【槻木恵一寄稿】唾液検査に「ちょっと待った!」

槻木 恵一
2023年11月25日
近年、PCR検査をはじめ様々な検査の検体として唾液が用いられるようになった。中でも国民皆歯科健診を控え、歯周病のスクリーニングとして唾液検査が検討されていることは歯科界においても注目が高いだろう。

唾液検査は簡便で患者の負担も少なく非常に有益であるが、そのイメージだけが先行し乱雑に応用されることの危険性について専門家たちが警鐘を鳴らしている。

今回は特定非営利活動法人日本唾液ケア研究会理事長であり、神奈川歯科大学副学長の槻木恵一先生に特別に寄稿いただいた。

唾液検査学は未成熟である

唾液を用いた検体検査は、新型コロナウイルスに対するPCR検査の普及で、短期間に大きく国民の認知を得ることができた。これは急激な変化であり、そのプラスの面とマイナスの面を十分考慮しないといけないと考えている。

特にプラスの側面としては、唾液検査の認知度の飛躍的な向上であるが、一方でせっかく認知された唾液検査が、マイナスの側面により、後退することがあってはならないと危惧をしている。マイナスの側面とは何だろうか。

最大の問題は、唾液検査学という学問が未成熟で確立されていないことである。検査というカテゴリーに属する事項であれば、ヒトを対象としていることから、そこには厳粛な対応が必要であり、裏打ちされた学問に基づかなければ、単なる民間療法の域をでないことになる。

そして、国民から唾液検査そのものが怪しいものに映るかもしれない。実際、インターネットで購入できる唾液検査の商品にはクオリティの低いものが登場している。

唾液という存在を扱い体系的な教育を行っているのは、歯学部や歯科衛生士の養成課程であり、医師、薬剤師などでは唾液に関する教育はほとんど行われていない。看護師と管理栄養士の国家試験では口腔ケアに関連し唾液が出題されることがあるようなので、何らかの科目で触れているのであろう。

これらの教育状況を考慮すると唾液の主たる専門家は、歯科医師と歯科衛生士であることは疑いない。すなわち、唾液検査学をリードするべき使命が歯科医師や歯科衛生士にはあると確信している。

本解説では、唾液検査の歴史、世界的動向、唾液検査の問題点などを踏まえて、最後に唾液検査に関する提言を行いたい。

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歯科医療における唾液検査

現在の唾液検査の現状を鑑みると、唾液検査といっても大きく2つに分類できる。歯科系唾液検査とそれ以外である。それ以外に分類される唾液検査が扱う領域は非常に多岐である。ここでは、歯科系の唾液検査以外を臨床唾液検査と称したい。

歯科医療における唾液検査の利用目的は、う蝕のリスク診断、歯周病のリスク診断や病勢診断などになる。しかし、これらは本格的な保険導入がされていないことから、主に自費での扱いになり、意外に歯科医療においては唾液検査への関心は薄いのではないだろうか。

そのことが、口腔という乾燥を大敵とする臓器において、極めて重要な生理的働きを行う唾液の機能性に注目をしない歯科医療が続いているような気がする。例えば、唾液量を測定するだけでも、口腔の疾患に対するリスク要因を理解でき、う蝕や歯周病の診療にも大いに役立つ情報の筈である。

う蝕や歯周病の病変の特徴は、予防が効果的な病変であることである。特にう蝕に対して生体は、免疫機構や再生現象が働かず、すなわち自然治癒がないので、そもそも病気にならないことが最も重要である。その点では、医科で扱う疾患概念とは大きく異なる病変と言える。

医科は、やはり治療主体の医療であり、病気を治すことができなければならないが、歯科は、病気にさせない取り組みこそ、病変の特徴から考えて重要な医療としての役割ではないだろうか。そのための検査として唾液の有用性には疑いがない。

昨今取りざたされている国民皆歯科健診においては、そのスクリーニング検査として唾液検査が導入される可能性が指摘されている。国民皆歯科健診は、その趣旨に沿い実行されれば、8020運動と同様に成果を上げ、そして国民の健康レベルを底上げできると考えられる。

その理由は簡単で、歯科医療が扱う病変はもともと予防が効果的に実行できるからである。そして、唾液検査からはじまる国民皆歯科健診となった場合、唾液検査の歴史上、歯科医療における初めての唾液分野でのブレイクスルーとなることが予想できる。だからこそ成功させたい。

医科では3度のブームが到来

歯科系の唾液検査について医中誌で調査すると最も古い文献は、1982年の「歯科臨床における口腔環境評価へのアプローチ唾液検査用試験紙(pH,緩衝能,潜血およびグルコースクリアランス)の実用化」という原著論文である。

口腔環境評価というタームは、非常に重要で、口腔環境とは唾液そのものである。口腔という臓器は進化の過程で考えると、海中から陸上に上がるにあたり、大きな変化が起こっている。それは、海中では口が乾燥することは無く、水流が常に生じているので汚れることも無い。そのため魚にはう蝕が無い。

しかし、陸上に生活の場を変えたことで、口が乾燥する状況が生じ、唾液による100ミクロンの薄い流体で覆われるシステムが備わった。また、口から食べることにより、嚥下や咀嚼に唾液が必要となり大唾液腺が発達してくるし、食べるものの違いで唾液の組成が進化していく。

この様に、唾液は口腔の機能維持や感染予防としての機能を発達させてきており、進化の側面から考えると唾液が如何に重要かわかる。しかし、口腔の評価としての唾液を用いた歯科系唾液検査が、話題を呼ぶことは20年来一度もない。一方で、臨床唾液検査では3回の社会を賑わすブームが存在している(図)。



唾液ブームの1回目は、約22年前の1999年頃に唾液を用いたストレス測定が大きな話題となった。唾液中のクロモグラニンが精神ストレスと関連することを見出し、トヨタ製の車の乗り心地の評価に使われた。

さらに、2007年頃、アミラーゼでもストレスの測定ができることを示し、簡易的に測定できるアミラーゼモニターが開発され、唾液検査において社会実装された初めての機器となった。現在でも販売されている。その他、IgA、コルチゾールなどストレスを測定する唾液マーカーが開発されている。

