸を一つ選び、次回のSRPで変えるのは一か所だけに絞るとよい。
根面をどこまで仕上げるかの考え方
ルートプレーニングの難しさは、どこまでをゴールにするかが見えにくい点にある。仕上げを追いすぎると、必要以上に歯質を削りやすい。
日本歯科医学会の資料では、SRPは歯肉縁下歯石と病的なセメント質を除去し、為害性のない滑沢な根面にする処置と説明されている。ここでの滑沢は、見た目のツルツルではなく、細菌の温床を減らすための生物学的な意味合いだと捉えると迷いが減る。
現場では、歯石の縁下に刃部先端をくい込ませるように少量ずつ除去し、方向を重ねて全体をオーバーラップさせるやり方が安定しやすい。除去後は探針やプローブで根面の粗造と残存歯石を確認し、触覚で判断する流れを固定するとよい。
根面形態が複雑な部位や根分岐部は、無理な角度で押し込むほど溝や段差を作りやすい。深いポケットが残る場合は再SRPだけでなく、歯科医師と外科的アプローチや専門紹介も含めて検討する必要がある。
次回は、評価に使う器具を一つ決め、終了の基準を触覚で言語化してからカルテに残すとよい。
場面別に見る歯科衛生士のSRP
歯周基本治療でのSRPと再評価
歯周基本治療の中では、SRPは単独で完結する処置ではない。検査、セルフケア、スケーリング、SRP、再評価が連動してはじめて意味が出る。
日本歯科医学会の資料では、スケーリング後の検査結果によってSRPへ進むか、重症化予防治療やメインテナンスへ進むかを決定する考え方が示されている。SRP後も再評価を行い、改善が不十分な部分への再SRP、歯周外科治療の検討など、計画を修正する流れが示されている。
現場では、再評価で見る項目を固定すると判断がぶれにくい。PDだけでなくBOP、プラークの状態、患者の生活要因を合わせて見て、次に何を変えるかを一つに絞ると説明もしやすい。
数値が少し改善しただけで安心すると、セルフケアが緩み再発しやすい。再評価は結果発表ではなく、次の計画づくりの場だと捉えると、患者の行動変容につながりやすい。
次回の再評価では、見る項目を三つに固定し、結果から次の一手を一文で決めるとよい。
SPTやメインテナンスで行う再SRP
SPTやメインテナンスでは、再発部位に対して再SRPが必要になることがある。治療が終わった後こそ、見逃しが再発につながる。
日本歯周病学会の歯周治療ガイドラインでは、SPTや重症化予防治療は歯科医療従事者によるプラークコントロールやSRPなどが主体になるという位置づけが示されている。歯周メインテナンス中に行われる再SRPに関する研究でも、再発部位に対してSRPが高頻度に実施される治療法であることが述べられている。
現場では、出血の再出現、ポケットの増加、清掃不良部位の固定化などをサインとして拾い、原因を患者と一緒に探す姿勢が大事だ。喫煙や糖尿病などのリスクが絡む場合は、セルフケアだけでなく生活面の支援が必要になることもある。
再SRPを繰り返すと知覚過敏が出やすくなるなど、侵襲の積み重なりにも注意がいる。焦って削り込むより、取り残しの評価、清掃性の改善、患者の行動の再設計を優先するほうが長期的に安定しやすい。
次回来院時に再発サインを一つ決めて観察し、必要なら再SRPより先に原因因子を一つ減らす行動を提案するとよい。
新人やブランク明けがSRPを学び直す順序
SRPは難しい処置だが、順序を間違えなければ上達は早くなる。いきなり深い部位に挑むより、土台を作るほうが安全である。
日本歯周病学会の歯科衛生士向け資料では、術者の姿勢と患者の位置、視野確保、シャープニングの重要性が具体的に述べられている。これらは症例に依存しにくい基礎であり、先に固めるほど臨床での再現性が上がる。
学び直しは、シャープニング、支点の安定、刃部の適合確認、触覚での評価の順が取り組みやすい。模型やファントムで、同じ面を同じストロークで触り、評価の言葉を短く残す練習をすると、臨床で迷いが減る。
難しい部位や強い炎症部位を一人で抱えると、痛みを増やしやすく、本人の自信も削られる。見学や同席で手元を見てもらい、指摘点を一つに絞って直すほうが伸びやすい。
次回の練習では、姿勢と刃部適合の二つだけに集中し、終わったら評価の言葉を一行で残すとよい。
歯科衛生士のSRPでよくある質問
よくある質問を表で確認する
