歯科医師の退職金の相場は?勤続年数ごとの相場金額や計算の仕方、金額を左右する要因について分かりやすく解説!
歯科医師の退職金はもらえる?相場はいくらくらい?
歯科医師として働いた場合、退職時に退職金は支給されるのでしょうか。その答えは勤務先によって異なるのが実情です。公的には退職金の支払いは法律で義務付けられておらず、各歯科医院の方針や就業規則に委ねられています。そのため、退職金がもらえる職場ともらえない職場があるのです。しかし全体的に見れば、医療業界では多くの職場が退職金制度を導入しています。厚生労働省の令和5年(2023年)調査によれば、医療・福祉業界では約75.5%の事業所に退職金制度があることが分かっています。つまり歯科医院も含め、多くの勤務先で退職金制度が整備されている傾向にあります。
では肝心の退職金の相場金額はどの程度なのでしょうか。実は歯科医師の退職金に一律の相場はありません。大企業のように定年まで勤め上げれば数千万円というケースは医療機関では稀で、歯科医院のような小規模事業所では支給額は比較的控えめです。医療業界全体のデータを見ると、定年退職時の平均退職金額は大学卒で約340万円、高校卒で約330万円という統計もあります。この金額は他業種より低めで、歯科医院のような中小規模の職場では退職金がそもそも少ないか、勤続年数が短いと支給されない場合もあるためです。つまり「もらえる場合でも数百万円程度」が一つの目安と言えます。ただし実際には勤務先の規模や経営状況、本人の役職などによって大きく変動します。歯科医師の場合、勤務する場が大学病院や大規模病院であれば一般の病院勤務医と同様に数百万円から数千万円の退職金が得られるケースもあります。一方、個人経営の歯科医院では退職金制度自体がなく、支給がゼロということも珍しくありません。退職金の有無と金額は職場ごとに千差万別である点をまず押さえておきましょう。
歯科医院で退職金がもらえるケースは多い?
一般的な企業と同様に、歯科医院でも退職金制度を導入しているところは少なくありません。日本歯科衛生士会の調査(令和2年)によれば、歯科診療所に常勤勤務するスタッフの約61.8%が「勤務先に退職金制度がある」と回答しています。この数値は衛生士を対象としたものですが、歯科医師が勤務医として働く場合も半数以上の職場で退職金制度が存在していると考えられます。一方で、「退職金制度がない」歯科医院も確かに存在し、同調査では全体の約4割が制度なし、残りは「わからない」と回答しています。つまり歯科医院によって退職金の扱いはまちまちなのです。
退職金制度の有無は、その歯科医院の経営方針や規模によります。規模が大きく経営に余裕のある歯科医院ほど、退職金など福利厚生を整備して人材定着を図る傾向にあります。逆に、規模が小さいクリニックでは「そこまで手が回らない」「長年勤めるスタッフが想定されていない」などの理由で退職金を用意していない場合もあるのです。また、公的病院や大学附属病院の歯科口腔外科などに勤務する歯科医師であれば、公務員や大学職員として制度化された退職手当を受け取れるでしょう。一方、町の歯科医院では院長の裁量次第となります。26%程度の歯科医院で退職金制度ありとのデータもあり、職場による差が大きい点に注意が必要です。
医療業界における退職金の平均額
歯科医師個別の相場は一概に言えませんが、医療業界全体の統計からおおよその水準を把握することはできます。厚生労働省の「就労条件総合調査」や東京都の産業労働局の資料によれば、医療・福祉業における定年退職者の退職金平均額は300万~350万円程度とされています。この数字は勤続20年以上、定年まで勤め上げた場合のモデルケースであり、例えば製造業や金融業など他業種の平均が1,000万円を超えるのと比べてかなり低い水準です。医療業界は病院・クリニック規模の小さい事業所が多く、終身雇用による手厚い退職金が一般的ではないことが背景にあります。
もちろん勤務先によってはこの平均を大きく上回る退職金が出る場合もあります。たとえば大病院の医師や長年勤務した看護師などでは1,000万円以上の退職金を受け取る例もあります。一方で、小規模医院では数十万円から数百万円程度がせいぜいだったり、勤続年数が短ければ0円ということもあります。勤続3年未満では支給しないといった規定を設ける医院も多く、短期間での離職では退職金は期待できません。以上のように、歯科医師の退職金はもらえる場合でも数十万~数百万円、長く勤めてようやく数百万円台が現実的な相場と言えるでしょう。これはあくまで平均的な目安であり、個別のケースでは大きく異なり得ます。次章では勤続年数ごとの具体的な金額目安について見ていきます。
勤続年数が長いほど退職金はどう変わる?
退職金は基本的に勤続年数が長いほど増えるよう設計されています。長年勤め上げた功労への報酬という性格が強いため、在職年数がボーナスポイントのように作用するのです。ここでは勤続年数ごとの退職金額の目安を具体的な年数区分で解説します。実際の金額は勤務先の規定や退職理由によって増減しますが、統計データから見るおおよその傾向を押さえておきましょう。
勤続3~5年で期待できる退職金額
まず、勤続が数年間程度の場合です。一般的に退職金は一定の勤続年数を超えないと支給されない場合が多く、3年未満では出ないという就業規則も見られます。勤続3年ほどで退職したケースでは、仮に支給されても数十万円程度が目安です。東京都産業労働局の調査(令和4年版モデル退職金)によれば、勤続3年(25歳前後)で自己都合退職した場合の退職金平均は約24万円、会社都合(リストラ等)では約34万円というデータがあります。勤続5年(20代後半)になると自己都合で約47万円、会社都合で約64万円が平均値です。このように5年程度までの在職では100万円に届かない支給額が一般的で、特に自己都合退職(自ら辞める場合)は支給額が一層低く抑えられる傾向があります。
歯科医師の場合も、数年勤務で転職するケースは珍しくありません。そのような短期勤続で退職金をもらうには、勤務先が退職金共済などに加入していて1年以上勤務すれば一時金が出るといった特別な場合を除き、高額な期待はできません。多くの歯科医院では最低3年以上勤務を支給条件に挙げています。したがって3~5年程度で退職を考える際には「退職金はほとんどないかもしれない」という前提で、貯蓄など別の形で備えておくことが現実的です。
勤続10年・20年ではどれくらい?
