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歯科医師が開業をする平均年齢は?地域差や近年の状況の変化、開業するために準備するものや注意点などを解説!

最終更新日

歯科医師が開業する平均年齢はどれくらい?

統計に見る歯科医師の開業年齢

歯科医師が何歳で開業することが多いのか――この「平均年齢」は、公的な資料では直接調査されていません。しかし、厚生労働省が令和6年3月に公表した最新の令和4年(2022年)医師・歯科医師・薬剤師統計から間接的に傾向を読み取ることができます。そのデータによれば、歯科医師は年齢とともに自身の歯科医院を持つ割合(開業率)が徐々に高まり、60代前半で開業率がおよそ8割に達します。具体的には、36~37歳の時点で約20%の歯科医師が開業を経験し、40代のうちに過半数が独立開業するという構図です。66歳では約82%もの歯科医師が何らかの形で開業を果たしており、ほとんどの方が定年頃までには自分のクリニックを持っている計算になります。

こうした統計から推測すると、初めて歯科医院を開業するタイミングは、近年では多くの歯科医師にとって40歳前後が一つの目安と言えます。実際、歯科医師は卒業後すぐに開業する人は少なく、まずは病院や既存の歯科医院で研修医・勤務医として経験を積み、30代後半以降に独立を検討するケースが多いのが現状です。厚生労働省統計でも、病院に勤務する歯科医師の平均年齢は39.3歳で30代が最も多い一方、診療所(開業医を含む)に従事する歯科医師の平均年齢は54.8歳で60代が最も多くなっています。この差は、若手のうちは勤務医として勤め、年齢を重ねてから開業医に移行する流れが一般的であることを裏付けています。

なお、男女による差も見逃せません。令和4年統計によると、男性歯科医師の約66%が開業しているのに対し、女性歯科医師の開業率は21%程度にとどまっています。女性歯科医師は結婚・出産などライフイベントにより勤務形態が変化しやすく、独立開業に踏み切る割合が低いことが背景にあると考えられます。このような違いも含め、「平均的な開業年齢」は一概には言えませんが、多くの歯科医師に共通するのは40歳前後で独立への動きが本格化するという点でしょう。

都市部と地方で歯科医院開業に違いはある?

都市部に集中する歯科医院

歯科医院の開業には地域による偏りが大きく見られます。近年、新規開業は大都市圏に集中する傾向が顕著です。厚生労働省の医療施設動態調査(2017~2019年平均)によれば、新規開設される歯科診療所のうち、関東地方が約42.4%、近畿地方が18.2%、中部地方が13.5%を占めており、この3地域で全国の約7割に達します。つまり、多くの歯科医師が首都圏や都市部で開業しているのです。また、その都市部の中でも開業はさらに一極集中する傾向があります。例えば東京都では年間約294件の歯科医院開設のうち8割近く(234件)が23区内に集中し、大阪府でも開業の約47%が大阪市内に、愛知県でも約49%が名古屋市内に集中していました。このように人口の多いエリアほど歯科医院の密度も高く、新規開業も都市中心部に偏る実態があります。

都市部に歯科医院が多い背景としては、単に患者数が多いというだけでなく、歯科大の所在地や勤務医時代の繋がりなども影響します。多くの歯科医師が大学卒業後、そのまま大学近郊や研鑽を積んだ都市で開業する傾向があり、結果的に大都市圏で歯科医院が過密になるのです。また、都市部はインフラや生活環境が整っており、歯科医自身や家族にとって住みやすいことも、開業場所として選ばれやすい理由でしょう。

地方の歯科医不足と無歯科医地区

一方で、地方や過疎地域では歯科医院の不足が深刻です。日本全国の歯科医師数は約10万人(人口10万対84.2人)と一見充足しているように見えますが、その大半が都市部に偏在しており、「無歯科医地区」と呼ばれる歯科医師がいない地域も存在します。厚生労働省の調査(令和4年)によると、ここ数年減少してきた無歯科医地区の数が2019年調査を底に再び増加に転じており、住み慣れた地域で歯科治療を受けられない住民が今後増える懸念が指摘されています。つまり、地方では高齢の歯科医師が引退した後に後継者が見つからず、そのまま地域から歯科医院が消えてしまうケースが増えているのです。

