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歯科医院で院長の歯科医師からのパワハラで辞めたい人向け、退職理由の伝え方や、訴える場合の注意点などを解説!

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院長からのパワハラとはどんなもの?

歯科医院の院長(経営者でもある歯科医師)から部下へのパワーハラスメント(パワハラ)は、残念ながら歯科業界で珍しいことではありません。パワハラとは一般に、職場での立場を利用して必要以上に精神的・身体的な苦痛を与える行為を指し、指導の域を超えた暴言や嫌がらせなどが含まれます。まずはその定義と具体例を確認してみましょう。

法律が定めるパワハラの条件

日本では2020年の法改正により、企業にパワハラ防止策の義務が課されました(中小企業では2022年4月から完全施行)。厚生労働省のガイドライン(2024年現在)によれば、「職場におけるパワーハラスメント」は次の3つの要素を全て満たす言動と定義されています。(1) 職場の優位性を背景とした言動であること、(2) 業務上必要かつ相当な範囲を超えていること、(3) 労働者の就業環境が害されること。適正な業務指導であれば該当しませんが、これらを満たす言動はパワハラとして扱われます。代表的なパワハラ行為の類型として、暴行などの身体的な攻撃、暴言や侮辱など精神的な攻撃、同僚からの隔離や無視、過大な要求、過小な要求、私的なことに過度に立ち入る行為が挙げられています。歯科医院でも、これらの行為が院長からスタッフに向けられるケースが問題視されています。

歯科医院で起こりやすいパワハラの例

歯科医院の職場で実際によく聞かれるパワハラの例を見てみましょう。患者さんの前で怒鳴りつける、「こんなこともできないのか」と人格を否定するような暴言を吐く、必要以上の雑用や無理な業務を押し付ける――いずれも院長が権力を背景に行いがちな言動です。

また些細なミスに対して執拗に叱責したり、スタッフに対して舌打ちや無視を繰り返すなど、陰湿な嫌がらせも含まれます。こうした行為がエスカレートすると、スタッフは強いストレスを感じ、自信や意欲を失ってしまいます。

事実、院長からのパワハラが原因で「仕事に行くのが怖くなった」「心療内科で適応障害と診断された」という声も珍しくなく、それが退職を決断する大きな引き金となっています(厚労省の調査や業界の報告でも人間関係トラブルが歯科の離職理由に多いと指摘されています)。早い段階でパワハラを認識し対処することが、心身の健康を守るためにも重要です。

なぜ歯科医院ではパワハラが起こりやすいのか

歯科医院は小規模な職場であり、院長が現場のトップであると同時に経営者でもあります。そのため職場の力関係が一方的になりやすく、院長の言うことが「絶対」となって反論しづらい雰囲気が生まれがちです。とくに院長自身が診療と経営で多忙だったり、リーダー研修などを受けていない場合、ストレスや独善的な考えから厳しい言動がエスカレートしやすい傾向があります。スタッフ側は「逆らったら評価を下げられるのでは」「この医院では院長に従うしかない」と萎縮してしまい、結果としてパワハラが見過ごされる温床となってしまうのです。また場合によっては、院長でなくとも実質的な権限を持つ先輩スタッフがいて、その人によるいじめや派閥争いが起きるケースもあります。少人数ゆえの閉鎖的な人間関係が、歯科医院特有の力関係トラブルを生む一因と言えるでしょう。

こうした環境下では、パワハラが起きてもスタッフはなかなか声を上げられません。「患者さんの前で叱責に反論できない」「他の医院に転職する自信がない」「自分が辞めたら同僚に迷惑がかかるかも」といった思いから、我慢を重ねてしまう人もいます。しかし毎日神経をすり減らす状況には必ず限界がきます。職場に改善がないまま長期間パワハラにさらされれば、心身の不調(うつ病や適応障害など)を発症したり、人材流出が止まらなくなったりと、個人にも医院側にも大きな損失となります。院長がパワハラ的な振る舞いを続ける職場では、スタッフ全員の士気が下がり、結果として患者対応の質も低下してしまいます。つまりパワハラは被害者本人だけでなく、職場全体の雰囲気や医療サービスにも悪影響を及ぼすのです。その意味でも、歯科医院においてハラスメント問題を放置することは非常に危険だといえます。