10年を超えて長く勤めると、退職金額はようやく数百万円規模に近づいてきます。前出のモデル退職金データでは、勤続10年(30代前半)で自己都合約112万円、会社都合約150万円が平均でした。勤続20年(40代前半)になると自己都合約343万円、会社都合では約415万円に増加します。この数字からも分かる通り、10年を超えると退職金が一応100万円以上にはなるのが一般的です。20年勤続すれば数百万円規模になり、会社都合退職や定年退職であればさらに上乗せされるケースが多いです。
歯科医師が同じ職場に10年、20年と勤め続けるケースでは、たとえば一つの歯科医院に長年勤務医として残る場合や、病院勤務で昇進しながらキャリアを積む場合などが考えられます。そのような場合、退職金規程で勤続年数ごとの額が定められていることが多く、勤務先によっては10年で100万円、20年で300万円といったモデルケースも見られます。実際には月給の何ヶ月分という形で計算されることも多く、例えば「20年勤続で基本給の15ヶ月分」などの規定があれば、基本給が30万円なら退職金は450万円程度になります。公的病院の医師であればこのくらいの水準は十分考えられますし、個人歯科医院でも院長が厚遇する場合には数百万円規模になることもあります。いずれにせよ、10年以上の長期勤務によってようやく退職金らしい額になるのが一般的です。
30年勤続した場合の退職金の目安
定年まで勤め上げるようなケース、すなわち30年前後の勤続では退職金もかなり蓄積されます。先ほどのモデルケースでは、勤続30年で自己都合退職でも約654万円、会社都合では約754万円というデータが示されています。自己都合退職(自ら辞める場合)でも600万円台半ばは支給されており、会社都合(定年含む)では700万円を超える水準です。これはあくまで中小企業全体の平均モデルですが、歯科医師が30年も同じ職場で働くとすれば、その多くは定年退職に相当します。その際は勤続年数加算や定年加算がついて金額が増える傾向があります。
実際の歯科業界で30年勤続というと、歯科大学の教員や病院の歯科部門勤務など、公的な立場で勤め続けた場合が多いでしょう。そうした場合は退職金も1000万円前後になる事例があります。一方、個人経営の歯科医院で勤続30年となると稀ですが、もしそのようなケースでは院長の裁量で特別功労金的に上乗せされる場合もあります。実務上は、勤続年数が長期になるほど一時金だけでなく企業年金などの形で受け取る選択肢も出てきます。歯科医師の場合、仮に長年勤務先からまとまった退職金を得られなくても、厚生年金や歯科医師国民年金基金など年金制度からの給付も老後の収入として加わる点は考慮が必要です。30年勤続の退職金は勤務先によりますが、最低でも数百万円、恵まれれば1000万円程度と幅があります。長く勤めるメリットとして退職金が増えることは確かなので、定年まで勤めるつもりなら退職金規程も確認し、計画的に勤続年数を重ねることが重要です。
歯科医師の退職金はどう計算される?
退職金の計算方法は職場ごとに定められており、いくつかの代表的な方式があります。歯科医院でも、就業規則や退職金規程に算出方法が明記されていることがほとんどです。ここでは歯科医院で採用されがちな退職金の算定方式を紹介します。大きく分けると「勤続年数による定額制」「基本給連動型」「別テーブル制」「ポイント制」などがあります。実際にはこれらを組み合わせたり簡略化したりした独自ルールになっている場合もあります。自分の勤務先でどの方式が採られているかを知っておくと、将来受け取れる金額の見通しが立てやすくなるでしょう。
勤続年数基準の定額制とは
定額制とは、勤続年数と退職理由に応じて一定の退職金額を定めておく方式です。例えば「勤続○年なら○万円支給」というように年数に比例して金額が上がっていくテーブルをあらかじめ用意します。定額制の特徴は個人の給与額や業績に関係なく、同じ年数働いた社員には同額の退職金が支払われる点です。一例として、ある歯科医院が以下のような定額テーブルを持っているとします。
- 勤続10年:100万円
- 勤続20年:300万円
- 勤続30年:600万円
この場合、10年勤めれば一律100万円、20年なら300万円といった具合で、各人の役職や給与額に関係なく勤続年数だけで金額が決まります。退職理由については、定額制の場合でも会社都合退職か自己都合退職かで支給額を調整する規定を設けることが一般的です(自己都合の場合は一定割合減額する等)。定額制はシンプルで分かりやすい反面、成果を反映しないため「長く居た人が多くもらい、貢献度の高い人でも短いと少ない」という不公平感が出ることもあります。歯科医院のような小規模組織では取り入れやすい方式ですが、近年はもう少し柔軟な計算法を採用する例も増えています。
基本給や退職理由を考慮する計算方式
基本給連動型の計算方式は、多くの企業や医療機関で採用されているオーソドックスな方法です。これは退職時の基本給に勤続年数に応じた係数(支給率)を掛け合わせ、さらに退職理由による係数を乗じて算出するものです。式に表すと: