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歯科医師国保で産休中の給料や保険料は?組合別の手当金、他の保険との違いなどを解説!

最終更新日

歯科医師国保とはどんな保険?

まず「歯科医師国保」とは何かを整理します。歯科医師国保(歯科医師国民健康保険)は、各都道府県の歯科医師会に所属する歯科医師とその歯科医院スタッフ、およびその家族が加入できる医療保険制度です。一般的な国民健康保険と同様に自治体ではなく職域の組合が運営する国民健康保険で、全国に20以上の地域組合が存在し地域ごとに加入先が決まっています。つまり、開業歯科医やその職員が加入する業界特有の国民健康保険といえます。

歯科医師国保に加入するためには歯科医師会への入会が前提です。歯科医師が個人で開業している場合、その地域の歯科医師会員であれば自身と従業員を歯科医師国保に入れることができます。一方、歯科医師会に未加入の医院や、スタッフ数が一定以上で社会保険適用を選ぶ医療法人などでは歯科医師国保に入れないケースもあります。また歯科医師国保は被扶養者の制度がなく家族もそれぞれ被保険者として保険料を支払う点が特徴です。企業の健康保険や協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)のように収入のない専業主婦(夫)や子どもを無料で扶養に入れる制度はなく、家族も含め加入者一人ひとりに保険料が課されます。

加入できる人と対象範囲は?

歯科医師国保の対象者は歯科医療に従事する人とその家族です。具体的には、歯科医師会に所属する歯科医師(開業医など)が第一種組合員として加入し、その歯科医院で働く歯科医師(勤務医)や歯科衛生士・歯科技工士・歯科助手などのスタッフも第二種・第三種組合員として加入できます。同じ職場のスタッフであれば歯科医師国保にまとめて加入することになり、対象となる家族も含めて保険証が発行されます。ただし、職場の歯科医院が歯科医師会に非加入の場合や、医院の形態によっては歯科医師国保に入れず各自が自治体の国民健康保険に加入するケースもあります。そのため勤務先が歯科医師国保かどうかは就職時に確認すべきポイントです。

加入には地域の歯科医師国保組合への手続きが必要です。多くの場合、歯科医師会員が医院単位でまとめて申請し、スタッフは個人ではなく医院経由で加入します。加入条件として歯科医師会費や組合費の負担も発生するため、開業医にとっては経営上のコスト面も考慮が必要です。一般に歯科医師国保へ加入できるのは小規模な歯科医院(5人未満の従業員)が多く、スタッフが5名以上になると原則は厚生年金や協会けんぽを適用することが法律上求められます(ただし医療業は適用除外の特例申請も可能な場合があります)。こうした適用条件によって、歯科医師国保に入れる職場とそうでない職場がある点に注意しましょう。

保険料や保障内容の特徴は?

歯科医師国保の保険料は、市町村が運営する国民健康保険とは異なり所得に連動しない定額制が基本です。組合ごとに保険料額が定められ、職種や立場別に一律の月額が決まっています。そのため収入が増えても保険料は一定で、開業医や高収入の歯科医師にとっては国民健康保険より負担が軽くなる可能性があります。一方で従業員負担分を事業主が肩代わりする形になるため、医院側には毎月の保険料負担が発生します(協会けんぽの場合は事業主と労働者で折半)。

保障内容については、医療機関で受ける診療の自己負担割合(一般は3割)や出産育児一時金・高額療養費など、基本的な給付は他の公的医療保険と共通です。さらに組合独自の追加給付やサービスも用意されており、たとえば予防接種補助や人間ドック補助など福利厚生的な給付を行う組合もあります。ただし一部の給付(後述する出産手当金や傷病手当金などの休業補償の手当)については組合によって制度の有無・内容が異なる点が重要です。歯科医師国保は職域国保として各組合が自主的に制度設計しているため、保障の充実度にばらつきがあります。この違いは特に産休や病気で仕事を休む際の保障に表れるので、次章以降で詳しく解説します。

産休・育休の制度は? 基本の期間と条件を確認

歯科医師国保での産休中の処遇を理解するには、まず産休・育休の制度そのものを押さえておきましょう。産休(産前産後休業)と育休(育児休業)は労働基準法および育児介護休業法で定められた制度で、女性が出産前後に仕事を休むための権利と、子育てのために一定期間仕事を休む権利をそれぞれ指します。歯科医師であっても雇用者であれば他の職種と同様に取得可能であり、その期間中の給与支払い有無や各種手当の支給は加入する保険種別や雇用保険の状況によって変わります。ここでは産前産後休業と育児休業の期間・条件について基本を確認します。

産前産後休業(産休)の期間と条件は?