パワハラに悩んだとき最初に取るべき対応

職場で院長からのパワハラに苦しんでいるとき、まず大切なのは「一人で抱え込まない」ことです。自分だけが悪いのではないか、と必要以上に自分を責めてはいけません。信頼できる同僚や先輩、家族などに今の状況を打ち明けてみましょう。話すことで客観的なアドバイスをもらえたり、心が軽くなることがあります。それでも院内に味方が見つからない場合は、外部の相談機関を利用する手もあります。各都道府県の労働局には総合労働相談コーナーが設置されており、パワハラを含む労働問題について無料で相談することが可能です(匿名でも相談できます)。また、メンタルクリニックや産業医に相談して心のケアを受けることも大切です。我慢しすぎて心や体に異変が出ているなら、早めに医師の診断を受けましょう。診断書が出れば休職や労災申請など後述する対応も取りやすくなります。

一人で抱え込まないための相談先

身近に相談できる相手がいない場合でも、決して孤立する必要はありません。先述の労働局の相談窓口のほか、自治体や業界団体が設けるハラスメント相談ホットラインなども利用できます。例えば厚生労働省の委託事業である「総合労働相談コーナー」では、2024年現在、全国どこからでもフリーダイヤルでハラスメントに関する相談を受け付けています。相談したからといってすぐに会社に通報されるわけではなく、希望すれば具体的な対処法や法的なアドバイスを教えてもらえます。また、弁護士に初回無料相談ができる窓口(法テラスや労働組合など)もあるため、必要に応じて専門家の意見を聞くことも検討しましょう。重要なのは「自分一人ではない」と知ることであり、第三者の視点を得ることで冷静な判断がしやすくなります。

証拠を記録して状況を整理する

相談と並行して、パワハラの証拠を残すことにも着手しましょう。後から「そんな事実はない」と言われないためにも、客観的な記録が力を持ちます。日々受けた暴言や出来事を日時とともにメモする、日記形式で記録する習慣をつけてください。可能であれば、スマートフォンの録音アプリを使って院長から叱責されたときの会話を録音したり、業務連絡のメールやLINEメッセージなどをスクリーンショットで保存しておきましょう。日本では、自分が当事者となっている会話を相手に無断で録音しても違法ではなく、証拠として認められるケースが多いです。録音データやメモには、発生日時・場所・状況などもできるだけ具体的に書き添えておくと信頼性が高まります。なお、就業規則や雇用契約書にハラスメントに関する規定がないかも確認しておくとよいでしょう。もし院長の言動が明らかに規則違反であれば、それも追及の材料になります。証拠を蓄える作業は精神的に辛いかもしれませんが、自分の身を守る保険だと考えてください。証拠がしっかり残っていれば、後で第三者に相談する際や法的措置に踏み切る際に心強い武器となります。

円満に退職するための手順とポイント

パワハラに耐えかねて退職を決意した場合でも、できる限り冷静に手続きを進めることが大切です。衝動的にその場で「辞めます!」と宣言するのではなく、以下のポイントを押さえて準備しましょう。

退職の意思を伝えるタイミングと方法

まず退職の意思は、基本的には直属の院長(雇用主)に直接伝えます。言い出しにくいかもしれませんが、診療が一段落したタイミングなど、落ち着いて話せる場を見計らって切り出しましょう。伝える時期については、法律上は退職の意思表示をしてから2週間経てば退職が可能(期間の定めのない雇用契約の場合、民法627条)です。しかし歯科医院の場合、急な退職は患者さんにも職場にも負担をかけてしまいます。可能であれば1~3か月前には申告し、引き継ぎの期間を確保するのが望ましいでしょう(就業規則で「退職は○ヶ月前までに申し出」等の規定がある場合はそれに従います)。伝え方のコツとしては、院長に呼び出された場で咄嗟に切り出すのではなく、「お話したいことがあります」とあらかじめ時間を取ってもらい、落ち着いた雰囲気で切り出すと比較的スムーズです。そして口頭で了承を得たら、形式的に退職届(退職願)を提出します。退職届には後述するように詳しい理由を書く必要はなく、「一身上の都合により〇月〇日をもって退職いたします」といった簡潔な内容で構いません。提出した日付と受領の証拠を残すため、コピーを取って署名捺印をもらうか、内容証明郵便で送付する方法も有効です。

退職前に準備すべきことは何か

退職を切り出す前に、いくつか事前の準備をしておくと安心です。まず、次の仕事の目途が立っていない場合は転職活動を視野に入れましょう。パワハラ環境から一刻も早く離れることが最優先ですが、経済的な不安を減らすためにもハローワークや転職サイトで求人情報を集めたり、知人に紹介を頼むなど、退職後のプランを検討しておくと良いでしょう。加えて、退職日までに有給休暇が残っているなら消化することも考えてください。有給を使って心身を休めたり転職活動に充てるのは労働者の正当な権利です。また、職場に置いてある私物やデータは計画的に持ち帰り、退職日当日に慌ただしくならないよう整理しておきます。健康保険証や制服など返却が必要な物のリストも作っておき、最後にきちんと返せばトラブル防止になります。給与の最終精算や離職票の発行手続きについても、人事担当(いる場合)や院長に事前に確認しておくと良いでしょう。特に離職票は失業手当の申請に必要な書類なので、発行を忘れず依頼してください。これらの準備を怠らずに進めておけば、退職の意思を伝えた後の不安を減らし、スムーズに職場を去ることができます。