2回目のブームは、2010年頃に唾液からがん診断できることが発見され、マスコミから大きな注目を集めた(後程解説あり)。3回目のブームは、唾液を用いた新型コロナウイルスの検出である。唾液を用いた感染症の診断で保険収載されており、完全な社会実装を短期間で獲得した。

これら3つのブームの立役者は、システムエンジニアと医師であり歯科医師ではない。現在でも、唾液の特徴である非侵襲性が注目され唾液検査の開発競争が様々な企業で展開されている。

臨床唾液検査の開発と世界的動向

唾液は、血液から産生されることから血液中の成分が移行してくる。すなわち血液と唾液は相関性が高いはずである。しかし、相関する成分もある一方、相関性のないことも多い。相関性がある場合も、一般的に血液より唾液の方が100倍から1000倍濃度が低い。すなわち薄まっている。

これまで、臨床唾液検査で、非常に成功しているのは、主に感染症の診断である。HIVの唾液による抗体検査は正診率が92%といわれている。この場合の抗体は、感染後に血中に存在する抗HIV抗体であり、血中から移行してきた抗体を検出している。

同様の理論で、新型コロナウイルスに対するIgG抗体検査も存在するが、抗体の形成には時間がかかることから、今現在の感染を診断するためにはPCRが用いられてきた。今後も感染症の診断に唾液検査の開発が進むと思われる。

また、癌のリスク検査については、メタボローム解析を用いたAIによるリスク判定が社会実装されている。膵臓癌、胃癌、大腸癌などの癌のリスク診断に関しては、論文も非常に多く信頼性が高く、世界をリードする研究として発展している。癌に関する唾液検査は、アメリカUCLAのDevid Wong教授の研究がリードしていたが、現在では日本が最先端を走っている。

唾液による診断への応用は、分析技術の進歩により、唾液プロテオーム、トランスクリプトーム、マイクロRNA、メタボローム、およびマイクロバイオームを調査する「唾液オミクス」と呼ばれる新しい時代が開かれており、臨床唾液検査は極めて有望な分野であることは間違いない。

唾液検査「最大の難点」

唾液検査と血液検査を比較すると、唾液検査の利点は簡便で非侵襲性に採取でき、誰でもできるという事が挙げられる。一方で、欠点もあるのだが、唾液検査の利点ばかりに注目されてきたところに問題があるのではないかと考えている。

結論から示すと唾液検査は、血液検査と比較して、基準値の設定が難しい点が最大の難点である。特に単一の出口から唾液が出ればよいが、実際は3大唾液腺からの分泌により混合されてしまう。また唾液が口腔内に放出された瞬間から、空気に触れpHの変動範囲は、血液よりかなり大きい。また、口腔細菌により代謝されることで成分の変動や不純物が大量に含まれてしまう。

この様に唾液は、血液のような濃度調整が厳密に行われた液体ではないのである。さらに、採取法によっても成分の変動が生じることが報告されている。この難題に対して、唾液中の成分の濃度をnormalizeする内部標準の開発や、適切な採取条件についてのガイドラインの作成など、唾液を扱う研究者が集まり検討が求められている。

唾液学・唾液検査学の学問的確立に向けて

唾液の取り扱いの標準化は、今後の唾液検査の開発には非常に重要な要素である。新型コロナウイルスPCR検査で唾液検査が急激に一般化したため、唾液の検査における基盤作りが間に合わない状況にあるため喫緊の課題と認識している。今後、歯科医師・歯科衛生士をはじめとした様々な医療職種や分野を超えて、この問題に加速度をつけて解決に向かう必要がある。

特定非営利活動法人日本唾液ケア研究会(理事長:槻木恵一、会員123名)は、唾液を学際的に取り扱い、未成熟の唾液学、唾液検査学の確立を目指し、さらに国民の健康増進を推進する組織として2021年に設立した。唾液におけるプロフェッショナルな組織として、社会に貢献するために活動をはじめたばかりであるが、特に、唾液学・唾液検査学の学問的確立に是非とも貢献したい。

最後に、「唾液・唾液検査学の確立」の一環として、「唾液の取り扱い」に関する標準化に向けた取り組みが必要である。多くの皆様とこの問題を共有したく考えている。そこで特定非営利活動法人日本唾液ケア研究会のホームページに意見を求めるサイトを作成した。多くの皆様からご意見をお寄せいただきたい。


第2回日本唾液ケア研究会学術集会が開催

2023年11月26日(日)、第2回日本唾液ケア研究会学術集会が神奈川歯科大学横須賀キャンパスで開催される。

日本歯科大学菊谷武教授による特別講演や、国民皆歯科健診を取り上げ厚労省から政策的な現状のヒアリング、神奈川歯科大学口腔衛生学分野山本龍生教授を交えた唾液検査に関するシンポジウムが行われる予定だ。

オンデマンドでも配信されるため(配信は12月を予定)、ご興味のある方は是非登録してほしい。

著者/監修者
槻木 恵一
歯科医師

神奈川歯科大学副学長。神奈川歯科大学大学院歯学研究科口腔科学講座環境病理学教授。1967年東京都杉並区荻窪生まれ。神奈川歯科大学歯学部卒業後、同大学大学院歯学研究科修了、歯学博士取得。神奈川歯科大学歯学部口腔病理学教室、助手、特任講師、助教授を経て2007年より教授に就任。2014年より同大学副学長。専門分野は口腔病理診断学・唾液腺健康医学・環境病理学。プレバイオテックスの一種であるフラクトオリゴ糖の継続摂取による唾液中IgAの分泌量増加とともに、そのメカニズムとして腸管内で短鎖脂肪酸が重要な役割を果たすことをあきらかにし、「腸―唾液腺相関」を発見。日本唾液ケア研究会を設立し理事長に就任。

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1D編集部
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【特集取材】2024年米国歯内療法専門医協会(AAE)年次総会に参加してきました(寺岡 寛先生)