産前産後休業(いわゆる産休)は、女性労働者が出産に際して取得できる法定の休業制度です。期間は原則として出産予定日の6週間前から出産後8週間までと定められています(多胎妊娠の場合は14週間前から)。産前休業は本人が請求して取得するもので、産後休業については産後8週間は本人が希望しても就業させてはいけないという強制休業の期間です(医師が支障ないと認めた場合に限り産後6週経過後からの就業は可能)。この産前42日+産後56日の計98日間(約14週間)が法律上の産休期間の目安となります。

産休を取得する条件としては、「妊娠・出産により就業が困難である」こと以外に特別な要件はありません。雇用形態にかかわらず、正社員はもちろんパートタイムでも社会保険の加入有無に関係なく全ての女性労働者に取得する権利があります。歯科医院のような小規模事業所でも、労働基準法の適用を受ける以上は妊娠中のスタッフから請求があれば産前休業を与え、出産後も規定期間は就業させない義務があります。これは歯科医師自身が従業員の場合(勤務医として医院に雇用されている場合)も同様で、勤務先に産休取得を申し出ることができます。開業歯科医のように自らが経営者であるケースでは法律上の産休取得という概念はありませんが、自己判断で出産前後は休業することになるでしょう。

産休中の給与については法律上「無給でも構わない」とされています。多くの民間企業では産休期間は給与支給しない(無給休職扱い)ケースが一般的で、これは歯科医院でも同じです(※参考:東京都歯科健保組合の説明でも「出産で仕事を休み給料をもらえないときに出産手当金が支給される」と明記されています)。そのため、産休に入ると勤務先からの給与収入が途絶えるのが通常であり、その間の所得補償として健康保険から「出産手当金」という手当が支給される仕組みがあります。次の章で詳述しますが、この出産手当金の扱いが歯科医師国保では特殊なのです。

育児休業の期間と給付金は?

育児休業(育休)は、原則として子が出生した後に最長1歳(状況により2歳まで延長可、さらに事業主の制度によって最長3歳まで延長可)の範囲で取得できる休業制度です。育休は男女問わず取得可能ですが、ここでは産後に続けて取得する母親のケースで説明します。産後休業が終了した後、希望者は職場に申請して育児休業に入ります。育休中も法律上は無給が基本ですが、所得補償として「育児休業給付金」が雇用保険から支給されます。これは健康保険ではなく雇用保険の制度で、育休開始から180日までは休業前賃金の67%、以降は50%が支給されるものです。育児休業給付金を受け取るには、休業前に雇用保険に一定期間加入し保険料を払っていたことなどの条件があり、一般的には同じ事業所に1年以上雇用されているなどの要件を満たす必要があります。

歯科医院のスタッフが育休を取得する場合、そのスタッフが雇用保険に加入していることが前提となります。常勤で働いていれば通常は雇用保険の適用がありますので、勤務先で社会保険に未加入(歯科医師国保加入)であっても育児休業給付金は受けられるケースが多いです。ただし、開業歯科医本人は経営者であるため雇用保険には入っておらず、自営業者扱いで育児休業給付金の対象外となります。つまり勤務先から給料が出ない育休期間において、会社員であれば雇用保険から収入補填がある一方、自営の歯科医師は公的な収入補償がないという違いがあります。この点は健康保険の種別(歯科医師国保かどうか)とは直接関係しませんが、出産後の生活設計を考える上で知っておきたいポイントです。