退職代行サービスの利用も一手

もし院長に直接退職を切り出すのが難しい、あるいは過度な引き止めや嫌がらせが怖いという場合、退職代行サービスの利用も選択肢の一つです。近年は弁護士事務所や専門業者が、本人に代わって退職の意思を伝え必要な調整を行うサービスを提供しています。費用は数万円程度かかりますが、依頼すれば本人はもう出勤せずに済み、残りの連絡や書類のやり取りを代行してもらえる場合もあります。ただし、退職代行業者の中には違法な手続きをすすめる悪質なところも存在するので、できれば弁護士が運営する信頼できるサービスを選ぶと安心です。弁護士に依頼すれば、未払い残業代やパワハラの慰謝料請求なども含めて交渉を任せることも可能です。「退職の意思を伝えたのに院長が承認してくれない」というケースでも、法的には退職の権利は労働者側にありますので、必要以上に恐れる必要はありません。内容証明郵便や代理人を通じて正式に意思表示をすれば、たとえ相手が渋っても所定の期間後には退職が成立します。退職代行は最終手段ではありますが、心身をこれ以上すり減らさないために有効な方法として覚えておいて損はないでしょう。

パワハラが理由の退職、伝えるべき理由と言い方

パワハラが原因で退職する場合、その「理由」を周囲にどう伝えるかは悩ましい問題です。感情的になってしまうと前職や院長の悪口になりかねず、自分の評価を下げてしまう恐れもあります。ここでは、退職届の書き方から院長や転職先への伝え方まで、注意すべきポイントを解説します。

退職届には「一身上の都合」と書けば十分

退職時には書面で退職届(あるいは退職願)を提出するのが一般的ですが、その記載理由はシンプルで構いません。パワハラに苦しんだからといって、退職届に「院長のパワハラが原因で退職します」と詳細を書く必要はありません。むしろ多くの会社では、退職理由は「一身上の都合により」とだけ書くのが通例です。これは個人的な事情で退職することを婉曲に示す表現で、病気や家庭の事情、職場環境の不一致などあらゆる理由を内包する便利な言葉です。退職届は会社に保管され将来人事記録として残る可能性があるため、余計なトラブルを避けるためにも詳細を書かない方が無難です。実際、ハラスメントを理由に退職するケースでも、公的な書類上は「一身上の都合」で処理されることがほとんどです。「嘘を書くのは気が引ける」と思う必要はありません。この一文で十分に用件は伝わりますし、法律上も何ら問題ありません。

院長に本当の退職理由を伝えるべきか

では、直接の加害者である院長に対しては退職理由を正直に伝えるべきでしょうか。それとも建前の理由で濁すべきでしょうか。この点は悩みどころですが、多くの場合は無理に本音をぶつける必要はないでしょう。パワハラをする院長は往々にして指摘を素直に受け止めないものですし、「自分は悪くない」と逆上して退職交渉がこじれる恐れもあります。ですから、院長には「一身上の都合で退職させていただきます」とだけ伝え、深掘りされなければそれ以上説明しなくても問題ありません。もし理由を聞かれた場合も、「家庭の事情で」「体調を崩してしまって」など、差し障りのない説明で切り抜ける方法があります。本当は納得いかないかもしれませんが、円満退職を優先するならここは大人の対応をする場面です。ただし、あまりに悪質なパワハラで許せない場合や、後日法的措置を検討している場合には、証拠を示して正式に抗議し、改善を求める選択も考えられます。その際は一人で対峙すると感情的になりがちなので、信頼できる第三者や弁護士に同席してもらうとよいでしょう。いずれにせよ、自分の心身を守ることが第一ですから、院長にどう思われるかよりも無事に退職することに注力してください。