AAEは毎年1回年次総会(annual session)が北米の様々な地域で開催される。今年はカリフォルニア州のロスアンジェルスであった。カリフォルニア州は西海岸に位置し温暖な気候として知られている。日本人にとってはドジャースに入団した大谷翔平選手の本拠地と言うとわかりやすいのかもしれない。私も友人たちとドジャースタジアムに行き試合を見てきた。AAEの年次総会は4月の17日~20日の4日間開催され世界中から多くの歯科医師が訪れる。2016年のサンフランシスコ、2018年のモントリオール(カナダ)以来の3回目の参加となった。4日間を通して多くの魅力的なレクチャーが行われるが、見たいレクチャーが複数同時刻に行われどの公演を見ようかとというジレンマがある。また、隣に座ってレクチャーを聞いているのが世界的に高名な歯内療法医ということさえよくある。携帯電話で専用のアプリがあるのでそこから日程を確認出来、お気に入りのレクチャーを保存できるので日程の確認に非常に便利である。今回、総会への参加と1Dさんに執筆させて頂く機会を得たので体験記として情報を共有したいと思う。因みに筆者は日本で歯内療法専門医として幾つかの医院に出向し診療をしており通常の歯内療法は元より断髄を得意としている。尚、以下に使用している略語を書いておくので参考にして頂けると幸いである。<略語一覧>AAE(アメリカ歯内療法専門医協会)、ESE(ヨーロッパ歯内療法学会)、VPT(生活歯髄温存療法)、NSRCT(非外科的根管治療)、IDPC(間接覆髄法)、DPC(直接覆髄法)、ECR(歯頸部外部吸収)、ICR(侵襲性歯頸部吸収)、TSP(トロントスタディプログラム)、USC(南カリフォルニア大学)、ヒポクロ(次亜塩素酸ナトリウム)木ノ本喜史先生(左から4番目)と現地で集合した友人達と記念撮影(筆者は左から3番目)1日目(4月17日)私は現地には時差の関係で16日に到着したが総会が始まったのが17日なので1日目とする。最初に聞いたレクチャーは「Conundrum of Pulpal Diagnosis Part 1, 2」(歯髄診断の困難性パート1, 2)である。現在、歯髄の診断名は実際の臨床の状態を正しく反映していないと議論され、その診断名自体を新しいものに改善すべきという意見もある。ヨーロッパ歯内療法学会会長のDr. H. F. Duncanは出血や痛みへの過敏さは診断に有用ではなく、より歯髄への深い理解が重要であると述べた。意外に感じたのが歯髄をマイクロスコープ下で直視することに関しても否定的であった。私見では日本のDr.泉英之が提唱しているエアーでの歯髄が根管壁から離れると、その歯髄は保存不可能な歯髄であるといった所見や歯髄の正常を拡大下で確認することは非常に重要な因子であると思っている。Dr. Kenneth. M. Hargreavesは世界的に使用されている歯内療法の教科書Pathway’s of the pulpの編集者であるが今後はバイオマーカー、特にMMP-9による歯髄の診断が役に立つだろうと結論づけた。理由はバイオマーカーを使用することはパーソナライズし、術者の主観性を排除することにより信頼性が向上する検査法になり得るからである。最後のスピーカーのDr. Claudia Brizuelaは可逆性歯髄炎と不可逆性歯髄炎の診断にはFGF, IL-6, IL-1α, TIMP-1が有効かもしれないとした。しかしながらこれらはラボレベルでは有用であるかもしれないが、それをチェアサイドで使用できるようにすることが今後の重要な課題であると筆者は思う。続いてDr. Adham. A. AzimのThrough & Through Lesions Explained(スルーアンドスルー病変の解説)である。Dr. Azimは筆者と同い年(39歳)であるが、過去にバッファロー大学で歯内療法科の大学院生を統括するディレクターを行っており、現在はパシフィック大学の准教授という非常に才能に優れている先生である。筆者は2018年の総会で1度レクチャーを受けている。その時は逆根管治療(歯根端切除)でXP-Endoを使用した清掃を行うという新しく革新的な事を行う先生だな、と感銘を受けたことを思い出す。今回のタイトルのスルーアンドスルーというのは病変が大きく頬側骨、口蓋側の骨共に吸収している状態である。この状態で通常の逆根管治療を行った場合、瘢痕による治癒が得られるかもしれないが線維性結合組織による瘢痕治癒となるため、将来的にインプラントが必要になった場合に骨がなく埋入ができなかったり、新たに骨造成が必要であったりと問題となる。そのため出来るだけ逆根管治療時に骨による治癒が望まれるためタイトルとして決めたとのことだった。この理由に関しては筆者も同意見であるため今回のレクチャーを受講した。この病態を理解するためにはまず病変のステージを分類することが重要で、そのステージにより処置法が異なる。因みにDr. Azimは6月1日から行われる日本歯科顕微鏡学会の年次総会で後述するDr. Shanon Patel, Jerry Linと共に招聘されている。その時には今回のタイトルでハンズオンに参加する予定となっているので、その予習が今回でき今から非常に楽しみである。より臨床的に今回の分類とステージ別の処置法を理解できることだろう。レクチャー後に友人と質問をしにいった。2日目(4月18日)Dr. Shanon PatelのManagement of External Cervical Resorption (Surgical vsNon-Surgical:侵襲性歯頸部吸収への対応(外科的 vs 非外科的))であった。Dr. PatelはCBCTの歯内療法領域での使用で高名な先生である。本邦でも著書が日本語訳されて市販されている。侵襲性歯頸部吸収はICR(Invasive Cervical Resorption)とも呼ばれ、しばしばう蝕と間違われることがある。本病態に関し古くからHeithersayの分類が使用されてきたが同演者らによる、より細かく分類された新基準がヨーロッパ歯内療法学会(ESE)から発表されている。X線撮影をした際に偶然見つかることが約半数。原因は様々であるが不正咬合、矯正治療や管楽器奏者に多いとされている。近年ではネコに特有なウィルスがヒトに感染し原因になり得ることも言われている。以前と比較して症例数は増えてきていることを指摘し、悪い意味で過小評価をされていると言及していた。我々が思っているよりも実際には多くのケースが見過ごさられているだろうという意味である。また診断については従来のエックス線検査のみでは限界があるため、CBCTで検査を行うことの重要性も語られた。主題に関してどのような場合には外科的・非外科的に処置するのか、実際の症例を用いて説明され非常に理解しやすかった。余談ではあるが私自身、ECRで悩んでいる症例があるので6月に来日された際にはまた記録を元に相談させて下さい、とお願いをしておいた。セルフィーを一緒にしてもらったが慣れておらず画像がブレてしまった。続いてControversies in VPT:IPC vs DPC vs Pulpotomy Part 1,2(歯髄温存療法における論争:間接覆髄法 vs 直接覆髄法 vs 断髄パート1, 2)である。スピーカーはDr. Stephene Simon, Ashraf Fauad, Nasrin Taha, Domenico Ricucciの各レクチャーとディスカッションであった。今更ではあるがVPTとはVital Pulp Therapy(歯髄温存療法)の略であり、覆髄法と断髄法が含まれる。このセッションの各スピーカーはVPTに非常に精通した歯内療法医と言える。このセッションを含む本年のVPTに関わるセッションは10と非常に多かった。以前からVPTへの注目は大変に上昇していたが、本年で最高潮となったことだろう。因みにVPTに関するAAE総会でのレクチャーは私が調べた限りでは2016年0、17年0、18年1、19年3、20年1、21年5、22年?、23年4、24年10である。最初のスピーカーはDr. Tahaでヨルダン大学の教授で、現在ではコンセンサスになりつつある不可逆性歯髄炎における断髄の高い成功率を報告した。発表当初(現在も?)はかなりの反対意見があったものの、現在では2021年にAAEが発表した断髄のガイドラインにも記載の通り受け入れられつつあるように思う。このパートでは非特異的う蝕除去は特異的う蝕除去よりも成功率が高く、露髄をしたとしても断髄や抜髄を行えば予知性の高い治療となるとのことであった。これはESEが推奨をしている、いわゆるステップワイズエキスカベーションよりも断髄・抜髄のほうが予知性が高い処置であると私は解釈をしている。続いてDr. Fauadは各個人の炎症性ケミカルメディエーターを用いて歯髄炎が鑑別できるかもしれないとの展望を示した。その上でVPTのみならず、各個人に対するパーソナライズドされた歯内療法が必要ではないかと提唱していた。一般的なVPTの予後に関する因子として写真にあるように、カリエスの深さ、宿主の炎症反応、無菌的処置、覆髄材、症状をあげていた。その中でも興味深かったのが歯髄壊死を起こし根尖性歯周炎(+)の患者で疼痛を感じない歯髄炎、いわゆるPainless Pulpitisが生じていたのは40%であった報告(Michaelson and Holland IEJ 2002)を引用していた。頻度はここまで多くないにしても臨床家であれば歯冠崩壊している患者さんに、今までの痛みのヒストリーを聞いた際に別にそんなに痛くなかったと答える患者に1度は遭遇したことがあるのではないだろうか。3番手のスピーカーはDr. Ricucciである。Dr. Ricucciに関してはここで改めて解説をする必要がないほどの高名な臨床家である。彼の非常に美しい切片像は歯内療法のみならず歯科会に大きな影響をもたらしたことは疑いようがない。彼の今回の主張は写真の通り非常に明確で、彼の臨床結果やその切片を用いて説明したうえで特異的う蝕除去は推奨されないということであった。ここで興味深いのがDr. Ricucciはイタリア人であるので立場的にはESEに近いはずであるが、彼の主張のスタンスはAAEのポジションステートメントと近似している。筆者は彼のFacebookグループをフォローしており、上記のような主張が来るだろうと予想していたので驚きはなかったが、臨床・組織像を交えたレクチャーには説得力があると改めて感じた。このセッションの最後のスピーカーDr. Simonのことは事前に存じ上げなかったが、彼の20年に渡る経験に基づくレクチャーを聞いてVPTに対して現在最も考え方が近いと感じた。そう感じたのが歯髄温存に関して歯髄の炎症よりも感染の除去が重要であるというところである。Dr. Bergenholtzはサルを用いた動物実験の研究結果として「歯髄炎が中等度から重症であったとしてもその原因(細菌を含む感染源)が除去できれば治癒する」と1984年に述べており、筆者はこの研究結果は臨床に即していると感じる。このBergenholtzに関しては何も言及していなかったので質問したかったが、時間的にその余裕はなかったので残念である。3日目(4月19日)3日目は午前のセッションのみの参加となった。タイトルはSurgical Retreatment vs.Non-surgical Retreatment Outcomes(Point-Counterpoint:外科的歯内療法 vs 非外科的治療の成功率)である。演者は前述のDr. Adham Azimと日本の誇るDr. Yoshiこと寺内吉継先生である。Dr. Yoshiは破折編除去で世界的にその名を知られており、今回の総会でも毎日ハンズオンコースを行い超人気である。彼の考案した破折編除去の販売を行うSAYA DENTのブースに立ち寄った時、スタッフの方と中東系の先生が話していたのでその中に混ざってみたが、その先生はDr .Yoshiのファンであった。そのハンズオンに参加するためだけにAAEに入会したとのことである。Dr. Yoshiはそれだけではなく、Pathway’s of the pulpの偶発症のパートを執筆したり他にも教科書のパートの執筆を任されたりと日本人として過去になし得ないような事をしている。これだけ世界中にファンがいるのも納得である。話を本題に戻すが、最初にDr. Yoshiがレクチャーを行った。彼は筆者も3期に卒業したDr. Shimon Friedman率いるTSP(トロントスタディプログラム)を運営し通訳をしている関係上、トロント大学をはじめとする教授陣の講義を毎年みておりその影響が伺えた。痛みとは何か、から始まり近年におけるNSRCT(Non-Surgical Root Canal Treatment:非外科的根管治療)と外科的歯内療法の統計処理を行った成功率の比較、その上で外科的歯内療法前に非外科的根管治療を行われたものの方が長期の成功率は高いという結果であった(Huang JOE 2020)。本研究では咬合をサンプル数は少ないものの、咬合があったものでは治癒が悪かったとも報告しており、写真はDr. Yoshiの症例をそれを示したものである。また私の好きな論文の1つである、外科的歯内療法が失敗した歯に非外科的根管治療を行った場合の成功率(84.82%)を報告した研究(Appel IEJ 2023)も引用されていた。一方のDr. Azimは非外科的根管治療が失敗した場合のその原因を列挙し、それが再根管治療では改善できない際に外科的歯内療法により歯を保存するのが良いと説明した。因みにその改善できない場合というのが1根管内の除去困難なバイオフィルム、2根尖孔外感染、3真性嚢胞、4アクチノマイセス菌の感染、5処置上のエラーである。誤解のないように付記しておくとこれら全て術前には分かりようがない場合もあり得る。言い換えると、外科的な処置を行い初めて分かる場合もあり、外科的歯内療法の術前には分からない場合もある。他方で非外科的根管治療がなぜ失敗するのかも考察をしており、その原因は1外科処置上のエラー、2破折である。彼のこのレクチャーにおける結論としては、再根管治療が失敗に終わり抜歯をしなければならない場合に外科的歯内療法が適応となる。場合によっては外科的歯内療法の方が歯質保全という意味で保存的になり得るということである。両者の結論としては非外科的根管治療も外科的歯内療法も必要である、という至極真っ当な意見である。本公演後にDr. YoshiがDr. Jean-Yves Cochetと一緒にいたので話しかけさせてもらった。Dr. Cochetは医科と歯科の免許を持つダブルドクターであり医科の方では耳鼻科、歯科では歯内療法というユニークな経歴の持ち主である。耳鼻科が専門であるため上顎洞のアプローチはお手の物で歯根端切除時にも躊躇なく上顎洞を触るとのことであった。既に何度か日本でハンズオンをやられているが、受講ができなかったのでぜひ来年は来て下さいと両名に交渉をしておいた。3日目はここまでで午前が終了し、午後からは名門のUSC(University of SouthernCalifornia南カリフォルニア大学)のクリニック見学をさせて頂いた。AAEのセッションとは外れるので、最後のプライベートをまとめた項に記載するので、もしご興味がある方がいらっしゃったら見て頂けると幸いである。4日目(20日最終日)最終日は参加人数もだいぶ少なくなったものの、まだまだ魅力的なレクチャーが残っている。日本人に限らず早めに帰った方もいれば、観光を楽しむ方もいれば、私のような人間もいて様々である。この日の最初はDR. Marga ReeのLessons Learned in 45 Years of Endodontics(45年の歯内療法の経験から私が学んだこと)である。この手のタイトルでは抽象的な内容で昔の歴史的な事が語られるかと思われるかもしれない。だがDr. Reeは非常に革新的な歯内療法専門医であり視点が異なる。彼女の凄いところは常に新しいことにチャレンジを行い、術式に様々に工夫を行うことである。例としてはDr. 月星光博が考案した方法だと記憶しているが、意図的再植時に歯を回転させソケット側とドナー歯側の歯根膜の分布を変え、喪失した歯根膜を回復させるという方法である。また彼女の結論としては長く経過を見ればみるほど歯根破折をみる機会が多くなる。破折を回避するためには歯質を可及的に温存する必要があり、そういった治療法をすべきということだ。念の為に上記の写真の彼女の処置に関する推奨の日本語訳を付記しておく。・歯内療法の診断を確立する・プローブの値を確認する(歯根破折との関連)・補綴物を除去しクラックの進展を再確認する・必要があるなら歯内療法を行い、歯冠部歯質を可及的に温存する・クラックを有する歯は全口頭被覆を行い、側方運動の干渉や過度な咬合は避ける・クラックがある場合には患者に予知性が下がるかもしれないことを助言しておく続いてDr. WitherspoonとDr. Benjamin BarborkaのVital Pulp Therapy in Clinical Practice(VPTの臨床)である。Dr. Witherspoonは2018年の総会でもVPTのレビューをレクチャーで行っていたので、6年間でどう変化をしたのかが楽しみであった。一方のスピーカーが少し話したらスピーカーが入れ替わるといった、1人のスピーカーが話し続ける通常のセッションとは異なる進行であった。両者の連携が非常によくスムースな進行であった。ワシントンでの保険データを利用したものでVPTが行われた割合は、全歯内療法処置のうち20%であり、1%程度が歯内療法専門医により行われた。VPTの占める割合はこれくらいかと思うが(私も全処置のうちVPTが30%程度)、殆どのVPTは一般歯科医師により行われているとのことであった。断髄に関しては止血時に生食を使用するかヒポクロを使用するかという論争がある。日本では生食を使用する先生が多いように昨今は感じるが、私はヒポクロを使用する。理由としては詳しくは割愛するが、使用に際して欠点がほぼないからである。本公演でも研究論文ベースでレビューされその有用性が強調されていた。覆髄材ではMTAと水酸化カルシウムが比較され、長期経過の成功率ではMTA71%、水酸化カルシウム59%とMTAに軍配が上がるようである。Dr. Witherspoonは以前より保存可能な歯髄をViable Pulp、不可能な歯髄をNon-Viable pulpと呼称している。私はSavable, Non-Savableと呼んでいるがほぼ同一である。根管治療との成功率の比較では両者に有意差はなく、術後に疼痛発生に関しては断髄の方が少ない傾向にある。また幾つかの論文においてはVPTは根管治療と比較し準備する道具も少なく容易でテクニックセンシティブではないとしているが、彼らは否定的で筆者も同意である。両者も非特異的う蝕除去と特異的う蝕除去についてもレビューをしていたが、5年予後という期間では成功率に有意差はなかったようである。しかしながらDr. Ricucciが指摘したように、また2024に発表されたレビュー(Fraser J, Evid Based Dent 2024)では深いカリエスに対しては推奨されていないとのことである(写真赤線部)。本会最後に受講をしたのがDr. Ronald Ordinola-ZapataのPresent Status ofIntracanal Medicaments(現在の根管貼薬の立ち位置)であった。現在、アメリカでコストなどの問題から1回法が多いと聞く。再根管治療でも1回法が殆どであるという歯内療法専門医の意見も聞くことがある。筆者の知る限りでは現在、再根管治療の1回法の成功率を前向きに調査したものは1論文である。また研究対象歯は前歯のみであることからエビデンスレベルは不足しているものの研究結果では有意差はない。それでは複数回法で用いる根管貼薬は全くをもって不要なものなのだろうか。そんな疑問を払拭してくれるレクチャーであった。病変が大きく排膿が止まらず複数回法にせざるを得ない場合や、年齢による治癒遅延が見込まれる場合には貼薬を行うべきであるということを研究論文から引用していた。