なお2022年からは育児休業制度が拡充され、産後パパ育休(出生時育児休業)など柔軟な取得も可能になりました。歯科医師の世界でも、ご夫婦ともに歯科医という場合は夫が産後8週間以内に最大4週間の育休を取る制度を活用できる場合があります。育休を取得するとその間の社会保険料が免除される制度(後述)もあるため、男女問わず取得しやすい環境整備が進んでいます。以上が産休・育休制度の基本ですが、次に歯科医師国保加入者が産休に入った場合に実際どんな手当が受け取れるのかを具体的に見ていきましょう。

産休中の給料は? 歯科医師国保の出産手当金を確認

産休中に給料がもらえるかどうかは、働く妊産婦にとって大きな関心事です。前述のように産休中は勤務先からの給与は基本的に支給されないため、公的な給付により生活を支える必要があります。その代表が出産手当金ですが、歯科医師国保の場合この制度が組合ごとに異なる点に注意が必要です。協会けんぽなどの社会保険では産休中に出産手当金が必ず支給されますが、国民健康保険には本来その制度がありません。歯科医師国保は国保の一種なので、本来なければ無給となってしまいます。しかし平成30年(2018年)以降の制度改正で国民健康保険組合でも出産手当金を設けることが可能になり、現在では一部の歯科医師国保組合で独自に出産手当金を給付しています。ここでは歯科医師国保における出産手当金の有無と内容について解説します。

歯科医師国保に出産手当金制度はある?

結論から言えば、歯科医師国保の出産手当金は組合によってある場合とない場合があります。示す通り、例えば全国歯科医師国民健康保険組合(全国歯)が出産手当金制度を導入していますが、その他の組合では未実施のところも少なくありません。実際、出産手当金制度がない歯科医師国保組合も多く、その場合は産休中の収入補償は一切なく完全に無給になります。逆に制度がある組合では、一定の条件下で出産手当金が支給されます。自分が加入する組合に出産手当金制度があるかどうかは、産前に必ず確認しておきたい重要事項です。歯科医師国保に加入していて今後出産予定がある方は、所属組合の案内や規約を調べるか事務局に問い合わせてみましょう。

制度の有無だけでなく、支給額や条件も組合ごとに異なる点に留意が必要です。出産手当金がある組合でも、支給日数や金額の算定方法は協会けんぽと同じとは限りません。実際には定額の日額給付としているケースが多く、協会けんぽのように標準報酬月額に連動して2/3相当額が出る仕組みとは異なる場合があります。たとえば「東京都歯科医師国保組合」の場合、産前産後休業1日につき1,500円の手当金を支給しており(約98日間取得した場合の合計で約14.7万円)、これは協会けんぽの出産手当金(給与日額の2/3)と比べるとかなり少額です。このように組合によって支給の有無も金額も様々なので、「歯科医師国保だから必ず手当が出る」と思い込まず、自分の加入先の制度を事前にチェックしましょう。

出産手当金が支給される場合の条件と金額

歯科医師国保で出産手当金が支給される組合では、その支給条件や金額は組合の規約で定められています。一般的な支給条件としては、組合員が産前産後の一定期間就労しなかったことと1年以上継続して組合に加入していることなどが挙げられます。例えば全国歯科医師国保組合の場合、組合加入後1年以上経過した組合員で、産前6週間・産後8週間の間業務に従事しなかった日について出産手当金の請求が可能です。支給対象となる期間は法律上の産休期間(産前42日・産後56日)の範囲内で、実際に休んだ日数がカウントされます。

支給金額の例として、前述の東京都歯科医師国保組合では日額1,500円、全国歯科医師国保組合でも同様に日額定額(1日1,500円程度)で最大90日ないし98日分程度が支給上限となるようです。一方、組合によっては協会けんぽに近い仕組みを採用し、標準報酬月額の3分の2相当/日を支給するところもある可能性があります。実際、歯科医師国保でも傷病手当金については給与の2/3を最長1年半支給する組合が存在することから、出産手当金も組合により手厚い場合と最低限の場合があり得ます。ただし多くの組合では定額給付で10数万円程度が相場と考えておいた方がよいでしょう。もし出産手当金制度が利用できる場合は、所定の出産手当金支給申請書に医師の証明や事業主の証明を添えて組合に申請します。産後できるだけ早めに手続きを行い、忘れずに給付を受け取りましょう。