地方で歯科医院が不足する要因としては、患者母数の少なさや生活環境の不便さなどから、「リスクに見合うメリットが少ない」と判断されがちなことが挙げられます。若い歯科医師にとって、人口減少が進む過疎地で開業するのは勇気が要る決断であり、現実問題として都市部に留まる方が経営の見通しは立てやすいでしょう。その結果、地方では歯科医師の高齢化が一段と進んでいます。歯科医師全体の平均年齢上昇は全国的な傾向ですが、特に地方開業医の高齢化は顕著で、地方の開業歯科医の半数以上が後継者確保に頭を悩ませているとの報告もあります。実際、地方では若い歯科医師が都市部に流出しがちなため、新たに開業する人が少なく、既存の歯科医院も院長の引退とともに閉院してしまう例が多いのです。このように、都市と地方で歯科医療の供給格差が生じている現状は、開業年齢のみならず開業そのものの地域差として押さえておく必要があります。

歯科医院開業の環境は近年どう変化した?

新規開業数の推移と現在の傾向

歯科医院を取り巻く経営環境は、この20年ほどで大きく様変わりしました。新規開業の件数を見ると、2000年代前半までは毎年おおよそ2,500件前後の歯科医院が新しく開設されていましたが、2005年を境に減少傾向へ転じています。たとえば、2004年には2,420件だった年間開業数が、2010年には1,760件、2019年には1,451件と大幅に減っています。一方で廃業・閉院の件数は増加し、直近では新規開業数と閉院数がほぼ同じ水準になりました。2018年10月~2019年9月の統計では、新設1,451件に対し廃止1,478件と、開業と閉院がほぼ一対一の状態です。このため、日本全体の歯科診療所数は伸び悩み、地域によっては歯科医院数が純減に転じている所もあります。さらに直近では、厚労省の令和4年統計で史上初めて全国の歯科医師数が減少に転じたことが報告されており、歯科医療提供体制が転換期を迎えていることを示唆しています。

こうした全体傾向と並行して、歯科医師の年齢構成・キャリアパターンにも変化が起きています。特に顕著なのが、「開業する歯科医師の高齢化」です。1990年代には、30代で開業するのはごく当たり前の姿でした。実際、1996年時点では歯科医師の52%が30代のうちに開業しており、40代では79%、50代では87%という高い開業率でした。ところが約25年後の2022年を見ると、30代で開業している歯科医師は15%に過ぎず、40代で47%、50代でも69%に低下しています。開業のピーク年齢も、1990年代は50代だったものが、現在では60代になっている。つまり、若いうちに独立開業する人が大幅に減り、初めて開業する年齢が全体的に上昇しているのです。

開業年齢の高齢化が進む背景

なぜ歯科医師の開業時期がこれほど遅くなっているのでしょうか。その背景には複数の要因が指摘されています。まず一つは、「開業マインド(独立志向)の低下」です。1990年代には「勤務医より開業医のほうが収入が上がる」というイメージが強く、若手でも積極的に開業に踏み切る風潮がありました。しかしその後、歯科医院過剰時代の厳しさがマスコミ等で広く知られるようになり、先に開業した先輩が苦労している姿を身近に見るにつれ、若い歯科医師ほど開業に対して慎重・消極的になったと考えられます。いわば「開業してもメリットが少ないのでは」という意識の広まりが、若手の開業離れにつながった面があります。

第二に、開業資金の問題があります。開業には多額の資金が必要で、自己資金として少なくとも1,500万円程度(開業資金全体の1/3相当)は用意するのが望ましいとされています。しかし、2000年代以降、勤務医の平均年収が下がった影響で若手歯科医師が開業資金を貯めることが難しくなっています。実際、勤務歯科医の平均年収は2005年頃には900万円近くありましたが、その後リーマンショック前後に600万円台まで低下し、直近でも700~800万円程度で伸び悩んでいます。このため、開業資金を十分に貯めるには時間がかかり、結果として開業が先送りになるケースが増えています。

第三に、技術習得と自信の問題があります。歯科治療は日進月歩で新しい技術や知識が登場する分野であり、患者からの信頼を得るにはある程度の臨床経験が不可欠です。若い歯科医師ほど「まだ自分は開業して一人でやっていくには技術的に未熟ではないか」と考え、開業をためらう傾向も指摘されています。実際に、ある程度キャリアを積んだ40歳前後でようやく「自分の腕ならやっていける」と自信がつく、という声もあります。加えて、開業場所の競争激化も無視できません。特に都心部では開業できそうな好立地が既に他院で埋まっており、「開業したくても適切な場所が見つからない」という状況も生まれています。このように、経営環境・経済状況・自身の技量やマーケットの問題が複合的に絡み合い、開業の高齢化という現象が起きていると考えられます。