筆者の私見では全ての症例に適応するにはまだエビデンスは少ないが、1回法治療は歯種で制限されるものではなく、解剖などの他の制限される因子がなければ行って差し支えないと考えている。実際に根尖性歯周炎を有する大臼歯を1回法で行った症例も良好に治癒している。しかしながら、複数回法で行う症例も多いので貼薬を筆者にとっても必要なものである。以上が私のAAEの体験記である。LosAngeles滞在記以下は私の趣味というか仕事以外の記録である。成田空港からLos Angelesまでは直行便があり、行きは追い風の影響か10時間で帰りは向かい風で11時間30分であった。行きはWi-Fiが使えずプレゼンも進まず苦労をした記憶がある。帰りはWi-Fiにアクセスでき本執筆を行っていたのであまり苦労した記憶がない。気候は温暖で雨が少なくドライであるが今の時期の気温は意外なことに日本の方が高い。寒くも暖かくもないという感じであった。時差は日本が16時間進んでいるため時差ボケで眠れず苦労をした。18時ころでも写真のような明るさなので日はとても長い。まず今回の訪米で感じるのがほぼ全てものがめちゃくちゃ高いということである。異次元の円安ということもあるが米国では1人前の量が日本人には多い。大食漢の私でも多いと感じるレベルである。そして味付けは店のグレードにもよるだろうが非常にシンプルで、この味でその値段!?と驚くことはよくある。私はあまり食べ歩かなかったが、写真のようなブランチでも4000円以上した。ワッフル状のパンケーキにシロップ、フライドチキンが2つとソフトクリームのような見た目で決してソフトクリームではないものがついたものである。ソフトクリームよりも何かもっと脂っぽいものであった。そのため私はWhole foods marketというスーパー(日本で言う成城石井なので少しお高い)のデリをよく買ってホテルで食べていた。基本何でも高いがなぜか水が1ガロン(3.5リットル)で1.3$と激安なのが謎である。下のようにコストコのような見た目である。滞在したホテルはMillennium Biltmore Hotel。由緒あるホテルらしく、よく言えば伝統的ではある。しかしながらリノベーションが行われていないようで50年前にタイムスリップしたような内装ではある。私はあまり気にならないタイプなので気に入ってはいた。ここからが今回の旅の第二の目的であるUSCへの訪問である。ディレクターの先生との連絡がうまく行っておらず若干入れ違いのようになったのだが結局、大学院クリニックの見学と21日に大学内の1室で行われた卒業生パーティにも参加をさせてもらえた。卒業生パーティの方は残念ながらカメラの電池がなくなりまた、携帯電話を紛失したため写真が取れなかったが見学時には写真をとれたので幾つか載せたい。卒業生パーティの方は予めディレクターから時間あるなら来なよ、と言って貰えていたが面識がないので顔を合わせても自分が連絡してきた歯科医師とはわかるはずがない。そのため最後のセッションで座長をされていたのでレクチャー後に話しかけた。私はその前日に拾ったUberの中に携帯電話を置き忘れるという有り得ないようなミスをして交通手段がなかったのだが、残っていた卒業生の先生もパーティに参加されるようで一緒に送っていただいた。パーティでは当然、9割5分が面識のない先生(写真で見たことのある高名な先生は沢山おられたが)達ばかりであったがとても優しく受け入れて頂けた。USCは米国でもトップクラスの学費の高さでも有名であるが、歯内療法科を卒業された先生はやっぱりUSCが一番いい!と仰られていた。暗くなるとUSC周辺やダウンタウン周辺は危険であるため、まだ日があるうちにおいとまをした。交通手段がないのにどうホテルまで帰ったかと言うと、偶然知ったのだが大学からダウンタウンまで無料のバスが出ていて、唯一持っていたタブレットと大学内のWi-Fiで情報を探し無事乗れた。バス停が分かりづらかったが、いかにもアメリカの白人のおっちゃんって方に尋ねたらとても親切に教えてくれた。バスが来て自分が乗るまでちゃんと確認してくれてたので非常にいいおっちゃんである。今回、他国で携帯を失くし現在日本でも切符をいちいち買わなくてはならないという煩雑さもあるが、総じて楽しかった。私は23日まで滞在をしていたが、正直帰る際になったら現地に残りたいとさえ感じた。ここからは海外に行かれる方への注意喚起だが、日本で携帯電話に依存していればいるほど海外で亡くした際には非常に苦労をする。パンデミックのせいかバスの支払いも現金やクレジットカードで直接読み込むという支払い方法は不可で、クレジットカードで予めウェブ経由で購入しておくか、携帯でアプリをダウンロードして支払うか(私のタブレットはGoogle Playが入っているはずだがなぜかアプリをダウンロードできず、この方法を使用できなかった)、しか方法がなかった。 また、日本で使用している各種サイト、銀行やYahoo!にすらログインする際には、普段と違う環境でアクセスすると最近は2段階認証ということで携帯電話にSMSが送られ認証しなければサイトにすら入れない(Yahoo Mailが使用できない)。上記のようにタブレットの使用にもかなりの制限があったが、今回持っていかなかったら無事に日本には帰ってこられなかっただろう。そのため、海外に行かれる方にはPC・携帯のみではなく最低更にもう1つ連絡手段を持ったほうがいい。ベストは携帯電話の2台持ちだろう。もしくはiPadにすることをおすすめする。他には詐欺もある。4日目にスーツを着て昼食を食べに行く際には黒人の2人組に話しかけられ「このカメラで俺等の写真を撮ってくれ」と言われた。この時点で既に怪しいわけだが、これはよくある無理やり何かを買わせる詐欺(?)である。まずはその写真を取らせて、片方が「この相棒はすごく有名な歌手・ラッパーなんだぜ」といい、頼んでもいないのにCDを出してきて自分でサインをする。その後になぜか私にもペンを私てきてサインをするように言ってくる。私はこの手の詐欺を知っていたので、この時点で「ありがとう、でもいらないよ」と言い立ち去った。そこで私がサインしていたらこのCDを駄目にした、金を払えと言ってきただろう。親切心に漬け込んだ詐欺もあるので注意が必要だ。ロスアンジェルスは基本、夜は単独行動は危険なのでそれに比べると日本は超安全というのを実感する。あと食べ物が安くて美味しい。さて、夜は更け現在20時になるわけだが、この体験記も書き終えようやく自宅に到着をする。携帯電話を明日からどうするか考えて今日はゆっくり休むこととする。最後まで読んでいただいた先生がどの程度おられるか分からないが、お読みいただいた先生には感謝です。お読み頂きありがとうございました!
寺岡 寛
2024年5月1日