重要な点として、出産手当金が支給されるのは産前産後休業中に給与が支払われなかった場合のみです。もし産休中に有給扱いで給与が出ている場合や、傷病手当金など他の手当を受けている期間は重複して出産手当金は受け取れません。ほとんどのケースでは産休は無給のため問題ありませんが、念のため勤務先からの支払い状況と調整して申請するようにします。また、双子以上の多胎出産の場合でも産前休業期間が延びるだけで手当金の総額が増えるとは限らない点にも注意しましょう(組合によって扱いが異なる可能性があります)。

出産育児一時金はいくら? 付加金の有無も確認

出産に関して公的医療保険から支給されるものとして、出産育児一時金も忘れてはいけません。これは赤ちゃん一人につき一定額が支給される制度で、分娩費用の補助として全国共通で設けられています。歯科医師国保加入者であっても、この出産育児一時金は他の保険と同様に必ず受け取ることができます。ここでは出産育児一時金の現在の支給額や、歯科医師国保ならではの付加給付の有無について解説します。

出産育児一時金の基本と支給額

出産育児一時金は、公的医療保険(健康保険、国民健康保険など)の加入者が出産したときに支給される一時金です。支給対象は妊娠4ヶ月(85日)以上の出産で、死産や流産、早産(人工妊娠中絶を含む)でも条件を満たせば支給されます。支給額は原則一律で50万円(産科医療補償制度対象分娩の場合)となっています。この金額は2023年4月から引き上げられたもので、それ以前は42万円でしたが少子化対策の一環で現在は増額されています。したがって2023年4月以降の出産であれば、歯科医師国保でも1児につき50万円(双子なら100万円)の一時金を受け取れます。

一時金の受け取り方法は直接支払制度が一般化しています。これは出産する医療機関が健康保険者(歯科医師国保組合)に直接請求を行い、分娩費用に充当する仕組みです。出産費用が50万円を下回れば差額が後日加入者に支給され、費用が50万円を超えた場合はその超過分を退院時に医療機関に支払います。歯科医師国保の場合もこの制度が利用できますので、加入者自身が申請手続きをしなくても受取代理でスムーズに精算できます。万が一直接支払制度に対応していない医療機関で出産した場合でも、後から組合に請求することで一時金を受け取れます(出産育児一時金の申請書提出が必要)。

ちなみに、退職して保険証がない場合でも一時金は請求可能です。出産日翌日までに1年以上継続加入していた健康保険からは、資格喪失後でも出産育児一時金を受け取ることができます。歯科医師国保を出産前に脱退して国保へ切り替えた場合なども、条件を満たせば前保険者から給付を受けられます。いずれにせよ出産する人すべてが対象の制度ですので、必ず漏れなく受け取りましょう。

組合による付加給付はある?

歯科医師国保の特徴として、組合によっては独自の付加給付を実施していることがあります。出産育児一時金についても、組合によって所定額に上乗せがある場合があります。例えば一時金50万円に対して数万円程度を付加給付金として追加支給するなど、加入者サービスとして手厚くしているケースが報告されています。実際に「歯科医師国保に加入している場合は、団体によって付加金の上乗せがあるところもある」と案内している資料もあります。そのため、加入中の組合に問い合わせれば出産育児一時金の付加給付の有無や金額を教えてもらえます。

ただし多くの組合では付加給付はないか、あってもさほど高額ではないようです。付加給付を出していてもせいぜい数万円程度ということが多く、全くない組合もあります。付加給付がなくとも一時金自体は50万円支給されるので出産費用の大部分は賄えますが、自治体によっては独自に祝い金を出すケース(国民健康保険でも自治体独自給付があることがあります)もあるため、各地域の制度を確認する価値はあります。例えば勤務先所在地の自治体から別途出産祝い金が出ることがあるので、歯科医師国保の給付と合わせて情報収集しておくと良いでしょう。

なお、歯科医師国保だからといって出産育児一時金の支給手続きが特別に複雑になることはありません。原則は医療機関で直接支払い制度を利用するだけです。ただ、歯科医師国保組合によっては一時金受取に関する案内や申請書類が組合窓口経由になる場合もあります。初めて出産を迎える際は念のため組合から配布される「出産されたとき」の案内パンフレット等に目を通し、必要に応じて事業主(院長)とも連携して手続きを進めましょう。

産休中の保険料負担は? 2024年開始の免除制度

出産前後の休業中には収入だけでなく社会保険料の負担も気になるところです。給与がない期間でも健康保険料や国民年金保険料は通常どおり発生しますが、制度によってはその負担が軽減されます。協会けんぽなど社会保険では産休・育休中の保険料が全額免除となる仕組みがあり、事業主の申し出で最長子が3歳になるまで保険料を払わずに済みます。では歯科医師国保ではどうかというと、実は従来このような免除制度はなく、産休・育休中も保険料を払い続けなければなりませんでした。しかし2024年から歯科医師国保にも保険料免除制度が導入され、産前産後の一定期間分の保険料が免除されることになりました。ここでは歯科医師国保の新しい産前産後保険料免除制度の内容と、育休中の保険料取扱いについて解説します。

歯科医師国保の産前産後保険料免除制度

2024年(令和6年)1月から、全国の歯科医師国保組合で産前産後期間の国民健康保険料の免除措置がスタートしました。対象となるのは2023年11月1日以降に出産予定(または出産)の歯科医師国保加入者です。具体的には、出産予定月(または出産月)の前月から出産月の翌々月までの合計4ヶ月分に相当する保険料が免除されます。例えば出産予定月が令和6年3月なら、その前月2月から出産月3月・翌々月5月までの4ヶ月分が免除対象です。双子など多胎妊娠の場合は免除対象期間が拡大し、出産予定月の3ヶ月前から翌々月までの6ヶ月分が免除されます。

ただし制度開始前の期間には遡及適用されないため、令和5年度中(2023年内)の産前期間については免除されません。例えば2023年11月に出産した場合、免除対象は産後の一部(2024年1月分以降)だけとなります。完全に4ヶ月免除を受けるには出産が2024年以降になる必要があります。免除を受けるための手続きとしては、加入者は産前産後期間に係る保険料軽減措置届出書を組合に提出します。届出は出産予定日の6ヶ月前から可能で、出産後の申請も認められています。必要書類には母子健康手帳のコピー(出産前なら医師の分娩予定証明書等、出産後なら出生届出済証明等)で、単胎か多胎かを確認できる書類も添付します。申請後、組合から該当期間の保険料通知が調整され、既に支払っていた保険料は後日還付されます。

この免除制度により、歯科医師国保加入者でも産前産後の4ヶ月間は保険料負担がなくなります。仮に月額保険料が2万円程度だとすると約8万円分の負担軽減に相当します(協会けんぽなら産休・育休約2年分で30万円以上の免除効果があります)。今回の措置は国の制度変更に伴うもので、歯科医師国保以外の国民健康保険でも同様に産前産後4ヶ月分の保険料減免が全国で始まっています。2024年以降は歯科医師国保でも出産予定の旨を届出すれば保険料が免除されることを覚えておきましょう。

育休取得時の保険料はどうなる?

産前産後の保険料免除は上記のとおりですが、では育児休業期間中の保険料はどう扱われるでしょうか。結論として、歯科医師国保では育休中の保険料免除制度はありません。産前産後の4ヶ月(または6ヶ月)を過ぎた後は、たとえ育児のため引き続き休業していても従来どおり保険料の支払い義務があります。これは2024年の制度変更後も変わらず、免除の対象はあくまで出産月を挟んだ一定期間のみです。したがって、もし産後も1年間育休を取るような場合、産後3ヶ月目以降の歯科医師国保保険料は通常どおり納付が必要となります。

これに対し協会けんぽなど社会保険では育児休業に入っている期間も保険料免除が継続します。社会保険適用事業所で働く会社員であれば、育休開始から終了まで(原則1年、延長最大2年または事業主制度で最長3年)の厚生年金保険料と健康保険料が全額免除されます。この違いにより、育休を長く取る場合の経済的負担に差が出ます。歯科医師国保加入者(多くは小規模医院のスタッフ)は残念ながら育休後半の保険料負担が発生してしまいます。例えば歯科衛生士が1年間育休を取る場合、産前産後4ヶ月は免除でも残る8ヶ月分ほどの保険料(数万円)が自己負担となります。これは歯科医師国保の制度上避けられない部分ですが、育休中も配偶者の扶養に入れない(歯科医師国保は扶養制度なし)ため二重払いにならないだけましと考えるしかないでしょう。

なお、育休中に収入がなく保険料負担が厳しい場合は、各組合に個別相談すると減免や徴収猶予などの措置を講じてくれる可能性もあります。コロナ禍では保険料減免制度があったように、所得減少時の特例が用意されるケースもありますので、困ったときは組合に問い合わせてみましょう。また、育児休業給付金が受給できる場合はそれを保険料に充てるなど家計やりくりも必要です。社会保険との違いを踏まえ、育休期間中の保険料分もあらかじめ計算に入れておくことが大切です。

協会けんぽなど他の健康保険との違いは?

ここまで歯科医師国保の産休・育休に関する制度を見てきましたが、他の健康保険制度(協会けんぽや市町村国保など)との違いも整理しておきましょう。特に産休中の手当や保険料免除において、どの保険に加入しているかで受けられる制度が大きく異なります。また平時の保険料負担や扶養の取り扱いなども異なるため、包括的に比較することが重要です。以下では協会けんぽ(社員が加入する一般的な健康保険)や市町村の国民健康保険と歯科医師国保との主な違いを解説します。

出産手当金や保険料免除など産休中の違い

まず産休・育休中の公的支援の違いです。協会けんぽ等の健康保険(被用者保険)では、女性被保険者が産休で会社を休んで給与が止まった場合に出産手当金(賃金の約2/3相当)が支給されます。一方で市町村運営の国民健康保険には出産手当金の制度がありません。歯科医師国保は国保の一種ですが、組合によっては独自に出産手当金を設けているため、その点で市町村国保より有利な場合があります。ただし前述のとおり出産手当金がない組合も多いため、実際には無給になる可能性があることに注意が必要です。総じて言えば、産休中の所得補償は社会保険>歯科医師国保(組合次第)>市町村国保という順で手厚く、歯科医師国保は中間的な位置付けと言えます。

次に保険料の産休・育休中免除についての違いです。協会けんぽでは産休開始から育休終了までの社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)を全期間免除する制度があります。これにより会社員であれば出産前後から子供が1~2歳になるまで保険料負担ゼロで安心して休めます。対して歯科医師国保では2024年から産前産後4ヶ月分のみ免除で、育休期間の保険料免除はありません。市町村国保も同様に2022年頃から産前産後期間の保険料減免措置を導入していますが、育休中は減免がなく通常通りです。したがって育休が長期化する場合の保険料負担は、社会保険ならゼロなのに対し歯科医師国保・国民健康保険では発生するという違いがあります。

なお育児休業給付金(雇用保険から支給)は保険種別によらず条件を満たせば受け取れます。ここは健康保険の違いではなく雇用保険の問題なので、歯科医師国保加入だから育休給付金が出ないということはありません。要は出産手当金と保険料免除という2点が、加入する医療保険によって異なる主要ポイントです。女性スタッフが多い歯科医院では、この違いが職場の魅力や定着率に影響するほど重要だと言われています。実際、協会けんぽに切り替えてから採用がしやすくなった歯科医院も多いと報告されています。産休制度の充実度は求人応募にも関わるため、経営者側も無視できない違いと言えるでしょう。