もっとも、歯科医師という職業において開業志向そのものが消えたわけではありません。勤務医のまま定年までポストが保障されるような仕組みは乏しく、最終的には自分のクリニックを持つことがキャリアの“出口”になるケースが依然多いです。事実、「歯科医師の半数強が開業医」という統計は今も大きくは変わっていません。今後も、たとえ初めて開業する年齢は上がったとしても、一定数の歯科医師がいずれは開業に踏み切る傾向自体は続くとみられます。

歯科医師はいつ頃から開業を意識し始める?

30代で高まる開業志向

上述のように実際に開業に踏み切る年齢は遅くなっていますが、多くの歯科医師は30代に入った頃から「いずれは自分の医院を…」と考え始めるようです。インサイト社の開業セミナー受講者のデータによれば、参加者の約7割は30~40代で、その中でも30代が全体の4割程度と最も多い層でした。このことからも、30代になると独立開業への関心が一気に高まる傾向がうかがえます。

背景には、30代という年齢が歯科医師として一人前になったと自覚できる時期であることが挙げられます。大学卒業後、研修や勤務医として約5~10年の経験を積むと、臨床技術や診療の幅も広がり、自信がついてくる頃合いです。ちょうどそのタイミングで「自分の医院を持ったらどうだろうか」と将来設計を考え始めるのは自然な流れと言えます。

開業を意識する主なきっかけ

30代で開業志向が芽生えるきっかけとしては、いくつかのライフイベントや環境の変化が考えられます。例えば、結婚や出産など家庭環境の変化は大きな転機です。家族ができることで将来の経済的安定を意識し、「勤務医のままで良いのか、それとも開業して収入アップや働き方の裁量を得た方が良いのか」と真剣に考え始める歯科医師が多いようです。また、30代はちょうど住宅購入を検討する時期とも重なり、「開業して医院兼自宅を構える」「開業場所に合わせて自宅も決める」といった具体的プランが現実味を帯びてきます。

さらに、周囲の動向も刺激になります。同期や数年上の先輩が40歳手前でぽつぽつと開業し始めると、「自分もそろそろ」と触発されるケースは少なくありません。同世代の開業話を聞くうちに、自分の将来像を重ね合わせて意識が高まるわけです。他にも、勤務している医院で院長から経営のノウハウを学ぶ機会を得たり、あるいは現在の勤務先では実現できない診療スタイルへの理想が芽生えたりと、きっかけは様々でしょう。

とはいえ、「いつ開業するのが正解か」は人によって異なります。専門性をもっと高めてから独立したい人もいれば、若いうちから経営者としてのキャリアを積みたい人もいます。インサイト社も指摘するように、開業の適齢はライフプラン・キャリアプラン・マネープランのバランスによって大きく左右されます。30代で必ず開業しなければいけないわけではありませんが、多くの歯科医師にとって30代は開業を具体的に計画し始める時期であり、その準備を進める上でも貴重な年代と言えるでしょう。

歯科医院を開業するには何を準備する?

開業資金と資金計画の準備

歯科医院の開業には多額の資金が必要です。一般的に、「最低でも5,000万円程度」の開業資金がかかると言われます。実際、厚生労働省の調査でも歯科医院の開業には5千万円以上の初期投資が平均的とされており、都市部で最新設備を揃える場合は7,000万~7,500万円に達するケースもあります。この資金には、診療ユニット(歯科用チェア)やデジタルレントゲン、滅菌設備など高価な医療機器の購入費、物件取得費(テナントの保証金・家賃や建物購入費)、内装工事費、開業広告費などが含まれます。自由診療中心で高度な機器を導入したり内装に凝ったりすれば、さらに費用は膨らみます。

このため、開業資金の調達計画を入念に立てることが重要です。多くの開業希望者は日本政策金融公庫や民間銀行から融資を受けますが、その際に自己資金がどれだけあるかが審査のポイントになります。目安として、開業資金の1/3程度は自己資金で賄うことが望ましいとされ、たとえば総額6000万円の計画なら2000万円程度は自分で用意するのが理想です。しかし、実際には勤務医時代に十分な貯蓄を蓄えるのは容易ではありません。ヒアリングでは自己資金が500万円程度しかないケースも多いとされ、自己資金不足の場合は融資実行のハードルが上がるため注意が必要です。そのため、開業を決意したら早めに資金計画を練り、無駄遣いを抑えて貯蓄に努めたり、親族からの支援を仰ぐなどしてできるだけ自己資金を増やす工夫が大切です。