SRPは患者からもスタッフ間でも質問が出やすい。答え方を揃えると、説明のムラが減り、信頼につながる。
歯周治療の資料では、SRPが歯周基本治療の一部であり、検査や再評価とつながることが示されている。法令を扱う行政資料では、歯科衛生士は歯科医師の指示のもとで歯科診療の補助を行う枠組みが示され、説明と記録が重要になる。
下の表は、現場で頻出する質問を短く整理したものだ。短い答えを核にし、理由で納得を作り、次の行動で終わらせると伝わりやすい。
| 質問 | 短い答え | 理由 | 注意点 | 次の行動 |
|---|---|---|---|---|
| スケーリングとSRPは何が違うのか | SRPは歯肉の下の汚れまで狙う | 深い部分は日常清掃では届きにくい | 症状や段階で必要度が変わる | 今日の処置範囲を図で示す |
| 痛みが心配と言われたらどうするか | 合図と分割で痛みを減らせる | 不安が強いと痛みも増える | 麻酔は歯科医師の判断が前提だ | 合図を決めてから開始する |
| どこまで滑らかにするのか | 歯石と粗さが残らない状態を目指す | 温床を減らすのが目的だ | 削りすぎると知覚過敏が出る | 探針で評価して終了基準を決める |
| SRP後の知覚過敏が出たら | 一時的に出ることがある | 炎症が引くと刺激を感じやすい | 強い症状は歯科医師に共有する | 次回に症状と部位を記録する |
| SPTで再SRPが必要な時は | 再発サインがある時だ | 安定後も再発は起き得る | くり返しの侵襲に注意がいる | 原因因子を一つ減らす提案をする |
| 新人が上達する近道は | シャープニングと評価を固定する | 基礎がそろうと精度が上がる | 難部位は指導者と進める | 直す点を一つに絞って練習する |
この表は、話す内容を暗記するためではなく、ぶれない骨組みを作るためのものだ。短い答えを統一すると、説明が長くなりすぎず、患者の理解が揃いやすい。
向いているのは、担当者が複数いる医院や、患者説明の時間が短い環境である。答えを揃えたうえで、患者の状況に合わせて言葉を簡単にする工夫が必要だ。
まずはこの表から一問だけ選び、院内で同じ表現にそろえるところから始めるとよい。
SRPに向けて今からできること
一週間で整える学習と練習の段取り
SRPの勉強は、知識と手技を同時に詰め込むと続かない。短い期間でも、目的を絞ると現場で変化が出る。
日本歯周病学会の資料では、SRPを成功させるには患者への説明とプラークコントロールの協力が重要で、口腔清掃指導は繰り返し必要になる考え方が示されている。つまり、手技だけでなく、診査、説明、評価まで含めた型を作ることが上達に直結する。
一週間でやるなら、初日は用語と診査項目の復習、二日目はシャープニング、三日目は支点と姿勢、四日目は触覚評価の練習、五日目は先輩の手元観察、六日目は自分の処置の振り返り、七日目は次の改善点を一つ決める流れが取り組みやすい。短時間でも毎日触れるほうが、週末にまとめてやるより残りやすい。
詰め込みすぎると、臨床で焦りが増えて痛みや取り残しにつながりやすい。できないことを数えるより、できるようにしたい一つだけを決めるほうが続く。
今日から一つだけテーマを決め、明日のSRPで変える行動を一つに絞るとよい。
記録と振り返りで上達を加速する
SRPの上達は、手の感覚だけでは頭打ちになりやすい。記録を残して振り返ると、成長が目に見える形になる。
日本歯科衛生士会の指針では、業務記録は施設のルールに即して正確に作成する重要性が示され、指示者や指示事項、実施時間、実施内容などの記載が重要だと述べられている。厚生労働省の資料でも、歯科衛生士は歯科医師の指示のもとで歯科診療の補助を行う枠組みが示され、指示の共有と安全管理が前提になる。
現場で役立つのは、記録の型を決めることだ。処置範囲、使用器具、反応、出血や疼痛の程度、術後説明、次回計画の六つを短い言葉で残すと、次回の判断が速くなる。
記録には個人情報が含まれるため、守秘義務と施設内の運用ルールを守る必要がある。書き方が曖昧だと、引き継ぎで同じ部位を触ってしまうなどの事故につながる点にも注意がいる。
次のSRPから、記録の項目を六つに固定し、終わった直後に一行で要点を残す習慣を作るとよい。