転職先の面接では前向きな理由に言い換える

退職後、次の勤務先の採用面接などで前職の退職理由を聞かれることがあります。このとき、決して前の職場の悪口をストレートに言わないことが鉄則です。「院長からひどいパワハラを受けて辞めました」などと伝えると、面接官はあなたの境遇に同情するかもしれません。しかし同時に、「この人を採用してもうちでも不満があればすぐ辞めるのでは」「また職場の悪口を言うのでは」と懸念する可能性があります。ネガティブな理由はそのまま言うのではなく、前向きな表現に変換して伝えるのがコツです。例えば「もっとスタッフ同士で協力し合える環境で働きたいと思い、転職を決めました」や「コミュニケーションを大切にする歯科医院で成長したいと感じました」のように、前職で得られなかったものをポジティブに言い換えると印象が良くなります。「院長とのコミュニケーションの調和が難しくなったため心機一転したかった」といった表現も、事情を察してもらいやすい言い方です。重要なのは、退職理由そのものよりも次の職場で何をしたいかを語ることです。前の職場への批判ではなく、自分のキャリアビジョンを語ることで、面接官にも前向きさが伝わります。また歯科業界は比較的横のつながりが強く、前職場の評判が回り回って耳に入ることもあります。円満退職をしておけば、万が一問い合わせがあっても悪い評価をされにくくなるでしょう。新天地では過去の嫌な経験を引きずらず、ぜひ前向きなスタートを切ってください。

院長のパワハラを法的に訴えることはできる?

退職後や在職中に関わらず、「院長のパワハラを法的に責任追及したい」と考える被害者もいるでしょう。実際、近年はパワハラに対して損害賠償を求める民事訴訟が提起されるケースも増えています。では、どのような場合に訴えることが可能で、どんな手段があるのでしょうか。

パワハラに該当するか判断するポイント

まず前提として、法的にパワハラを訴えるには、その言動が前述したパワハラの定義に当てはまる必要があります。上司から厳しい口調で注意を受けた程度では、「業務上適正な指導の範囲内」と判断され、法的措置の対象とはなりにくいです。一方で、長期間にわたり執拗な暴言や人格否定が繰り返され、あなたの就業環境が著しく害された場合は、不法行為(民法上の損害賠償請求の原因)に該当し得ます。その判断ポイントとしては、「他のスタッフから見ても行き過ぎた言動だったか」「あなたが精神的苦痛を受け健康被害(例:うつ病等)を負ったか」「録音やメールなど客観的な証拠があるか」などが挙げられます。特に、心療内科の診断書で『適応障害で○ヶ月の療養が必要』といった証明が得られれば、職場の安全配慮義務違反として会社(医院)の責任を問いやすくなります。なお「パワハラ」という名前の刑法上の犯罪があるわけではありませんが、内容によっては暴行罪(身体的攻撃の場合)や侮辱罪・名誉毀損罪(ひどい暴言の場合)に該当する可能性もあります。ただし刑事告訴はハードルが高く、現実的には民事で慰謝料等を請求する形が主流です。

労働基準監督署や公的機関への相談

法的措置の前段階として、行政機関に相談・通報する方法もあります。代表的なのは労働基準監督署と都道府県労働局です。労働基準監督署は労働基準法違反(賃金未払い、過重労働、危険な作業環境など)があれば取り締まる権限を持っています。パワハラそのものは労基法の直接の管轄外ですが、例えばパワハラに関連して長時間労働や安全配慮義務違反が認められれば、是正勧告など行政指導が行われることもあります。また、都道府県労働局には個別労働紛争のあっせん制度があり、申請すれば第三者(紛争調整委員会)が間に入って職場との和解交渉を試みてくれます。費用は無料で、話し合いによる解決を図りたい場合に有効です。さらに、パワハラ防止法に基づきハラスメント相談者への不利益取扱い禁止が課せられています(相談や通報を理由に解雇・減給などの報復をすることは違法)。そのため在職中に公的機関へ相談したとしても、それを理由に解雇されれば不当解雇として争う余地があります。なお、職場に労働組合があれば状況を伝えて支援を求めるのも良いでしょう。もし組合がなくても、外部のユニオン(合同労組)に個人加盟して交渉を代行してもらう手段もあります。公的機関や組合の力を借りることで、個人では解決が難しい職場環境の是正を促すことが可能です。