融資を受けるには、具体的な事業計画書の作成も必須です。収支計画や患者数予測、マーケティング戦略などをまとめた事業計画書を銀行に提出し、開業後に返済可能な見通しを示す必要があります。特に近年は歯科医院の競争が激しく「コンビニより歯医者が多い」とも言われる状況です。その中で事業を軌道に乗せるには、地域の需要分析に基づく明確なコンセプト設定(診療方針の特色づけ)と、それを実現するための収支シミュレーションが不可欠です。事業計画の段階から、歯科医療経営に詳しい税理士やコンサルタントの助言を得るのも有効でしょう。実際の準備スケジュールとしては、開業の1年前くらいから資金計画と並行して事業計画の策定に着手し、開業半年前には融資の内諾を得ておくのが理想的です。

物件選びから設備導入、開業手続き

開業場所(物件)の選定も早めに取りかかるべき準備項目です。立地は歯科医院経営の成否を大きく左右するため、時間をかけて慎重に探しましょう。一般的に駅前や人通りの多い道路沿いなどの一等地は集患(患者獲得)の面で有利ですが、その分賃料も高額になります。資金とのバランスを見ながら、ターゲットとする患者層が通いやすい場所かどうかを考慮します。物件選びでは、不動産会社だけでなく診療圏調査の活用も有効です。診療圏調査とは、開業候補地の周辺人口や年齢構成、競合歯科医院の数や特徴などをデータで分析するものです。これにより「○○駅から徒歩5分圏内で小児歯科ニーズが高い」「半径○km以内に矯正歯科専門がない」といった情報が得られ、地域の需要に合った開業戦略を立てることができます。

物件が決まったら契約を交わし、内装工事や医療機器の導入に移ります。歯科医院の内装は、患者に安心感を与える清潔さや動線の良さに配慮しつつ、ユニットの配置やレントゲン室の遮蔽など法的基準も満たす必要があります。工事会社やディーラーとも綿密に打ち合わせを行い、開業直前の数ヶ月で内装・設備を仕上げていきます。また、同じタイミングでスタッフの募集・採用も進めます。歯科衛生士や歯科助手の求人は地域によっては集まりにくいこともあるため、募集開始は開業の半年前~3ヶ月前には行いましょう。採用後は開業前研修を実施し、チームワークを醸成してスムーズなスタートを切れるよう準備します。

そして忘れてはならないのが各種届出などの行政手続きです。歯科医院を開設するには、管轄の保健所に対し「歯科診療所開設届」を提出し、施設の検査を受ける必要があります。これは医療法に基づく手続きで、通常は開業の10日前までに届け出を行い、保健所の立ち入り検査で設備や衛生管理体制が基準を満たしているか確認を受けます。併せて、健康保険診療を行う場合は保険医療機関の指定申請も行います。この申請が認可されないと保険診療(社保・国保)ができないため、開業と同時に保険診療を始めるには事前の申請・手続きを漏れなく済ませておく必要があります。その他、税務署への開業届提出(個人事業の開業届)や各種医療廃棄物処理契約の締結など細かな準備もありますが、これらはチェックリストを活用しながら一つ一つ確実に進めましょう。開業当日は何かと慌ただしいため、必要な物品・書類がすべて揃っているか、スタッフ全員の役割分担や受付対応の流れは問題ないか等、リハーサルも行って万全の体制で臨むことが肝要です。

歯科医院開業で押さえておきたい注意点は?

競合リサーチと差別化の重要性

近年の歯科医院は「コンビニより多い」と言われるほど競争が激しく、開業する際には綿密な競合リサーチと差別化戦略が欠かせません。まず、開業予定エリアにどれくらいの歯科医院があり、各院がどのような診療を提供しているかを把握しましょう。周囲に同業がひしめく中で後発開業する場合、そのまま類似の一般歯科を開いても患者獲得に苦戦する恐れがあります。例えば、小児歯科に特化してファミリー層を狙う、最新のデジタル矯正システムを導入して若年層にアピールする、訪問診療に力を入れて高齢者需要に応える、など何らかの強みや特色を打ち出すことが重要です。競合調査を怠りコンセプトが曖昧なまま開業してしまうと、周囲のクリニックに埋もれてしまい「せっかく開業したのに患者が集まらない」という事態になりかねません。

また、立地面で競争が激しいエリアを選ぶ場合は、集患(患者募集)に時間とコストがかかる点も覚悟する必要があります。一等地であっても歯科医院が林立する場所では、開業後しばらくは経営が不安定になるリスクがあります。チラシや折込広告、ウェブサイト・SNSによる情報発信、内覧会(プレオープンイベント)開催など、多角的な宣伝で地域住民に存在を知ってもらう努力が求められます。広告費用も念頭に入れ、開業直後数ヶ月~1年は赤字覚悟で患者獲得に投資するくらいの計画を立てておくと良いでしょう。逆に、競合が少ない地域であればこうした集患コストは抑えられるものの、そもそもの患者母数が少ないために安定経営まで時間を要する場合があります。いずれにせよ、「どの地域で・誰に・何を提供する歯科医院にするのか」を明確に描き、その実現に必要な準備とリスク対策を講じることが成功への第一歩です。

経営面のリスク管理とマインドセット

開業後に待ち受ける最大の試練は、歯科医院の経営を安定軌道に乗せることです。技術的に優れた歯科医師であっても、経営の視点が不足していては医院を維持発展させるのは難しいでしょう。全国保険医団体連合会の調査(2025年発表)によれば、歯科医師会員の約3割が現在の経営状況について「先行きが見通せない」あるいは「場合によっては閉院も検討している」と回答しています。特に50代以上の院長ではその割合が高く、年齢が上がるほど経営不振や体力の限界から閉院を考えるケースが増えています。閉院を検討する理由として最も多く挙がったのは「物価高騰などによる経費増」で、次いで「年齢的・体力的に厳しい」「後継者がいない」という回答が続きました。この結果は、経営コストの管理や院長自身の健康管理・働き方、そして将来的な事業承継といった観点まで含めて経営を考えていく必要性を示唆しています。

若くして開業する段階では「後継者問題」は遠い未来のように思えるかもしれません。しかし、自身が高齢になったときクリニックをどうするかまで展望を持っておくことは、地域の患者さんに長く歯科医療を提供するためにも重要です。都市部であれば売却や後継募集の選択肢もありますが、地方では後継ぎが見つからず閉院せざるを得ない例も多い現状があります。こうした長期的課題も頭の片隅に置きつつ、開業直後はまず収支バランスの確立と患者の信頼獲得に全力を注ぎましょう。収入面では保険診療中心の場合、ある程度患者数を増やさないと黒字化が難しいため固定費の圧縮や効率的なオペレーションが必要です。一方で自由診療を導入する場合は高収入が見込める反面、設備投資や広告宣伝にコストがかかります。いずれにせよ、計画通りにいかない事態も想定したリスクシナリオ(患者増減の変動や急な設備故障への備え等)を用意しておくことが望ましいでしょう。

また、開業医には経営者マインドが不可欠です。船井総研のレポートでも「歯科医院の開業は『腕が良い』だけでは通用しない。経営者としての知識や計画性が重要」と指摘されています。具体的には、財務管理(収入と支出の把握)、スタッフマネジメント(人件費コントロールや人材育成)、法令順守(医療法や労務関連法規への対応)、そしてマーケティング戦略(地域ニーズに合わせたサービス提供と広報)など、幅広い役割を自分が担う覚悟が必要です。開業直後は治療だけでなく雑務も多く発生するため、「医師1人+スタッフ数名の中小企業の社長」になるくらいの意識で医院運営に臨むことが求められます。もちろん、全てを院長一人で抱えるのではなく、専門家の力を借りることも有用です。税務や経理は税理士に依頼し、労務管理は社労士に相談する、あるいは歯科医師会やスタディグループの先輩院長からアドバイスをもらうなど、支援ネットワークを活用して経営リテラシーを補完することが安定経営への近道となるでしょう。

最後に、常にアップデートし続ける姿勢も重要な注意点です。歯科医療の技術革新や患者ニーズの変化に対応しないと、開業後は順調でも十数年経てば「昔ながらの歯医者さん」という印象で患者離れを招きかねません。例えば、デジタル技術への対応や新しい治療法の習得、院内感染対策の強化やバリアフリー化といった取り組みを怠ると、時代遅れと見なされ競争力を失います。開業時には最新でも、5年10年先を見据えて設備投資の計画や研修受講などを組み込み、第二創業期とも言えるタイミングで適切なリニューアル・サービス拡充を図ることが大切です。開業はゴールではなくスタートラインである──その意識を持って長期的な医院作りに取り組むことが、成功する開業医の共通点と言えるでしょう。

歯科医院開業の将来展望はどうなっている?