<実録インタビュー>歯科医師を引退した68歳が始めた投資

引退後も安定した生活を実現するためには、資産運用が欠かせません。特に、長年にわたり専門職として活躍してきた歯科医師にとって、賢い資産運用は今後の生活の質を大きく左右します。今回のインタビューでは、68歳で東京都港区にある歯科医院の経営を引退されたAさんに、その資産運用について深掘りします。お父様から継いだ歯科医院を25年間経営し、2022年に引退。長年、銀行や証券会社からの投資勧誘はありましたが、投資活動には手を出していませんでした。しかし、遺産相続をきっかけに不動産投資を始め、現在では商業ビルを所有し、年間約3000万円の収入を親族が運営する会計事務所と連携し法人として運用、さらには約5000万円の株式を保有するに至りました。Q. Aさん、引退されてからの資産運用についてお聞かせください。特に、投資を始める前に持っていた不安はありましたか?はい、実は引退するまで投資にはほとんど興味がなかったんです。でも、父から受け継いだ不動産を何とか活用したいという思いと、引退後の生活への不安がありました。最初は何から手をつけていいのか分からず、正直なところかなり戸惑いました。Q. その不安をどのように乗り越え、資産運用を始められたのですか?まず、遺産相続で手に入れた商業ビルをどう活用するか考え始めたんです。そこで、親族が運営する会計事務所の助けを借りて、法人としてビルの運用を開始しました。それがきっかけで、より積極的な資産運用に興味を持つようになり、不動産投資や株式投資、その他様々な投資に手を出すことにしました。Q. 具体的に最も上手くいっていった資産運用はなんだったんですか?仮想通貨です。私自身は仮想通貨というものに懐疑的で、なんなら嫌悪感すら覚えるほど苦手意識がありました。なので最初に仮想通貨を始めようという話になった時は、最初は本当に不安だらけでした。知識も経験もない中でのスタートでしたから、どうなることかと思っていました。でも、Bitcoinを含む主要通貨に少しずつ投資をしていくうちに、その価値が急上昇しました。特に驚いたのは、投資を始めてからわずか3ヶ月で、投資資金が約3.5倍にも増えたことです。それは私にとっても、周りの人たちにとっても予想外の結果でした。その成功体験から、仮想通貨投資に対する理解が深まり、よりリスクを管理しながら投資を進める方法に興味を持ち始めました。現在は、ドルベースで取引される仮想通貨を中心に、年間20%のリターンを目指しています。リスクを低減しつつも、しっかりとしたリターンを目指せる仮想通貨投資に、今はかなり力を入れていますね。Q. その成功体験が資産形成のスタンスにどのように影響したんでしょうか?資産運用に対する見方が変わりました。リスクがあるからといって避けてばかりいては、大きなチャンスを逃してしまうこともあると学びました。もちろん、無闇にリスクを取るわけではありませんが、適切なリスク管理とバランスを考えながら、積極的に投資の機会を探求していくことの大切さを実感しています。これからも、学び続け、賢く資産を増やしていきたいと思います。Q.  他の人にアドバイスを求めることに対して、不安や不信感はありませんでしたか?最初は確かに、他人に自分の財産状況を相談することに対して大きな不安がありました。自分のこれまでの努力で築いてきた資産を誰かに話すのは、少し怖いと感じる部分もあったんです。でも、一人で悩んでいても答えが出ないことに気づいたんですね。そこで、勇気を出して専門家に相談してみると、私の不安をしっかりと受け止めて、分かりやすくアドバイスをくれました。専門家の方々は、私みたいに資産運用に不安を持っている人をたくさん見てきているので、その経験をもとにしたアドバイスがとても心強かったです。徐々に、専門家と一緒に資産運用の計画を立てることで、不安が解消されていきました。Q.  資産運用で成し遂げたことについて、どのように感じていますか?資産運用を始めてから、私の資産は確実に増えました。もちろん、市場の変動には一喜一憂することもありますが、全体としては安定した収入を確保できていると感じています。特に、商業ビルの運用から得られる収入は、引退後の生活に大きな安心感をもたらしてくれています。また、株式投資や仮想通貨に関しては、最初は不安も大きかったですが、慎重に運用を続けることで、その不安も少しずつ解消されてきました。資産運用を通じて学んだこと、経験したことは、私にとって非常に価値のあるものです。今後も、資産運用を続けながら、安定した老後を送っていきたいと思います。Q. 老後の不安に対して、他の歯科医師へのアドバイスはありますか?老後の不安を抱えている歯科医師の方々には、まず行動を起こすことをお勧めします。不安を感じるだけでは何も変わらないし、悩んでいる時間があるなら、その時間を資産運用の学習に充てるといいと思います。そして、専門家のアドバイスを積極的に求めてください。最初は不安かもしれませんが、専門家の知識と経験は、私たちが見落としがちなリスクを教えてくれたり、新たな投資のチャンスを提案してくれたりします。資産運用は一朝一夕にはいかないものです。長い目で見て、じっくりと取り組む必要があります。そして、リスクを恐れず、でも無謀にならないように、適切なリスク管理を行ってください。専門家のサポートを受けながら、資産運用にチャレンジしてみることで、老後の不安を少しずつでも解消していくことができるはずです。投機ではなく投資をするためにプロに相談をAさんの経験からは、老後の資産運用における不安を解消するためには、行動を起こすことの重要性と、専門家のアドバイスを積極的に求めることの大切さが浮かび上がります。資産運用の道のりは決して簡単ではありませんが、適切なサポートと正しい知識があれば、より安心して将来に備えることができるでしょう。仮想通貨や株式投資などは投機的な側面が目立ってしまい悪い印象を持たれている方も多いかもしれませんが、適切な資産ポートフォリオを組んだ上でプロの相談を元に進めることで適切な投資手段になり得ます。情報収集をしているけど知識だけが溜まって行動に移せないという方もまずは、どんな相談がプロにできるのかを知るところから始めせんか?どんな相談ができるのか詳しく見てみる
1D編集部
2024年3月26日