損害賠償を請求する場合の手続き

院長や医院に対して損害賠償(慰謝料や逸失利益など)を求める場合は、まず証拠を揃えた上で弁護士に相談することをお勧めします。弁護士はあなたの話を聞き、証拠から法的に請求できる権利があるか評価してくれます。請求に踏み切る場合、多くはまず内容証明郵便で医院側に慰謝料支払い等を求める通知を送付し、交渉による和解を試みます。それでも相手が応じない場合には裁判(民事訴訟)に進む流れです。裁判になれば、あなた側はパワハラによる精神的苦痛や治療費の補償等を主張し、相手側の過失を立証する必要があります。決定的な証拠や証言があれば有利ですが、証拠が乏しいと争いが長引く可能性もあります。慰謝料の相場はケースによりますが、たとえば上司からの執拗な嫌がらせで適応障害となり休職・退職に至った事案では、数十万円~数百万円の支払いが命じられた例があります。裁判は解決までに1年以上かかることも珍しくなく、精神的負担も大きい点は覚悟が必要です。一方で、明らかなパワハラによってキャリアを断たれたり健康を損なった場合、そのまま泣き寝入りせず責任を追及することには意義があります。また、労災保険の申請というアプローチもあります。仕事上のストレスで精神疾患を発症した場合、労災認定を受ければ治療費や休業補償が支給され、労基署から職場への指導も期待できます(労災申請には医師の診断書と詳細な経緯の申立書が必要です)。労災の認定と民事の慰謝料請求は両立も可能なので、自分の受けた被害に見合った救済を検討しましょう。いずれにせよ、法的手段に踏み出す際は専門家の助力を得て、慎重に進めることが大切です。

訴える際の注意点と知っておきたいこと

最後に、院長を訴える・告発する場合に知っておくべき注意点を整理します。法的手段は被害を救済する強力な武器ですが、同時にリスクや負担も伴うため、事前に十分理解しておきましょう。

証拠集めと記録の重要性

繰り返しになりますが、法的に争う上で証拠は極めて重要です。訴訟では証拠が全てと言っても過言ではなく、「言った・言わない」の水掛け論にならないよう、可能な限り客観的資料を揃える必要があります。録音データやメールの保存はもちろん、日々のメモも公的機関や裁判官を説得する材料になります。提出する証拠には信ぴょう性が問われるため、改ざんのない原本を保管し、必要に応じて弁護士に預けておくと安心です。逆に、証拠が不十分なまま訴えてしまうと、反論を覆せず泣き寝入りになってしまうリスクもあります。また、SNS等で先走って職場の実名暴露などをするのは厳禁です。感情に任せて情報発信すると、逆にあなたが名誉毀損で訴えられる可能性もあるため、証拠はあくまで公的な場で使用し、それ以外では慎重に扱いましょう。

訴訟のリスクと覚悟すべきこと

パワハラの訴訟には時間と労力がかかります。訴える側にも精神的な負担が大きく、場合によっては当時のつらい記憶を何度も聞かれるなどストレスを伴います。また、勝訴判決を得ても期待したほどの慰謝料額にならないこともありますし、逆に証拠不足で敗訴すれば経済的負担だけが残る結果にもなりかねません。訴訟を起こすことで元職場との確執が公になるため、狭い業界内で今後の人間関係に影響が出る恐れもゼロではありません(ただし正当な権利行使である限り、過度に恐れる必要はありません)。こうしたリスクに対する覚悟を決めた上で、それでも泣き寝入りしたくないという強い思いがあるなら、法的措置は有意義な選択となります。大事なのは、一人で抱え込まず専門家や家族の支援を受けながら、自分の納得のいく決断をすることです。

報復を防ぐ法律と対応策

パワハラを訴える際に多くの人が心配するのが、相手側からの報復でしょう。在職中に労基署等に通報した場合の解雇や嫌がらせ、退職後に訴えた場合の風評被害などが考えられます。この点、前述のとおり労働施策総合推進法により「ハラスメントの相談をしたこと等を理由とする不利益取扱い」は明確に禁止されています。万一、相談や訴訟を理由に解雇や減給などの処分を受けた場合は、それ自体が違法行為となり追加で争うことが可能です。また退職後に院長や関係者が根も葉もない噂を流したり、あなたの転職を妨害したりすれば、それも名誉毀損や業務妨害として訴えることができます。法律は被害者を守るためにありますが、現実問題として報復を完全に防ぐことは難しい側面もあります。そこで、事前に対策を講じておくことが肝心です。例えば、相談や訴訟に踏み切る際は周囲に詳細を漏らさず粛々と行動する、転職先にはあらかじめ前職に関する事情説明書を提出して誤解を防ぐ、といった工夫も考えられます。幸い近年ではハラスメントへの社会的な理解も進んでおり、正当な権利行使に対して一方的に評価を落とすような企業ばかりではありません。勇気を出して声を上げることで、自身の救済だけでなく同じ職場の後輩たちの労働環境を改善するきっかけになる場合もあります。「パワハラは決して許されない」という原則のもと、自分の人生と尊厳を守る行動を取ることを恐れないでください。困ったときは一人で抱え込まず、適切な機関や専門家と連携して、最善の道を切り開いていきましょう。

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