保険料の計算方法や扶養制度の違い

次に日常的な制度上の違いです。保険料の計算方法は、協会けんぽなどでは各人の給与額に保険料率(都道府県ごと)をかけて算出し、労使折半で負担します。高収入であれば保険料も高くなります。一方で歯科医師国保の保険料は定額制で、収入に関係なく決まった額を事業主がまとめて納付します。そのため雇用主である院長にとってはスタッフの給与が上がっても保険料負担は一定というメリットがあります。ただし従業員個人から見れば給与に応じた負担ではないため、高給取りほど得をし低賃金の人は相対的に割高感があるとも言えます。市町村の国民健康保険は逆に世帯の所得や資産に応じて保険料が変動する仕組みで、こちらは収入が増えるとどんどん保険料も上がります。歯科医師国保はそうした収入増による負担増がない点が大きな特徴です。

扶養家族の扱いも重要な相違点です。協会けんぽなど被用者保険には被扶養者制度があり、一定条件下で収入のない配偶者や子を無料で扶養に入れることができます。家族分の保険料負担が発生しないので、会社員家庭では大きなメリットです。これに対し歯科医師国保や国民健康保険には扶養という概念がありません。家族も各自が被保険者となり保険料を支払います。そのため、たとえば歯科医師本人と専業主婦の妻・子2人の家庭では、歯科医師国保だと4人全員の保険料がかかりますが、協会けんぽなら歯科医師1人分の保険料で妻子は扶養扱い(保険証は発行されるが追加保険料なし)となります。人数が増えるほどこの差は大きく、家族が多い場合は歯科医師国保の方が割高になるケースもあります。

その他、細かな違いとして診療の自己受療制限があります。歯科医師国保では本人が自分の経営する歯科医院で保険診療を受けることができません(モラルリスク防止のため自院診療の給付は不可)。協会けんぽや国保では自分の勤務先病院で受診しても構いませんので、ここは職域国保特有の取り決めです。また歯科医師国保は任意加入の組合であるため、従業員が5人以上になると原則適用除外申請しない限り社会保険へ移行しなければならないなど、運用面の制約もあります。総合すると、歯科医師国保は小規模事業所向けの簡易保険制度であり、社会保険に比べて保険料計算や給付がシンプルな反面、扶養や手当金といった制度面で制約が多いと言えます。

産休に向けて確認すべき制度や手続きは?

最後に、歯科医師国保に加入している方が産休・育休に備えてやっておくべきことをまとめます。制度の違いを理解した上で、実際に妊娠が分かった段階から出産後までに必要な確認事項や手続きを把握しておきましょう。特に出産手当金の有無の確認や保険料免除の届出などはタイミングを逃さず行うことが重要です。また、職場での取り決めや他制度の活用も含め、万全の準備で産休に臨みましょう。

事前に確認しておきたい歯科医師国保の制度

まず妊娠が判明したら、自分の加入している歯科医師国保組合の産休関連制度を確認しましょう。具体的には「出産手当金制度があるか、その場合の支給条件と金額」「産前産後の保険料免除の具体的手続き」の2点が特に重要です。出産手当金については前述のように組合により様々なので、「ない」と思い込んで諦めていたら実はあった、あるいはその逆もあり得ます。公式サイトや配布資料をチェックするか、直接組合事務局に問い合わせて確認しましょう。「出産手当金が○○円出る」「産前産後○ヶ月は保険料不要」といった情報が得られるはずです。それによって産休中の収入見通しや貯蓄計画も立てやすくなります。

次に勤務先での取り扱いも確認が必要です。歯科医院によっては産休取得の前例がなく、院長先生も手探りという場合があります。就業規則に産休・育休の規定があるか、代替要員の確保など職場としての対応も早めに相談しましょう。特に産後も育休を取得したい場合、いつまで休む予定かを伝え職場の理解を得ることが大切です。あわせて、雇用保険の育児休業給付金を受けるための条件も再確認しておきます。雇用保険に加入していれば基本的には要件を満たすはずですが、勤務開始から1年未満で妊娠した場合など一部例外もあるため、人事担当者(院長)と協力してハローワークへの申請準備を進めます。