【1Dの日】支台歯形成、5倍速、マージン形成のセミナーを無料配信

2024年2月11日、1Dの人気セミナーを厳選し、無料放映するセミナーイベント「1Dの日」第2回(URL)が開催されます。毎月11日に行われるこのイベントでは、通常であれば1Dプレミアムで配信されているセミナーをYouTubeライブで視聴することができます。演題は「ハードモード支台歯形成」(小川勝久先生:神奈川歯科大学クラウンブリッジ補綴学分野客員教授)、「5倍速による精密診療」(遠山敏成先生:日本補綴学会 )、「セラミックスクラウン マージン形成のテクニック」(村川達也先生:日本歯周病学会認定医 )の3本立てです。明日からの臨床に活かせるポイントが凝縮されたセミナーなので、下記ボタンから是非お気軽に視聴予約をして下さい。無料でセミナーを視聴する『ハードモード支台歯形成』傾斜した大臼歯、口が開かない人、クリアランスの少ない人など…。世の中には、様々な厳しい条件下での難易度MAXな支台歯形成が多く存在します。そんな症例に遭遇した時、先生方はどう対応されますか?困難な症例であってもミニヘッドや角度を変えたタービンを使ったりちょっとしたテクニックで乗り越えることが可能です。しかし、優れた器具やテクニックを生かすにはベースとなる形成テクニックをマスターしていることが大前提となります。このセミナーでは神奈川歯科大学クラウンブリッジ補綴学分野客員教授 小川勝久先生に厳しい条件下での支台歯形成に必要なベースとなる基礎的なテクニックからそれらを生かしたブリッジやテーブルトップなどの応用スキル、おすすめツールについて解説していただきます。困難な支台歯形成に挑戦したくなるセミナーです。無料でセミナーを視聴する『5倍速による精密診療』「5倍速持ってはいるけど、いまいち使い所がわからない」。近年、支台歯形成で主流になっている5倍速コントラですが、なぜ有用なのか、どんなメリットがあるのかご存知ですか?5倍速コントラは軸にブレが少なく、タービンと比較して回転数が低いためチッピングや発熱を抑えられます。つまり、高精度かつ低侵襲な支台歯形成が行えます。例えば、CAD/CAMなどの緻密さが求められる形成で重要となってきます。また、これらの強みを活かすには症例ごとに適したバーの選択や、形成時のテクニックなど器具を使いこなすことも求められます。このセミナーでは日本補綴学会 遠山敏成先生に、5倍速コントラを活かした形成テクニックを中心に、タービンとの使い分けと比較、メリット・デメリット、各種メーカーの特徴、形成時のバーの選択など高精度な形成に必要な知識を解説していただきます。明日から形成が楽しみになるセミナーです。無料でセミナーを視聴する『セラミックスクラウン マージン形成のテクニック』マージンの設定位置、もしかして形成しながら考えていませんか?前歯部など審美性が求められる箇所での需要が高いセラミッククラウン、長期間審美性と機能性を維持したいですよね。しかし、歯肉の厚みや歯軸の傾斜、咬合やクリアランスなどの因子により、数年後「こんなはずじゃなかった…」と反省することも少なくありません。中には生物学的幅径をおかし、歯周炎の原因になってしまうなんてケースも…。そうならないためにも、適切な診査・診断に基にマージンを形成し、最終補綴装置を製作することが求められます。このセミナーでは日本歯周病学会認定医 村川達也先生に、美しい歯肉ラインのためのセラミック・ジルコニアクラウンのマージン設定、垂直的形成・vertical preparation、最終補綴装置に至るまでを解説していただきます。苦手の理由がわかるセミナーです。無料でセミナーを視聴する
1D編集部
2024年2月7日
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1D(ワンディー)は、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士向けの情報が集まる、日本最大級の専門メディアです。

トップレベルの臨床家・研究者からオンラインで学べる「歯科セミナー」や、臨床・経営・ライフスタイルの最新情報が収集できる「歯科ニュース」など、多彩な歯科医療コンテンツを配信しています。

本サイトは、歯科医療関係者(歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士・歯科助手・歯科学生等)を対象に、歯科医療の臨床・研究・経営等に関する情報を集約したものです。歯科医療関係者以外の一般の方に対する情報提供を目的としたものではないことをご了承ください。

また、本サイトで提供する情報について細心の注意を払っておりますが、内容の正確性・完全性・有用性等に関して保証するものではありません。詳細は利用規約をご覧ください。

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