歯科医師数と地域ニーズの今後

日本の歯科医療提供体制は、少子高齢化や人口減少の波の中で今後も変化が予想されます。まず需要面では、総人口の減少により国民全体の患者数は緩やかに減少する可能性があります。しかし一方で超高齢社会が進行するため、高齢者の歯科需要(義歯や口腔ケア等)は底堅く維持されると見込まれています。むしろ要介護高齢者の増加に伴い、訪問歯科診療や全身疾患を考慮した歯科治療など、新たなニーズも高まるでしょう。従って、歯科医師に求められる役割は今後も重要であり、歯科医院が不要になることは考えにくいと言えます。

供給面を見ると、前述の通り歯科医師数そのものは2022年に減少へ転じました。この傾向が一時的なものか長期的なものかは注視が必要ですが、仮に今後も微減が続けば、都市部で問題となっていた「歯科過剰」の状況は徐々に緩和されるかもしれません。ただし、それ以上に懸念されるのが地域間格差の拡大です。既に無歯科医地区の再増加が報告されているように、若い歯科医師が都市に集中し地方で高齢歯科医師が引退していく構図は、このままでは各地で「歯科空白地帯」を生みかねません。こうした地域偏在を是正するため、国や自治体が地方勤務や僻地開業に対する支援策を拡充する可能性があります。現在でも自治体によっては医科同様に、離島・過疎地で開業する歯科医師に奨励金を出す制度や、診療所設備の整備補助を行うケースもあります。将来的には、一定期間地方で勤務した歯科医師に開業資金の援助をするなど、新たな施策が検討される余地もあるでしょう。

また、多くの歯科医院が院長の高齢化に差し掛かっており、今後10~15年で世代交代のピークを迎えると予測されます。現在50~60代の歯科医師が経営するクリニックが増えており、この世代が引退する際に後継者が見つからなければ廃業となります。しかし見方を変えれば、若手にとっては承継開業のチャンスが増えるとも言えます。近年は親族以外でも、第三者間で歯科医院を承継するマッチング事例が徐々に出てきました。新規開業よりも低コストで患者基盤を引き継げる承継開業は、歯科医院過剰エリアでは有力な選択肢となり得ます。今後、こうした承継ニーズに対応する仕組み(情報プラットフォームや専門仲介業者の充実など)が進めば、若い歯科医師がうまく既存医院を引き継いで軟着陸的に開業するケースが増えていくかもしれません。

若手歯科医師に求められる戦略

以上を踏まえ、これから開業を目指す若手歯科医師にとって重要なのは、時代の流れに即した戦略を立てることです。まず、自身が開業しようとする地域の将来展望を読まなくてはなりません。人口動態や競合状況を長期的に予測し、「10年後このエリアで自院は存続・成長しているか」をシミュレーションしてみることが大切です。例えば都心部なら、今後も競争激化が続く前提で専門性の深化や差別化サービスの提供が鍵になるでしょう。地方なら、一人ひとりの患者と密に関わりかかりつけ歯科医として信頼を得ることで、地域に根ざした経営を貫く覚悟が求められます。

また、柔軟なキャリアプランも重要です。開業の形態は一つではなく、例えば勤務医を続けながら週末だけ自費専門クリニックを開業する、副業的な開業スタイルも将来的には増えるかもしれません。実際、医科では地域医療を担う非常勤開業など多様な働き方が模索されていますが、歯科も人材不足地域へのスポット開業や、オンライン歯科相談サービスとの兼業など、新しいモデルが出てくる可能性があります。若手歯科医師は発想を柔軟に持ち、自分に合った開業モデルを選択できるよう情報収集を怠らないことが大切です。

最後に、何よりも重要なのは患者本位の医療を提供し続ける姿勢です。開業年齢や競争環境がどうであれ、患者から「この先生に診てもらいたい」と思われる歯科医師であれば医院は必ず成長します。地域住民のニーズを捉え、信頼関係を築き、技術とサービスの双方で満足度の高い歯科医療を提供することが、開業医として長く繁栄する秘訣でしょう。近年の状況変化に対応しつつも、歯科医師としての基本である良質な医療と患者中心の姿勢を貫くこと──それこそが、これから開業を志す方への最大のアドバイスと言えます。

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