また、配偶者の扶養に入れるかどうかも検討ポイントです。歯科医師国保は扶養制度がないため、自身の収入が産休育休でゼロになっても保険料が発生します。このとき例えば夫が会社員で社会保険に加入していれば、その扶養に入る選択肢もあります。しかし扶養に入ると歯科医師国保は脱退となり勤務先のスタッフでなくなる扱いになるため、その後復職時に再加入が必要になるなど手続きが煩雑です。現実には産休育休くらいでは歯科医師国保を抜けず、そのまま継続して保険料を払い続ける人が多いようです。ただケースバイケースですので、配偶者の保険や収入状況とも見比べて検討しましょう。

産休・育休中に必要な給付申請と手続き

産休開始から出産前後にかけて、忘れずに行いたい公的手続きがあります。まず出産手当金の申請です。所属の歯科医師国保組合に出産手当金制度がある場合、産休中(出産前42日~産後56日)の休業証明をもとに申請書を提出します。申請書には医師または助産師の証明欄や事業主の証明欄があるため、出産後に主治医と勤務先に記入を依頼しましょう。出産証明として母子手帳のコピーなども必要です。提出期限は特に長く設けられていないので、産後できるだけ早めに手続きを進めます。申請しないともらえない給付ですから、産休前から書類を取り寄せて準備しておくくらいでも良いでしょう。

次に出産育児一時金の手続きです。多くの場合は病院が直接請求してくれるため特段の手続きは不要ですが、念のため健康保険証の提示と一時金利用の同意書を入院時に提出します。万一自分で請求する場合は、組合所定の請求書に出産証明書などを添えて提出します。こちらも妊娠中に組合から案内が送られてくることがありますので見落とさないようにします。

産前産後の保険料免除届も重要です。2024年以降に出産する場合、必ず産前に組合へ届出を行いましょう。出産予定日の6ヶ月前から提出可能なので、安定期に入ったら早めに用紙を取り寄せ、記入して送り返します。もし提出が遅れても出産後でも可能ですが、免除対象期間が過ぎてしまうと一旦納付した保険料の還付処理になるなど手間が増えます。余裕を持って手続きを済ませておけば、産休開始前後で保険料の請求額が減額されるなどスムーズに反映されます。

育児休業給付金の申請は原則として事業主経由で行います。歯科医院の場合、院長または事務担当者がハローワークに申請書を提出し、2ヶ月ごとに支給申請を繰り返す流れです。小規模事業所では初めての申請で戸惑うこともあるでしょうから、ハローワークに相談しながら進めると安心です。育休開始時と延長時、終了時に計3回ほど手続きが発生しますが、これにより休業中の収入が定期的に得られます。くれぐれも申請漏れがないよう注意しましょう。

最後に、復職準備として職場とのコミュニケーションも欠かせません。歯科医師国保は復職後も継続して使う保険ですので、休業中も保険証は有効です(育休中も通院等問題なく使えます)。復帰日が決まったら、保育園のことなども含めて早めに職場復帰の打ち合わせを行いましょう。場合によっては勤務時間の短縮措置など育児と仕事の両立支援策をお願いできるかもしれません。産休・育休を経て復帰する際も歯科医師国保のまま引き続き勤務することになりますので、スムーズに仕事と保険の両面でリスタートできるよう段取りしておくと安心です。

以上、歯科医師国保における産休中の給料や保険料、各種手当金について解説しました。要点をまとめると、歯科医師国保では産休中の出産手当金は組合により支給されたり無かったりするため要確認であり、2024年からは産前産後4ヶ月の保険料免除が受けられるようになったということです。他の保険(協会けんぽ等)に比べると制度上見劣りする部分もありますが、逆に言えば制度を正しく理解し活用することで安心して産休・育休を取ることができるでしょう。厚生労働省や組合からの最新情報を常にチェックしつつ、周囲とも協力してライフイベントを乗り越えてください。なお、本記事の内容は2024年時点での制度に基づいています(確認日:2024年//)。制度は変更される可能性もあるため、実際に手続きをする際は最新情報を必ず確認するようにしてください。幸せな出産と円滑な職場復帰を応援しています。

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